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第3話 聖拝の日
③ 仕掛けられた罠(H)※
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セリーヌ夫人の家で、一夜が明けた。
日が昇って早々から、エルミアは部屋にこもり、祈りを捧げている。
凛とした顔で聖言と共に拝み続ける少女の姿は、とても魅力のある光景であったが、何時までも見ているわけにはいかない。
そんなわけで、ヴィルは居間へと顔を出すことにした。
「――あら、ヴィルさん、おはようございます」
入ると、セリーヌから挨拶が。
そちらの方を向き、ヴィルも挨拶を返す。
「おはようございます、セリーヌさっ――ん」
台詞の最後を、上手く言えなかった。
何故なら、婦人が昨日とはまるで違う出で立ちだったからだ。
ロールアップだった髪は下ろされ、ストレートロングへ。
鮮やかな黒い髪が、彼女の動きに合わせて流れている。
顔は薄く化粧が施され、表情も明るく、前に感じた陰鬱な雰囲気が無くなっていた。
(別人、とまでは言わないが……)
よく似ている違う人、と言われれば信じてしまうかもしれない。
それ程までにイメージが変わっていたのだ。
(それに――その、服も――)
変化は、顔だけでは無かった。
服装も、だ。
いや、服装こそ最も変化が激しかった。
キャミソールにロングスカートという格好なのだが、まず胸元が大きく開いている。
おっぱいの上半球が丸々見えてしまうくらいに。
セリーヌのたわわに実った2つの果実が、これ以上なくエロく強調されていた。
それと、生地。
白色をメインとした服なのだが――透けている。
結構な勢いで透けている。
流石にぱっとすぐに分かる程ではない。
しかし、目を凝らせば本来服に包まれているセリーヌ夫人の裸体を薄っすら見えてしまう。
(胸も尻も、エルミアより随分と大きいな――ああ、いやいや)
それでいて、形が崩れていない。
なかなかのプロポーションだった。
いや、エルミアはエルミアで均整の取れた身体つきであるのだが、単純なサイズでは婦人に軍配が上がる。
(し、下着は黒か――)
……別に、確認しようとしたわけではないのだ。
単に、見えてしまっただけ。
セリーヌが纏う、黒いレースの下着が。
(い、色合いの問題でだね)
意味も無く心の中で弁解を試みる。
肌色の中に黒というのは、コントラストの関係でよく映えてしまうのだ。
本当に。
他意は無い。
――と、こんな具合にヴィルが固まっていると、セリーヌが近づいてくる。
「ちょうど良かったですわ。
今、朝食の用意ができたんです。
どうぞ、食べていって下さいませ」
「あ、ああ。
ありがとう、ございます」
夫人に手を握られ、そのまま席へと連れていかれる。
少ししっとりとした肌が、暖かかった。
実際、朝食はすぐに用意された。
ただ――
「――あの」
「どうされました?
さあ、召し上がって下さいな」
「――はい」
一先ず、ヴィルは気にしないことにした。
セリーヌが、青年のすぐ隣に座ったことを。
(ち、近すぎるだろう、これは……)
普通、対面辺りの席にするものじゃないのだろうか。
この辺りに伝わる風習か?
