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第8話 テレポートアイテムって何?
【2】(挿絵有り)
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仕方がない。全て、仕方のないことなのである。
崖を登っている最中である以上、手足は岩にしがみつくため使うしかなく。となれば空いているのは頭部位しかあるまい。
そういう至極正当な理由の下、アスヴェルは滑り落ちてくる少女の股の間に自らの頭を滑り込ませ、なんとか彼女の転落を食い止めたのである。
「は、離せっ!! 離せっ!! 離せよぉおおおおっ!!!」
「もがもがっ」
少女が暴れるせいで重心が激しくぶれるが、その都度頭の位置を調整し姿勢を保つ。
「ああああああああ!! なんだこの安定感!!? こんなとこで奇跡的なバランス感覚発揮すんなぁっ!!! いいから、離せよ!! こっから落ちた位じゃ死なねぇから!!」
「もがもがっ!」
そうはいかない。仮に自分が落ちようと、少女が落下することだけは防がねばならない。それが勇者の義務なのである。
故に、耐えねばならない。ミナトがどれだけ身体を揺さぶろうと。顔面に柔らかな尻肉を押し付けられようと。すべすべでもちもちの太ももに圧迫されようと!
「足に頬ずりするのを止めろぉ!!」
「もがもが?」
いや、それはこの体勢的に無理があるというか。彼女の下半身を顔で支えている以上、接触は免れない。そこはなんとか我慢して欲しい。
「す~は~す~は~」
「深呼吸をするなぁっ!!!!?」
息を止めろとは、いったい自分にどうしろと言うのか。
ああ、しかし。それにしても、柔らかい。スベスベだ。もちもちだ。そして芳しい匂い。例えるならばこれは――ジャスミン。
――と、そんな馬鹿なやり取り(自覚はある)をしているところへ、
「ぬふふふぅ、仲がよろしいですなぁ、お二方」
すぐ隣から声が聞こえる。見れば、そこには太っちょな青年――ハルが居た。自分達がじゃれ合っている間に、追いつかれてしまったらしい。
「こんなところでウサギと亀の寓話を再現できるとは思いませんでしたぞぉ。んふふふふふぅ、お先に失礼いたします」
その身体に見合わぬ器用さでピッケルを操り、安全ロープを設置しながら着実に登っていく。
「ま、待ってくれハル! せめてこの状態から助けて!!?」
「ぬっふっふぅ、あのミナト殿が弱音を吐くとは、珍しいこともあるもんで――――ありゃっ?」
ミナトの呼びかけに答え、無理に体の向きを変えたのがまずかったのか。今度はハルが体勢を崩してしまう。
「やべっ! ハル!!?」
「あわっあわわっ――――きゃぁあああああああっ!!!」
本来ならば安全ロープが支えてくれる筈なのだが、間の悪いことにその場所ではまだロープを掛ける杭を打ち込めていなかった。重力による加速で勢いづいたハルの身体は、これまでに設置していた杭を引き抜きながら下へ下へと落ちていく。
「これは、まずい――!!」
あの落ち方は危険だ。ハルはパニックに陥り、碌に受け身も取れそうにない。
アスヴェルはとっさの判断でミナトを小脇に抱えると、そのまま崖を駆け下りた。
落下速度よりも早く壁面を走り抜け、数瞬後にはハルに追いつく。
「よっと!」
空いている手で青年を掴み抱きかかえると同時に、身体を反転。足に力を込めて岩面へ突き立て、けたたましい破壊音を鳴らしながら急停止する。
(――せっかくだ、上まで行ってしまうか)
こんなことがあった後だ、もう一度登れというのはハルにとって酷なことであろう。そう考えたアスヴェルは、2人を抱えたまま崖を駆け上がっていった。
思い切った前傾体勢で重力とのバランスを保ちつつ、卓越した脚力で岩盤を蹴る。地を走るのと大差ない速度で、垂直な壁面を疾走した。
「マジかぁああああっ!!?」
「はわぁあああああっ!!?」
ハルとミナトの叫びが重なる。正直居心地は最悪に近いだろうが、そう時間はかからないので堪えて欲しい。
(ほら、もう頂上だ――!)
