マルティネスの聖騎士団

芦進伸哉

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Chapter1 ー友達の作り方ー

昔話

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 まぁ、こんな時間にどうしたの? ……眠れない? ふふ、そうね。そんな夜もあるわ。そこじゃ身体を冷やしてしまうからこちらへいらっしゃい。
 ほら、ちゃんと毛布にくるまって。さぁ、お母様に何か話すことがあるんじゃないかしら。秘密はなしよ。……もう。占術士うらないしに『人間関係に気を付けましょう。縺れが酷くなると悪いことが起きますよ』と言われたばかりでしょう?

 え? なんで占術士は未来を当てられるのか?

 ……そうだわ! 昔、面白い文献を読んだの。今日はそこに書かれていたお話をしましょうか。

 ねぇ、どうして占術士は未来に起こる出来事を当てることができると思う? 外れることもあるけれど、占術士は適当に未来を宣言しているんじゃないのよ。

 大昔、未来が見える特別な力を持った人は“預言士”と呼ばれていたの。預言士はね、「たぶん」とか「なんとなくそういう気がする」とかじゃなくて、はっきりとこの先に起こる出来事が分かるんですって。
 今じゃもう預言士と呼ばれるような強い力を持った人はいないけれど、占術士の大半はその力を薄らと持っているらしいわ。預言士と比べると、外れることが多いみたいだけど。
 最後の予言士の名前は、アイリーン。

 預言士アイリーンは未来を詠む力で、アウラに危機が迫っていることを知ると仲間と一緒に沢山の命を救ったのよ。もしアイリーンたちがいなければ、いくら惑星図鑑と睨めっこしてもアウラの名前はなかったかもしれないわね。

 あら? あなたの楽器、埋め込まれている魔核コアの部分が光っているわ。そういえば私、実際に体験した本人を前に話してしまったけれど間違っていたら恥ずかしいわね。
 合っている、って彼が? ふふ、それはよかったわ。

 ……って、誤魔化さないの。聞いたわよ。お友達を泣かせてしまったんですって?
 え? 友達じゃない?

 …………お願いだからそんな悲しいこと言わないで。私はどんな時でもあなたの味方だわ。でも、それを約束したのは、あなたに「自分には友達がいなくても平気だ」と思わせるためじゃないの。明日、ちゃんと相手の子に謝りなさい。……不満そうね。
 いい? 喧嘩っていうのはお互いが悪くないと起きないことなのよ。別にあなただけを責めるつもりはないわ。あなたもきっと悪かったし、相手の子も悪いところがあった。ねぇ、どうしてそんな悲しいことが起きてしまったのか、お母様には話せない?
 ……そう、そんなことがあったのね。

 あなたが楽器とお話できるのはね、あなたが特別な証なの。誰に何と言われようと、胸を張っていいのよ。私には声が聞こえないけれど、あなたのことを誇りに思っているわ。
 ええ、確かに共有できる人がいないのは寂しいわね。でも、きっと大丈夫よ。あなたが大きくなって、その楽器を“本当の意味で”使いこなせるようになったら、旅に出るといいわ。新しい発見、出会いがきっとあなたたちを待っている。世界は広いのよ。そう、この家よりも。
 あなたの楽器の仲間が幾つか存在するの。きっと、同じだけ声を聞ける人がいるはずよ。

 その時、ちゃんとお友達になってもらえるように今から練習しましょうね。不安? お稽古も、お勉強も、お友達作りも失敗を恐れなくてもいいのよ。何度も何度も失敗して、きっと上手になるから。大切なのは、失敗を恐れて立ち止まらないこと。
 どうしても苦しくなったら――その時は、私があなたの味方だってこと思い出して。あなたは一人じゃないって。

 大丈夫よ。アイリーンだって、預言した未来を変えたわ。自分の非を素直に認めることができる今のあなたにも、きっとできるはず。
 勿論。明日、一緒に謝りに行きましょう。
 えぇ、約束。……あら? 眠ってしまったのね。
 よく眠って、よく笑って。そうやって、誰かを愛し、愛されるような素敵な子になってね。



 ……きっとあなたが困った時、私が助けられない日が来てしまう。だからその時、あなたの力になってくれる人を見つけられる力をつけてほしいの。

 ……愛してるわ。ずっと、見守ってる。例え私が隣にいなくても、姿が見えなくとも。
 ずっとずっと愛しているわ、私の大切な――……
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