しかも、ただの隣ではない。
身体を少し横に揺らせば、触れ合ってしまう位の“隣”だ。
息遣いすら、聞こえてしまう。
(そ、それにこの位置からだと……見えてしまう……)
チラリと、視線を夫人の胸元に移せば。
大きな乳房のその先に、他とは色合いの異なる箇所が。
……乳輪が、一部顔を見せてしまっている。
ちょうど、キャミソールの内側を覗きやすい角度なのだ。
「あ、サラダを取り分けますわね」
「ど、どうも……」
セリーヌ本人はそれを知ってか知らずか、微笑みながら食事を勧めてくる。
……気のせいだとは思うのだが、こちらに見せつける姿勢を多く取っているようにも思えた。
(自意識過剰なせい。自意識過剰なせい)
ヴィルは自分に言い聞かせる。
まさか、彼女が自分を誘惑してるなんてことは無いだろう。
旦那が死んでから、まだ1年しか経っていないのだ。
他の男に色目を使うようなことをしていると、そう考えるのは失礼に当たる。
――朝食は、つつがなく終了した。
途中、食べ物の一部がセリーヌの胸へと落ちることが幾度かあったが、それ以外には何もない。
信じて欲しい。
何もない。
(…………す、少しだけ、ポロリもあったけれど)
胸の谷間に人参が入り、慌てたセリーヌがキャミソールの胸元をさらに広げて。
その時、彼女の“乳首”がはっきりと見えてしまった。
柔らかそうな、おっぱいの全体像も。
(す、すぐ他を向いたから)
一瞬だけだ。
ほんの一瞬だけ、見てしまっただけなのだ。
だから――不問として貰いたい。
誰に対するものか、ヴィル自身分かっていないが、ともかく彼は言い訳を続けていた。
無論、心の中で。
こんなこと口に出したら相当やばい。
「ヴィルさん、食後のお茶はどうですか?
うちの畑で採れたもので――自分で言うのもなんですが、良い味ですわよ」
「すいません、何から何まで」
「いえいえ。
ナニからナニまで、私にお任せ下さい」
「…………?」
今、ニュアンスが変だったような。
……まあ、些細なことだろう。
セリーヌはキッチンでお茶を淹れると、ヴィルの所まで持ってきてくれた。
青年の前にお茶入りのカップを置く、その時。
「あ、手が滑ってーー」
なんだか棒読みな台詞を口にしたかと思うと、夫人の手からカップが落とされた。
ヴィルの、腰辺りに向かって。
「おっと」
青年はそれを空中でキャッチ。
無論、中身は一滴も零さない。
この程度の芸当、朝飯前だ。
ヴィルは改めてカップをテーブルに置くと、
「危なかったですね」
「………………ちっ」
「っ!?」
今の舌打ちは何だ。
しかし当のセリーヌは、何をするでもなくすぐ頭を下げてくる。
「あ、いいえ、すいません、私ったら。
なんだか緊張しているのかも」
「緊張、ですか。
俺は聖女のお供に過ぎないので、そう畏まらなくとも――」
「――貴方みたいな、素敵な男性を前にして」
「っ!?」
ぼそっと、耳元で夫人が囁いてきた。
ぞくっとするような、色っぽい声で。
(お、お世辞、なのか――?
いや、お世辞だよな!?)
うん、そうだ。
そうに違いない。
ヴィルはそんな感じに自己完結すると、ちょっと震える手でお茶をすする。
言うだけあって、いい味ではあった。
それからしばし、2人で談笑する。
セリーヌは、ヴィルのことを色々と根掘り葉掘り聞いてきた。
青年は、当たり障りが無い程度にそれへ答える。
騎士らしい活動には事欠かなかったので、話題には苦労しなかった。
ただ、少々自分について聞きすぎなのではないか、という疑念も。
(……まあ、エルミアのことを聞かれるよりはマシなんだが)
何せ、ヴィルはお供の騎士などでは無いのだから。
下手なことを言って、それがバレてしまわないとも限らない。
(しかし、そんなことは今どうでもいい)
談笑の内容など、現在の青年にとって些細な事だった。
(今、問題なのは――)
意を決し、ヴィルはセリーヌに話しかける。
「……セリーヌさん。
流石に、近すぎじゃないだろうか?」
「あら、そうかしら?」
恍けた様子で、夫人。
だがもう、今の状態は誤魔化しの利くものではなかった。
――密着している。
2人は、普通に密着している。
セリーヌは、ヴィルの膝に手を、肩に顎を乗せてしな垂れかかってきていた。
そんなことをすれば、吐息が耳をくすぐる。
胸だって青年の身体に当たる。
柔軟な感触が、ヴィルの腕に押し付けられていた。
夫人は、不思議そうな顔で言葉を続ける。
「これ位、普通ですわよ」
「いや、普通じゃない。
いくらなんでも、普通じゃない」
気分が追い詰められ、丁寧語からいつもの口調に戻ってしまった。
セリーヌはさらに、ヴィルの腕へと抱き着いて、
「――仮に普通じゃないとして。
ヴィルさんに、何か不都合がありまして?」
肢体を、青年に擦りつけてくる。
体のあちこちで、夫人の“柔らかさ”を感じられた。
(ふ、不都合も何も!)
