十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第2章 前編

凛音side ②

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 凛音side ②




 ふん。あの二股ハーレム生徒会長もなかなか面白いことを考えるわね。

 私はそう思いながら、北島永久が引いてきたくじを持ってバスケ部のチームメイトの元へと向かったわ。

『グラウンドの端』と『綱引きの綱』

 まぁ、交渉のカードとしては悪くないものを引いてきたわね。

「こんにちは、佐竹(さたけ)さん。ちょっと良いかしら?」
「こんにちは!!南野さんも実行委員だったよね!!」

 佐竹亜美(さたけあみ)さん。同じバスケ部の同級生。

 彼女が持っているのは、

『体育館』と『大縄跳びの縄』

 霧都が説明に使っていた組み合わせね。

「もし良かったら貴女の持ってる『体育館』と私の持ってる『グラウンドの端』を交換して貰えないかしら?」
「え……それって南野さんには良い事ないよね?私は得をするけどさ」

 少しだけ訝しげな表情の佐竹さん。
 まぁ、そうよね。普通に考えたら私に『利益』は無いわね。

 でも私には『体育館』のくじが必要なのよ。

 そのことは伏せておくけどね。

「実はちょっと佐竹さんにお願いがあるのよ」
「お願い?」

「このあと部活があるでしょ?遅れて参加することになるけど、実は予定があって早くに帰りたいのよ。だけど今日は私が清掃当番だから、佐竹さんに変わってもらいたいのよね。もちろん、佐竹さんの日と交換。と言う意味よ」
「あはは。そういう事だったのね!!良いよ。今日は私が掃除当番を変わってあげるよ!!」

「ありがとう、佐竹さん。助かるわ」

 私はそう言って、『グラウンドの端』のくじを『体育館』に変えることが出来たわ。

 さて、次は『あの女狐』の所に行こうかしら。

 私は放送部の部長。三郷先輩の所へと足を運んだわ。

「こんにちは、三郷先輩。ちょっと良いかしら?」

 部屋の端で交渉を傍観していた先輩に、私は話しかけたわ。

「うん。良いよ、南野さん。貴女が来るのを待ってたからね」

 先輩は笑いながらそう言ったわ。

「そう?なら話は早いわね。私の持ってる『体育館』と先輩の持ってる『グラウンドのトラック』を交換して貰えないかしら?」
「あはは!!随分と強気な交換を持ちかけてくるね?私が『ドッチボールの球』を持ってるから、『体育館』なら交換に応じると思ってるのかな?」

 それは流石に無理筋だよね?

 そう言ってくる先輩。
 そうよね。そんなことは百も承知よ。

 だから私は言葉を続けたわ。

「もちろん。私が提示するカードはこれだけじゃないわよ?ねぇ、先輩。放送部と新聞部はライバル関係よね?」
「……そうだね。それで、それが何か関係あるのかな?」

 スっと目を細める先輩に私は続けるわ。

「私が『次期生徒会長』と言われている桜井霧都の幼馴染だと言うことは知ってるわよね?新聞部も掴んでいない、彼の昔話とかを昼の放送で話をする。面白そうじゃないかしら?」

 私がそう言うと、先輩の目が三日月を描く。

「へぇ……面白いことを言ってくるじゃない」
「ちなみに、当然だけど私が昼の放送であいつのことを話す。と言うのはその時はまで口外しないわよ。あくまでもこの交換は『三郷先輩の善意で行われた』そのように取り計らうわよ」

「なるほどね。そこまで配慮してくれるのね。でも、それだと貴女のカードの方が強いわね。もう少しこちらに求めてくるものがあるんじゃないの?」

 そう言う先輩に、私は言ったわ。

「私は『北島永久のポジション』を奪いたいと思ってるのよ。私の味方になってくれないかしら?」
「ふぅん?具体的には私に何をして欲しいのかしら?」

「放送部の昼の放送枠に『私が桜井霧都の昔話をするコーナー』を常設して欲しいわ。全校生徒に『桜井霧都と南野凛音は十年来の付き合いのある男女だ』という情報を定着させたいのよ」
「へぇ……つまり貴女は『桜井霧都は南野凛音と付き合うべきだ』という派閥を作ろうとしてるんだ?」

「そうよ。学校を二分してやろうと思ってるわ。北島永久派と南野凛音派にね。今はまだ勝負にもなってない状態だもの」
「なるほどね。面白いことをかんがえてるのね。良いわよ、交換に応じるわ」

