勇者がログインしました ~異世界に転生したら、周りからNPCだと勘違いされてしまうお話~

ぐうたら怪人Z

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第18話 勇者⇒チュートリアル

【2】能力確認

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「じゃ、中に入る前にまずはオマエがどんだけ弱くなったか確認しねぇとな!」

 洞窟へ入る前、ミナトがそんな提案をしてくる。どうしたことか、とてもいい・・笑顔である。

「くっくっく、今まで散々オレ達のことを見下してくれたからなぁ? 今度はオマエのかわいーい弱々よわよわステータスを拝見してやるぜ!」

「いや、見下したことなど無いのだけれども」

 寧ろ自分としては彼女を見上げたい位だ。下から。お尻を。

「ほら、じゃあ<ステータス>を出してみろ」

「といっても、私は“ステータスウィンドウ”なるものを出すことはできないぞ」

「ああ、そこは相変わらずNPCと仕様変わらねぇのか――ハル、頼む」

「はい、わかりました」

 ミナトから話を振られたハルが<識別アイデンティファイ>のスキルを使用すると、すぐにアスヴェルのステータスが記されたウィンドウが現れる。


 Name:アスヴェル・ウィンシュタット
 Lv:1
 Class
 Main:ジュニアロード Lv1
 Sub:-

 Str:15 Vit:15 Dex:15
 Int:24 Pow:18 Luc:15

 以前見た時と表記が違う。Lvが下がったというのもそうだが、各能力値の欄にしっかりと数値が記入されていた。以前見させて貰ったミナトやハルのステータスに比べると、大分貧相な数が並んでいるようだ。こうして具体的な数字で表されると改めて弱くなったことを実感させられる。

(まあ、分かっていたことなんだからショックを受けるのは間違いだな。ここからだ、ここから)

 若干滅入りそうになるのをさらっと流し、気を取り直す。
 と、そこで気づいたのだが、ミナトがじぃっとステータスを凝視している。

「何かあったか?」

 尋ねてみるも、無反応。アスヴェルのステータスに不審な点でもあったかと不安に思い始めたその時。

「…………死ねよ」

「どうした急に!?」

 唐突に酷いこと言われた。そのまま彼女は凄い剣幕でまくしたててくる。

「なんだこのステータスの高さ! 32ポイントも初期ステータス高いじゃねぇか!!」

「そ、そうなの?」

「そうだよ!! 普通は一律10のとこにフリーポイントを10割り振るから、合計は70になるの! だっていうのにオマエは――!! なんなんだこの不公平!! 贔屓だ贔屓!! 勇者だからって舐めてんじゃねぇぞ!!」

