勇者がログインしました ~異世界に転生したら、周りからNPCだと勘違いされてしまうお話~

ぐうたら怪人Z

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第10話 戦争って――何ぃ!?

【3】

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「ハルッ!!」

 状況を逐次把握しながら指示を飛ばしている青年に、声をかける。幸い、彼はすぐこちらに気付いてくれた。

「なんでござるかな、アスヴェル殿?」

「私が合図したら、全員を自陣へ避難・・させてくれ!」

「は、はい? しかしそんなことをすれば戦線が崩壊してですな」

「大丈夫だ! 後は私に任せろ!!」

 力強く断言する。熱意が伝わったのか、ハルは数秒の逡巡の後、頷いてくれた。

「わ、分かったでござるよ」

「頼む」

 そんな彼へ一つ頭を下げてから、アスヴェルは敵方向へと向き直る。しっかりと“目標”を見据え、静かに精神の統一を図る。


 ――雷槌イカヅチを廻す。光を降臨オロす。虚空ソラを斬り裂く。


 呪詞のりとを紡ぐ。
 その詠唱と共に、周囲の空気が変わる――比喩でなく、大気そのものが薄く発光する。そして一筋の雷光が出現すると、それがアスヴェルを中心として大きく回り始めた。回転は徐々に速度を増し、程なく“雷”は巨大な“光の”へと変貌を遂げる。
 これぞアスヴェルが本来用いる、真の闘争術。ただ魔力を垂れ流すだけの魔法とは一線を画した・・・・・・、人の技術によって魔力を緻密に組上げる御業みわざ

「<磁式・極光>」

 彼はそれを、“魔術”と呼称する。



 ――――――――――――――――



「ハル! ハル!! 何が起きてる!?」

「な、何がと申されましても拙者にもすっぱりさっぱり!?」

「なんかすげぇフラグ踏んじまったか!? あの光ってる“輪っか”なんだよ!?」

「ぬ、ぬむむむむぅ!? 見た感じの推測ですが、生み出した“雷”に磁場をかけて・・・・・・超加速させているのかも――」

「ちょ、ちょっと待て! それってつまり、“荷電粒子砲”じゃねぇか!?」

「っ!? た、退避!! 皆様方、すぐに退避するでござるぅっ!!!」



 ―――――――――――――――――



 ハル号令の下、味方陣営が一気に下がり始めた。その行動に敵は呆気にとられ、一瞬追撃が遅れる。嬉しい誤算だ。

「そちらに恨みは無いが――私を敵に回してしまった不運を呪え」

 その宣言と共に、光の環から幾条もの“光線”が射出された・・・・・。狙いは、敵陣営全て・・。烈光が地面を、岩を、そして人を抉っていく・・・・・

 閃光。
 炸裂音。
 爆発音。
 衝撃。


「うわぁあああっ!!?」

「お母さーーん!?」

「にょもぉおおおおっ!!?」

「もう、駄目だぁあああっ!!!!」


 そして、悲鳴。
 なんか割と余裕ありそうな断末魔を残し、敵クランの人々は爆雷の中へ消えていった。

 残ったのは、幾つもの“クレーター”で凸凹になった地面のみ。


「……なになに!? 何が起こったの!? 俺っちはどうしたらいいの!?」


 ……それと、唯一ターゲットに入れなかったオーバタも。



「嘘だろ、おい!? フィールドが、まるまる吹き飛んじまった!!?」

「ロー●ス島戦記かと思ったら、スレ●ヤーズだったでござる……」

「オレ達、とんでもないことしでかしちゃったんじゃあ……」



 やや離れた場所で、ミナトとハルが目を丸くしている。仕方がない、このわざを目の当たりにすれば、そうもなろう。強力過ぎる技故に、これまで披露するのは控えていたくらいなのだから。
 しかし彼等への説明は後回しだ。今はただ、逝った友人へと祈りを捧げる。

「サイゴウ……仇は取ったぞ」

「おお! 確かに見させて貰ったぜぇ! やっぱすげえ奴だな、お前さん!!」

「…………へ?」

 すぐ隣から返事が来た。見ればそこには死んだ筈の・・・・・サイゴウが立っていた。まるっきり無傷な姿で。
 驚いて声が出ないアスヴェルを尻目に、ミナトとサイゴウが会話を始めた。

「あ、おやっさん。もう帰ってきたのか」

「おうよ! この戦争を承諾しちまったのは俺だからなぁ。きっちり結末を見届けなきゃならねぇだろう? おかげで、まだデスペナ解除されてないがな!」

 どうも、彼等にとってサイゴウの復活は驚愕に値するものでは無い様子。

(ど、どゆこと? え? どゆこと?)

 混乱。錯乱。狼狽。動揺。頭の中がごった返しになっていると、


「あー、負けた負けた」

「何だよ、最後の光!? 説明と、賠償を請求する!!」

「嫌な予感したんだよなぁ、“エルケーニッヒ”って結構武闘派って話じゃん」


 今しがた吹き飛ばした敵陣営の人々まで姿を現す。こちらもダメージを受けている様子は無い。

「え? え? え? え?」

 予想だにしなかった事態に、アスヴェルの脳は完全にオーバーフローしていた。そこへ追い打ちをかけるようにミナトが詰め寄ってくる。

「おいアスヴェル! なんだよさっきの技! 後でしっかり説明して貰うからな!?」

「それは――それは、こっちの台詞だぁあああああああっ!!!!!?」

 魂の絶叫が草原に響き渡った。









◆勇者一口(ではない)メモ
 “磁式・極光”
 アスヴェルが習得している“魔術”の中で、3番目に威力が高い。
 磁場によって雷を亜光速にまで超加速させ、光環を形成する術式――要するに荷電粒子砲。
 そのから放たれる光線が直撃すれば、魔王クラスの相手ですら一たまりも無い。
 射程距離も魔法に比較して飛躍的に長く、広範囲を薙ぎ払える。
 さらに、近接距離の相手には光の環を直接当てるという使い方ができる上、防御手段として環を用いることも可能という、攻防バランスの良い魔術。
 弱点は雷が十分な速度に達するまでそれなりに時間がかかること。
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