勇者がログインしました ~異世界に転生したら、周りからNPCだと勘違いされてしまうお話~

ぐうたら怪人Z

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第11話 マイルームって、なぁに?(期待の眼差し)

【1】

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 あの戦争から明けて次の日のこと。場所は酒場ウェストホーム、その一室。
 クラン“エルケーニッヒ”の拠点でもあるこの場所に、数人のプレイヤーが集まり顔を向き合わせていた。“エルケーニッヒ”と“暁の鷹”、それぞれのクランの中心メンバー達だ。

「……アスヴェルってNPCについてだけどさ」

 その内の一人が口火を切る。

「アレ、絶対に正規のNPCじゃないだろ」

「だよなぁ。戦争の時のアレ・・とか有り得ない」

「戦場そのものを吹き飛ばすって、強キャラ設定だとしても無理がありますよ」

「ファンタジー世界の人間が荷電粒子砲とか……」

 話題は、最近“エルケーニッヒ”に滞在しだしたNPCアスヴェルについてだ。

「でもですよ、だったら何なんですか、彼?」

「何って言われても、分からないけどさ」

「いや――思い当たる節はある」

 その言葉に、発言者である“エルケーニッヒ”所属の男へ視線が集まる。

「――“バグ”だ」

「ば、バグって……!」

 俄かに騒ぎ出す面々。

「滅多なこと言わないでよ!」

「そうだぜ、バグなんてそんな、このゲームにそんなのあるわけ――」

「だが他にどうやって説明する? 解析不能なステータス、ルールに則らない動作、極めつけはトンデモ威力のスキルだ。こんなの、運営が設定したとはとても思えない――なら、バグってことだろう」

「それは……」

 反論できる者はいなかった。

「じゃ、じゃあ、バグだったと仮定して、だよ? 結局どうすんの、アイツ」

「そ、そうよね。もしバグだったとして――」

「バグなら――」

 一瞬、沈黙が訪れた後、

「――運営に、報告した方がいいんじゃ」

 一人が、ぽつりと呟く。

「運営って、お前」

「だ、だってさ! 本当にバグだったら、僕らの手に負える話じゃないっしょ!? さっさと運営に報告して、あのNPCを引き渡すなりなんなり、適切な処理をして貰うのが一番じゃないか!」

「でもそんなことになったら、あの子絶対に消去されるわよ……?」

「そこは別に考慮しなくていいんじゃないですか? 所詮NPCですし」

「バグを見つけた上で放置してる方が余程問題だよ。下手すれば全員ペナルティ対象になるかも――」

「そりゃ“暁の鷹”あんたらはあいつとの付き合いが無いから割り切れるだろうけどさ――」

 喧々囂々としだす。アスヴェルを運営に報告するという意見が多い一方、“エルケーニッヒ”のメンバーからは彼を保護できないかという提案もあがる。そんな中、

「俺はアイツの保護に賛成する。文句がある奴はクランを抜けろ」

 そう言いだしたのは“暁の鷹”団長、ホクトだ。

「お、おい、団長? 事態、分かってんのか?」

「分かっているとも! 結構なことだ! 最高だ!
 何が完璧な管理だ、何が至高のコンピュータだ! しっかりとバグが生まれてるじゃないか!!」

 団員が抗議するも、団長の意思は固かった。

「“エルケーニッヒ”の方で手に負えないっていうなら、“暁の鷹”が預かる。誰にも手出しさせない。アイツはこの世界の歪さ・・の証拠なんだからな」

「……それには及ばねぇ。アスヴェルはうちが預かると決めたんだ。あいつが何者だろうと、その判断は変わらねぇよ」

 返事をしたのは、それまで一言も発していなかった“エルケーニッヒ”団長のサイゴウだ。彼もまた、ホクトと意見を同じくした。そしてトップ2人が合意したということは、それ以上の議論が無意味であることを意味する。無論、納得のいかない顔もあるにはあるが、少なくとも表立って抗議する者は現れなかった。
 ホクトとサイゴウは改めて向き直り、

「そいつは結構。
 ――何かあったら言ってくれ、幾らでも手を貸す」

「ありがとよ。そうならねぇよう、祈っててくんな」

 そう結んで、2つのクランが集まった合同会議は終了となった。






 そんな話し合いが行われているとは露知らず。

(……ヤバい。いや、待て待て待て。この大陸の住人、本気でヤバくないか?)

 アスヴェルは一人、自分に宛がわれた部屋で頭を抱えていた。

(平然と復活するってどういうことだ? しかも大した後遺症も無さそうだったぞ? 彼らが死んだのは、この目で確認したのに!)

 さっきから思考がぐるぐると回っている。ついでに身体は床の上をぐるぐると回転していた。

(まさか、死を克服した種族だとでも言うのか? しかしそう仮定すれば、これまでの違和感にも説明がつく)

 戦争を気軽に行うのも、人を殺すことに大した躊躇いが無いのも、命を落とすことに恐れを抱かないのも。全て、彼らが“不死”を獲得した、或いは“死”という概念を捨て去った、と考えれば納得いく。死ぬことが無い故に、命のやり取りに関して鈍感なのだ。

(これも、加護の一つなのだろうか……?)

 その可能性は十分有り得る。これまで、幾つもの信じられない現象を目の当たりにしてきたのだから。

(しかしだな、ここの人々がそんな超越者の集まりだったとすると、私はこれまでとても恥ずかしい言動をしていたのでは? 死という概念を持たない、人の上位種とも言える彼等に対して、大分上から目線な態度を取り続けていたし。うぉおおおおおおお、穴があったら入りたい!!)

 ズットンバッタンと音を立てながら、アスヴェルは転げまわっていた。
 と、そこへ。

「おーい、アスヴェル、居るかー?」

 ミナトの声。もう、すぐ扉の前に居る様子。

「今日はどうしたんだ? 集合時間になっても来ないからから見にきてやったぞ」

 言われてみれば、そろそろ約束の時刻だ。今日もミナトやハルと共に、元の大陸に戻る手掛かり探しを行う約束だったのである。考え事で頭が一杯になり、そんなことにも気づかなかった。

(し、しかし、こんな状況でどんな顔をして会えば――!?)

 別に今まで通り接すれば良い、と頭では分かっているのだが、ミナト達の凄まじさを知った今となってはどうにも委縮してしまう。

(だがいつまでも待たせてしまう訳にもいかない、か)

 覚悟を決める。アスヴェルは努めて平静を装いながら自室の扉を開けると、

「こんにちは、ミナト――デートの約束のこと、まさか忘れてはいないだろうね?」

「……やっぱ覚えてやがったか」

 例え相手が何者であろうと、そこは譲らないアスヴェルである。


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