気だるげ王子の微笑みが見たくて

うかかなむらる

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28.寂しさなんて忘れてしまうくらい

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 知らない男の人2人組にナンパされた。
「おい。何してんだお前ら。」
だいきくん……!
「あれ、もしかして、彼氏ちゃん?」
「あぁ、そうだよ。」
だいきくんは男の人の片方のすねを蹴った。
「いってぇ!!」
サッカー部だからね。その人は崩れ落ちた。しばらく回復不能だよ。もう片方がわたしを抱き寄せる。き、気持ち悪い!
「その子を離せ。」
「え~?君、ほんとに彼氏?この子、ちっちゃいじゃん?君とけっこうな年の差ない?」
し、失礼な。
「同い年ですけど。っていうか、俺の彼女なんで離してもらっていいですか。」
「え~?ほんとかよ?じゃあ、付き合ってるって証明してくんね?」
「証明?いいですよ。」
えっ、な、何するの?わたしを捕まえてた人が手を離し、わたしはだいきくんに抱きつく。手が震えてる。
「怖かったな。」
「……う。」
「いのり。ちょっとこっち向いて。」
だいきくんが私の頬をちょんちょんってした。見上げると、すごく近くに顔があって、ちょっと焦った。
「早く証明しろよ~?」
煽られる。だいきくんはわたしの顎を持って、口付けた。……!?え……え?な、長い長い!ど、どうしよう、腰が抜けそう。だいきくんが離れた時、足に力が入らなくてだいきくんにもたれかかってしまった。
「お、大丈夫?」
身体中が熱く火照って、動悸が激しくなってる。
「証明しましたけど。」
「……お、おう。」
まさか本当に"恋人"らしいことをすると思わなく かったんだろう。驚いて怯んでいる。
「で、それでもこの子と遊びたいと思いますか?」
「い、いや……大丈夫っす。」
男の人ふたりはバタバタと逃げて行った。
「ごめん、いのり。初めてなのに、こんな感じで……もっとなんか、あったよな……マジごめん。」
必死に首を振る。
「いいの……ありがとう、助けてくれて……まだドキドキしてる……。」
「ごめんほんと。」
「……違うの。だいきくんとのキスが……嬉しくて。」
言ってから、明らかにわたしの耳が赤くなるのを感じた。だいきくんも赤くなる。
「……い、行こっか。」
「う、うん。」
だいきくんはわたしの手を握って歩き出した。どうしよう……ずっとドキドキしてる。ちょっと人がいない所に入って、私はたまらずにだいきくんに後から抱きついてしまった。
「い、いのり?」
「……す、好き。」
「おっ、そ、そう、か……。俺も。」
"俺も"!?涙が出そうになる。だいきくん、好き。

 いのりちゃん、八神くんとデートしてたなぁ。私も早く『デート』に行きたいなぁ。なんて。
「……。」
「さ、佐和田くん?」
佐和田くんの目線の先には、キスをしてる八神くんといのりちゃんがいた。……え!?八神くんを見つめる佐和田くんは、すごく寂しそうだった。佐和田くんが寂しそうなのは私も悲しい。もう泣いてほしくないのに。
「……佐和田くん。」
「中学の時、乃希と付き合ってた。」
「……えっ。」
「ほら、中学くらいって、そういうの多感な時期じゃん。乃希が『どっちかに好きな人が出来るまでは、俺たちカップルな!』って。」
「……へ、へぇ。」
一瞬驚いたけど、よく考えればけっこう安易に想像つく。
「ちっちゃい時は、大人になったら僕と乃希は結婚するもんだと思ってたし、何の違和感も無かったんだけどさ。」
大人になったら結婚すると思ってたんだ。可愛い。新しい扉を開きそう。
「でも、結局、中三くらいで別れた。お互い、好きな人できたわって……嘘ついて。」
「そう、なんだ。」
「うん。……ほんとは、僕はまだ付き合ってたかったような気もするんだよね。別に男の子が好きなわけじゃないけど、せっかく付き合ってたなら、乃希とは恋人っぽいことしたかった。……そんなこと、乃希には言ったことないけど。」
そうか……そりゃ、元カレが今カノとキスしてるの見るのは、辛いに決まってる。
「……なんて、気持ち悪いよね。」
「ううん。全然。」
もはや、ずっと一緒にいるのに八神くんを好きにならないって方が難しいと思う。佐和田くんが居なければ、私だって危ないし。多分。八神くんは天性のモテ男さんだ。
「小鳥遊さんのことが本当に好きで、小鳥遊さんと幸せになれるなら、それでいいんだけどさ。」
佐和田くんはなぜか、私の手を握りしめた。……寂しくなっちゃったのかな。大きな手が私の手を包み込んでいる。心は、私が包み込んであげたい。
「……やっぱりちょっと寂しい。」
「そりゃそうだよ。」
「でも……瑞木さんなら、こんな俺でも守ってくれそう。……あれ、何言ってんだろう俺。」
うっすらと涙を浮かべて、苦し紛れにそう言う佐和田くんを、思わず抱きしめてしまった。なんて健気で切ないんだろう。私が守ってあげたい。寂しさなんて忘れてしまうくらい、楽しいことで心を埋めつくしてあげたい。
「佐和田くん。今から植物園でも行く?」
「……行く。」
私は佐和田くんの手を取って、八神くんたちとは反対の方向に歩き始めた。佐和田くんは一瞬だけ振り返ろうとしたけど、やめた。これからは、私のことを見てほしい。私が、きっと貴方を幸せにします。でも、そんな私には、"付き合ってください"を言う勇気がない。


To be continued…
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