勇者がログインしました ~異世界に転生したら、周りからNPCだと勘違いされてしまうお話~

ぐうたら怪人Z

文字の大きさ
21 / 53
第10話 戦争って――何ぃ!?

【1】

しおりを挟む
 時刻は夕方。アスヴェル達一行は今日もまた探索を終え、拠点とする街“ベイリア”に帰ってきた。

(……喋る魚っているんだなぁ)

 今日はシシバ湿原という場所を巡ってきたのだが、そこにあった巨大な沼でそういう不可思議生物と交流したのである。ミナト達が平然と対応していたところを見るに、この大陸には人種族以外の高い知性を持つ生物が珍しくない程度にはいるのかもしれない。
 ちなみに、元の大陸に戻るための情報は何も得られなかったのだが。代わりといってはなんだが、魔物から大量のアイテムを入手できたりはした。当分アスヴェルは生活に困らないで済むらしい。こんな簡単に金策が出来ていいのかと疑問に思ったのだが、通常これ程の量を落とすことは滅多に無いそうだ。自分がいると、ドロップ率(と、この大陸では呼称しているそうで)が良くなるのだとか。

(しかし――お手軽な旅だったな、うん)

 テレポートアイテムがあるおかげで、実際には徒歩で数日かかる距離を一瞬で移動できる。魔物との遭遇もあったが正直アスヴェルの敵では無かったし、ミナトやハルも危なげなく対処していた。総じて、“冒険”といいうより“散策”、ピクニックにでも行った気分だ。

(ふっふっふ、ミナトとピクニック――か)

「何オマエ、変な顔でニヤついてんだ?」

 考えていることが顔に出ていたらしく、当のミナトからツッコミを受けるが、さして気にはならない。大丈夫、彼我の距離は順調に縮まっている。
 そんな風に妄想を膨らませていると――

「――むむ?」

 異変に気付いたのは、酒場“ウェストホーム”の扉を開けた時だった。妙に多くの人がホールに集まっている。そのほとんどが店の常連のようだが、皆一様に戸惑いの表情を浮かべていた。これはいったいどうしたのかと、横にいるミナト達へ視線をやってみれば、

「なんだこりゃ?」

「何か良からぬイベントでも起きましたかな?」

 2人共状況を理解できていないようだ。

(他の誰かに聞くしかないな。サイゴウはどこだ?)

 おそらくこの状況を最も把握しているであろう店長を探そうとするも――

「おお、アスヴェルの旦那!」

 ――彼を見つけるより先に別の人物から声がかけられた。

「うん? ああ、オーバタじゃないか」

 話しかけてきたのは、若干ガラの悪い風体の青年だ。名前をオーバタ。以前、街中で他の住民に乱暴を働いていたところを、アスヴェルに成敗された男である。あの後、彼の武器を直してから妙に懐かれてしまったのだ。今ではこの酒場の飲み仲間になっていたりする。

「いったいこの騒ぎはなんなんだ。君、何か知っているか?」

 少しでも情報が欲しいので、まずは目の前の青年に尋ねてみる。すると彼は頬をポリポリ掻きながら気まずげな顔をして、

「……いやー。知っているも何も、この騒ぎを作っちまったのが何を隠そう俺っちでして」

ほう・・

「あー、待ったー!! アスヴェルの旦那、その“目”待ったー!!? ガチな殺意を込めた瞳で見つめないで!! 別に俺っちが何かやらかした訳じゃないんでさぁ!!」

「ん、そうなの?」

 必死の弁解に、解き放ちかけた殺気を引っ込めた。オーバタは冷や汗を拭いつつ、説明を始める。

「えー、順を追ってお話させて貰いますとですね――」



「――戦争、だと?」

 説明を聞き終えたアスヴェルの第一声はそれだった。

「そうなんすよ。うちの団長がすみません」

 オーバタはぺこぺこ頭を下げている。
 なんでも、彼の在籍するクラン――互助的な組織で、この大陸ではかなり一般的な代物らしい――の長が、ミナト達のクランに戦線布告をしてきたそうだ。アスヴェルとオーバタが揉めた一件を引き合いにして。

「何度も止めたんすけどねぇ。ま、どうにもできなかったんで、せめてもの罪滅ぼしとチクりに来た訳ですが」

 当事者の意見を無視して押し切ってきたらしい。話を聞く限り、その団長とやらは相当過激な人物に思える。
 しかし、一緒に話を聞いていたミナトは別の感想を抱いたらしく、

