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21.変わっても変わらないでね

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 夏休みになったよ!茉琴の家で作戦会議。
「紗華ぁあ!良かったね!」
「頑張って、さやちゃん!」
「うわぁあどうしよぉお!緊張で浴衣がはち切れるかも!」
「紗華がそんなに取り乱してるの珍しい~。」
「ね、さやちゃん乙女だ~!」
考えるだけで胸がドキドキする。こんなの、おかしい。恋って、おかしい。
「とりあえず、浴衣で行くんだよね。」
「う、うーん……さ、佐和田くんが浴衣で行くって言ったら。」
「訊いたの?」
「ま、まだ。」
「今すぐ訊きなさぁい!!」
茉琴に脅されて、私は慌てて佐和田くんにメッセージを送った。2分後、返事が返ってくる。
『考えてる。瑞木さんが浴衣ならそうするけど。』
んーーーーー。
「どうしたらいい!?」
「浴衣でいくべき~!」
「そう思うよ、紗華!」
「じ、じゃあ、そうします……。」
佐和田くんにその旨を伝える。
『了解』
し、シンプルな返答。
「男の子って、メールになった途端にけっこう無愛想だよねぇ。だいきくんもそうだもん。」
「そうなのかな。大翔は女子みたいにいっぱい絵文字使ってきてたけど。」
「じゃあ、人によるのかなぁ。だいきくんの場合、絵文字の出し方が分かんないのかもしれないけど……。」
「いのりちゃんは、八神くんと夏祭り行かないの?」
「……はっ!た、たしかに。誘ってみる!」
いのりちゃん、ものすごいスピードでメッセージを打つ。
「さてと。紗華氏。告るってことはしないの?」
「え、えぇ……いやぁ……な、なかなか、勇気が……。」
「はわ!返事来た!」
「なんてなんて!」
「『おー、いいよー。』う、嬉しいけど、無愛想!はっ、また来た。っ……///」
いのりちゃん、急に赤面。
「ど、どうしたー!?」
「なんてきたのよ!」
携帯をのぞき込む、デリカシー皆無な私と茉琴。
『ふたりで、でいいんだよな?』
「ひぇええ!」
「八神くんー!!」
「だいきくん、強いぃ。」
「こうなったらあたしは悲しいがな!いいもん、兄と行くし!」
「こんな時のおにいさん!」
「私の弟も派遣しようか?」
「へっ、良いのですかそんなん。」
「うん。訊いてみる。」
中2の弟、瑞木 爽亮そうすけ。茉琴のお兄さん、早乙女 慎之介しんのすけさんとは、一回会ったあの日から、謎に仲良しなんです。そして、そこの絡みを可哀想なぼっち腐女子の茉琴に捧げてあげるのです。という、私の粋な計らい。
「あ、返ってきたよ。『慎之介くんがいるなら行く ってか姉ちゃんデートとかウケる』……ウザイなぁ!!」
「爽亮くん可愛い。」
「これで、まこちゃも幸せ~!」
「うんうん!ありがとう紗華!」
それから、全然関係ない話で大爆笑しまくった。お腹痛い。

 夕方。さやちゃんは水泳があるから途中で帰ってしまった。
「はぁ……だいきくんとふたりで夏祭りなんて……。」
「良かったじゃないの。」
まこちゃんはわたしの膝に寝そべってわたしの手をにぎにぎしていた。
「八神くんから、付き合ってくださいに対する返事は貰ったの?」
「ううん、まだ。……どうかな。」
「どうだろうねぇ。……あ、兄者あにじゃが帰ってきた!」
わたしの膝から起きてドアを開け、玄関に向かって「おーかーえーりー!」って叫ぶ。仲良しだよね~!
「お、ただいま。あ、爽亮に会えるんだよな!嬉しいなぁ!りんご飴買ってやろ~♪」
にこにこしながらまこちゃんの部屋の前を通り過ぎた。
「お兄さん、大学1年生だっけ?」
「うん!」
戻ってきて、またわたしの膝に寝そべる。まこちゃん、わたしのこと大好きなんだよねぇ。
「いのり、いのり。」
「ん?」
わたしのお腹に抱きつく。
「どーしたの、まこちゃん。」
「……八神くんと付き合っても、あたしとも遊んでね。」
か、可愛い……!
「もちろんだよぉ。」
頭をなでなでしてあげた。
「だって、まこちゃんは彼氏さんができても、わたしたちと変わらず遊んでくれたでしょ?」
「えへへ、まぁね。」
わたしたちは、特に何をするでもなく、ずっとたあいもない話をしていた。


To be continued…
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