胸中で嘆く。
もう、いっぱいいっぱいだった。
ヴィルは、不能でも何でもない、健全な一般男子なのだ。
身体の“一部”が固くなろうとする衝動を、必死の思いで抑えていた。
正直なところ、ここで彼女を襲ったとしても“合意”なんじゃなかろうかという考えも浮かんできたが――
(エルミアが、居る――!)
彼の脳裏に少女の姿が浮かび、自制する。
誰かに褒めて欲しいくらいの、鋼の精神力であった。
「………………存外に手強いですわね」
またしても、小さくセリーヌが呟く。
何が手強いというのか。
そして、チラっと青年の股間を見たのは何故なのか。
「そうだ、美味しい茶菓子もありますのよ。
是非、ご賞味して欲しいですわ」
「そ、そうか。
じゃあ、貰おうかな」
セリーヌが茶菓子を持ってくる=ヴィルから身体が離れる。
頷かないわけにはいかなかった。
青年の目論見通り、夫人は席を立ち、すぐ近くにあるタンスを探り始める。
(――うっ!?)
そして、ヴィルは自分の甘さを痛感した。
セリーヌは、タンスの中に頭を入れた姿勢をとったのだ。
そうなると自然、前屈みになり――夫人のヒップが、ヴィルに向かって突き出される格好となった。
真っ直ぐ、青年へと尻が向けられる。
まるで、計算されていたかのように。
(で、でかいな――しかも、柔らかそうだ――)
目が釘つけになった。
先述通り、セリーヌの履いたスカートは透けている。
なので、黒いレースの下着に包まれた丸くて大きいお尻を目の当たりにできた。
しかも黒ショーツは、尻の割れ目へ食い込んでいる。
「あらあら?
私ったら、どこに仕舞ったかしら?」
見つからないのか、セリーヌはなかなか顔を上げない。
未だ、引き出しの中を探している。
(……お、おいおい)
どういう探し方をしているのか、婦人は尻を左右に振り出した。
ふりふりと、大きなヒップが煽情的に揺れる。
(――お、おお)
ヴィルは、股間に血か集まってくるのを感じた。
むくむくと、イチモツが立ち上がっていく。
セリーヌの目が無い分、気が緩んでしまい、抑制が効かない。
(――ま、まずいぞ。
早く鎮めなければ!)
精神を集中し、心を落ち着かせる。
何とか昂りを消そうと、一心に煩悩を払おうとする――のだが。
「よいしょっと」
聞こえた、夫人の声。
ついつい、そちらを見てしまう。
(―――おいーーーっ!!!)
心で絶叫。
何を血迷ったか、セリーヌはスカートを捲り上げたのだ。
生地越しではない、生尻が姿を現す。
「うーん、こっちの方だったかしら?」
さらに、夫人は姿勢を微妙に変え――股を開いた。
尻だけではなく、恥丘まで丸見えだ。
そして――
(――ぬ、濡れてる……!?)
彼女の股が――ちょうど女性器がある部分が、じっとりと濡れていた。
セリーヌは、愛液を漏らしていたのだ。
おそらく、ヴィルと会話している最中、ずっと。
(あああああああああっ!!?)
