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第2章 後編
第二話 ~桜井家と南野家の夕飯に永久さんを呼ぶことになりました~
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第二話
永久さんからの『お願い』で凛音と帰宅することを決めて『幼馴染』としての時間を彼女と過ごしながら家へと帰ってきた。
凛音の自転車のサドルが盗まれる。と言う珍事があった為、久しぶりに彼女を後ろに乗せて来た。
明日の朝の通学に関しては、何かをお願いされそうだったけど、永久さんにお願いされたのは、凛音との『帰宅』だけだ。
登校に関してはお願いされて無い以上、永久さんとの『差』をつける意味でも、凛音からの誘いは断ることにしていた。
そして、凛音と別れを告げ、家へと戻ろうとした俺と彼女の目の前に一台のタクシーが停った。
窓から除く人影には見覚えがあった。
「……え?」
「も、もしかして……」
タクシーのドアを開けて、一組の夫婦が姿を現した。
「こんにちは凛音ちゃん!!久しぶりね!!霧くんに彼女が出来ても仲良くしてくれててお母さんは嬉しいわ!!」
「霧都。あんな可愛い彼女が居るのに凛音ちゃんとも宜しくしようって言うのか?そう言うのが許されるのはライトノベルの中だけだぞ?」
「……お袋に親父。帰ってきたのか」
「美香さんと大樹おじさん……」
桜井大樹(さくらいたいき)と桜井美香(さくらいみか)
俺の親父とお袋だった。
「ねぇねぇ凛音ちゃん!!良かったら家に上がって行かない?」
「……え?」
「お寿司を買って帰ってきてんだ。良かったら南野家の皆さんと食べようと思ってね」
親父はそう言って、かなりの量の寿司のパックを持ち上げて見せた。
「霧くんも良いでしょ?」
「はぁ……構わないよ。好きにしろよ」
何を言ったって無駄なんだからさ。
俺はそう思いながら、了承を示した。
玄関の鍵を開けて、自宅の扉を開ける。
「ただいま」
俺がそう言って家の中に入ると、美鈴が奥からやって来る音が聞こえた。
「おかえりなさい、お兄ちゃ…………え?」
「久しぶり、美鈴!!帰ってきたわよ!!」
「家を長く留守にして悪かったね。お寿司を買って帰ってきたから許して欲しいかな?」
お袋と親父が美鈴に向かってそんな事を言っていた。
「お母さんにお父さん!!もー!!帰って来るなら言ってよねっていつも言ってるじゃん!!」
「あはは。ごめんね、美鈴」
「サプライズにしようといつも思ってるからね」
悪びれもせずにそう言う両親に、美鈴は何を言っても無駄だと思ったのか、ため息をつきながら肩を落とした。
「はぁ…………夕飯の準備を始める前で本当に良かったよ。あと少し遅かったらシチューを作ってたよ」
「あら、残念。美鈴のシチューは美味しいわよね」
「お母さん。シチューは明日の楽しみにしようじゃないか」
そんな会話をしたあと、俺たちは手洗いとうがいをしてから居間へと向かう。
そして、椅子に座って常温の麦茶を飲みながら、両親に問いかける。
「今回はどのくらい家に居られるんだ?」
「しばらくはここに居られるぞ」
「そうね。仕事もようやくひと段落したからね」
「そうか。仕事お疲れ様、親父にお袋」
俺がそう言って二人を労うと、二人は揃ってニヤリと笑った。
どっかの生徒会長を思わせる笑い方だ。
なんだろうな。この笑みを見ると嫌な予感しかしない。
「さて霧都。せっかくだから、夕飯に北島永久さんも呼びなさい」
「……え?」
「私も霧くんの彼女に会いたかったのよ!!」
「そ、そうか……」
「永久さんはとても良い人だよ!!会ったら二人も納得するよ!!」
「なるほど。美鈴防壁を突破してくる女性だったのか」
「美鈴がそう言うなら期待が出来るわね」
「は、話が進んでるけど……永久さんが無理って言ったら諦めろよな?」
俺はそう言って、スマホを取りだした。
「ちょっと電話して聞いてみるよ」
俺はそう言って永久さんに電話を掛ける。
プル……ピ
は、早い……
『もしもし。北島永久です。霧都くんですね』
「う、うん。そうだよ。今日も電話に出るのが早いね」
