気だるげ王子の微笑みが見たくて

うかかなむらる

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30.Happy Birthday(1)

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 23時45分。準備は整った。良い感じのお祝いメッセージ。いや、でも……0時ぴったりに祝ってきたらウザイかな。こんな時間に送っていいのかな。でも逆に微妙な時間に祝うのもなぁ。とか、色々迷っている間にも、刻々と時は近付いてきていた。ど、どうしよう。手が震える。頑張れ、僕。

 0時0分。携帯の通知音が鳴る。お母さんとお父さんが「おめでとうー!」って叫ぶ。爽亮が自分の部屋から走ってきて、犬みたいにしっぽを振って「姉ちゃんまたおばさんになったね!おめでとう!」って言ってくる。
「ありがとう!爽亮も。ちょっと無駄な一言があったけど。」
携帯を開くと、茉琴から2件、いのりちゃんから3件、そして、佐和田くんから1件。……え!?慌てて画面を開く。
『瑞木さん、誕生日おめでとう!僕よりひとつ年上になってしまうけど、変わらず仲良くしてね(笑)今度ザクロの花をあげたいところなんだけど、うちじゃ取り扱ってないらしいから、気持ちで許してください。改めて、おめでとう!いい年になりますように。』
視界が霞んできた。鼻のあたりがツンとしてくる。あ、ヤバい、すごい嬉しい……。
「ね、姉ちゃん?」
気を紛らわすかのように茉琴やいのりちゃんからのメッセージも見るんだけど、それも嬉しくて、もうダメだった。私の涙腺が乱れた。
「あぁ、姉ちゃん泣いちゃったよ。」
「さ、紗華!?どうしたの!?」
「っ……うっ……ううん……嬉しくて……誕生日、いっぱいの人にお祝いしてもらえたの、嬉しくて……。」
爽亮は私の頭を撫でた。なによ、いつもはバカにしてくるくせに。可愛い奴め。

 既読が付いてから数分経って、返事が来た。
『ありがとう!!覚えててくれたんだね!もちろん、私はこれからも佐和田くんと仲良くします!ザクロの花はその気持ちが嬉しいよ!本当にありがとう!夏休み、また遊ぼうね!』
おぉ……良かった。な、夏休みまた遊ぼうね!?マジ?やった!また遊んでくれるんだ。部屋で小躍りしてたら、乃希が窓越しに苦笑いしてた。うわ、恥ずい。窓を開けて、弁解の余地あり。乃希も窓を開けた。
「こんな時間にハイテンションなんて珍しいね、怜。」
「今日、瑞木さんの誕生日なんだ。」
「えっ、マジか。知らんかった……。」
乃希は携帯を取ってきて、慌ててメッセージを送っていた。
「瑞木さんから、夏休みにまた遊ぼうねって言われた。」
「お!良かったじゃん!ってか、もう告れよ!」
「い、いや……なんかそれは……。どうなの。やっぱり、付き合うと距離感って変わるもんなの。」
乃希と小鳥遊さんがキスしてた時の気持ちが舞い戻ってきた。胸が苦しくなる。
「まぁ……。なぁ、怜。」
乃希は窓のサンに腰を下ろす。
「俺ってさ、間違ったよね、色々。」
「……うん。」
中学の時、僕と付き合ったこと。僕との付き合い方。瑞木さんに告ったこと。あの場所で小鳥遊さんとのファーストキスを汚してしまったこと。どれに対してかは分からない。どれについてもかもしれない。
「……俺って不器用だよな。」
「変なところでね。」
「……やっぱりそうだよなぁ。」
乃希はしょんぼりした感じで僕に微笑みかけて、静かに窓を閉めた。
「おやすみ、乃希。」
ひらひらと手を振る。僕はそのあとすぐに寝た。

 とある公園。ベンチにふたりで並んで座っている。
「になるじゃん?で、ここの展開公式を……。」
瑞木さんは僕に丁寧に宿題を教えてくれた。でも、全然頭に入ってこない。暑いっていうのもあるんだけど、今日の瑞木さんがいつにも増してかわいいからだ。白いワンピースに高めのポニーテールと、青いサンダル。なんかいい匂いもするし。心臓の音が聞こえてないか心配になるくらいに、僕の心はたかぶっていた。
「分かった?」
「……ごめん、全然頭に入ってこない。」
「えっ、そんなに下手!?」
「あっ、違う。その、暑くて。」
「あ、そ、そっか。じゃあどこかお店に入る?」
「そ、そうしよっかなぁ。」
僕のかばんの中には、小さな袋が入っている。いつ渡したらいいのか、分からなくてそわそわする。なんでもない文房具たちだけど、僕にとっては婚約指輪みたいなものなんだ。……いや、何を言っている?
「佐和田くん?ここでいい?」
「あ、うん。ごめん。」
「今日、ぼーっとしてるよ?大丈夫?」
「あ、だ、大丈夫。今日いい匂いするね。」
「えっ、あ、そ、そう?じ、柔軟剤変えたからかな~?」
「そうなんだ。いいね、その匂い。」
「そ、そう?」
瑞木さんは僕は手首に掴んで引っ張っていった。おぉ。店内、涼しいー。
「レモンティー。」
「は、早いね決めるの。」
「今はそういう気分だった。」
「じゃあ、私はこれにしよっかな。」
そう言ってメニューを指さす白い指に触れたくなった。変だ。もう暑くないのに、胸の同期は激しくなるばかりだ。さっき掴まれた手首がまだ感触を残している。おかしい、こんなの。瑞木さんと居ると胸が苦しい。もっと近くに行きたい。この距離じゃもどかしい。人は、だから言うのだろうか。"付き合ってください"を。


To be continued…
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