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第9話 アバターって、何?
【1】
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探索を始めてから数日が経過した。この間、何の手掛かりも無し。手掛かりのためのヒントすら無い状態だ。高難易度クエストにも程がある。
「ぬふぅ、古き良きゲームをプレイしている気分ですなぁ。昔のゲームはプレイヤーに対して大分不親切でしたし、攻略サイトなんて代物もありませんでしたから」
馴染みの食堂で椅子に座り、肥満体な青年ハルはため息交じりにそう呟いた。この<イベント>に対する感想が半分、愚痴が半分、といったところだ。
「ぬぬぬ、今は地道に一歩一歩進めていくしかないのでしょう。アスヴェル殿の情報をオープンにしてプレイヤー全員で攻略に臨めば、ちゃちゃっと解決できるのやもしれませんが――それは最終手段としたいところですなぁ」
せっかく大イベントの始まりに立ち会えたのだ、できれば自分達だけで進めたいという欲求を彼は捨てられない。今のところ時間制限のようなものは見当たらないので、当面このペースでも大丈夫だろう――と自分自身にも言い訳して、逸る気持ちを抑える。
ただ、隣にいる少女が苛々しているのは、進展の無いことだけが理由では無さそうで。
「……何やってんだよ、アイツ」
不機嫌な声色を隠そうともしない。いや、本人的には隠してるつもりなのかもしれないが、まるで実行できていなかった。彼女の鋭い視線の先には、この<イベント>のキーキャラクターであるNPC、勇者アスヴェルが居る。普段はハル達と行動を共にしている彼だが、今は少し離れた場所にいて――
「へー、アスヴェルさん、勇者なんだぁ」
「どんな冒険してきたの? 聞かせて聞かせて♪」
――女性陣に取り囲まれていた。数日前にあった訓練場での一件で、一部プレイヤーにアスヴェルのことがバレた結果である。大分でかい騒ぎになったせいで、ある程度の説明をせざるを得なかったのだ。重要NPCな上に美形なアスヴェルに対し、特に女性プレイヤーは高い関心を寄せているようであった。
ちなみに、当のアスヴェルはと言うと、
「はっはっはっは。いやー、あっはっはっは」
にこやかな笑みを浮かべ、女性達へ対応をしていた。意外なことに割とこなれている様子だ。周囲を女性でとり囲われても物怖じしていない。
それがまたミナトの反感を買っており、「ちっ」と露骨に舌打ちなどしていたりするのだが。
「ぬふふふ、しかし<クラン>の外には漏れなかったのは僥倖でした。やはり、うちが所有する訓練場に行って正解でしたなぁ」
「……そうだな」
ハルの言葉にも、ぶっきらぼうな口調で答えてくる。
ちなみに、<クラン>とはDivine Cradle内で構築するコミュニティの名称である。ハルやミナトが所属する<クラン>はこの酒場“ウェストホーム”を拠点としたチームであり、アスヴェルに絡んでいる女性達も<クラン>の一員だ。同じ<クラン>員だからこそ、ハル達も事情を説明する気になった訳で。
「つか、アイツ自分の状況分かってんのか? 魔王と戦ってたってんなら早く元の大陸戻らなくちゃまずいんじゃねぇのかよ。何をちんたら遊んでんだ!」
「拙者達も別段攻略を急いでいた訳でもありませぬが。しかし――ぬふふふぅ、ミナト殿、口ではアレコレ文句を言いつつ、やはりアスヴェル殿が気になるんですなぁ」
「ちげーよ!? アイツの自覚の無さに怒ってんだよ、オレは!!」
言うや否や、少女は席を立った。その足で、女性に囲われた青年の方へと近づいていく。
「おい、アスヴェル!」
「む? おお、ミナト、どうした?」
「どうしたもこうしたもねぇよ! そろそろ時間だ! ほら、今日は太古の森で賢樹トレントに会うって予定だっただろ!? こんなとこで時間潰してんじゃねぇよ!」
「いやでも不愛想な勇者だと思われたら嫌だし」
「何言ってんだ!? ほら、行くぞ!!」