『ふふふ。霧都くんとのお話が楽しみですので待ちきれませんでした』
「そ、そうか……」
俺はひとつ息を吐いてから本題に入る。
「その、今日なんだけどさ。今まで職場に缶詰になってた俺の両親が帰ってきたんだ」
『そうなんですね!!良かったですね』
「あはは。それでね、たくさん寿司を買ってきてるんだよね。親父とお袋は南野家と食べようって話をしててね」
『……へぇ。そうですか。やはり家族ぐるみの付き合いは強いですね』
き、きっと今の永久さんの目のハイライトは消えてるだろうな……
なんて思いながら、俺は話を続ける。
「俺の親父とお袋がさ、永久さんと会いたいって話をしてるんだ」
『行きます!!』
「…………え?」
『今から霧都くんのご自宅に伺わせてもらいますね!!』
「そ、その……永久さんの家の夕飯とか……」
『大丈夫です!!』
「結構遅いけどどうやってこっちに来るのかな……」
『今お母さんとお父さんがそばに居ますけど…………平気です!!そっちに送ってくれるそうです!!』
北島家の本気がすごい……
『お父さんとお母さんは違うところで外食をするそうです。そちらでの食事会が終わったら迎えに来てくれるみたいです!!』
「い、至れり尽くせりだね……」
『なので、今からおめかししてそちらに行きますね!!』
「う、うん。待ってるね」
……ピ
俺は永久さんとの通話を終えた。
「……えと。平気だってさ」
「うん。聞こえてたよ。なかなかアグレッシブなお嬢さんだね」
「まぁあのくらいじゃないと美鈴の防壁は越えられないわよ」
「私の代わりにお兄ちゃんと結婚しても良いと思えたのは、今のところ永久さんだけだからね!!」
「あら、凛音ちゃんは?」
「あはは!!凛音ちゃんは論外かな!!」
お袋からの質問に、美鈴は笑いながらそう答えていた。
「霧都は凛音ちゃんと結婚すると思ってたけどな。現実は小説より奇なりとは良く言ったものだな」
「まぁ……色々とあったんだよ」
俺は苦虫を噛み潰したような気分になりながら、そう言っておいた。
さて、永久さんが来るならそれなりに準備をしておかないとな。
俺は自室に戻って、身だしなみをしっかりと整えていった。
永久さんからの『お願い』で凛音と帰宅することを決めて『幼馴染』としての時間を彼女と過ごしながら家へと帰ってきた。
凛音の自転車のサドルが盗まれる。と言う珍事があった為、久しぶりに彼女を後ろに乗せて来た。
明日の朝の通学に関しては、何かをお願いされそうだったけど、永久さんにお願いされたのは、凛音との『帰宅』だけだ。
登校に関してはお願いされて無い以上、永久さんとの『差』をつける意味でも、凛音からの誘いは断ることにしていた。
そして、凛音と別れを告げ、家へと戻ろうとした俺と彼女の目の前に一台のタクシーが停った。
窓から除く人影には見覚えがあった。
「……え?」
「も、もしかして……」
タクシーのドアを開けて、一組の夫婦が姿を現した。
「こんにちは凛音ちゃん!!久しぶりね!!霧くんに彼女が出来ても仲良くしてくれててお母さんは嬉しいわ!!」
「霧都。あんな可愛い彼女が居るのに凛音ちゃんとも宜しくしようって言うのか?そう言うのが許されるのはライトノベルの中だけだぞ?」
「……お袋に親父。帰ってきたのか」
「美香さんと大樹おじさん……」
桜井大樹(さくらいたいき)と桜井美香(さくらいみか)
俺の親父とお袋だった。
「ねぇねぇ凛音ちゃん!!良かったら家に上がって行かない?」
「……え?」
「お寿司を買って帰ってきてんだ。良かったら南野家の皆さんと食べようと思ってね」
親父はそう言って、かなりの量の寿司のパックを持ち上げて見せた。
「霧くんも良いでしょ?」
「はぁ……構わないよ。好きにしろよ」
何を言ったって無駄なんだからさ。
俺はそう思いながら、了承を示した。
玄関の鍵を開けて、自宅の扉を開ける。
「ただいま」
俺がそう言って家の中に入ると、美鈴が奥からやって来る音が聞こえた。
「おかえりなさい、お兄ちゃ…………え?」
「久しぶり、美鈴!!帰ってきたわよ!!」
「家を長く留守にして悪かったね。お寿司を買って帰ってきたから許して欲しいかな?」