とか考えている間に到着だ。すたっと華麗に着地する。
アスヴェルがその気になれば、ざっとこんなものである。
「着いたぞ、二人共。大丈夫だったか?」
抱えていたミナト達を降ろしながら、安否を確認。怪我は無い筈だが――
「あわ、あわわ――と、とと、殿方に、アスヴェルさんに、抱かれて――あわわわわ、近い近い顔が近いですぅ――」
――ハルの口調がおかしい。内容も意味不明だ。恐怖で錯乱しているのか。あの高さから自由落下したのだから、無理もないかもしれない。
その一方でミナトはと言うと、
「……まあ、うん。山ほど言いたいことあんだけど、ハル助けてくれたことだし一個だけでいいや」
「ふむ?」
神妙な顔でこちらを見つめてくる。いったい何事かと耳を傾けた、次の瞬間。
「こういうことができるなら、最初からやれぁ!!!!」
「キテグハァッ!!?!!?!」
ミナト渾身の回し蹴りが、テンプルを直撃する。いかなアスヴェルと言えど、脳を揺さぶられては崩れ去るより他なかった……
「そういえば、とりあえず君達の言う通りほいほいここまでついて来たのだけれども、結局この先には何があるんだ?」
「さらっと復活しやがったな。もう少し蹲ってろよオマエ」
全員落ち着いたようなので話題を切り出してみたのだが、ミナトは不満顔だ。しかし質問には答えてくれるようで、
「この洞窟の奥にでっかいドラゴンが棲んでるんだ。かなり昔から生きてる奴で、人の言葉も喋れてさ。そいつなら、ひょっとして何か知ってるんじゃないかって」
「――っ!?」
その“単語”を聞いて、アスヴェルの身が硬直する。
「……ここには、その、アレがいるのか?」
「アレ?」
「ほら、無駄に硬い鱗生やして、不細工で醜悪な面した、トカゲモドキの――」
「もしかして、ドラゴンのこと言ってるのか?」
「そう、ドラコン」
「それじゃゴルフの大会だろーが」
ゴルフってなんだ。
「え? なに? オマエ、ドラゴン苦手なの? 勇者のくせに?
なんだなんだ、オマエにも可愛いとこあるんだなぁ♪」
「あ、いや、苦手というかなんというか――」
妙に嬉しそうなミナトに水を差すような形で、説明を続ける。
「昔、家族を竜に喰い殺されたことがあってな。
それ以来、どうも――」
「……………………」
少女の顔が沈痛に歪んだ。
なんだか居たたまれない沈黙が辺りを襲う。
――結論として、今日の探索は中止となった。
◆勇者一口メモ
でっかいトカゲとか、この世からいなくなってしまえばいいと思うよ。
●Divine Cradle運営からのお知らせ
日頃よりDivine Cradleをプレイ頂き、誠にありがとうございます。
数日前より“洞窟竜ボルケイン”が該当フィールドから消えている現象について報告いたします。
同現象は運営側でも確認できましたので、目下原因の解析している最中です。
解決の目途が立ち次第、再びご連絡差し上げます。
皆様にはご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありません。
また、本件に関しましてはお詫びとして神聖石の配布を行う予定です。
こちらも、詳細決まりましたらご連絡いたします。
これからもDivine Cradleをどうぞよろしくお願い致します。
◆勇者一口メモ その2
ミナトの全景
{IMG60514}
崖を登っている最中である以上、手足は岩にしがみつくため使うしかなく。となれば空いているのは頭部位しかあるまい。
そういう至極正当な理由の下、アスヴェルは滑り落ちてくる少女の股の間に自らの頭を滑り込ませ、なんとか彼女の転落を食い止めたのである。
「は、離せっ!! 離せっ!! 離せよぉおおおおっ!!!」
「もがもがっ」
少女が暴れるせいで重心が激しくぶれるが、その都度頭の位置を調整し姿勢を保つ。
「ああああああああ!! なんだこの安定感!!? こんなとこで奇跡的なバランス感覚発揮すんなぁっ!!! いいから、離せよ!! こっから落ちた位じゃ死なねぇから!!」
「もがもがっ!」
そうはいかない。仮に自分が落ちようと、少女が落下することだけは防がねばならない。それが勇者の義務なのである。
故に、耐えねばならない。ミナトがどれだけ身体を揺さぶろうと。顔面に柔らかな尻肉を押し付けられようと。すべすべでもちもちの太ももに圧迫されようと!