「そこ怒るところかな?」

「当たり前だろう!?」

 当たり前らしい。だがミナトやハルの能力値の高さを鑑みると、

「いや、しかしその――合計値の32くらい誤差じゃないか?」

「誤差だとぉ!!?」

 さらなる激高を見せるミナト。どうも地雷を踏んでしまったようだ。

「オレが!! オレ達が!! その32ポイントを手に入れるためにどれだけ死に物狂いになるか分かるか!! 人死にがでるぞこのヤロウ!!」

「そんなに!?」

 掴みかかられ、なすすべなくぐわんぐわん頭を揺さぶられる。
 流石に見かねたか、ハルが割って入ってきた。

「ちょ、ちょっと、ミナトさん!?」

「止めるなハル! 今こそ正当なプレイヤーであるオレがこのチート野郎に天誅を食らわせてやるんだ!!」

 だがミナトの勢いを止めることはできず、しばらくの間彼女の怒号が辺りに轟くこととなる。



 数分後。

「ま、よく考えてみればオマエの能力が高くて困ることなんて特になかったな」

「もっと早く気づいて欲しかったかな、その事実には」

 ミナトはようやく落ち着いてくれた。
 アスヴェルが散々振り回された首の調子を確認している横で、少女達は

「ところでこの<ジュニアロード>ってクラス、なんだっけ?」

「確かNPC専用の職業ですね。領主の息子、みたいな設定のキャラが就くクラスだった筈です」

「へー……ってアスヴェル、オマエ貴族だったのか!?」

 驚いた顔でミナトに詰め寄られる。

「ん? ああ、まあ、そうだよ。といっても、物心ついてすぐ竜に街ごと滅ぼされたけど」

「あー、そういやそんなこと言ってたっけ。わりぃ」

「なに、別に気にする必要はないさ」

 殊勝な態度で頭を下げてくるミナト。こういう反応をする辺り、なんだかんだで礼儀はしっかりしている子なのだ。

「でもオマエの尊大で生意気な口の利き方って産まれのせいだったんだな」

「謝った直後にディスるってどんな気分?」

「で、<ジュニアロード>ってどんなスキル持ってたっけ? いいのある?」

「そしてさらっと話題を変えたね?」

 そんなアスヴェルの突っ込みはさらっと流され。
 女性陣二人はこちらそっちのけで何らかの談義を始め出した。

「<ジュニアロード>のスキル――確か、初期からとれる<鼓舞>とかがかなり便利なスキルですよ。命中と回避、攻撃力にボーナスがつくんです」
「へー……あれ、でも確か効果量めっちゃ少なかったんじゃ?」
「代わりに持続長くてコストが低い上に効果範囲が広いんですよ。通常戦闘よりも戦争で役立つ感じですかね。<ジュニアロード>のNPCって戦争でよく見かけますし」
「なるほど、他も<誓いの御旗>や<勇猛なる決意>とか、戦争で使いやすいの揃ってるんだな」
「はい。まあ、私達は別に戦争をする訳ではありませんけれど」
「でも低Lvキャラを前に出すわけにもいかないし、後ろでバフ打って貰った方が便利じゃないか?」
「そうですね。ただ、支援に徹するなら<魔法使い>や<僧侶>にクラスチェンジした方がいいかもしれません」
「でもなぁ、せっかくのNPC専用クラスが手に入ったんだから、これを生かすキャラ作りしたいなぁ」
「ええ、私もそう思います。だから、まずは<鼓舞>を途切れないよう気をつけつつ、他のアクティブスキルとインスタントスキルで上手く支援を飛ばすのが良いのでないかと。<プロテクション>系は私が使えますから、<リジェネ>系とか<ウェポン>系辺りが候補でしょうかね」
「そこまでやるとMP馬鹿食いしそうだな。<ファストポーション>は必須?」
「<アブソーブ>で私達からMP吸収してもいいですけど……うーん、やっぱり行動を消費しない<ファストポーション>の方が有効そうですね」
「いっそのこと、素材山ほど持たせて<アルケミスト>スキルぶっぱもいいか」

 ……なんだろう、この会話。

「あ、あれおかしいな。私日本語を習得した筈なのに君達の会話が理解できない」

 ぽつりと呟くも、2人は取り合ってくれない。何やら専門用語らしき言葉を使い、議論に熱中していく。

「えー、お2人さん? そろそろダンジョンの方に行かないか? もうここに来てからそこそこ時間が経ってるんだけれども」

 今度はしっかりとミナト達に向かって話しかける――が、2人の集中を乱すことすらできない。

「えーと、そうなると、ジュニアロードをLv10まで上げてから<魔法使い>転職?」
「とりあえず<セージ>は持たせておいた方がいいのでは――あ、でもNPCだと<識別アイデンティファイ>が使えないかもしれません?」
「と、そうだ! そもそもアスヴェルは初期能力が高いから、もっと早くに転職条件満たせるじゃねぇか!」
「初期値が違うので既存の最適ルートが使えないですね。新しく作り上げなくては」
「よし、試しにLv30くらいまでのヤツを幾つか作ってみるか」
「はい。とりあえず<リジェネ>ルートと<ウェポン>ルート、<アルケミスト>ルート、ですね」
「うん、そんな感じ」

 議論は続くよ、どこまでも。
 ミナトとハルはとうとう地面に座り込み、<アイテムボックス>から取り出した紙面にアレやコレやと書き出し始めてしまった。当分終わりそうにない。
 アスヴェルはといえば、諦念の心持に至り――

「……お昼、どうしようか?」

 ――零した言葉は、だれにも届かなかった。




 2時間後。

「できたぞアスヴェル! オマエのLvアップ計画表だ!」

「お、おぅ?」

 満面の笑顔でミナトが“計画表”とやらを差し出してきた。紙には幾度も書き直した跡があり、彼女達がどれだけ苦心したか分かる。

「あー、つまり、この表の通りに成長すればいいということなんだな?」

「いや。考えてみたらオマエの場合NPC専用職を他にも取得できるかもしれないから、まずはどのクラスになれるのか確認した後に改めてルートを作り直さなきゃなー、って結論になった」

「だったらなんでこんなに時間かけた!?」

 バシンッと計画表を地面に叩きつける。待っていた2時間はいったい何だったというのか。何を言っても無視されていたので、かなり孤独感に苛まれていたのだ。仲間に入れず寂しかったのだ。

「そ、それを、それを――!」

「ほらほら、ぶつくさ言ってねぇでダンジョン潜ろうぜ。時間は待ってくれないぞ?」

 ミナトが手をパンパンと叩いて出発を促してくる。ハルも洞窟に入るための装備を整え初めていた。
 最早、空気読めていないのはアスヴェルの方、といった体である。

「……な、納得がいかない」

 Lvが低くなるとこうも杜撰に扱われるものなのか。
 そう、全てはLvの初期化なんてやらかしてくれた“オーバーロード”が悪い。アスヴェルは改めて“オーバーロード”の打倒を決意するのであった。


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