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37.不思議な子
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午後3時。
「まだ帰らなくて大丈夫?」
「まだ3時だよ。おれはまだ遊んでたいし。」
「そう?」
「ふたりで話しがしたいなぁ。」
「じゃあ、カラオケでも行く?あ、子どもだけはダメかな。」
「いいんじゃない?ふたりきりになれんじゃん。」
「ま、まぁ。」
いいのかな、これ。大人に怒られない?
「行こ。」
彪人くんはあたしの手を引っ張って近くのカラオケに入ってしまった。
「2時間で!」
「はい、どうぞー。」
アンニュイなお姉さんに「206でーす。」と言われ、ふたりで個室に入る。
「なんか歌うの?」
「歌う。何歌ってほしい?」
お、これは。あたしはなぜか、ちょっと意地悪がしてみたくなった。
「なんでもいいの?」
「うん。まぁ、おれが知ってる歌だったら。」
「じゃあ、ClaSSyの『白い花』がいいな。」
「うん、分かった。」
……えっ。分かったの?いいの?ClaSSyっていうのは、これまた、いのりが好きなアイドルで、『白い花』はガッツリしっとり系のバラード。なにそれ?って言われるオチを狙ってたのに、これじゃ失敗じゃん。彪人くんは本当に『白い花』を歌い始めた。しかも、ものすごい上手に。声変わりしかけの声が妙に良い味を出して、伸びやかで自由な歌声は、あたしがこれまで聞いた歌で一番、胸に染み込んできた。
「どう?」
「……じ、上手。」
「えっへへ。」
あ、この子、自分が歌が上手って分かってるんだ。大翔と一緒じゃん。彪人くんはあたしの横に戻ってきた。
「それでさ、茉琴ちゃん。茉琴ちゃんって、高校生だよね。」
「うん。」
「高校生って、どんな?」
「ど、どんなって?」
ち、近いなぁ……。
「……まつげ長いねぇ。」
彪人くんはあたしの目を見つめてそう言った。
「あっ、そ、そう?」
「うん。綺麗。」
なぁ……!?わざとなのかな!?
「茉琴ちゃんも中学生だったら良かったのに。」
「どうして?」
「んー、なんか。クラスの女子には居ないタイプだから。面白いかなって。」
やっぱり、この子はあたしを弄んでるんだ。と思ったら、ふとあたしの肩にもたれた。
「ど、どうしたの?」
「……分かんない。」
まさか、また体調が悪いんじゃ!?
「大丈夫?体調悪い?」
「……そーかも。」
「えっ。」
慌てて彪人くんの額に触れる。でも、あたしの手のひらより低い温度だった。
「熱は無いね。……良かった。」
親が看護師だからか、なんかそういうのに敏感になってしまう。彪人くんはあたしの胸に顔を埋めた。
「……いいにおいする。」
子どもっぽいのか、大人びているのか、不思議な雰囲気の少年。彼はしばらくあたしの胸の中にいた。それが心地よくて、あたしもそのままにしていた。
「……歌、歌っていい?」
「あっ、うん!」
彪人くんはそっとあたしから離れて、マイクを持った。そして、歌い出した曲はhoperの『リナリア』っていう曲。素敵な歌声だなぁ……。そのあともずっと彪人くんは、なんとなく切なくて、でもそれがかえって綺麗な曲を、何曲も歌ってくれた。
カラオケを出る。午後5時。
「茉琴ちゃんは、ここからどうやって帰るの?」
「バスかな。」
「バスか……。」
「彪人くんは?」
「徒歩。」
「近いんだね。」
「うん。今日は、遊んでくれてありがとう。」
「こちらこそだよ。楽しかった。」
彪人くんはなぜか照れたように笑った。子どもらしい素直な笑顔。
「おれも、茉琴ちゃんと居ると楽しいよ。だから、また遊ぼ。」
「うん、もちろんだよ。」
彪人くんは、あたしにハグをした。う、心臓がバクバク言ってる……。
「じゃあね、茉琴ちゃん!また連絡するね。」
「うん。ありがと!」
手を振って別れる。少し歩いては振り向いて手を振り、を繰り返す彪人くんが、どうしようもなく愛おしく見えた。
少し意地悪。でもそれは、無理をしているような気がする。本当の姿を見せてほしい。本当の御手洗彪人の言葉が聞きたい。一目惚れなんてしたの初めてだから、あたしはどうしたらいいか分からないよ。まだ、貴方のことを全然知らない。どうしたら、もっと知れるんだろう。不意に、電話が鳴った。あ、いのりだ。
「やっほ。どうした?」
『いやぁ。なんとなく、電話してみたの。どうだった?』
「うーん……なんか、よく分からなかった。」
『よく分からない?』
「うん。不思議な子だったよ。」
『そっかぁ……。それでも、好き?』
「多分。もっと知りたいって思うもん。」
『そっかそっかぁ。』
いのりは嬉しそうに笑った。
「なんで笑ってんのさ。」
『ううん。なんか、まこちゃんらしいなって思って。』
「そ?」
『うん。ふふっ。』
なに笑ってんのよ。
『じゃ、まこちゃん。がんばるのよ。えへへっ。』
いのりは電話を切ってしまった。がんばるのよ、かぁ……そうねぇ。よし、頑張ろう!