「足に頬ずりするのを止めろぉ!!」
「もがもが?」
いや、それはこの体勢的に無理があるというか。彼女の下半身を顔で支えている以上、接触は免れない。そこはなんとか我慢して欲しい。
「す~は~す~は~」
「深呼吸をするなぁっ!!!!?」
息を止めろとは、いったい自分にどうしろと言うのか。
ああ、しかし。それにしても、柔らかい。スベスベだ。もちもちだ。そして芳しい匂い。例えるならばこれは――ジャスミン。
――と、そんな馬鹿なやり取り(自覚はある)をしているところへ、
「ぬふふふぅ、仲がよろしいですなぁ、お二方」
すぐ隣から声が聞こえる。見れば、そこには太っちょな青年――ハルが居た。自分達がじゃれ合っている間に、追いつかれてしまったらしい。
「こんなところでウサギと亀の寓話を再現できるとは思いませんでしたぞぉ。んふふふふふぅ、お先に失礼いたします」
その身体に見合わぬ器用さでピッケルを操り、安全ロープを設置しながら着実に登っていく。
「ま、待ってくれハル! せめてこの状態から助けて!!?」
「ぬっふっふぅ、あのミナト殿が弱音を吐くとは、珍しいこともあるもんで――――ありゃっ?」
ミナトの呼びかけに答え、無理に体の向きを変えたのがまずかったのか。今度はハルが体勢を崩してしまう。
「やべっ! ハル!!?」
「あわっあわわっ――――きゃぁあああああああっ!!!」
本来ならば安全ロープが支えてくれる筈なのだが、間の悪いことにその場所ではまだロープを掛ける杭を打ち込めていなかった。重力による加速で勢いづいたハルの身体は、これまでに設置していた杭を引き抜きながら下へ下へと落ちていく。
「これは、まずい――!!」
あの落ち方は危険だ。ハルはパニックに陥り、碌に受け身も取れそうにない。
アスヴェルはとっさの判断でミナトを小脇に抱えると、そのまま崖を駆け下りた。
落下速度よりも早く壁面を走り抜け、数瞬後にはハルに追いつく。
「よっと!」
空いている手で青年を掴み抱きかかえると同時に、身体を反転。足に力を込めて岩面へ突き立て、けたたましい破壊音を鳴らしながら急停止する。
(――せっかくだ、上まで行ってしまうか)
こんなことがあった後だ、もう一度登れというのはハルにとって酷なことであろう。そう考えたアスヴェルは、2人を抱えたまま崖を駆け上がっていった。
思い切った前傾体勢で重力とのバランスを保ちつつ、卓越した脚力で岩盤を蹴る。地を走るのと大差ない速度で、垂直な壁面を疾走した。
「マジかぁああああっ!!?」
「はわぁあああああっ!!?」
ハルとミナトの叫びが重なる。正直居心地は最悪に近いだろうが、そう時間はかからないので堪えて欲しい。
(ほら、もう頂上だ――!)
とか考えている間に到着だ。すたっと華麗に着地する。
アスヴェルがその気になれば、ざっとこんなものである。
「着いたぞ、二人共。大丈夫だったか?」
抱えていたミナト達を降ろしながら、安否を確認。怪我は無い筈だが――
「あわ、あわわ――と、とと、殿方に、アスヴェルさんに、抱かれて――あわわわわ、近い近い顔が近いですぅ――」
――ハルの口調がおかしい。内容も意味不明だ。恐怖で錯乱しているのか。あの高さから自由落下したのだから、無理もないかもしれない。
その一方でミナトはと言うと、
「……まあ、うん。山ほど言いたいことあんだけど、ハル助けてくれたことだし一個だけでいいや」
「ふむ?」
神妙な顔でこちらを見つめてくる。いったい何事かと耳を傾けた、次の瞬間。
「こういうことができるなら、最初からやれぁ!!!!」
「キテグハァッ!!?!!?!」
ミナト渾身の回し蹴りが、テンプルを直撃する。いかなアスヴェルと言えど、脳を揺さぶられては崩れ去るより他なかった……
「そういえば、とりあえず君達の言う通りほいほいここまでついて来たのだけれども、結局この先には何があるんだ?」
「さらっと復活しやがったな。もう少し蹲ってろよオマエ」
全員落ち着いたようなので話題を切り出してみたのだが、ミナトは不満顔だ。しかし質問には答えてくれるようで、
「この洞窟の奥にでっかいドラゴンが棲んでるんだ。かなり昔から生きてる奴で、人の言葉も喋れてさ。そいつなら、ひょっとして何か知ってるんじゃないかって」
「――っ!?」
その“単語”を聞いて、アスヴェルの身が硬直する。
「……ここには、その、アレがいるのか?」
「アレ?」
「ほら、無駄に硬い鱗生やして、不細工で醜悪な面した、トカゲモドキの――」
「もしかして、ドラゴンのこと言ってるのか?」
「そう、ドラコン」
「それじゃゴルフの大会だろーが」
ゴルフってなんだ。
「え? なに? オマエ、ドラゴン苦手なの? 勇者のくせに?
なんだなんだ、オマエにも可愛いとこあるんだなぁ♪」
「あ、いや、苦手というかなんというか――」
妙に嬉しそうなミナトに水を差すような形で、説明を続ける。
「昔、家族を竜に喰い殺されたことがあってな。
それ以来、どうも――」
「……………………」
少女の顔が沈痛に歪んだ。
なんだか居たたまれない沈黙が辺りを襲う。
――結論として、今日の探索は中止となった。
◆勇者一口メモ
でっかいトカゲとか、この世からいなくなってしまえばいいと思うよ。
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日頃よりDivine Cradleをプレイ頂き、誠にありがとうございます。
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同現象は運営側でも確認できましたので、目下原因の解析している最中です。
解決の目途が立ち次第、再びご連絡差し上げます。
皆様にはご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありません。
また、本件に関しましてはお詫びとして神聖石の配布を行う予定です。
こちらも、詳細決まりましたらご連絡いたします。
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ミナトの全景
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