腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶

文字の大きさ
87 / 94
第2章

美凪side ③ 中編 その⑤

しおりを挟む
 美凪side ③  中編  その⑤




「ちょっとお化粧を直してきますね」
「了解だ。のんびり猫でも眺めてるから急がなくていいからな」
「ふふふ。ありがとうございます」


 食事を終えたあと、私はお化粧を直すために御手洗へと向かいました。

 そして、お花摘みを終えたあとに手を洗っていると、若い女性の二人組が隣人さんを指さしていました。

「ねぇ、あの人すごくかっこいいよね!!」
「すごく好みなんだけど!!もしかして一人で来てるのかな?」

 なんて話をしてるのが聞こえてきました。

 はいはい。わかりますよ。隣人さんはとてもかっこいいですからね。
 ああして椅子に座ってる姿も背筋が伸びてますし、私が見繕った洋服とも相まってとても様になってます。

 誇らしい気持ちもありますが、私の隣人さんです。
 あなた達には指一本触れさせませんからね!!

「失礼ですが、彼は私の連れですので」

 私は女性二人に強い視線を向けながら言葉を放ちました。
 変にちょっかいをかけられても迷惑ですからね。
 立場はしっかりとわからせないといけませんからね!!

「……え?あぁ……そぅ」
「……ふぅん?」

 私の声に振り向いた二人が、私のことを値踏みする様な視線を向けました。
 ふふーん!!構いませんよ!!
 彼我のレベルの差を思い知るが良いです!!

「……独り身じゃないなら声はかけないわよ」
「お幸せにー」

 女性二人はそう言い残すと、店内へと戻りました。
 彼女たちの言うように、隣人さんの元には向かわずに自分のテーブルへと向かって歩いていました。

「まぁ……彼はとてもかっこいいですからね。これからもこういうことは増えそうですね」

 チラリと隣人さんに視線を向けると、そんなこともつゆ知らず、ガラスの向こう側の猫ちゃんを眺めているようでした。

 自分がどれだけ『モテる男』かわかってないんでしょうね!!

 私は彼の鈍感さに少しだけ憤りを覚えましたが、良い女なので許してあげることにしました。


 そして、私がテーブルへと戻ると、隣人さんは店員さんを呼んでくれました。

 店員さんからは猫ちゃんとの触れ合いに関しての注意事項を教えて貰いました。

 そうですよね。生き物を触る訳ですから、細心の注意が必要です!!

「生き物に触れる訳ですからね、やはり注意していかないと行けませんからね」
「そうだな。決して乱暴にしてはダメだからな」

 そして、店員さんからの指導を終えた私と隣人さんはガラスの扉の前に立ちます。

「さぁ!!いよいよご対面ですね!!」
「そうだな。ちゃんと懐いてくれると嬉しいな」

 扉の前に猫ちゃんが居ないことを確認してから、ゆっくりとガラスの扉を開きました。

 すると、部屋の中はアロマのような落ち着いた匂いに包まれていました。隣の隣人さんを見ると、彼もこの香りに驚いていたようでした。
 そうですね。もう少し生き物臭い感じを想像してましたからね。そんなことは無かったです!!

「もっと生き物臭いのを想像してましたが、全くそんなことは無かったですね!!」
「そうだな。……おっと、俺の足元に早速一匹やってきたな」

 すると直ぐに白い毛並みの気品に溢れた猫ちゃんが隣人さんの足にすり寄ってきました。

 ず、ずるいです!!というか早すぎじゃないですか!!??

 隣人さんは店員さんに教わったように、そっと人差し指を猫ちゃんに差し出しました。
 これは挨拶です。
 すると、猫ちゃんはクンクンと匂いを嗅いだ後に、頬擦りをしてるじゃないですか!!

 もう!!ずるいです!!ずるいです!!ずるいです!!!!

「……やべぇ。可愛いな」

 デレデレの隣人さんに、私は思いの丈をぶつけました!!

「ず、ずるいですよ隣人さん!!」

 そして、隣人さんが胡座をかいて座ると、白い猫ちゃんは彼の脚の中に入って行くじゃないですか!!

「人懐っこい猫なんだな」

 彼はそう言いながら、猫ちゃんを撫でていました。
 その表情はとても穏やかでした。

 ね、猫ちゃんに嫉妬しそうですけど……

 こ、ここに来た理由を忘れる訳にはいかないです!!

「私も早く猫ちゃんと戯れたいです!!」

 私は軽く周りを見渡しました。
 そして、三匹ほどの猫ちゃんが集会をしている場所を見つけました。

 ふふーん!!あそこに行けば猫ちゃんと戯れられます!!