青年の股間は、もう収まりが付かなくなっていた。
ギンギンに勃起した愚息は、ズボンを大きく隆起させる。
萎れる気配など、微塵も無い。
逆に、今すぐにでもあの女へぶち込んでやりたい、という衝動に駆られる始末。
(いかん、こんなところを見られては――)
何を言われるか、分かったものでは無い。
どうにかコレを隠そうとするヴィルではあったが、
「お待たせしました、ヴィルさん」
何ともタイミング悪く――見計らったかのようなタイミングで、セリーヌは戻ってきた。
すぐ、青年の“変化”に気付いたらしく。
「ああっ!? ヴィルさん、あそこを、そんなに――!?」
「い、いや、これはその……」
いい弁解の言葉など思いつかず、あたふたとしていると。
夫人はヴィルに近づき、彼の股間を覗き込んでくる。
「こんな、勃起されているだなんて――」
「えー、これはだな、決してやましい気持ちからのものでは……」
一応言葉は口にしてみたものの、説得力がまるで無い。
セリーヌは、ヴィルの股をそっと手で触れてきた。
「――ああ、大きい――なんて、凄い――」
「ちょ、待った!!
セリーヌさん!?」
「――ヴィルさん、私の身体で、勃起されたんですよね……?」
「あーっ、その、なんだ――――――はい」
渋々、認める。
他に原因らしきものなどこの部屋にないのだから、認めざるを得ない。
「では――私がコレを鎮めて差し上げます」
うっとりとした、それでいて艶のある声で、夫人はそう宣言する。
ヴィルは仰天し、
「い、いやいや、結構!
その必要はない!
少しすれば、治るので!!」
「でも、苦しくは無いですか?
辛くは無いですか?
私の責任ですから、私が処理しますわ。
よろしいでしょう?」
「大丈夫! 大丈夫だから!!
放っておいて下さい!!
……そ、そうだ、稽古!!
そろそろ剣の稽古の時間なので!!
ちょっとそとで剣振ってこなければ!!
稽古してれば、すぐ気持ちは静まるから、な!?」
絡みついてくるセリーヌの肢体を、なんとか振りほどこうとするヴィル。
夫人は青年を潤んだ瞳で見つめ、
「私では、不満ですか?」
「そういう問題ではなくて!」
「……エルミアさんとは、しているのに?」
「――っ!?」
一瞬、息が止まる。
心臓を鷲掴みにされたようだった。
「み、み、見ていた、のか?」
「はい、昨日の夜、お2人がまぐわっているのを、この目で見ました」
「…………」
何たる失態。
またしてもエルミアに夢中になり過ぎ、察することができなかった。
「あの――これは、問題のある行為、ですわよね?
清らかであることを求められる“聖女”が、殿方と淫行を重ねている、など」
「……脅すつもりか」
「いいえ、私は何も見ていませんわ。
でも――私、聖女様にお部屋を提供するという形で協力をしました。
それは、貴方も認めて下さるでしょう?」
「……ああ」
「でしたら。
多少なりとも、その“見返り”を頂いても、罰は当たらないと――そう、思うのです」
ここで言う“見返り”とは何か。
今までの彼女の言動を見れば、明らかだった。
どれだけ物好きなのか、セリーヌはヴィルの身体を求めている。
……頭に浮かぶのは、エルミアのこと。
ここで彼女の提案を受け入れるのは、簡単だ。
しかし、それは少女への裏切りになるのではないか。
(別に、俺とエルミアは恋人同士というわけではない、が――)
もう、これまでに何度も肌を重ねている。
そんな相手を“ただの他人”と、そう断じることは、ヴィルにはできなかった。
一方で、セリーヌの言っていることも分かる。
