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35.浦島太郎
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今日は、佐和田くんと公園で待ち合わせして、デートです。……デート。デートだよ!!やっと言える、デートって。遊びに行く、じゃないんだ。私は佐和田くんの彼女なの。か、彼女……言い慣れない言葉。
瑞木さんを公園入口で待つ。今日はデート。DATE。
「うはは!きもぉ!」
「うわうわうわ。」
さっきからそこのホース付近で小学生が騒いでる。嫌な予感しかないんだけど。こういう人間が1番許せない。お前らの方がきもいっつーの。
「ねぇ、そういう遊びは良くないんじゃない。」
僕は気が付いたらその子たちに話しかけていた。
「は?なんだよ!?」
「そうやって生き物をいじめるのは、良くないんじゃないって言ってるの。聞こえない?」
その子たちはそこに倒れていた蝉に水をぶっかけて遊んでいた。多分、1週間懸命に鳴いて、力尽きようとしている勇敢な漢。僕がホースから出る水を止めると、その子たちは僕を睨みつけた。
「うわ、偽善者?」
「きも。」
「気持ち悪くて結構。セミから見たら、君たちの方がよっぽど気持ち悪いんじゃないかな。」
その瞬間、子どもたちのいじめの的は、蝉から僕へと変わった。
集合場所には佐和田くんはいなかった。そこから少し離れた所で、小学生が5人、しゃがんだ高校生くらいの男の子に水と砂をかけたり、蹴ったりしていた。
「え……佐和田くん?」
一瞬、身が竦んだ。でもすぐに駆け寄って、佐和田くんを蹴っている男の子を蹴り飛ばした。
「やめなさい!」
「誰ですかー?」
「やめてって言われてやめるやつなん」
何か言おうとしたけどそのメガネの子の肩を掴んだ。
「やめてって言われてやめるようないい子なわけないよね、うん。分かってるけど。」
肩を投げ飛ばす。その子は尻もちをついた。他の子たちも食ってかかってきたけど、ひとりずつ頭を1発殴ったらみんなしゃがみこんでしまった。
「謝りなさい。」
「けっ、何が謝りな」
「謝りなさいって言ってるの。大人に言ったら親がお金を払わないといけなくなるかもしれないけど、それでもいいならそのまま帰れば。」
「……ごめんなさい。」
「すみませんでした。」
佐和田くんは苦笑いで頷いた。
「……謝るなら、セミさんに謝ってね。」
せ、蝉?子どもたちは走って逃げていった。
「さ、佐和田くん大丈夫?怪我は?」
「……うん、ありがとう。大丈夫、怪我はないよ。ごめん、集合場所に居なくて。あと、こんな格好で。」
「着替えた方がいいね。」
「うん。……でも、その前に。」
佐和田くんはふらふらと水道の近くまで歩いて行った。しゃがんで、何かを見つめている。あ、蝉。足が少しだけ動いていたけど、やがて止まってしまった。佐和田くんは深い深いため息をついた。
「……この蝉、あの子たちに虐められてて。」
それで、あんなことを。
「……埋めてあげようかな。」
佐和田くんは近くの茂みに穴を掘ってその蝉をそっと埋めた。手を合わせる。私も両手を合わせた。
「……自然な形で息絶えて欲しかったな……立派な蝉なのに。」
私は佐和田くんの服を絞って、立ち上がらせた。佐和田くんの頬に付いた砂を親指で落とす。
「ありがと。」
佐和田くんは私を抱きしめた。私は佐和田くんの背中を撫でた。
「ごめん。びしょびしょなのに。」
「いいの。……優しいね、怜くん。」
「ううん……弱虫だよ。」
冷たいシャツが私の頬に張り付く。
「……ありがとう、紗華。」
私は思わず佐和田くんのシャツを握りしめた。思いのほか恥ずかしい。
「そ、そこにプチプラあるよね。服、買ってこようか?」
「僕も行く。」
コンビニでタオルを買ってから、私は佐和田くんの手を握ってお店に入った。手が冷たい。
「お金はどのくらい持ってるの?」
「5000?さっきのタオルで残り4500くらいになったかも。」
「じゃあ服一式くらい買えるね。」
「うん。」
私が選んだ服を見せたら頷いた。
「いつもとテイストが違うから面白い。」
服を買い、お店で着替えさせて頂いた。試着室から顔を覗かせる。
「着替えた?」
「うん。」
私はカーテンを開けた。黄色の爽やかなTシャツとシンプルなズボン。
「すごく似合ってるよ!かっこいい!」
「あ、ありがとう。」
照れ笑いの佐和田くんがかわいい。外に出て、タオルで髪を拭いてあげた。
「ありがと。お腹すいたね。」
「うん。何か食べに行こ!」
佐和田くんはそっと私の手を握った。
「手、繋いでいい?」
「う、うん!」
確実に短くなっている、心の距離。
「……紗華、好き。」
心臓がどくんって縮んだ。
「ど、どうしたの、急に。」
「いや。優しいなぁと思って。」
堪らずに抱きしめてしまった。
「やめてよ、急に。」
「……思ったから。」
「怜くんが蝉を守りたくてあんなことされて、私があなたを守らないわけないじゃない。」
「……そっか。ありがとう。」