若干渋ったアスヴェルの腕を掴み、無理やり連れ出そうとするも――
「えー、もう少しいいじゃなーい」
「私としては、ミナトちゃんと勇者君の恋バナとか聞きたいかなぁーって」
――女性陣に引き留められた。というか、矛先がミナトにも向いた。
実は彼女、その愛らしい外見と荒っぽい性格のギャップから、よくよくクランのお姉さま方に弄られていたりする。しかし、未だ自分が弄られキャラであることに自覚は無い様だ。
たじろぐ少女と裏腹に、青年の方は自信満々に胸を張り、
「そうか。ならば話そう!」
「ねぇよ!! オレとオマエとの間にそんな浮ついた話なんざこれっぽっちも存在しない!!」
少女に全力で否定されていた。だがそんなミナトの気勢は周りに一切効いていない。皆ニヤニヤとした野次馬根性丸出しな笑みを崩していなかった。その内の一人がささっと手を上げると、
「それじゃ、アスヴェル君にしつもーん。ミナトちゃんのどの辺りを気に入ったの?」
「む。そうだな、一概に語り尽くせないが敢えて一言で言うなら――」
「言うなら?」
女性達は興味津々だ。一方でミナトも気にはなるのか、喚くのを一瞬止めて耳を傾けていた。そんな中でアスヴェルは一拍溜めてから、“答え”を披露する。
「――顔だ」
「オマエ最低だな」
ミナトの声は冷たかった。
「いやいや、待ってくれマイハニー、違うんだ。そりゃあ、快活な性格が心地良いとか、分け隔てない態度が好みだとか、そういう耳触りの良い言葉を使おうと思えば使えた。しかしここでそんなお為ごかしをするのは、君に対して甚だ不誠実ではないだろうか?」
「誠実不誠実以前の問題だ!! さてはオマエ、女と付き合ったことないだろ!?」
「し、失敬な。私だって男女交際の一つや二つ経験しているとも!」
青年の思いがけない発言に、俄然周囲が熱を帯びだした。「わー♪」とか「きゃー♪」とかいう声が湧き上がっているのだが、当の本人達はそれを意に介していないのか、平然と会話を続ける。
「あるのか? オマエみたいなデリカシーの無い奴に彼女なんてできたことが?」
「当然だ」
「本当にー? じゃあ相手がどんな奴だったのか説明してみろよ」
「……え?」
「お? 言えないのか? 言えないってことは嘘だと認めることになるよな?」
「そ、そんなことは無い! そんなことは無いぞ! 知りたいと言うなら語ってやろう!」
売り言葉に買い言葉。半ばヤケクソのようなアスヴェルの台詞である。
「……すっごい微妙な顔してるねー、勇者君」
「そりゃ、本命の子の前で元カノの話とかしたくないよね」
「自分から言い出したのが悪いんだけどねー。ミナトちゃんもちょっとデリカシー足りないよねー」
女性陣もこれには同情的――だが、会話を止めてあげようとする人は誰も居ない。皆、他人の恋愛話に飢えているのだ、仕方がないね。
一方でアスヴェルは進退窮まった表情から一瞬で平常時に顔を戻すと、
「そう、あれは私の家族が竜に食われて間もなくのこと――」
「で、出だしが重いぞ……まあいいけど」
あんまりな始まり方に、ミナトを始め周囲の人達は――ついで少し離れた場所で聞き耳を立てているハルも――若干引いた。
「――身近な人達が皆居なくなり、憔悴した私はある女性と出会った。彼女は私の心を癒すため、甲斐甲斐しく世話をしてくれたものだ。そして独りで生きていくための知識や技術を教えてくれた」
「へぇ。なんかオマエの師匠みたいな感じの人なのか」
「そうだな。彼女からは様々なものを教わった。感謝してもしきれない。その気持ちは時が経つにつれ、だんだんと慕情へ変わっていった……」
「ほほう。で、どうなったんだ?」
「いやそれが。その女性、実は私の家族を殺した竜が化けた姿で。世話してくれてたのも、いい塩梅に美味く成長するまで待っていたというオチ」
「…………重いっつの」
沈黙が広がる。軽い口調のアスヴェルとは対照的に、周囲には重い雰囲気がのしかかっていた。
「そしてもう一人の女性が――」
