気だるげ王子の微笑みが見たくて

うかかなむらる

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32.可愛くなるもの

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 瑞木宅。私の部屋。午後2時。
「いやぁ、ほんとにおめでとう!」
茉琴は私といのりを抱きしめた。
「ちょ、暑いよ。」
「えへへ、ありがとう。」
茉琴は自分の事のように嬉しそうに笑った。そういうところだよね、ほんと。私がずっと茉琴と友達でいたいと思う理由。うるさいし、距離近いし、変な子だけど、すごく親身なんだよね。
「それで、改めて、どんな感じで付き合うことになったのよ、特に紗華!絶対にまだまだだと思ってたのに!」
「ほんとだよねぇ。さわだくんもちゃんと恋ってするのねぇ。」
「私もびっくりしてるんだよねぇ。未だに実感無いっていうかさ。色々教えてね、経験者。」
まかしんしゃい!もう別れたけどね~!」
あっけらかんと笑う茉琴。私はそばにあったオレンジジュースを飲み干した。その時、私の携帯にメッセージが届いた。佐和田くんからだ。
「……!?」
「おぉ、噂をすれば!」
「なんてきたの、さやちゃん。」
「み、見てみる。」
佐和田くんからのメッセージは『今何してる?』のみ。な、何その恋人感の溢れる文は!
「今何してる?って。」
「あら、紗華に会いたいんじゃない?」
「暇だよって送りなよ。」
「えぇ。2人とも遊びたいんだけど。」
「あたしたちとはいつだって遊べるのよ!」
「そうだとも!」
私は佐和田くんに『家で茉琴といのりちゃんとだべってるよ!』って返した。すぐに返事が来る。『そっか。僕今すごい暇なんだけどさ、何しよう。』とのこと。
「こ、これはどうしたらいいの。」
「分からんー!大翔は遊ぼうよ☆って直接的に言ってくるタイプだったから。」
「これじゃ、遊びたいのかどうかも分からないねぇ。だいきくんは今、お母さんのお買い物の荷物持ちしてるし。」
「八神くんが居ないから暇なのかぁ。」
『私と遊ぶ?(笑)』に対しての『え、いいの?』というマジレス。『家に来る?』『女子たちが嫌じゃないなら…』なんて流れに。
「どーしたらいい?」
「さわだくんが来るんだったらわたしは帰るよぉ。」
「あたしも。」
「えぇ!?」
「そりゃそうだよ~。」
「お邪魔はできませんっ!」
いのりちゃんと茉琴はそう言って帰ってしまった。えぇ、嘘でしょ。
「あ、紗華。じゃあまた明日ね。」
明日なんだ。茉琴は私にぎゅってして去って行った。な、何ハグ?ってか、佐和田くんが来るならもっと部屋を綺麗にしなきゃ!

 あたしといのりは紗華の家を出た。
「さやちゃん、すっかり可愛くなったねぇ。」
「ほんとに!紗華もついに彼女かぁ。」
「感慨深いよねぇ。1番、恋なんて興味ないってタイプだったし。」
「ねぇ。」
「……寂しい?」
「まぁ、ちょっとね。紗華もいのりも、あたしと遊んでくれるって信じてるけど。」
「もちろんだよ~!あ……だいきくんから電話!」
いのりは「ごめん、ちょっと出るね。」と言って八神くんからの電話に出た。いのりだって、可愛くなった。ずっと想いを寄せていた八神くんと結ばれたんだもん。可愛くならないはずがない。あたしだけ、彼氏と別れた可哀想な人みたいになってるけど、別にそんなこともなくて。大翔とは友達を続けている。あ、いのりが電話を切った。
「まこちゃん、ごめん。だいきくんがお買い物終わったみたいなの。」
「おぉ、行っておいでよ!」
「ごめんねぇ。また明日遊ぼうね!」
「うん!ばいばい!」
「ばいばーい!」
いのりは走って帰っていった。ふと、公園の芝生の端でうずくまっている少年を見つけた。思わず駆け寄ってしまう。
「だ、大丈夫!?」
その子を抱きかかえて、木陰に運ぶ。
「熱中症?」
「……今、友達が、飲み物買ってんの……。」
「あぁ、そうなの。手足が痺れてたりする?」
「うん……足が、ビリビリする……。」
汗でシャツが身体に張り付いていた。こういう時って、裸足にした方がいいんだよね。
「靴、脱がすよ。」
その子は微かに頷いた。靴、靴下を脱がして、シャツをまくりあげる。
「あっ、ごめんね、初対面なのに。」
「……ちょっと、涼しい……。」
そう言う少年の意識が遠のいている気がして、私は彼の手を握りしめた。


To be continued…
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