純情魔王の寝取られ勇者観察日記 ~間男死すべし、慈悲は無い~

ぐうたら怪人Z

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第4話 王女の救出

後編

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 ここは、王の寝室。

「……はぁっ……はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

 部屋には、レティシアの荒い息をついて横たわっている。
 その肢体のあちこちに、白く濁った液体がこびり付いていた。

「今日が初めてだというのに大分乱れたなぁ、レティシアよ。
 そういうところは母親そっくりだ」

 この城の主である男は、彼女の身体をいやらしい手つきで撫でまわす。

「……うっ……あ、あぁぁああ……い、いやぁ……」

「何を嫌がることがある。
 お前は次期国王の母となるのだぞ。
 まあ、今日で孕んだとは限らんが――これから毎日、種付けをしてやるからな」

 涙を流す姫を見て、薄く笑う国王。

 ……あー、もういいや。
 登場プロセスキャンセル。
 こんなんじっくり見てられるか。

「―――へ?」

 王が間抜けな声を出す。
 目の前に突然魔物吾輩が現れれば、当然の反応ともいえる。

「な、何や――ぎゃあぁあああああああああっ!!!!?」

 突然、叫び声をあげる国王。
 吾輩の術によるものだ。

「ぎ、ぎぃいいいいいいいいっ!!!?」

 奴にかけている術は、“幻術”の類。
 かけた相手に“幻痛”を引き起こす術だ。
 普通の術者が使うのであれば、ちょっとした打撲や切り傷程度の痛みを起こすだけだが――

「が、ああああああああああああああああっ!!!!」

 吾輩が使えば御覧の通り。
 “内臓を直接焼かれる”とも、“生きたまま酸に溶かされる”とも形容できる、激痛が対象を襲う。
 さらに吾輩、この術をカスタマイズしており――この“幻痛”によって対象が気絶することも発狂することも無い。
 実に尋問に適した術と言える。
 ……これから行うことは尋問でも拷問でもないのだが。

「ぎぁああああああああ――――――あ、あれ?」

 痛みが急に治まり、王はきょとんとする。

『魔王だ』

「……は?
 え、な、何が……?」

『お前が尋ねようとしたのだろう。
 吾輩は、魔王だ』

「な、戯けたことを申す――んぎぃいいいいいいいいいっ!!!!?」

 理解が遅いのでもう一度“幻痛”をかけた。
 これだからボケ老人は困る。

『吾輩は魔王だ、いいな?』

「――は、はいぃっ!」

 涙を流して返事をする王。
 ちなみに王女はというと、展開についてこれず、横でぼうっと我々のやり取りを見ている。

『さて吾輩がここの来たのは他でもない。
 ――謝れ』

「……は?
 い、いったい何を――ああぁあああああぁあぁあああああああっ!!!!?」

 こいつは本当に頭の回転が遅い。
 謝れと言っているのに、何故謝らないのか。

『もう一度言うぞ――謝れ』

「……ひっ、は、ひ……も、申し訳ありませんでした――ぎゃぎぃいいいいいいっ!!!?」

 “幻痛”で再度苦しみ出す国王。
 奴の股間からジョロジョロと液体が流れだす。
 失禁したようだ――うわ、汚っ!?

