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頼りになる婚約者
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「私はショウの怒りを買い、復讐すると宣言されてしまったのだ。私のことを便所に隠れていても引きずり出して、殺すと・・・!」
ラルスは堪え切れないといったように叫んだ。
「以来、全てが怖いのだ。いつどこからショウがやってくるか、あるいはショウが誰かを雇うのか、疑い出すと何もかもが怪しく思ってしまう。私は王城から一歩も出たくないし、誰も迎え入れたくもない・・・!恐ろしいのだ」
なるほど、これで憔悴しきったラルスにも、そしてこれまでの態度にも合点がいった。
とりあえず状況はわかったのでダグラスは心に落ち着きを取り戻していた。
まさか優秀とされた王太子がここまで恫喝に屈して壊れるほどヤワだったとは思わなかったが、それでもダグラスはラルスが抱えている悩みについてそこまで大袈裟なものではないと考えていた。
「単なる脅しです。彼は国外追放されたのでしょう?国境破りに成功したところで、王都にいる殿下を暗殺することなど不可能です」
ダグラスの言うことは最もだった。いくらショウが腕の立つ武人といえど、近衛騎士に常に守られているラルスを暗殺することは困難を極めるだろうとダグラスは考えていた。加えて王都自体もそれなりに身分がはっきりしていないと入ることはできないし、王城周辺はもっと警備が厳しくなる。
実際は辺境騎士団に比べ王都の騎士のレベルが低いこともあって、ショウが本気になれば可能性が無くもないのだが、それを知らないダグラスは思ったままのことを口にした。
「それはわかっている。普通に考えれば、私を暗殺することなど不可能であると」
ラルスとてそれは同じようで、頭では暗殺されないと理解できているようだった。
「だが、あの男は・・・何故だかそれが出来てしまうような、そんな気がしてならないのだ」
ショウから刷り込まれた恐怖は、理性だけではどうにもラルスの抉られた心を癒すことはできないようだった。
「殿下は誰と婚約をするのかお忘れですかな?」
だが彼の心情を理解し切れていないダグラスは言った。
「キアラ嬢が・・・どうかしたのか?」
ラルスの言葉にダグラスは慢心の笑みで答える。
「キアラはランドール国が誇る、世界一の魔法使いですぞ。キアラと共にいる以上、どのような脅威があっても、殿下をお守りすることができるでしょう」
「あっ・・・」と、ラルスが声を上げた。
そうか、そうなのだ。
自分が婚約するキアラ嬢は誰もが認める世界一の魔法使いではないか。ショウなど大した障害になろうはずもない。すっかり忘れていた。誰よりも頼れる人が、これからは身近にいるではないか。
キアラが現場にいながらも、ショウからの刀を一振りを受けそうになったことについても、残念ながらラルスはこのとき忘れていた。
恐怖におびえる中で頭がぐしゃぐしゃになったところで、突然差し込まれた希望の光に縋るあまりに恐怖の元凶についての記憶が頭から飛んでいってしまった。
「そ、そうか・・・そうだったな。私は何を怯えていたのだろう・・・すまなかった公爵」
「いえ、お元気を取り戻していただけたのなら何よりです。それにキアラは最近また魔法の研究を重ねている様子。更なる実力の底上げが期待できます」
「そうか!なれば、いつまでも引きこもっているわけにはいかぬな。計画通り、キアラ嬢との縁談を進めるとしよう」
「はいっ」
ラルスの顔には明るさが戻った。ダグラスの顔にも心からの笑顔が戻った。
だが二人が笑顔でいられ続ける時間はそう長くはなかった。
ラルスは堪え切れないといったように叫んだ。
「以来、全てが怖いのだ。いつどこからショウがやってくるか、あるいはショウが誰かを雇うのか、疑い出すと何もかもが怪しく思ってしまう。私は王城から一歩も出たくないし、誰も迎え入れたくもない・・・!恐ろしいのだ」
なるほど、これで憔悴しきったラルスにも、そしてこれまでの態度にも合点がいった。
とりあえず状況はわかったのでダグラスは心に落ち着きを取り戻していた。
まさか優秀とされた王太子がここまで恫喝に屈して壊れるほどヤワだったとは思わなかったが、それでもダグラスはラルスが抱えている悩みについてそこまで大袈裟なものではないと考えていた。
「単なる脅しです。彼は国外追放されたのでしょう?国境破りに成功したところで、王都にいる殿下を暗殺することなど不可能です」
ダグラスの言うことは最もだった。いくらショウが腕の立つ武人といえど、近衛騎士に常に守られているラルスを暗殺することは困難を極めるだろうとダグラスは考えていた。加えて王都自体もそれなりに身分がはっきりしていないと入ることはできないし、王城周辺はもっと警備が厳しくなる。
実際は辺境騎士団に比べ王都の騎士のレベルが低いこともあって、ショウが本気になれば可能性が無くもないのだが、それを知らないダグラスは思ったままのことを口にした。
「それはわかっている。普通に考えれば、私を暗殺することなど不可能であると」
ラルスとてそれは同じようで、頭では暗殺されないと理解できているようだった。
「だが、あの男は・・・何故だかそれが出来てしまうような、そんな気がしてならないのだ」
ショウから刷り込まれた恐怖は、理性だけではどうにもラルスの抉られた心を癒すことはできないようだった。
「殿下は誰と婚約をするのかお忘れですかな?」
だが彼の心情を理解し切れていないダグラスは言った。
「キアラ嬢が・・・どうかしたのか?」
ラルスの言葉にダグラスは慢心の笑みで答える。
「キアラはランドール国が誇る、世界一の魔法使いですぞ。キアラと共にいる以上、どのような脅威があっても、殿下をお守りすることができるでしょう」
「あっ・・・」と、ラルスが声を上げた。
そうか、そうなのだ。
自分が婚約するキアラ嬢は誰もが認める世界一の魔法使いではないか。ショウなど大した障害になろうはずもない。すっかり忘れていた。誰よりも頼れる人が、これからは身近にいるではないか。
キアラが現場にいながらも、ショウからの刀を一振りを受けそうになったことについても、残念ながらラルスはこのとき忘れていた。
恐怖におびえる中で頭がぐしゃぐしゃになったところで、突然差し込まれた希望の光に縋るあまりに恐怖の元凶についての記憶が頭から飛んでいってしまった。
「そ、そうか・・・そうだったな。私は何を怯えていたのだろう・・・すまなかった公爵」
「いえ、お元気を取り戻していただけたのなら何よりです。それにキアラは最近また魔法の研究を重ねている様子。更なる実力の底上げが期待できます」
「そうか!なれば、いつまでも引きこもっているわけにはいかぬな。計画通り、キアラ嬢との縁談を進めるとしよう」
「はいっ」
ラルスの顔には明るさが戻った。ダグラスの顔にも心からの笑顔が戻った。
だが二人が笑顔でいられ続ける時間はそう長くはなかった。
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