「この空気の中続けんのか!? どんな神経してんだオマエ!! いや、このまま終わったら後味最悪だから続きを聞きたいけどさ!!」
ミナトの的確なつっこみ。ハルとしても同意見である。少女に促され、青年は改めて話を紡ぎ始める。
「その女性と初めて会ったのは幼少の頃。まだ家族が生きていた時分。父の仕事で遠くの街を訪れた際、偶然顔を合わせたんだ。何故か気が合ってなぁ、すぐ仲良くなったよ。その町に滞在していた間、よく遊んだものだ」
「へぇ。今度は幼馴染か。抑えるとこ抑えてんな」
「一旦は離れ離れになった私達だったが、8年の時を経て再会した。お互いすぐにあの時の子だと分かったよ。その後は長く一緒に居て、幾度も冒険を共にした。惹かれ始めるのにそう時間はかからなかった――いや、最初から惹かれ合っていたのかもしれない」
「ふーん、で、どうなった?」
「いやそれが! その女性、実は世界破滅を企む怪物が化けた姿でな。よく気が合ったのも、勇者である私を操って自分の手駒にするための演技だったというオチ」
「何らかのオチつけなきゃ女と付き合えないのかよ!?」
よく女性不信にならなかったものだと感心してしまう。
「なんなんだ!? いっそ笑った方がいいのか、ここは!?」
「笑ってくれていいぞ。寧ろ笑ってくれ――笑えよ、こんな滑稽な男の姿を」
「……ま、マジなトーンになるなよ。ほら、生きてりゃその内いいことあるって」
「そう、だな。君という恋人もできたことだしな」
「いやオレはオマエとそんな関係になる気一切ないから他を当たってくれ」
この期に及んで、ミナトの態度は素っ気なかった。ただ傍から見ていると、本人が言うほど脈が無いようにも見えない。
しかしそれはそれとして。
「やだぁ、アスヴェル君、かわいそー!」
「アタシが慰めてあげよっか? ね、ね?」
「R規制までなら解除してもいいよ?」
「やだー、だいたーん!」
語りを聞き終えた女性達は、前よりも積極的にアスヴェルに絡みだした。どうも彼女達の琴線に触れてしまったらしい。まあ、自分達の好奇心が満たされれば内容はどんなものでも構わなかったのかもしれないが。
その様子を見て、
「……こいつぁ、いけませんなぁ」
ハルは一つ、覚悟を決めるのであった。
「ぬふぅ、古き良きゲームをプレイしている気分ですなぁ。昔のゲームはプレイヤーに対して大分不親切でしたし、攻略サイトなんて代物もありませんでしたから」
馴染みの食堂で椅子に座り、肥満体な青年ハルはため息交じりにそう呟いた。この<イベント>に対する感想が半分、愚痴が半分、といったところだ。
「ぬぬぬ、今は地道に一歩一歩進めていくしかないのでしょう。アスヴェル殿の情報をオープンにしてプレイヤー全員で攻略に臨めば、ちゃちゃっと解決できるのやもしれませんが――それは最終手段としたいところですなぁ」
せっかく大イベントの始まりに立ち会えたのだ、できれば自分達だけで進めたいという欲求を彼は捨てられない。今のところ時間制限のようなものは見当たらないので、当面このペースでも大丈夫だろう――と自分自身にも言い訳して、逸る気持ちを抑える。
ただ、隣にいる少女が苛々しているのは、進展の無いことだけが理由では無さそうで。
「……何やってんだよ、アイツ」
不機嫌な声色を隠そうともしない。いや、本人的には隠してるつもりなのかもしれないが、まるで実行できていなかった。彼女の鋭い視線の先には、この<イベント>のキーキャラクターであるNPC、勇者アスヴェルが居る。普段はハル達と行動を共にしている彼だが、今は少し離れた場所にいて――
「へー、アスヴェルさん、勇者なんだぁ」
「どんな冒険してきたの? 聞かせて聞かせて♪」
――女性陣に取り囲まれていた。数日前にあった訓練場での一件で、一部プレイヤーにアスヴェルのことがバレた結果である。大分でかい騒ぎになったせいで、ある程度の説明をせざるを得なかったのだ。重要NPCな上に美形なアスヴェルに対し、特に女性プレイヤーは高い関心を寄せているようであった。
ちなみに、当のアスヴェルはと言うと、