「――な、なん、で――謝った、のに――」

『誠意がない。
 誠心誠意を込めて謝ったのであれば、涙の一つ、嗚咽の一つも漏れようというものだ。
 だというのに、お前はただ口で謝罪しただけではないか』

「そ、そんな――いぎぁあああああああああっ!!」

『――謝れ』

「……あ、ああ、あ――も、申し訳ありませんでしたぁっ!!
 申し訳ありませんでしたぁっ!!
 お許し下さいぃっ!!」

 必死に泣き叫びながら、必死に頭を下げながら、国王は謝り続ける。
 ……ふん、まあいいか。

『……で、お前は何をしたのだ?』

「――え?」

『謝ったのだから、お前は何かやましいことをしたのだろう。
 ……言え、それを』

「そ、そんな無茶――い、ぎ、が、あぁあぁああぁっ!!!?」

 のたうち回る国王。

『鶏とて3歩歩くまでは物を忘れぬというのに、お前はそれ以下だな。
 少しは頭を使うという行為をして欲しいものだ』

「ひっはひっあひっ……ま、魔王を討伐しようと、軍勢を、集めましたぁ」

 情けない声で王が喋り出す。
 ……本当にこいつ、国の王か?
 威厳というものがまるで無いな。

『違う』

「え? はい?」

『吾輩が恐れるのは勇者ただ一人。
 お前達雑兵が何百万集まろうと、敵ではない』

「あ、え、そ、それでは、勇者に支援をした、こと――?」

『違う。
 勇者はお前の力なぞ借りずとも、いずれ吾輩の前に現れよう』

「あ、う――それでは――」

 王が答えに詰まり出す。

『……まさか思いつかぬとでも言うのか?
 まだ痛みが足りぬと見えるなぁ?』

「そそそそ、そんなことはっ!!
 ……う、あぁぁ――あ、兄を暗殺し、王の座を簒奪したこと――?」

「――!?
 お父様、そんなことをっ!?」

 レティシアが目を見開いた。
 吾輩も驚いた。
 そんなことやっとったのか、この爺。

『……ふん。
 他には?』

「ほ、他……?」

『無いとでも?』

「い、いいいええ、あ、ありますっ!
 ――む、息子を、殺しましたぁっ!」

「お兄様をっ!?」

 さらに驚愕する姫。
 ……こいつ、叩けばどんどん埃が出てくるんじゃあるまいな。

『何故殺した?』

「わ、儂の子供の癖に、儂のやることに口を出してきたから――ですぅっ!」

『子供に叱られたから、殺したのか』

「う、ぐっ……」

 それを指摘されて、顔をしかめる国王。

『――で?
 お前は何を叱られた?』

「あ、新しい王妃を――この娘の母親を娶るために、その婚約者を処刑したことですぅっ!」

「……っ!!」

 レティシアは、もう言葉も出ない様子。

『当然、冤罪でだな?』

「は、はいぃ、城で盗みを働いたとして、処刑したのですっ!」

『……他には?』

「め、目にかけていた娘を差し出さなかったので、その娘の両親を国外追放しましたぁっ!
 政策に、文句を言ってきた大臣を、牢に入れましたぁっ!
 賄賂の要求を断った商人を、破産させましたぁっ!」

 …………。
 で、出てくる出てくる、この男のしでかしたこと。
 なんかここまでくると、こいつを放置していた周囲の人間が悪いんじゃないかとすら思えてくる。

 駄目だろ、こんなん王にしちゃ。
 クーデター起こせよ。
 黙って従ったままでいるなよ。
 まあ今回は吾輩がなんとかしてやるけれども。

「…………」

 王女が父を見る目は、完全に汚らしいゴミを見るそれだった。
 吾輩としては、もっと早くそういう目で見てやっても良かったんじゃないかと思えてくる。
 彼女の境遇を思えば。

『――で、他には?』

「……ほ、他には、えぇと――」

 ここまで、この男はレティシアについて何も言及していなかった。
 こいつにとって彼女への仕打ちは、“悪事”として思いつかないほど“当然のこと”だったらしい。

『……娘に対して』

「は、はい?」

『自分の娘に対して、何か言うことはないのか?』

「――――!!」

 吾輩の言葉に反応したのは、しかし男の方ではなく、レティシアの方だった。
 驚いた顔をして、彼女は視線を吾輩の方へ向けてくる。

「……れ、レティシア、に――?
 は、はて……?」

 ――こいつ、本気で分かってないのか?