「えへへ……怖くないですよー」

 私は猫ちゃんを怖がらせないように、手を広げながらゆっくりと忍び寄りました。

 で、ですが……私が近寄ると、猫ちゃんたちは蜘蛛の子を散らすように逃げてしまいました……

「なぁ!!なんでですかぁ……」

 そして、私は諦めずに何度もチャレンジをしました。

 五匹くらい集まっているところにも行きました。
 一匹だけのところにも行きました。

 ですが、どの猫ちゃんも私が近寄るとみんな逃げて行くでは無いですか……

「つ、辛いです……心が折れそうです……」

 そんな私が隣人さんの方を見ると、信じられないような光景が目に映りました。

 あ、胡座をかいている隣人さんの周りに猫ちゃんが集っています!!

 あ、あれはさながら猫ちゃんハーレムです!!

「……お、おかしくないですか!!なんで隣人さんの周りにはそんなに猫ちゃんがいるんですか!!」
「あはは……なんかオーラでも出てるのかな?」

 私のその言葉に、隣人さんは猫ちゃんを撫でながらそんな言葉を返してきました。
 もう……猫ちゃんには逃げられるし、彼の隣は奪われてしまってます……ずるい……ずるいです……

「隣人さんの隣は私の場所なのに……ずるいです……」
「ほらこっちに来いよ、美凪。今ならみんな寝てるから触れるぞ」

 私は彼の言葉に従い、静かに近寄りました。

 そして、眠っている猫ちゃんにそっと手を差し伸べました。

 サラサラの毛並み。とても幸せな感触です!!

「や、やっと触れました……っ!!」
「ははは。良かったな、美凪」

 私は彼の隣に座り、たくさんの猫ちゃんを撫でました。

 その時でした。

 隣人さんが私の頭を撫でていました。

「り、隣人さん……」
「……あ」

 私が隣人さんの方に視線を向けると、彼は私の頭から手を離してしまいました。
 少しだけ名残惜しかったです……

「すまん……なんか撫でたくなってな……」
「そ、そうですか……」

 ふふーん?まあこの超絶美少女の美凪優花ちゃんですからね!!
 猫ちゃんよりも魅力的に映ってしまうのは仕方ないです!!

 なので、私は彼に私の頭を撫でさせてあげることにしました。
 け、決して私が撫でて欲しかった訳では無いですよ!!
 あくまでも!!隣人さんが!!望むからです!!

「どうぞ……」
「い、良いのか?」

 不安そうな隣人さんに、私は言ってあげました。

「貴方の隣は私の場所ですからね……猫ちゃんには渡したくないです……」
「でかい猫だなぁ……」

 し、失礼ですね!!
 ですが、こうして隣人さんに撫でてもらうととても幸せです……にゃん

「えへへ……とても気持ちが良いです……」
「そうか。俺も猫よりお前の方が良いかもしれないな」

 そんなことを言う隣人さん。
 ふふーん!!それは当然ですよ。猫ちゃんがいかに可愛くても私には負けますからね!!

「ふふーん。それは当然ですよ。この美凪優花ちゃんがそこら辺の猫ちゃんに負けるなんて有り得ないですからね」
「猫カフェに来たのに、猫よりもお前の頭を撫でてるとか、来た意味が無いかもしれないな……」

 そうですか。でしたら隣人さんに幸せをプレゼントしてあげますよ。
 私は彼の膝の上に頭を乗せてあげました。

「おい……なにしてやがる」
「ふふーん。この超絶美少女の美凪優花ちゃんに、膝枕をする権利を隣人さんに差し上げますよ」

 光栄に思ってくださいね!!私に対して膝枕を出来るなんて、隣人さんは幸せ者です!!

「これじゃあ美凪猫だな……」

 ぶっきらぼうにそんなことを言う隣人さん。
 ですが、その手は優しくわたしをなでてくれました。

「ふふーん。幸せだにゃん……」

 おなかいっぱいで、横になって、彼の手で撫でてもらって、私はなんだか眠くなってきました……

 このまま眠ったら……幸せですね……

 私は甘い誘惑に身を任せて、夢の中へと旅立っていきました。

 彼が私に向けて何かを言って、そのままキスをしてくれたように思えたのは、きっと幸せな夢だと思います。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?

すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。 ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。 要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」 そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。 要「今日はやたら素直だな・・・。」 美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」 いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 みんなと同じようにプレーできなくてもいいんじゃないですか? 先輩には、先輩だけの武器があるんですから——。  後輩マネージャーのその言葉が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  そのため、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると錯覚していたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。そこに現れたのが、香奈だった。  香奈に励まされてサッカーを続ける決意をした巧は、彼女のアドバイスのおかげもあり、だんだんとその才能を開花させていく。  一方、巧が成り行きで香奈を家に招いたのをきっかけに、二人の距離も縮み始める。  しかし、退部するどころか活躍し出した巧にフラストレーションを溜めていた武岡が、それを静観するはずもなく——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  先輩×後輩のじれったくも甘い関係が好きな方、スカッとする展開が好きな方は、ぜひこの物語をお楽しみください! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...