ヴィルとエルミアの関係が明るみになれば、彼女の立場が危うくなる可能性は非常に高かった。
(言われるまで余り気にしてなかったけれども)
その辺りは惚れた弱みということで許して欲しい。
ともあれ、夫人を抱けば全て水に流れる。
おそらく、彼女は嘘を言っていないだろう。
――ヴィルは、悩んだ末に答えを出した。
「分かった、貴女の言う通りにする。
但し、エルミアが戻るまでだからな」
その言葉を聞いた途端、セリーヌのにっこりと微笑む。
悦びに満ちた、そして官能的な笑み。
「ええ、承知しています」
夫人は、ヴィルへと深く頷いた。
日が昇って早々から、エルミアは部屋にこもり、祈りを捧げている。
凛とした顔で聖言と共に拝み続ける少女の姿は、とても魅力のある光景であったが、何時までも見ているわけにはいかない。
そんなわけで、ヴィルは居間へと顔を出すことにした。
「――あら、ヴィルさん、おはようございます」
入ると、セリーヌから挨拶が。
そちらの方を向き、ヴィルも挨拶を返す。
「おはようございます、セリーヌさっ――ん」
台詞の最後を、上手く言えなかった。
何故なら、婦人が昨日とはまるで違う出で立ちだったからだ。
ロールアップだった髪は下ろされ、ストレートロングへ。
鮮やかな黒い髪が、彼女の動きに合わせて流れている。
顔は薄く化粧が施され、表情も明るく、前に感じた陰鬱な雰囲気が無くなっていた。
(別人、とまでは言わないが……)
よく似ている違う人、と言われれば信じてしまうかもしれない。
それ程までにイメージが変わっていたのだ。
(それに――その、服も――)
変化は、顔だけでは無かった。
服装も、だ。
いや、服装こそ最も変化が激しかった。
キャミソールにロングスカートという格好なのだが、まず胸元が大きく開いている。
おっぱいの上半球が丸々見えてしまうくらいに。
セリーヌのたわわに実った2つの果実が、これ以上なくエロく強調されていた。
それと、生地。
白色をメインとした服なのだが――透けている。
結構な勢いで透けている。
流石にぱっとすぐに分かる程ではない。
しかし、目を凝らせば本来服に包まれているセリーヌ夫人の裸体を薄っすら見えてしまう。
(胸も尻も、エルミアより随分と大きいな――ああ、いやいや)
それでいて、形が崩れていない。
なかなかのプロポーションだった。
いや、エルミアはエルミアで均整の取れた身体つきであるのだが、単純なサイズでは婦人に軍配が上がる。
(し、下着は黒か――)
……別に、確認しようとしたわけではないのだ。
単に、見えてしまっただけ。
セリーヌが纏う、黒いレースの下着が。
(い、色合いの問題でだね)
意味も無く心の中で弁解を試みる。
肌色の中に黒というのは、コントラストの関係でよく映えてしまうのだ。
本当に。
他意は無い。
――と、こんな具合にヴィルが固まっていると、セリーヌが近づいてくる。
「ちょうど良かったですわ。
今、朝食の用意ができたんです。
どうぞ、食べていって下さいませ」
「あ、ああ。
ありがとう、ございます」
夫人に手を握られ、そのまま席へと連れていかれる。
少ししっとりとした肌が、暖かかった。
実際、朝食はすぐに用意された。
ただ――
「――あの」
「どうされました?
さあ、召し上がって下さいな」
「――はい」
一先ず、ヴィルは気にしないことにした。
セリーヌが、青年のすぐ隣に座ったことを。
(ち、近すぎるだろう、これは……)
普通、対面辺りの席にするものじゃないのだろうか。
この辺りに伝わる風習か?