お袋と親父が美鈴に向かってそんな事を言っていた。
「お母さんにお父さん!!もー!!帰って来るなら言ってよねっていつも言ってるじゃん!!」
「あはは。ごめんね、美鈴」
「サプライズにしようといつも思ってるからね」
悪びれもせずにそう言う両親に、美鈴は何を言っても無駄だと思ったのか、ため息をつきながら肩を落とした。
「はぁ…………夕飯の準備を始める前で本当に良かったよ。あと少し遅かったらシチューを作ってたよ」
「あら、残念。美鈴のシチューは美味しいわよね」
「お母さん。シチューは明日の楽しみにしようじゃないか」
そんな会話をしたあと、俺たちは手洗いとうがいをしてから居間へと向かう。
そして、椅子に座って常温の麦茶を飲みながら、両親に問いかける。
「今回はどのくらい家に居られるんだ?」
「しばらくはここに居られるぞ」
「そうね。仕事もようやくひと段落したからね」
「そうか。仕事お疲れ様、親父にお袋」
俺がそう言って二人を労うと、二人は揃ってニヤリと笑った。
どっかの生徒会長を思わせる笑い方だ。
なんだろうな。この笑みを見ると嫌な予感しかしない。
「さて霧都。せっかくだから、夕飯に北島永久さんも呼びなさい」
「……え?」
「私も霧くんの彼女に会いたかったのよ!!」
「そ、そうか……」
「永久さんはとても良い人だよ!!会ったら二人も納得するよ!!」
「なるほど。美鈴防壁を突破してくる女性だったのか」
「美鈴がそう言うなら期待が出来るわね」
「は、話が進んでるけど……永久さんが無理って言ったら諦めろよな?」
俺はそう言って、スマホを取りだした。
「ちょっと電話して聞いてみるよ」
俺はそう言って永久さんに電話を掛ける。
プル……ピ
は、早い……
『もしもし。北島永久です。霧都くんですね』
「う、うん。そうだよ。今日も電話に出るのが早いね」
『ふふふ。霧都くんとのお話が楽しみですので待ちきれませんでした』
「そ、そうか……」
俺はひとつ息を吐いてから本題に入る。
「その、今日なんだけどさ。今まで職場に缶詰になってた俺の両親が帰ってきたんだ」
『そうなんですね!!良かったですね』
「あはは。それでね、たくさん寿司を買ってきてるんだよね。親父とお袋は南野家と食べようって話をしててね」
『……へぇ。そうですか。やはり家族ぐるみの付き合いは強いですね』
き、きっと今の永久さんの目のハイライトは消えてるだろうな……
なんて思いながら、俺は話を続ける。
「俺の親父とお袋がさ、永久さんと会いたいって話をしてるんだ」
『行きます!!』
「…………え?」
『今から霧都くんのご自宅に伺わせてもらいますね!!』
「そ、その……永久さんの家の夕飯とか……」
『大丈夫です!!』
「結構遅いけどどうやってこっちに来るのかな……」
『今お母さんとお父さんがそばに居ますけど…………平気です!!そっちに送ってくれるそうです!!』
北島家の本気がすごい……
『お父さんとお母さんは違うところで外食をするそうです。そちらでの食事会が終わったら迎えに来てくれるみたいです!!』
「い、至れり尽くせりだね……」
『なので、今からおめかししてそちらに行きますね!!』
「う、うん。待ってるね」
……ピ
俺は永久さんとの通話を終えた。
「……えと。平気だってさ」
「うん。聞こえてたよ。なかなかアグレッシブなお嬢さんだね」
「まぁあのくらいじゃないと美鈴の防壁は越えられないわよ」
「私の代わりにお兄ちゃんと結婚しても良いと思えたのは、今のところ永久さんだけだからね!!」
「あら、凛音ちゃんは?」
「あはは!!凛音ちゃんは論外かな!!」
お袋からの質問に、美鈴は笑いながらそう答えていた。
「霧都は凛音ちゃんと結婚すると思ってたけどな。現実は小説より奇なりとは良く言ったものだな」
「まぁ……色々とあったんだよ」
俺は苦虫を噛み潰したような気分になりながら、そう言っておいた。
さて、永久さんが来るならそれなりに準備をしておかないとな。
俺は自室に戻って、身だしなみをしっかりと整えていった。
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