『自分の娘に、手を出したであろうがっ!!』

「ひ、ひぃいっ!
 いえ、あ、あれは躾で――ぴぃいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!」

 娘に対する罪を自覚していない男に対し、吾輩は全力で“幻痛”をかける。

「きぃいいいいいいいいいいいいっ!!!
 ぴいいっ!! ぴぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」

 男の口からは、人がまず発さないような、悲鳴に似た何かが漏れ出てくる。
 その激痛に、ジタバタと身体を動かすこともできず、国王とか名乗っていた男は白目を剥いてただ叫んだ。

『……娘に対して、言うことは無いのかと聞いている』

「――ぎ、ひっ? はひ、は、はひは――
 ……ず、ずびばぜんでじだぁあああああっ!!
 ずびばぜんっ!! ずびばぜんぅううううっ!!」

 頭を床にごりごりと押し付けながら、許しを請う男。

「ざ、差し上げまずぅっ!!
 魔王様も、ごの娘が気に入っていたのでずねっ!?
 差し上げまずっ! 差し上げまずがら、お見逃じぐだざいぃいっ!!」

 …………。
 ――この期に及んで、この有様。
 どんだけ性根が腐り果てているんだ、この男は。

『……姫よ』

「――っ!!
 な、なんでしょうか?」

 自分に矛先が向けられたと思ったか、彼女は一瞬怯んだが――すぐに持ち直す。
 父親と違って、なかなかの精神力だ。

『この男の処遇――お前に託そう』

「私が、ですか?」

「!?」

 それを聞いた男は、今度はレティシアに向かって媚びだした。

「れ、レティシア……ま、まさか父を見捨ては、しないよな……?
 お前を、ここまで育てなのは儂なんだぞ……?
 お前を、手厚く世話し続けたのは、儂なんだぞ……?」

 へらへらと笑いながら、王女の足に縋りつこうとする男。

「な、なぁ、レティシア。
 そ、そうだ、お前、勇者のことを好いていただろう!?
 本来許されんことだが、お前と勇者の婚姻を認めようじゃないか!
 うん、それがいい!
 国王である儂が認めるのだから、何の問題も無いっ!
 だからレティシア――」

「――黙れ」

「……え?」

 王女の口から、聞いたことも無い低い声色が発せられた。
 それは――憎悪の籠った声だった。

「……れ、レティシア、何を、言って……?」

「――黙れって言っただろうが、この爺っ!!!」

 罵倒の言葉を浴びせながら、姫は拳を男の顔面に打ち込んだ。

「げべっ!?
 ――れ、レティシア、父に、なんてことを……がふっ!?」

「お前なんて、父でもなんでもないっ!!
 この薄汚れた犯罪者がっ!!」

 殴られ、転倒した男へと蹴りを入れつつ、レティシアは怨嗟を投げつける。

「セリムとの婚姻を許す――?
 ふざけないでっ!!
 こんな汚れた体で、どの面下げてセリムと付き合えって言うの!!?
 子供の頃からずっとお前に弄ばれ続けてっ!!
 “初めて”さえ失って!!
 どうやって!!?
 ねえ、どうやって!!?」

「がっ! がふっ!? げひっ!?
 れ、レティシア、待っ――ぐがっ!?」

 王女は男を蹴り続ける。

「あの優しかったお兄様を殺したのもっ!!
 お母さまを奪ったのもっ!!
 全部、お前がやったんでしょう!!
 他にも罪を重ね続けて――!!
 そんなお前が許されるとでも思っているのっ!?」

「げぼっ! がぼっ! ぎっ! ぎゃっ!」

「死ねっ!!
 死になさい、爺っ!!
 お前が犯した罪を、少しでも後悔しながらっ!!
 死ねっ!! 死ねっ!!」

「んごっ! がっ! がぎっ! ごぼっ!」

 顔が変形し、全身痣だらけになった男を、なおも蹴りつけ、踏みつけるレティシア。
 このまま放っておけば、男は死ぬだろうが――

『姫よ、待て』

 ――吾輩は彼女を止めた。

「――な、何用ですか?」

『お前の気持ちはよく分かる。
 ……だが、子が親を殺すものではない』

「――え?
 ……ま、魔王?」

 加えて、よく見れば男を暴行し続けたレティシアの手足も、また傷ついていた。
 感情の赴くまま、裸のままでやっていたのだから、無理もないことだ。
 吾輩は、魔法でさくっとその傷を癒すと、彼女に告げる。