しかも、ただの隣ではない。
身体を少し横に揺らせば、触れ合ってしまう位の“隣”だ。
息遣いすら、聞こえてしまう。
(そ、それにこの位置からだと……見えてしまう……)
チラリと、視線を夫人の胸元に移せば。
大きな乳房のその先に、他とは色合いの異なる箇所が。
……乳輪が、一部顔を見せてしまっている。
ちょうど、キャミソールの内側を覗きやすい角度なのだ。
「あ、サラダを取り分けますわね」
「ど、どうも……」
セリーヌ本人はそれを知ってか知らずか、微笑みながら食事を勧めてくる。
……気のせいだとは思うのだが、こちらに見せつける姿勢を多く取っているようにも思えた。
(自意識過剰なせい。自意識過剰なせい)
ヴィルは自分に言い聞かせる。
まさか、彼女が自分を誘惑してるなんてことは無いだろう。
旦那が死んでから、まだ1年しか経っていないのだ。
他の男に色目を使うようなことをしていると、そう考えるのは失礼に当たる。
――朝食は、つつがなく終了した。
途中、食べ物の一部がセリーヌの胸へと落ちることが幾度かあったが、それ以外には何もない。
信じて欲しい。
何もない。
(…………す、少しだけ、ポロリもあったけれど)
胸の谷間に人参が入り、慌てたセリーヌがキャミソールの胸元をさらに広げて。
その時、彼女の“乳首”がはっきりと見えてしまった。
柔らかそうな、おっぱいの全体像も。
(す、すぐ他を向いたから)
一瞬だけだ。
ほんの一瞬だけ、見てしまっただけなのだ。
だから――不問として貰いたい。
誰に対するものか、ヴィル自身分かっていないが、ともかく彼は言い訳を続けていた。
無論、心の中で。
こんなこと口に出したら相当やばい。
「ヴィルさん、食後のお茶はどうですか?
うちの畑で採れたもので――自分で言うのもなんですが、良い味ですわよ」
「すいません、何から何まで」
「いえいえ。
ナニからナニまで、私にお任せ下さい」
「…………?」
今、ニュアンスが変だったような。
……まあ、些細なことだろう。
セリーヌはキッチンでお茶を淹れると、ヴィルの所まで持ってきてくれた。
青年の前にお茶入りのカップを置く、その時。
「あ、手が滑ってーー」
なんだか棒読みな台詞を口にしたかと思うと、夫人の手からカップが落とされた。
ヴィルの、腰辺りに向かって。
「おっと」
青年はそれを空中でキャッチ。
無論、中身は一滴も零さない。
この程度の芸当、朝飯前だ。
ヴィルは改めてカップをテーブルに置くと、
「危なかったですね」
「………………ちっ」
「っ!?」
今の舌打ちは何だ。
しかし当のセリーヌは、何をするでもなくすぐ頭を下げてくる。
「あ、いいえ、すいません、私ったら。
なんだか緊張しているのかも」
「緊張、ですか。
俺は聖女のお供に過ぎないので、そう畏まらなくとも――」
「――貴方みたいな、素敵な男性を前にして」
「っ!?」
ぼそっと、耳元で夫人が囁いてきた。
ぞくっとするような、色っぽい声で。
(お、お世辞、なのか――?
いや、お世辞だよな!?)
うん、そうだ。
そうに違いない。
ヴィルはそんな感じに自己完結すると、ちょっと震える手でお茶をすする。
言うだけあって、いい味ではあった。
それからしばし、2人で談笑する。
セリーヌは、ヴィルのことを色々と根掘り葉掘り聞いてきた。
青年は、当たり障りが無い程度にそれへ答える。
騎士らしい活動には事欠かなかったので、話題には苦労しなかった。
ただ、少々自分について聞きすぎなのではないか、という疑念も。
(……まあ、エルミアのことを聞かれるよりはマシなんだが)
何せ、ヴィルはお供の騎士などでは無いのだから。
下手なことを言って、それがバレてしまわないとも限らない。
(しかし、そんなことは今どうでもいい)
談笑の内容など、現在の青年にとって些細な事だった。
(今、問題なのは――)
意を決し、ヴィルはセリーヌに話しかける。
「……セリーヌさん。
流石に、近すぎじゃないだろうか?」
「あら、そうかしら?」
恍けた様子で、夫人。
だがもう、今の状態は誤魔化しの利くものではなかった。
――密着している。
2人は、普通に密着している。
セリーヌは、ヴィルの膝に手を、肩に顎を乗せてしな垂れかかってきていた。
そんなことをすれば、吐息が耳をくすぐる。
胸だって青年の身体に当たる。
柔軟な感触が、ヴィルの腕に押し付けられていた。
夫人は、不思議そうな顔で言葉を続ける。
「これ位、普通ですわよ」
「いや、普通じゃない。
いくらなんでも、普通じゃない」
気分が追い詰められ、丁寧語からいつもの口調に戻ってしまった。
セリーヌはさらに、ヴィルの腕へと抱き着いて、
「――仮に普通じゃないとして。
ヴィルさんに、何か不都合がありまして?」
肢体を、青年に擦りつけてくる。
体のあちこちで、夫人の“柔らかさ”を感じられた。
(ふ、不都合も何も!)
