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第3話 聖拝の日
② 夫人の家(H)
しおりを挟む「あったーーーーーっ!!」
「……あるもんだなぁ」
エルミアは喜び、ヴィルは感慨深げに、声を出した。
もうじきに夕刻へ達するような刻限。
街道を進んでいた2人は、一軒の家を発見したのだ。
「いやー、やっぱ私、持ってるわー。
神の御加護が降り注いできてるわー。
うん、今日の宿はあそこに決まり!」
「いや、見るからに宿というより普通の家だぞ?
泊めてくれるかどうかは、まだ――」
「何言ってんの?
私、聖女様よ?
お願いすれば二つ返事で泊めてくれるに決まってるじゃない!
最近は運も絶好調だしね!!
いけるいける!!」
ドヤ顔でうんうん頷く彼女に、青年は半目になって告げる。
「運が絶好調って……つい最近、殺されかけたのを忘れてるわけじゃないだろうな?」
「え、だって、貴方に会えたのよ?
運が良くないわけないでしょう?
寧ろ、我が人生の最高潮とすら言えるかも。
幸運の星が頭上で瞬いている感じ!?」
「…………そ、そうか」
皮肉を言ってやろうとしたのだが。
無邪気な笑顔で、自分と会えたことを嬉しがられると――何も言えなくなってしまう。
それ以上、少女に何か言うのは止めて、ヴィルは見つけた家を再度確認した。
建屋は小奇麗に掃除されているようで、廃屋というわけでは無さそうだ。
それは隣に小さな畑があることからも分かる。
(自炊をしているのか。
まあ、ここは街から遠いからな)
交通の便が悪い所で暮らすのならば、必要なものは自前で手に入れる必要がある。
ただ、誰が見ても不便な場所で暮らしているというのは――
(――余程の変人なのではなかろうか)
例えば、犯罪を犯して街にいられなくなった、とか。
例えば、人が嫌いで街に住みたくない、とか。
想像は幾らでもできる。
この国における聖女の知名度を鑑みるに、確かに本人の言う通り、エルミアの頼みは普通断られないだろう。
しかし、相手が普通ではない――偏屈な人物だった場合は?
(存外、難航するかもしれないな)
顔を綻ばせる少女を後目に、青年は不安を抱えていた。
然して。
「ええ、構いませんよ」
ヴィルの予想は、あっさりと外れた。
「――よろしいのですか?」
「はい。
聖女様に泊まって頂けるというのであれば、寧ろ喜んで部屋をお貸しします」
エルミア(聖女モード)と、この家の住人との間で話が纏まった。
(こんな美味い話があるのか?)
とんとん拍子で事が進展し、却って不安になる。
ただ、住人におかしなところは無い。
一軒家に住んでいたのは、セリーヌという、妙齢の女性だった。
黒髪をロールアップにしてまとめ、泣きホクロが艶をだしている。
どこか影のある雰囲気を纏っているものの、はっきり、美女と呼んでよい。
ヴィルが確認する限り、身なりはしっかりしているし、言葉遣いも丁寧で、礼節も弁えている。
どれだけ注意深く気配を探っても、エルミアに対する殺意・敵意のようなものもなかった。
(刺客かとも疑ったが、その心配はなさそうだ)
逆に、この女性が何故このような辺鄙かつ治安も決してよくないであろう場所に住んでいるのか、そこが不思議ではあった。
エルミア(聖女ver.)とセリーヌとの会話は続く。
「では聖女様――」
「エルミア、と呼んで頂けませんでしょうか。
どうか、様付けもお省き下さい。
御助力頂く貴女からそう畏まれてしまっては、私の立つ瀬が無くなってしまいます」
機先を制してそう告げる少女。
「――そうですか。
では、エルミアさん。
早速、お部屋へご案内しましょう。
――夫の部屋なのですが、エルミアさんに気に入って貰えますかどうか」
「旦那様の?