『服を着るのだ、姫よ。
 もうじき、“面白いこと”が起こる』

「――?
 分かりました」

 疑問符を浮かべながらも、吾輩の指示通り衣服を着だす王女。
 物わかりのいい子である。

 彼女の準備が整った、その直後。

「――何事がありましたか!!?」

 兵士達が、部屋へとやってきた。
 部屋での騒ぎを聞きつけたのだろう。

 ……それを見て、彼女は一瞬で理解したらしい。
 重ね重ね言ってしまうが、聡明な女性だ。

「――皆さん、狼藉者ですっ!
 ひっ捕らえなさいっ!!」

 そう言って彼女が指さしたのは――

「――え?」

 ――状況をまるで理解していない、国王とかいう男の方であった。

「な、何を言っておるレティシア!
 狼藉を働いたのは、あっちの――」

 男が吾輩を探そうとして、口ごもった。
 残念ながら、吾輩は既に部屋から姿を消している。

「王の部屋に侵入するとは不届きな輩めっ!!」

「ま、待て、儂が分からんのか貴様らっ!
 儂はこの国の王であるぞっ!!」

「何を寝惚けたことをっ!!
 自分の顔すら分かっておらんのかっ!!
 お前など、王とは似ても似つかんわっ!!」

「な、なにを――!?」

 兵士に指摘され、部屋の鏡を覗く男。
 そこには――

 ――幾度にもわたる激しい痛みで全身の毛が抜け落ち、形相が歪み。
 ――姫によって顔面が腫れ上がった、みすぼらしい老人の姿があった。

 謁見の間で見たような、威厳ある老人など、どこにもいない。

「王を騙るとは、不届き千万!!
 来い! 目的がなにか、洗いざらい喋って貰おうっ!!」

「生きて城から出れると思うなよ、罪人がっ!!」

「――や、やめっ、やめてっ! がっ!? うぎっ!!
 やめて、ください――があっ!? ぐあっ!?」

 今度は兵士達の手で殴る蹴るの暴行を受けながら、王は部屋から連れ去られていった。
 ……吾輩の耳に、側近の声が響く。

『如何でしたでしょうか、魔王様。
 良いタイミングだったはずですが』

『うむ、グッドだ、側近よ』

『お褒めに預かり恐悦至極。
 まあ、少し幻を見せて彼らの到着を遅らせただけですがね』

『それで、この後の手筈は?』

『それもご心配なく。
 あの男を入れる手筈の牢には、地獄への門を設置してあります。
 この前、子供を落としたような温い場所矯正施設ではなく、正真正銘、永遠と苦しみを味える地獄への入り口を。
 頃合いを見計らって、送ってやりますよ』

『うむ、任せた。
 ――先に帰っていてくれ。
 吾輩は姫に話がある』

『承知しました』

 そう言うと、側近の気配が消えた。
 吾輩は再度部屋へと出現し、姫に話しかける。

『姫よ、話がある』

「……私を、手駒にしたいのですね?」

『話が早いな、その通りだ。
 お前はあの男に代わり即位し、この国の女王となれ。
 そして、我が意のままに動くのだ。
 王は――まあ、魔王に殺されたとかしておけば良いだろう。
 証拠が必要とあれば、適宜用意する』

「――断れば、どうなります?」

『それが分からぬ程、お前は愚か者ではあるまい』

 まあ、あのまま帰っても良かったのだが。
 王城侵入などというどでかいことをやらかしたのだ、少しは魔王らしいこともやっておかねば。
 ……別に、このままレティシアを放置するのが心配だとか、下手に王族として担ぎ上げられてセリムとレティシアが会えなくなったら大変とか、思ってはいないぞ?