胸中で嘆く。
もう、いっぱいいっぱいだった。
ヴィルは、不能でも何でもない、健全な一般男子なのだ。
身体の“一部”が固くなろうとする衝動を、必死の思いで抑えていた。
正直なところ、ここで彼女を襲ったとしても“合意”なんじゃなかろうかという考えも浮かんできたが――
(エルミアが、居る――!)
彼の脳裏に少女の姿が浮かび、自制する。
誰かに褒めて欲しいくらいの、鋼の精神力であった。
「………………存外に手強いですわね」
またしても、小さくセリーヌが呟く。
何が手強いというのか。
そして、チラっと青年の股間を見たのは何故なのか。
「そうだ、美味しい茶菓子もありますのよ。
是非、ご賞味して欲しいですわ」
「そ、そうか。
じゃあ、貰おうかな」
セリーヌが茶菓子を持ってくる=ヴィルから身体が離れる。
頷かないわけにはいかなかった。
青年の目論見通り、夫人は席を立ち、すぐ近くにあるタンスを探り始める。
(――うっ!?)
そして、ヴィルは自分の甘さを痛感した。
セリーヌは、タンスの中に頭を入れた姿勢をとったのだ。
そうなると自然、前屈みになり――夫人のヒップが、ヴィルに向かって突き出される格好となった。
真っ直ぐ、青年へと尻が向けられる。
まるで、計算されていたかのように。
(で、でかいな――しかも、柔らかそうだ――)
目が釘つけになった。
先述通り、セリーヌの履いたスカートは透けている。
なので、黒いレースの下着に包まれた丸くて大きいお尻を目の当たりにできた。
しかも黒ショーツは、尻の割れ目へ食い込んでいる。
「あらあら?
私ったら、どこに仕舞ったかしら?」
見つからないのか、セリーヌはなかなか顔を上げない。
未だ、引き出しの中を探している。
(……お、おいおい)
どういう探し方をしているのか、婦人は尻を左右に振り出した。
ふりふりと、大きなヒップが煽情的に揺れる。
(――お、おお)
ヴィルは、股間に血か集まってくるのを感じた。
むくむくと、イチモツが立ち上がっていく。
セリーヌの目が無い分、気が緩んでしまい、抑制が効かない。
(――ま、まずいぞ。
早く鎮めなければ!)
精神を集中し、心を落ち着かせる。
何とか昂りを消そうと、一心に煩悩を払おうとする――のだが。
「よいしょっと」
聞こえた、夫人の声。
ついつい、そちらを見てしまう。
(―――おいーーーっ!!!)
心で絶叫。
何を血迷ったか、セリーヌはスカートを捲り上げたのだ。
生地越しではない、生尻が姿を現す。
「うーん、こっちの方だったかしら?」
さらに、夫人は姿勢を微妙に変え――股を開いた。
尻だけではなく、恥丘まで丸見えだ。
そして――
(――ぬ、濡れてる……!?)
彼女の股が――ちょうど女性器がある部分が、じっとりと濡れていた。
セリーヌは、愛液を漏らしていたのだ。
おそらく、ヴィルと会話している最中、ずっと。
(あああああああああっ!!?)