「はっはっはっは。いやー、あっはっはっは」
にこやかな笑みを浮かべ、女性達へ対応をしていた。意外なことに割とこなれている様子だ。周囲を女性でとり囲われても物怖じしていない。
それがまたミナトの反感を買っており、「ちっ」と露骨に舌打ちなどしていたりするのだが。
「ぬふふふ、しかし<クラン>の外には漏れなかったのは僥倖でした。やはり、うちが所有する訓練場に行って正解でしたなぁ」
「……そうだな」
ハルの言葉にも、ぶっきらぼうな口調で答えてくる。
ちなみに、<クラン>とはDivine Cradle内で構築するコミュニティの名称である。ハルやミナトが所属する<クラン>はこの酒場“ウェストホーム”を拠点としたチームであり、アスヴェルに絡んでいる女性達も<クラン>の一員だ。同じ<クラン>員だからこそ、ハル達も事情を説明する気になった訳で。
「つか、アイツ自分の状況分かってんのか? 魔王と戦ってたってんなら早く元の大陸戻らなくちゃまずいんじゃねぇのかよ。何をちんたら遊んでんだ!」
「拙者達も別段攻略を急いでいた訳でもありませぬが。しかし――ぬふふふぅ、ミナト殿、口ではアレコレ文句を言いつつ、やはりアスヴェル殿が気になるんですなぁ」
「ちげーよ!? アイツの自覚の無さに怒ってんだよ、オレは!!」
言うや否や、少女は席を立った。その足で、女性に囲われた青年の方へと近づいていく。
「おい、アスヴェル!」
「む? おお、ミナト、どうした?」
「どうしたもこうしたもねぇよ! そろそろ時間だ! ほら、今日は太古の森で賢樹トレントに会うって予定だっただろ!? こんなとこで時間潰してんじゃねぇよ!」
「いやでも不愛想な勇者だと思われたら嫌だし」
「何言ってんだ!? ほら、行くぞ!!」
若干渋ったアスヴェルの腕を掴み、無理やり連れ出そうとするも――
「えー、もう少しいいじゃなーい」
「私としては、ミナトちゃんと勇者君の恋バナとか聞きたいかなぁーって」
――女性陣に引き留められた。というか、矛先がミナトにも向いた。
実は彼女、その愛らしい外見と荒っぽい性格のギャップから、よくよくクランのお姉さま方に弄られていたりする。しかし、未だ自分が弄られキャラであることに自覚は無い様だ。
たじろぐ少女と裏腹に、青年の方は自信満々に胸を張り、
「そうか。ならば話そう!」
「ねぇよ!! オレとオマエとの間にそんな浮ついた話なんざこれっぽっちも存在しない!!」
少女に全力で否定されていた。だがそんなミナトの気勢は周りに一切効いていない。皆ニヤニヤとした野次馬根性丸出しな笑みを崩していなかった。その内の一人がささっと手を上げると、
「それじゃ、アスヴェル君にしつもーん。ミナトちゃんのどの辺りを気に入ったの?」
「む。そうだな、一概に語り尽くせないが敢えて一言で言うなら――」
「言うなら?」
女性達は興味津々だ。一方でミナトも気にはなるのか、喚くのを一瞬止めて耳を傾けていた。そんな中でアスヴェルは一拍溜めてから、“答え”を披露する。
「――顔だ」
「オマエ最低だな」
ミナトの声は冷たかった。
「いやいや、待ってくれマイハニー、違うんだ。そりゃあ、快活な性格が心地良いとか、分け隔てない態度が好みだとか、そういう耳触りの良い言葉を使おうと思えば使えた。しかしここでそんなお為ごかしをするのは、君に対して甚だ不誠実ではないだろうか?」
「誠実不誠実以前の問題だ!! さてはオマエ、女と付き合ったことないだろ!?」
「し、失敬な。私だって男女交際の一つや二つ経験しているとも!」
青年の思いがけない発言に、俄然周囲が熱を帯びだした。「わー♪」とか「きゃー♪」とかいう声が湧き上がっているのだが、当の本人達はそれを意に介していないのか、平然と会話を続ける。
「あるのか? オマエみたいなデリカシーの無い奴に彼女なんてできたことが?」
「当然だ」
「本当にー? じゃあ相手がどんな奴だったのか説明してみろよ」
「……え?」
「お? 言えないのか? 言えないってことは嘘だと認めることになるよな?」