「――分かりました。
 但し、条件があります」

『ほう、なんだ?』

「私と勇者様を、もう二度と会わせないで頂きたいのです」

『――へ?』

 と、いかんいかん。
 つい間の抜けた声を出してしまった。

『な、何故だ?
 お前は、勇者のことを好きなのでは――』

「好きです、愛しています。
 しかし、もう私は穢れた身。
 その上、己の身の可愛さに、魔王とも取引したのです――彼に会わせる顔がありません。
 もし私を、勇者様の篭絡に使いたいというのであれば――」

『あ、あれば?』

「この場で喉を引き裂き、死にましょう」

 ……本気の目だ。
 吾輩がもしこの場で勇者と引き合わせるようなことを言えば、確実に王女は自殺する。
 そう信じさせる目だった。

 ――吾輩は、首を縦に振るしかなかった。

『わ、分かった。
 そこまで言うのであれば、考慮しよう。
 ……では、女王レティシアよ!
 これよりは、魔王の配下となり、その地位を吾輩に役立てるのだ!』

「――畏まりました、魔王様」

 ……うん、人の心なんて変わるものなんだし?
 こんなこと言いつつも、その内、想いが積もり積もって勇者に会いたくて仕方なくなることもあるだろう。
 その時になって後悔するがいい、王女よ!
 ちゃんと謝ってくんなきゃ、許してやんないんだからな!?

「……それで、魔王様。
 直近、どのように動けばよいでしょう?」

『ふむ……まあ、いきなり民を苦しめることもない。
 王が死んですぐに国の政策が悪化すれば、魔王の関与を疑われかねん。
 レティシアよ、可能な限り善政を執り行え。
 その為の知恵であれば、吾輩が幾らでも貸そう。
 くっくっく、自分達が慕う女王が魔王に下っていたと知ったときの民の絶望――さぞかし味わい深いものとなろう!」

「…………」

 あれ、王女がジト目で吾輩のこと見てる?
 おいおい、ちょっとちょっと、吾輩、君の上司よ?
 そういう目するのって、不敬なんじゃなぁい?

 そんな気持ちを抑えに抑え、なるべく威厳を保った声色で姫へと話しかける。

『……何か言いたいことがあるか?』

「……いえ、何でもありませんわ」

 返事をしたレティシアは――何故か、微笑んでいた。


 ――――――――



 “賢王レティシアの名は、ともすれば勇者セリム以上に有名であろう。
 若くして女王となり、数々の革新的政策を立案して国の発展に貢献した女傑である。
 その上、王制を廃止し、今日にまで続く共和制を築き上げた人物でもあるのだから、政治におけるその才覚は底が知れない。
 勇者の魔王討伐にも大いに貢献したと伝えられている。
 魔王最大の失策は、“当時の王を殺害し、彼女の即位を早めてしまったこと”とまで語られる程だ。

 そんな彼女であるが、生涯独身を貫き通したことでも知られている。
 身目麗しい女性であったため、多くの貴族・王族から求婚を受けたのだが――その全てを断ったのだ。
『国に全てを捧げたから』『彼女は国と結婚した』などと揶揄されるが、『王女レティシアと勇者セリムは恋人同士であった』とする説もある。
 確かに、王女と勇者は短い期間であるものの共に旅をしていたと記録されている。
 しかし、それ以降における2人の接触はどの資料にも記されていない――つまりは、完全な俗説だ。

 とは言ったものの、同じ時代に、同じ年頃の男女が英雄として活躍していたという事実。
 これに対して、民衆がロマンスを求めてしまうのも、致し方ないことなのかもしれない。
 歴史家として恥ずべき行為であるものの、筆者もまた、歴史の裏でこの2人がもし恋仲であったならば――と夢想してしまう”


 後世の歴史家 ネトラ・レーダ・メイヨウ 著
「勇者セリムの冒険」より
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