青年の股間は、もう収まりが付かなくなっていた。
ギンギンに勃起した愚息は、ズボンを大きく隆起させる。
萎れる気配など、微塵も無い。
逆に、今すぐにでもあの女へぶち込んでやりたい、という衝動に駆られる始末。
(いかん、こんなところを見られては――)
何を言われるか、分かったものでは無い。
どうにかコレを隠そうとするヴィルではあったが、
「お待たせしました、ヴィルさん」
何ともタイミング悪く――見計らったかのようなタイミングで、セリーヌは戻ってきた。
すぐ、青年の“変化”に気付いたらしく。
「ああっ!? ヴィルさん、あそこを、そんなに――!?」
「い、いや、これはその……」
いい弁解の言葉など思いつかず、あたふたとしていると。
夫人はヴィルに近づき、彼の股間を覗き込んでくる。
「こんな、勃起されているだなんて――」
「えー、これはだな、決してやましい気持ちからのものでは……」
一応言葉は口にしてみたものの、説得力がまるで無い。
セリーヌは、ヴィルの股をそっと手で触れてきた。
「――ああ、大きい――なんて、凄い――」
「ちょ、待った!!
セリーヌさん!?」
「――ヴィルさん、私の身体で、勃起されたんですよね……?」
「あーっ、その、なんだ――――――はい」
渋々、認める。
他に原因らしきものなどこの部屋にないのだから、認めざるを得ない。
「では――私がコレを鎮めて差し上げます」
うっとりとした、それでいて艶のある声で、夫人はそう宣言する。
ヴィルは仰天し、
「い、いやいや、結構!
その必要はない!
少しすれば、治るので!!」
「でも、苦しくは無いですか?
辛くは無いですか?
私の責任ですから、私が処理しますわ。
よろしいでしょう?」
「大丈夫! 大丈夫だから!!
放っておいて下さい!!
……そ、そうだ、稽古!!
そろそろ剣の稽古の時間なので!!
ちょっとそとで剣振ってこなければ!!
稽古してれば、すぐ気持ちは静まるから、な!?」
絡みついてくるセリーヌの肢体を、なんとか振りほどこうとするヴィル。
夫人は青年を潤んだ瞳で見つめ、
「私では、不満ですか?」
「そういう問題ではなくて!」
「……エルミアさんとは、しているのに?」
「――っ!?」
一瞬、息が止まる。
心臓を鷲掴みにされたようだった。
「み、み、見ていた、のか?」
「はい、昨日の夜、お2人がまぐわっているのを、この目で見ました」
「…………」
何たる失態。
またしてもエルミアに夢中になり過ぎ、察することができなかった。
「あの――これは、問題のある行為、ですわよね?
清らかであることを求められる“聖女”が、殿方と淫行を重ねている、など」
「……脅すつもりか」
「いいえ、私は何も見ていませんわ。
でも――私、聖女様にお部屋を提供するという形で協力をしました。
それは、貴方も認めて下さるでしょう?」
「……ああ」
「でしたら。
多少なりとも、その“見返り”を頂いても、罰は当たらないと――そう、思うのです」
ここで言う“見返り”とは何か。
今までの彼女の言動を見れば、明らかだった。
どれだけ物好きなのか、セリーヌはヴィルの身体を求めている。
……頭に浮かぶのは、エルミアのこと。
ここで彼女の提案を受け入れるのは、簡単だ。
しかし、それは少女への裏切りになるのではないか。
(別に、俺とエルミアは恋人同士というわけではない、が――)
もう、これまでに何度も肌を重ねている。
そんな相手を“ただの他人”と、そう断じることは、ヴィルにはできなかった。
一方で、セリーヌの言っていることも分かる。
ヴィルとエルミアの関係が明るみになれば、彼女の立場が危うくなる可能性は非常に高かった。
(言われるまで余り気にしてなかったけれども)
その辺りは惚れた弱みということで許して欲しい。
ともあれ、夫人を抱けば全て水に流れる。
おそらく、彼女は嘘を言っていないだろう。
――ヴィルは、悩んだ末に答えを出した。
「分かった、貴女の言う通りにする。
但し、エルミアが戻るまでだからな」
その言葉を聞いた途端、セリーヌのにっこりと微笑む。
悦びに満ちた、そして官能的な笑み。
「ええ、承知しています」
夫人は、ヴィルへと深く頷いた。
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