「そ、そんなことは無い! そんなことは無いぞ! 知りたいと言うなら語ってやろう!」
売り言葉に買い言葉。半ばヤケクソのようなアスヴェルの台詞である。
「……すっごい微妙な顔してるねー、勇者君」
「そりゃ、本命の子の前で元カノの話とかしたくないよね」
「自分から言い出したのが悪いんだけどねー。ミナトちゃんもちょっとデリカシー足りないよねー」
女性陣もこれには同情的――だが、会話を止めてあげようとする人は誰も居ない。皆、他人の恋愛話に飢えているのだ、仕方がないね。
一方でアスヴェルは進退窮まった表情から一瞬で平常時に顔を戻すと、
「そう、あれは私の家族が竜に食われて間もなくのこと――」
「で、出だしが重いぞ……まあいいけど」
あんまりな始まり方に、ミナトを始め周囲の人達は――ついで少し離れた場所で聞き耳を立てているハルも――若干引いた。
「――身近な人達が皆居なくなり、憔悴した私はある女性と出会った。彼女は私の心を癒すため、甲斐甲斐しく世話をしてくれたものだ。そして独りで生きていくための知識や技術を教えてくれた」
「へぇ。なんかオマエの師匠みたいな感じの人なのか」
「そうだな。彼女からは様々なものを教わった。感謝してもしきれない。その気持ちは時が経つにつれ、だんだんと慕情へ変わっていった……」
「ほほう。で、どうなったんだ?」
「いやそれが。その女性、実は私の家族を殺した竜が化けた姿で。世話してくれてたのも、いい塩梅に美味く成長するまで待っていたというオチ」
「…………重いっつの」
沈黙が広がる。軽い口調のアスヴェルとは対照的に、周囲には重い雰囲気がのしかかっていた。
「そしてもう一人の女性が――」
「この空気の中続けんのか!? どんな神経してんだオマエ!! いや、このまま終わったら後味最悪だから続きを聞きたいけどさ!!」
ミナトの的確なつっこみ。ハルとしても同意見である。少女に促され、青年は改めて話を紡ぎ始める。
「その女性と初めて会ったのは幼少の頃。まだ家族が生きていた時分。父の仕事で遠くの街を訪れた際、偶然顔を合わせたんだ。何故か気が合ってなぁ、すぐ仲良くなったよ。その町に滞在していた間、よく遊んだものだ」
「へぇ。今度は幼馴染か。抑えるとこ抑えてんな」
「一旦は離れ離れになった私達だったが、8年の時を経て再会した。お互いすぐにあの時の子だと分かったよ。その後は長く一緒に居て、幾度も冒険を共にした。惹かれ始めるのにそう時間はかからなかった――いや、最初から惹かれ合っていたのかもしれない」
「ふーん、で、どうなった?」
「いやそれが! その女性、実は世界破滅を企む怪物が化けた姿でな。よく気が合ったのも、勇者である私を操って自分の手駒にするための演技だったというオチ」
「何らかのオチつけなきゃ女と付き合えないのかよ!?」
よく女性不信にならなかったものだと感心してしまう。
「なんなんだ!? いっそ笑った方がいいのか、ここは!?」
「笑ってくれていいぞ。寧ろ笑ってくれ――笑えよ、こんな滑稽な男の姿を」
「……ま、マジなトーンになるなよ。ほら、生きてりゃその内いいことあるって」
「そう、だな。君という恋人もできたことだしな」
「いやオレはオマエとそんな関係になる気一切ないから他を当たってくれ」
この期に及んで、ミナトの態度は素っ気なかった。ただ傍から見ていると、本人が言うほど脈が無いようにも見えない。
しかしそれはそれとして。
「やだぁ、アスヴェル君、かわいそー!」
「アタシが慰めてあげよっか? ね、ね?」
「R規制までなら解除してもいいよ?」
「やだー、だいたーん!」
語りを聞き終えた女性達は、前よりも積極的にアスヴェルに絡みだした。どうも彼女達の琴線に触れてしまったらしい。まあ、自分達の好奇心が満たされれば内容はどんなものでも構わなかったのかもしれないが。
その様子を見て、
「……こいつぁ、いけませんなぁ」
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