Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶

文字の大きさ
3 / 59
第1章

第三話 ~冒険者を引退した俺の自宅では旧知のギルドマスターが待ち構えていた~

しおりを挟む
 第三話





「表から出るとリーファとスフィア王女に鉢合わせそうだから、裏口から出るよ」
「あはは。わかりました。二人には僕から話をしておきますね」

 必要書類にサインを終え、小切手を受け取った俺はエリックにそう話をしておいた。

「お疲れ様でした、師匠。王様にも話はしてますのでもしかしたら呼び出しがあるかもしれませんがその時はよろしくお願いします」
「ははは。まぁ、年金の受け取りに毎月15日には王都に顔を出す予定だよ」

 俺はそう言うと、エリックの肩に手を置いた。

「何かどうしようもないことがあったら連絡してくれて構わない。別に縁を切った訳じゃないからな。俺に出来る範囲でなら手を貸すさ」
「そう言って貰えると助かります」

 エリックはそう言うと頭を下げた。

「師匠の新しい門出に幸せがあるように祈ってます」
「ありがとう。エリックも頑張れよ」

 俺はそう言って、裏口から冒険者ギルドを後にした。



 そして、ひっそりと裏道から自宅の方へと歩いて行く。

 スーツと革靴なんて装いはさっさと脱ぎ捨てて、楽な格好をしたいよな。

 そう思っていると、頭の中に『女性の声』が響いてきた。

『冒険者家業二十年間お疲れ様でした。ベルフォード』
『ははは。労ってくれてありがとう、ツキ』

 女性の声に心の中で言葉を返す。
 声の主は俺の愛刀の『月光(げっこう)』だ。

 伝説級武器(レジェンドウエポン)と呼ばれる月光は、意思のある刀だ。

 固有能力は『永遠不滅(エンゲージ)』
 決して折れず、曲がらず、刃こぼれもしない。
 だが『彼女』に認められなければ鞘から抜くことすら出来ない。

 彼女との出会いは十五年ほど前だな。
 リーファとミソラと俺の三人パーティでダンジョンを攻略している時に、宝箱の中から見つけた。

 ちなみに『ツキ』という名前は俺がつけた。
 彼女の声は俺にしか聞こえないようで、他の人間にはこの刀を抜くことすら出来ない。
 心の声を口に出してしまって危ない人に見られてしまうことも昔はあった。

 そして、彼女は非常に『ヤキモチ妬きで寂しがり屋』な性格をしてる。
 彼女以外の武器を手にするのは言語道断。
 ある時は帯刀しないで出かけると帰ってきたら拗ねてしまってることもあった。

 そんな可愛い俺の愛刀だ。

『冒険者は引退したけど俺はお前を手放すつもりは微塵もないから安心してくれ』
『はい。私もベルフォード以外の人間に身体を許すことはありませんので』

 ツキの言葉に少しだけ微笑ましさを感じていると、彼女から少しだけ『冷たい声』が聞こえてきた。

『ですがベルフォード。私の耳には貴方が『婚活』をする。と言う話が聞こえましたが本気ですか?』
『……君の耳にも聞こえていたのか。まぁそうだね。俺もいい歳だからね。そろそろ結婚を……』
『ダメです!!!!』

「……っ!!!???」

 頭の中に響いたツキの大きな声に、俺は思わず声を漏らして表情を歪めてしまう。

『え、えと……ツキさん?何でダメなのかな?』

 心の中で彼女に問返すと、すごく不機嫌そうな声が返ってきた。

『ベルフォードは私という者が居るのに結婚をしようと言うのですか?浮気ですか?』
『う、浮気って……ツキは……ねぇ?』
『永遠不滅を誓った仲では無いですか!!酷いです……』
『……でもさ、ツキは刀だしな』

 俺が思わずそう言葉を返すと、何やら思案したツキが俺に問い掛けてきた。

『……刀でなければ良いのですね?』
『……え?』
『人としての身体があれば良いのですね?』

 つ、ツキは一体何を言ってるんだろうか……
 と、とりあえず良く分からないけど……あまりダメダメ言ってると拗ねてしまうからな、ここら辺で了承を出しておこうかな。

『そ、そうだね……俺としてはそれなら構わないと思ってるよ』
『言質取りました。ではベルフォード。私は『準備』に入ります。覚悟しておいて下さいね?』

 ツキはそう言うと、その後は一言も喋ることは無くなった。

「か、彼女は一体何をしようと言うんだろうな……」

 伝説級武器の考えてる事はちょっと良く分からないよな。

 そんなことを考えていると、自宅の前までやって来ていた。

 そして、俺の目には一人の『旧知の元パーティメンバー』が写っていた。

「待ってたわよ、ベル。でも意外と早かったじゃない?」
「そうだな。優秀なギルド職員のお陰でスムーズに手続きが出来たからな」

 俺がそう答えると、彼女はニコリと笑った。

「ふふふ。貴方がそう言ってたと伝えてあげれば、リルムちゃんも喜ぶと思うわよ」
「こんなおっさんに褒められても嬉しくないだろ?それに立ち話もなんだから家の中に入れよミソラ」
「そうね。お茶の一杯くらいは出してもらおうかしらね?」

 俺の言葉をミソラは軽く笑いながら言葉を返す。
 彼女の名前はミソラ。
 俺とリーファのパーティにすぐに加わった旧知の間柄だ。

 五年ほど前から冒険者を引退してギルド職員になった。
 冒険者時代の知識や人脈を利用して業務改革を行い、去年からギルドマスターとしての地位に着いた女性だ。

「ちょうど先週に良い茶葉を手に入れたんだ。ご馳走するよ」

 俺はそう言って扉の鍵を開けてミソラと一緒に部屋の中に足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

処理中です...