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第1章

第六話 ~自称美少女と同じクラスになって隣の席にまでなった件

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 第六話



 幸也と奏が自転車を駐輪場に置きに行っている間、俺と美凪は少しだけ話をしていた。

「なぁ、美凪。あの猫かぶりはいつまで続けるつもりだ?」
「猫かぶり。と言うよりはあの対応が私の日常ですよ。隣人さんへの対応の方が非日常と言えると思います」

『素』を見せるのはあなただけですよ?

 なんてことを言う美凪。
 ふーん。そうなのか。

「おや、隣人さん。トキメキましたか?」

 ニンマリと笑みを浮かべながらそういう美凪に、

「そうだな。俺にだけ素を見せてくれるって事は、相当俺の事をお前は気に入ってくれたんだな。嬉しいよ」

 俺はほほ笑みを浮かべながら美凪そう言う。

「うええぇ!!!???」

 なんて言って顔を赤くする美凪。
 そんな彼女を見て、俺は満足して笑う。

「どうした、自称才色兼備のパーフェクト美少女さん。照れてるんですかね?」
「て、照れてないです!!」

 プイッとそっぽを向く美凪。
 耳まで真っ赤だった。

 耐性低すぎだろ、コイツ。

「隣人さんは意地悪です!!」
「俺がそんな意地悪をするのはお前にだけだよ」
「そ、そう言うセリフです!!」

 あー楽しい。こいつをからかうのは本当に楽しいな。

「なんか、俺たちの事を凛太郎はバカップルだなんて言うけど、こいつらの方が今後やばくね?」
「凛太郎くん。気に入った女の子はいじめる傾向があるんだねぇ。初めて知ったよ」

 なんて言いながら二人が『手を繋いで』歩いて来た。

「お、来たなバカップル。クラス分けの紙を見に行こうぜ」
「手を繋いでるなんてラブラブですね」

 俺と美凪がそう言うと、二人は笑いながら言い返す。

「幼馴染だからな。小さい頃からこうして育ってきたから手を繋いでないと落ち着かない」
「優花ちゃんも凛太郎くんと手を繋いでみたら?……飛ぶよ?」

 それを聞いた俺は美凪に笑顔で提案する。

「よし、美凪。俺達も手を繋ぐか」
「繋ぎません!!」

 顔を赤くした美凪は先にずんずんと歩いて行った。

「迷子になるなよ?」
「なりません!!」

 なんて言う美凪を微笑ましく見てると、

「いつくっつくと思う?」
「三ヶ月ってところじゃない?」

 なんて会話が聞こえてきたけど、俺は無視して美凪の後を追いかけた。


 クラス分けの書かれた紙の前に辿り着くと、既に美凪が確認をしていた。

「何組だったんだ?」

 俺がそう言って彼女に聞くと、

「私と隣人さん。それにあちらの二人も同じ『一年一組』です。何か作為でも働いているんですかね?」

 と少しだけ呆れたような声でそう言っていた。

「まぁ、知らない奴と一緒になるよりは良いとは思うけどな」

 俺はそう言って美凪の隣に立って、一年一組の名前の一覧を確認した。

 そして、やはりこいつの言うように、俺と美凪。幸也と奏。この四人は同じクラスに配属されていた。

「おーい、凛太郎!!どうだった!?」
「凛太郎くんたちと一緒のクラスなら嬉しいな!!」

 なんて言いながらやって来たバカップルの二人に俺は

「この四人は全員一年一組で同じクラスだ。一年間、よろしく頼むぜ」

 と言ってやった。



『一年一組』

 下駄箱で靴を脱ぎ上履きに履き替えたあと、俺たち四人はなれない学校の廊下を進むと、目的の教室へと辿り着く。

 ガラリと教室の扉を開くと、一人の女子生徒が既に出席していた。

「おはようございます!!あのね、早速で申し訳ないんだけどさ、そこのくじを引いてくれ。だってさ」

 女の子に言われて俺は教壇の上を見ると、クジの入った箱があった。

「何でも、その箱に入ったクジに書かれた番号が自分の席なんだってさ」

 黒板を見ると、席に割り振られた番号と、

『人生でいちばん大切なものは『運』だ!!まずは自分の運を試してみろ!!』

 と書いてあった。

 なかなか破天荒な人間が担任みたいだな……

「私の名前は、桜井美鈴さくらいみすずだよ。一年間よろしくね!!」
「俺は海野凛太郎だ」
「私は美凪優花です。桜井さん、よろしくお願いします」
「俺は成瀬幸也だ。凛太郎とは同じ中学の親友だ」
「私は音無奏です!!幸也とは彼氏彼女の関係で、凛太郎くんとは深い仲です!!」
「不快仲の間違いだろ……」

 奏の言葉に辟易としながら、俺はそう言った。

「あはは。早速面白い人と話せて嬉しいよ。じゃあくじを引いてみてね。私の隣になったらよろしくね!!」


 そして、俺は教壇の上にある箱から一枚のくじを引き抜く。

「……なるほどね」

 壁際の一番前の席だ。
 出口から一番近い。
 苗字が『あ』行の人間が座る場所だと言える。

 俺がその席に腰を下ろすと……

「う、嘘ですよね……」
「マジかよ……」

 隣に座ったのは美凪だった。

「家も隣で席も隣なんですか……」
「これも『運』ってやつなのかもしれないな……」

 そんな話をしてると、

「おお!!次期バカップルのイチャイチャを特等席で見られるぞ、奏!!」
「やったね、幸也!!大勝利だよ!!」

 と言って、俺の後ろの席にはバカップル二人が座っていた。

「おいおい……どうなってんだよ……」


 新学期早々。ちょっとよくわからない展開に、俺は小さくため息をついた。

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