To be continued…
「まだ帰らなくて大丈夫?」
「まだ3時だよ。おれはまだ遊んでたいし。」
「そう?」
「ふたりで話しがしたいなぁ。」
「じゃあ、カラオケでも行く?あ、子どもだけはダメかな。」
「いいんじゃない?ふたりきりになれんじゃん。」
「ま、まぁ。」
いいのかな、これ。大人に怒られない?
「行こ。」
彪人くんはあたしの手を引っ張って近くのカラオケに入ってしまった。
「2時間で!」
「はい、どうぞー。」
アンニュイなお姉さんに「206でーす。」と言われ、ふたりで個室に入る。
「なんか歌うの?」
「歌う。何歌ってほしい?」
お、これは。あたしはなぜか、ちょっと意地悪がしてみたくなった。
「なんでもいいの?」
「うん。まぁ、おれが知ってる歌だったら。」
「じゃあ、ClaSSyの『白い花』がいいな。」
「うん、分かった。」
……えっ。分かったの?いいの?ClaSSyっていうのは、これまた、いのりが好きなアイドルで、『白い花』はガッツリしっとり系のバラード。なにそれ?って言われるオチを狙ってたのに、これじゃ失敗じゃん。彪人くんは本当に『白い花』を歌い始めた。しかも、ものすごい上手に。声変わりしかけの声が妙に良い味を出して、伸びやかで自由な歌声は、あたしがこれまで聞いた歌で一番、胸に染み込んできた。
「どう?」
「……じ、上手。」
「えっへへ。」
あ、この子、自分が歌が上手って分かってるんだ。大翔と一緒じゃん。彪人くんはあたしの横に戻ってきた。
「それでさ、茉琴ちゃん。茉琴ちゃんって、高校生だよね。」
「うん。」
「高校生って、どんな?」
「ど、どんなって?」
ち、近いなぁ……。
「……まつげ長いねぇ。」
彪人くんはあたしの目を見つめてそう言った。
「あっ、そ、そう?」
「うん。綺麗。」
なぁ……!?わざとなのかな!?
「茉琴ちゃんも中学生だったら良かったのに。」
「どうして?」
「んー、なんか。クラスの女子には居ないタイプだから。面白いかなって。」
やっぱり、この子はあたしを弄んでるんだ。と思ったら、ふとあたしの肩にもたれた。
「ど、どうしたの?」
「……分かんない。」
まさか、また体調が悪いんじゃ!?
「大丈夫?体調悪い?」
「……そーかも。」
「えっ。」
慌てて彪人くんの額に触れる。でも、あたしの手のひらより低い温度だった。
「熱は無いね。……良かった。」
親が看護師だからか、なんかそういうのに敏感になってしまう。彪人くんはあたしの胸に顔を埋めた。
「……いいにおいする。」
子どもっぽいのか、大人びているのか、不思議な雰囲気の少年。彼はしばらくあたしの胸の中にいた。それが心地よくて、あたしもそのままにしていた。
「……歌、歌っていい?」
「あっ、うん!」
彪人くんはそっとあたしから離れて、マイクを持った。そして、歌い出した曲はhoperの『リナリア』っていう曲。素敵な歌声だなぁ……。そのあともずっと彪人くんは、なんとなく切なくて、でもそれがかえって綺麗な曲を、何曲も歌ってくれた。
カラオケを出る。午後5時。
「茉琴ちゃんは、ここからどうやって帰るの?」
「バスかな。」
「バスか……。」
「彪人くんは?」
「徒歩。」
「近いんだね。」
「うん。今日は、遊んでくれてありがとう。」
「こちらこそだよ。楽しかった。」
彪人くんはなぜか照れたように笑った。子どもらしい素直な笑顔。
「おれも、茉琴ちゃんと居ると楽しいよ。だから、また遊ぼ。」
「うん、もちろんだよ。」
彪人くんは、あたしにハグをした。う、心臓がバクバク言ってる……。
「じゃあね、茉琴ちゃん!また連絡するね。」
「うん。ありがと!」
手を振って別れる。少し歩いては振り向いて手を振り、を繰り返す彪人くんが、どうしようもなく愛おしく見えた。
少し意地悪。でもそれは、無理をしているような気がする。本当の姿を見せてほしい。本当の御手洗彪人の言葉が聞きたい。一目惚れなんてしたの初めてだから、あたしはどうしたらいいか分からないよ。まだ、貴方のことを全然知らない。どうしたら、もっと知れるんだろう。不意に、電話が鳴った。あ、いのりだ。
「やっほ。どうした?」
『いやぁ。なんとなく、電話してみたの。どうだった?』
「うーん……なんか、よく分からなかった。」
『よく分からない?』
「うん。不思議な子だったよ。」
『そっかぁ……。それでも、好き?』
「多分。もっと知りたいって思うもん。」
『そっかそっかぁ。』
いのりは嬉しそうに笑った。
「なんで笑ってんのさ。」
『ううん。なんか、まこちゃんらしいなって思って。』
「そ?」
『うん。ふふっ。』
なに笑ってんのよ。
『じゃ、まこちゃん。がんばるのよ。えへへっ。』
いのりは電話を切ってしまった。がんばるのよ、かぁ……そうねぇ。よし、頑張ろう!
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