失礼しました、セリーヌさんはまだお若いので、てっきり――」
「あらあら、エルミアさんはお世辞もお上手なのですね。
ふふふ、私は1年と少し前に、結婚しているのですよ」
「そうでしたか。
それはおめでとうございます。
遅ればせながら、ご祝福させて頂きますわ。
しかしそういうことであれば、旦那様にもご挨拶いたしませんと」
よくぞここまで口が回るとヴィルは感心してしまう。
青年もよく言い負かされているし、基本的に彼女は機転が利くのだろう。
ただ、エルミアの提案はセリーヌに受け入れられなかった。
夫人は、こう言ったのだ。
「いえ、夫は今居ませんわ」
「お出かけになられているのですか?
でも、勝手にお部屋を使ってしまうのは心苦しいですね」
「いえいえ、その心配には及びません」
「と、言いますと?」
「夫は、1年前に死にましたから」
「…………え」
流石のエルミアもすぐには二の句が継げなかった模様。
「……それは、その、ご愁傷様でした」
「ええ、必ず君を幸せにすると、そう約束しておきながら、あっさりと逝ってしまいました。
結婚して、ほんの数か月で。
これから羽ばたく2人のための愛の巣だ――とかなんとか言って、こんな辺鄙なところに家まで建てて。
街から遠いせいで、建てるのにかえってお金がかさみましたのよ?
おかげで貯金はすっからかん、他へ移ろうにも、まず引っ越しに必要なお金がない有様。
いったい、私にどうしろと言うのでしょうね?」
「あの、その、お、お気持ち、お察しいたします」
少女の歯切れが悪い。
仕方ないことだろう。
ヴィルだって、こんなこと言われればどう返したものか途方に暮れる。
「――でも、そのおかげでこうしてエルミアさんに部屋をお貸しできるのですから。
夫の死も、無駄ではなかったのでしょう。
いえ、あの人はこの日のために、こんな訳の分からない僻地に家を建て、さくっと死んだのかもしれません」
「えーっと、そういうところに意義を見出されますと、私としても――なんと申し上げたらいいのか――」
エルミアの言葉がつっかえつっかえになる。
一方でセリーヌはにこやかに笑いながら(でも目は笑ってない)、
「とまあ、そんな部屋ですので、何の気兼ねも無く使って頂ければ助かりますわ」
「……はい、恐縮です」
少女は神妙な顔で頭を下げた。
下げるしか、なかったのだろう。
(――しかし、何はともあれ)
エルミアは、聖拝に適した環境を手に入れることができたのだった。
……当初の予感通り、相手はちょっと普通でなかったが。
深夜。
セリーヌは物音で目を覚ました。
(エルミアさん、まだ起きているの?)
彼女は聖拝について詳しくないが、その準備をしているのかもしれない。
何せ、一日中祈りを捧げなければならないのだから、相応の用意が必要でも不思議でない。
(……飲み物でもお出ししましょうか)
そう思ってベッドから起き、寝間着の上に軽くカーディガンを羽織ってから自室を出るセリーヌ。
キッチンでお茶を淹れ、念のためお供の守護騎士の分と合わせ、2個のティーカップへ注ぐ。
お盆にカップを乗せると、エルミアへ貸した部屋へと向かう。
「――あら?」
部屋から光が漏れていることに気付いた。
どうやら、ドアが完全に閉まっていないらしい。
(……どんなことをされているのかしら?)
それは、純粋な好奇心だった。
セリーヌは忍び足でドアの前まで進み、そっと中を覗き込む。
そこには――
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!
凄いっ! ヴィル、凄いっ!!
気持ち、いいっ!! ああっ! あっ! あああっ!!」
「………っ!!?」
夫人は思わず息を飲んだ。
部屋の中では、“裸の2人”が抱き合っていた。
無論、エルミアとヴィルだ。
仰向けに寝そべった青年の上に少女が跨っている。
(う、嘘っ!?