頭を撫でられ、胸が温かくなった。やっぱり好きだぁ。これからもっと彼のことを知って、もっともっと好きになりたいな。
To be continued…
瑞木さんを公園入口で待つ。今日はデート。DATE。
「うはは!きもぉ!」
「うわうわうわ。」
さっきからそこのホース付近で小学生が騒いでる。嫌な予感しかないんだけど。こういう人間が1番許せない。お前らの方がきもいっつーの。
「ねぇ、そういう遊びは良くないんじゃない。」
僕は気が付いたらその子たちに話しかけていた。
「は?なんだよ!?」
「そうやって生き物をいじめるのは、良くないんじゃないって言ってるの。聞こえない?」
その子たちはそこに倒れていた蝉に水をぶっかけて遊んでいた。多分、1週間懸命に鳴いて、力尽きようとしている勇敢な漢。僕がホースから出る水を止めると、その子たちは僕を睨みつけた。
「うわ、偽善者?」
「きも。」
「気持ち悪くて結構。セミから見たら、君たちの方がよっぽど気持ち悪いんじゃないかな。」
その瞬間、子どもたちのいじめの的は、蝉から僕へと変わった。
集合場所には佐和田くんはいなかった。そこから少し離れた所で、小学生が5人、しゃがんだ高校生くらいの男の子に水と砂をかけたり、蹴ったりしていた。
「え……佐和田くん?」
一瞬、身が竦んだ。でもすぐに駆け寄って、佐和田くんを蹴っている男の子を蹴り飛ばした。
「やめなさい!」
「誰ですかー?」
「やめてって言われてやめるやつなん」
何か言おうとしたけどそのメガネの子の肩を掴んだ。
「やめてって言われてやめるようないい子なわけないよね、うん。分かってるけど。」
肩を投げ飛ばす。その子は尻もちをついた。他の子たちも食ってかかってきたけど、ひとりずつ頭を1発殴ったらみんなしゃがみこんでしまった。
「謝りなさい。」
「けっ、何が謝りな」
「謝りなさいって言ってるの。大人に言ったら親がお金を払わないといけなくなるかもしれないけど、それでもいいならそのまま帰れば。」
「……ごめんなさい。」
「すみませんでした。」
佐和田くんは苦笑いで頷いた。
「……謝るなら、セミさんに謝ってね。」
せ、蝉?子どもたちは走って逃げていった。
「さ、佐和田くん大丈夫?怪我は?」
「……うん、ありがとう。大丈夫、怪我はないよ。ごめん、集合場所に居なくて。あと、こんな格好で。」
「着替えた方がいいね。」
「うん。……でも、その前に。」
佐和田くんはふらふらと水道の近くまで歩いて行った。しゃがんで、何かを見つめている。あ、蝉。足が少しだけ動いていたけど、やがて止まってしまった。佐和田くんは深い深いため息をついた。
「……この蝉、あの子たちに虐められてて。」
それで、あんなことを。
「……埋めてあげようかな。」
佐和田くんは近くの茂みに穴を掘ってその蝉をそっと埋めた。手を合わせる。私も両手を合わせた。
「……自然な形で息絶えて欲しかったな……立派な蝉なのに。」
私は佐和田くんの服を絞って、立ち上がらせた。佐和田くんの頬に付いた砂を親指で落とす。
「ありがと。」
佐和田くんは私を抱きしめた。私は佐和田くんの背中を撫でた。
「ごめん。びしょびしょなのに。」
「いいの。……優しいね、怜くん。」
「ううん……弱虫だよ。」
冷たいシャツが私の頬に張り付く。
「……ありがとう、紗華。」
私は思わず佐和田くんのシャツを握りしめた。思いのほか恥ずかしい。
「そ、そこにプチプラあるよね。服、買ってこようか?」
「僕も行く。」
コンビニでタオルを買ってから、私は佐和田くんの手を握ってお店に入った。手が冷たい。
「お金はどのくらい持ってるの?」
「5000?さっきのタオルで残り4500くらいになったかも。」
「じゃあ服一式くらい買えるね。」
「うん。」
私が選んだ服を見せたら頷いた。
「いつもとテイストが違うから面白い。」
服を買い、お店で着替えさせて頂いた。試着室から顔を覗かせる。
「着替えた?」
「うん。」
私はカーテンを開けた。黄色の爽やかなTシャツとシンプルなズボン。
「すごく似合ってるよ!かっこいい!」
「あ、ありがとう。」
照れ笑いの佐和田くんがかわいい。外に出て、タオルで髪を拭いてあげた。
「ありがと。お腹すいたね。」
「うん。何か食べに行こ!」
佐和田くんはそっと私の手を握った。
「手、繋いでいい?」
「う、うん!」
確実に短くなっている、心の距離。
「……紗華、好き。」
心臓がどくんって縮んだ。
「ど、どうしたの、急に。」
「いや。優しいなぁと思って。」
堪らずに抱きしめてしまった。
「やめてよ、急に。」
「……思ったから。」
「怜くんが蝉を守りたくてあんなことされて、私があなたを守らないわけないじゃない。」
「……そっか。ありがとう。」
頭を撫でられ、胸が温かくなった。やっぱり好きだぁ。これからもっと彼のことを知って、もっともっと好きになりたいな。
To be continued…
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