「なんでだよ。オマエんとこのクランって『暁の鷹』だろ? あそこ、基本的に穏健派じゃん。オマエみたいなのもいるけど」

「それがまあなんていうか。あんま大きな声じゃ言えねぇんすけど、団長の嫁さんが、ほら、例の国家維持法・・・・・で――」

「……全ては理想の国家のためにってアレか」

「そうっす。それから団長、荒れちゃって荒れちゃって……気持ちは分かるんすけどね」

「……胸糞悪い話だな」

 彼女はそれで合点がいったようだ。どうも、込み入った事情がある様子である。
 その流れののまま、ミナトは後ろを振り向くと、

「どうすんだよ、おやっさん。この話、受けんのか?」

「つっぱねたいところだが……こんな事情・・・・・聞かされちまうとなぁ」

 返事をしたのはスキンヘッドの男――サイゴウだった。オーバタが説明をしている最中にこちらへやってきていたのである。
 聞いたところによると、ミナト達が所属するクランの団長はこの店長。つまり彼がこう言ったということは戦争が現実味を帯びてきたということであり――

「――そんな簡単に承諾していいものなのか?」

 堪らず、アスヴェルは非難の意味も込めてサイゴウへ声をかける。余りにあっさりと戦いを許諾する彼の態度に疑問を持ったのだ。しかし店長は肩を竦めるだけで、

「仕方ないだろう。向こうさんも色々と“溜まった”もんがあるようだし。適度にガス抜きしてやらんとな」

「う、うーむ?」

 頭を捻る。たったそれだけのために、“戦争”を起こしていいものだろうか。

(それともこの大陸では戦争という単語の意味会いが違うのか?)

 戦争は――今回の場合、国と国との戦いではなく小集団同士の諍いとった趣きだが――人と人が武力を持って争うものである。勝っても負けても、相応の犠牲は出る。少なくともアスヴェルはそう認識していた。
 だがそんな彼の心中とは裏腹に、ミナトはあくまで軽い態度を崩さない。

「ま、大丈夫だろ。オーバタが向こうのメンバーの<ステータス>持ってきてくれたから、戦略も立てやすいし。なんなら、こっちにはオマエもいるから」

「私も参加するのか?」

「なんだよ、まさか嫌だってんじゃないだろうな?」

「正直を言えば、軽々しく戦争など起こして欲しくは無い。他に手はないのか?」

「いつもは喧嘩っ早い癖にこんな時は消極的なのかよ。ひょっとして、勇者は人同士の戦いに手を出せないとか、そういうお決まりなアレか?」

「そういう訳でもないのだが……」

 どうも、ミナトは勘違いをしているようだ。アスヴェルが戦いに乗り気では無いと思っている模様。
 実情は真逆だ。アスヴェルはやる気満々である・・・・・・・・。単に、戦争という行為がこのケースにおいて非効率・・・と考えているだけなのだ。そんなことをするより、アスヴェルが一人で乗り込み、事の原因をさくっと“処理”してきた方が余程効率的・・・だろう。
 とはいえ、この辺りをしっかり説明すると余計な軋轢を生んでしまうかもしれない。ここは一つ、不言実行してしまうのが最善手か。

「仕方ないヤツだなぁ。じゃあ、参加してくれたら今度デートしてやるよ」

「彼奴等に地獄を見せてしんぜよう」

 戦いに臨む彼らの覚悟を無碍にすることなど、アスヴェルには到底できなかった。
 この大陸に来てから出来た仲間達の勝利へ少しでも貢献するため――そしてそのささやかな報酬として、ミナトとのデートを勝ち取るため――勇者は戦争に推参することを決意する……!



 ―――――――――――――――――――



「……いいのでござるか、ミナト殿?」

「いいって、何が?」

「アスヴェル殿を<戦争>に参加させる件にござる。彼のことが広く知れ渡ってしまうでござるよ?」

「あー。ま、いいんじゃないか? オーバタとか、クラン以外の奴らにもぼちぼち知られちゃってきたし。それにさ、前々からアイツを<戦争>へ連れてきたいって思ってたんだよね」

「ぬむむぅ、つまり、<イベント>のトリガーが<戦争>参加なのではないかと睨んだ訳ですな?」

「そゆこと。あれはオレらだけじゃ起こせないからな。渡りに船ってやつだ」

「しかしその結果、彼に言い寄ってくる者が増えるかもしれませんぞ」

「そんときゃ所有権を主張させて貰うさ。アスヴェルは・・・・・・オレのもんだ・・・・・・ってな!」

「…………」

「? どうした、ハル?」

「い、いえ、なんでもないでござるにござる。アスヴェル殿が戦争で如何に振る舞うか、見守ることにいたしましょうぞ」

「おうっ!」

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...