聖女様が――!?)
セリーヌは目を疑った。
あの、見るからに貞淑で、物腰も柔らかかった少女が、男の上で腰を振っている。
「あっ! あぁっ! いいっ! いいのっ!
もっと、もっと突いてっ!! あぁああんっ!!」
嫌々としている訳でない。
気持ち良さそうに喘ぎ、長い銀髪を振り乱していた。
顔は恍惚とし、肢体が上下する度に整った乳房がプルンと揺れる。
(――なんて――なんて――!!)
……セリーヌは、ここで憤慨すべきだったのだろう。
聖女に選ばれておきながら、なんとふしだらな真似を、と。
聖拝のために借りた部屋で、失礼な行為に及ぶな、と。
しかし、彼女は。
(――なんて、羨ましい)
エルミアに、羨望の眼差しを向けてしまった。
いや、セリーヌが注目しているのは、最早聖女ではない。
少女の下で、彼女を突きあげている――
「そんなに腰をくねらせて――そんなに気持ち良くなってるのか!?」
――騎士ヴィルの姿から目を離せなくなってしまった。
(……凄い……逞しい雄の身体)
久方ぶりに見る殿方の裸。
しかも相手は、体格良く、無駄な贅肉など一切ない、しなやかな筋肉の持ち主。
セリーヌの考える、理想的な雄の形だった。
エルミアの嬌声が響く。
「あ、ああっ! 気持ちいいっ! 気持ちいいのっ!!
こんなっ強くっ! あっあっあっ! やられちゃったらっ!!
気持ちよくなっちゃうに、決まってるじゃないっ!!」
(あんなにも……力強く……)
青年は、少女の重さなど何も感じないかのように軽々と腰を動かしていた。
幾らエルミアが小柄とはいえ、そのインパクトは絶大で。
夫人はごくりと唾を飲み込む。
(――私も――ああやって突かれたら――)
想像して、じわりと身体の芯が疼くのを感じる。
雌の本能が騒ぎ出した。
自分もヤられたいと、そう思ってしまっている。
2人の動きが激しくなる。
「やっ! あっ! ダメっ!!
ヴィルの、叩いてるっ!! 私の、一番深いとこ、叩いちゃってるよぉっ!!
あっ! あんっ! ああっ! あっ! あぁああっ!!」
(そ、そうなのっ!? そんなところに、届いちゃっているのっ!?)
ヴィルとエルミアが繋がっている部分を凝視する。
青年のペニスは、彼の身体から予想できる通り、立派な一品なのか。
ドアの隙間からでは、その現物を見ることは叶わなかった。
しかし、それがセリーヌの妄想をより掻き立てる。
「はぁぁぁ……んっ……あ、あぁぁぁ……」
夫人もまた、自然と喘ぎを漏らし始めた。
無意識の内に、自分で股を弄っていたのだ。
(ああ、やだ、私――もう、濡れてるだなんて)
指を動かすと、くちゅくちゅ音が鳴る。
既に愛液が滴っている証拠だった。
「イ、クっ! 私、イっちゃうよっ!!
もう、無理だからっ!! イクの、我慢できないからっ!!
あっ! イクっ! ヴィルっ! イクのっ!!!」
「ああ、いいぞ、エルミアっ!!
俺も、そろそろ、出すっ!!」
部屋の中の2人は、ラストスパートに入ったようだ。
(イクのっ!? イクのねっ!? 2人同時に、イっちゃうのねっ!?)
彼らとタイミングを合わせるように、セリーヌも手の動きを速めた。
自分の指によって、長らく感じていなかった刺激が股間から脳へ駆けあがっていく。
「あっ――あっ――あっ――ふぁっ――
あっあっあっあっあっあっ――あぁぁああああっ――!」
快感に表情が蕩け、口が半開きになる。
もう、自分の意思でも手は止められない。
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!