 先輩はそう言うと『グラウンドのトラック』のくじを出てきた。

「ありがとう、先輩。それじゃあこれからもよろしくね?」
「あはは。こちらこそ、たくさん楽しませてもらうよ、南野さん」

 私と三郷先輩は『体育館』と『グラウンドのトラック』のくじを交換した。

 よし。次は藤崎先輩の持ってる『バトン』を取りに行くわよ。


 私はまず最初に藤崎先輩のところに向かったわ。

「こんにちは、藤崎先輩。貴女の持ってる『バトン』のくじが欲しいわ」
「おやおや、南野さん?いきなりやって来て凄いことを言ってきたね?」

 藤崎先輩はそう言いながら、笑っている。

「貴方が持ってる道具は『綱引きの綱』だよね?交換するにはちょっと微妙だよね」
「そうね。先輩が持ってる場所も『体育館』だから、活かしょうがないわね」

「そこまでわかってるなら、どうしてこんな話を持ってきたのかしら?」

 そう言ってくる先輩に、私は言うわ。

「深緑の令嬢こと、首藤美月(しゅとうみつき)さん。その彼氏は学園の王子様よね?」
「うん。それがどうかしたのかしら?」

「王子様の弟が実行委員をやってるわ。首藤先輩は彼と話す機会が欲しいと思ってるんじゃないかしら?」

 私はそう言うと、実行委員をやってる首藤先輩を指さす。
 彼女はチラチラと彼氏の弟。流くんの方を見ていたわ。
 それに、彼の方も首藤さんの事が気になってるみたいね。

 きっかけさえ作れば上手く話をするんじゃないかしら?


 ちなみに、首藤先輩は『バスケットボール』のくじを持ってる。

「私がそのことを餌にして『バスケットボール』を取ってくるわ。そしたら『バトン』と交換すれば、貴女の大好きなバスケが出来るわよ?」
「あはは!!なるほどね。なかなか面白いことを言ってくるね南野さん!!」

 良いよ。貴女が『バスケットボール』のくじを持ってきたら『バトン』と交換してあげるわよ。

 藤崎先輩がそう言ったので、

「ありがとう、先輩。じゃあ私は首藤先輩の所に行ってくるわよ」
「私も着いていくよ。貴女のことを紹介してあげるわよ」

「あら、それは嬉しいわね。感謝するわ」

 そして、私は藤崎先輩と一緒に首藤先輩の所へ向かったわ。

「美月ちゃーーん!!」
「朱里ちゃん、どうしたの?」

 首藤美月(しゅとうみつき)先輩。
 深緑の令嬢の二つ名を持ってる三年生。

 サッカー部のエースストライカーで学園の王子様。
 星流くんのお兄さん。星明(ほしあきら)先輩の彼女ね。

「あのね。彼女は私の可愛い後輩の南野凛音ちゃん」
「初めまして、首藤先輩。南野凛音よ」

「初めまして南野さん。首藤美月です。それで、朱里ちゃんと一緒に来てどうかしたの?」
「貴女の持ってる『バスケットボール』のくじと私の持ってる『綱引きの綱』を交換したいのよ」

「えと……私が持ってる場所は『グラウンドの端』だから『綱引きの綱』が貰えるのは嬉しいかな。うん、良いよ!!」

 あら?私が知ってる時は彼女は『体育館』だったと思ったけど……

 まぁ、それなりに時間が経ってるから交換したのね。

「ありがとう、首藤先輩。それと本当ならもうひとつ用意していたカードがあったのよ」
「えと……それって何かな?」

「貴女の彼氏の弟が実行委員をやってるのは見てたわよね?もしかったら話をしに行ったらどうかしら?」
「め、迷惑じゃないかなぁ……」

「向こうも貴女のことを気にしていたわよ。私とくじの交換をした。そんな話題で話し始めたら良いと思うわ」
「そうだね。じゃあちょっとお邪魔してこようかな!!」

 首藤先輩はそう言うと、くじを交換したあと、私のクラスの方へと向かったわ。

 しばらく見てると、流くんと話し始めたわ。

 あの様子なら上手く行きそうね。

「はい。藤崎先輩『バスケットボール』のくじを貴女に渡すわ」

 私はそう言って、藤崎先輩に『バスケットボール』のくじを差し出す。

「うん。じゃあ私も約束通り『バトン』をあげるわよ」
「交渉成立ね」

 私と藤崎先輩は『バスケットボール』と『バトン』のくじを交換した。


「ふぅ。任務達成ね」

 私の手元には『グラウンドのトラック』と『バトン』のくじが握られている。

 これで霧都と夕飯を共にすることも出来るわ。

 別に何かをするつもりは無いけど、久しぶりにあいつと食事が出来るのは楽しみね。

 私は意気揚々と自分のクラスへと戻ったわ。
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