イクっ! イクっ! イクぅっ!!
イクイクイクイクイクイっちゃうぅうううううっ!!!!
あぁぁぁあああああああああああああああっ!!!!」
「――ぐっ!
出すぞ、お前の中に、全部っ!!!」
ヴィルの腰がいっそう強くエルミアへ叩きつけられると、そのまま2人は強く抱き合った。
少女の方は、ぶるぶると身体を揺らし、快感に打ち震えている。
膣内へと射精されているのだろう。
セリーヌも、指を自分の中へ強く突き入れ――
「あっあぁぁぁあああぁぁぁぁぁ―――っ!」
――イった。
だらしなく喘ぎ、1年ぶりの絶頂を味わった。
頭が真っ白になり、とても立っていられない。
静かに、その場へへたり込んでしまう。
「――はぁっはぁっ――はぁっはぁっ――はぁっ――」
瞳に涙を溜めながら、絶頂の余韻に肢体を揺らした。
気付けば、ショーツがびちょびちょになっている。
まるで小水でも漏らしたかのように。
少しの間、その場にいる3人全員が、動きを止める。
……最初に口を開いたのはヴィルだった。
「エルミア、もう一回、していいか?」
(――えっ!?)
その台詞に、セリーヌは驚く。
今、あの青年は射精したばかりのはずなのに。
まだヤれるというのか。
(あの人は、一回終わったらすぐ寝てしまったのに)
いけないことだと分かりつつも、ついつい旦那と比べてしまう。
「――もう、好きなんだからー。
いいよ、次はどの体勢でする?」
エルミアも、身体を起こした。
「……バックで」
「はいはい。
じゃ、動くわよ――んぅっ」
青年の注文を受け、少女が腰を上げる。
その時――
(―――ああっ!?)
待望していた、ヴィルの男根が見えた。
一度絶頂を迎えたはずのソレは、しかし未だ猛々しく勃起している。
(――お、大きいっ!? 太いっ!? 長いっ!?
嘘ッ!? あの人のと全然違うっ!!)
記憶の中にある夫のイチモツは、青年のモノと比べ物にならない程に貧相な代物だった。
……彼女の中で、亡き旦那への罪悪感など、もう吹き飛んでしまっている。
(あ、あんなのを挿れて貰ってたの、エルミアさんはっ!?)
アレを下の口で咥え込んだら、自分はどうなってしまうのか。
セリーヌには、想像することもできなかった。
その上――
「あ、やだ、零れてきちゃった」
――エルミアの股から、白い液体がぼたぼたと垂れるのが見えた。
彼女の膣に入りきらなかった、精子だ。
(あ、ああ――いっぱい、いっぱい射精されちゃってる――)
その“量”は、セリーヌを驚愕させるに十分であった。
子宮の中が、青年の熱い精液で満たされたなら。
どれだけの幸福感に包まれるか。
(――欲しい。
アレ、私も欲しい――!)
そんな情念が、思考を支配していく。
エルミアだけ、ずるい。
自分だって、あのがっしりとした体に抱かれたい。
雄々しい肉棒を味わいたい。
(……そうよ。
私は、エルミアさんに聖拝の部屋を提供したんだもの。
それくらいの権利は、あるはず……!!)
部屋の中では、“続き”が始まっていた。
後ろからヴィルに責められ、嬉しそうに喘ぐエルミアが見える。
だが、セリーヌにとってそれはもうどうでも良かった。
そんなことより、“明日”だ。
(――聖拝をしている間、エルミアさんは部屋から動けない)
つまり、あの青年はフリーになる。
だったら――
「――エルミアさん、貴女がいけないのよ。
聖女の癖に、あんなはしたない真似をするから……!」
自分が悪いわけじゃない。
これは、エルミアの“行為”を見せつけられたせい――彼女のせいなのだ。
そう自分を正当化すると、セリーヌは“準備”をするため、自室へ戻るのだった。
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