上 下
20 / 25
狂チョコ病

エロ手がセブン

しおりを挟む
…神崎あけみ(紺野あけみ)は家に帰ると旦那の惣一に、またマサシのチョコレートで働くことを告げた。すると惣一は、
「そうか…と言った。」
と言った。
「わかりにくいボケしないでりょ!」
「最近時々出てくるようになったな。君のお父さんの口癖。」
「仕方がないじゃない!遺伝なんだかりゃ~!」
「マサシ君はまだ知らないんだろ?」
「…恥ずかしいから言わないようにしているのよ。」
「でも僕にはその恥ずかしい言葉を使っている。つまり僕の前では素直な自分を出してくれていると言うことだね。」
「良いように解釈しないでよ。相手に好意があるから言えないこともあるわ。確かにあなたにも魅力はあるけれど、マサシに対しての気持ちを整理出来たわけじゃないのよ。」
「良いように解釈しているのは君だろ?君はマサシ君が好きだった。けれどその気持ちが僕によってだんだん薄れていることを気づかない振りをしているだけなんだ!」
「あなたに何がわかるのよ!」
「…僕には言葉だけじゃなく、恥ずかしい姿だって見せてくれている。」
そう言って惣一はあけみの服の上から胸をまさぐってキスをした。
「や、今はやめ…ん、んん。」
あけみはわからなかった。マサシのことは今もずっと、変わりなく好きなのだ。けれど、惣一にこうして抱かれて、悪い気にならない。マサシと違い、惣一には大人の持っている優しさがあったのである。しかも男前で、体格もがっちりしている。
あけみはマサシや惣一に愛されて幸せを感じていたのだ。あけみは、そんな自分がたまらなく嫌な女に思えて、心を痛めた。
あけみは時々思った。もしあの時、マサシに抱かれていたらどうなっていたのだろうと…。
原駄目愚美はすごく明るく、よく働く良い女の子だった。かなりの天然ボケの女の子で、そこがかなり面白かった。でも頭が悪いわけではなく、意外と色んな事を知っている子であり、また、そんなことも知らないの?的なところのある、不思議な女の子だった。
F1レースや、M1グランプリ、競艇や競輪にむちゃくちゃ詳しいかと思うと、実際にそういった場所に足を運んだことがなく、また、そういうテレビ番組さえ見たことがないと言うのだ。
マサシが競艇の話で盛り上がっていた時、
「競馬はしないの?」
と聞くと、
「けいば?…場所かなんかを競うんですか?」
と言われ、なんじゃそりゃ!とツッコンでしまったり、また、愚美は釣りが好きらしいので、マサシが、
「泳いだりはしないん?」
と聞くと、
「はぁ?」
と言われてムカッとしたこともある。どうやら愚美は、魚以外の生き物が海で泳げるなんて思いもしなかったらしく、
「じゃあ今度は釣竿無しで魚を捕まえてみます!」
と言うのだ。マサシが呆れて、
「あかんって!魚はすごい早いから!」
と言うと、
「大丈夫です!私バイクの免許持ってますから!」
と言われ、
「ば、バイクは泳げへんねんで!」
と意味のわからない注意をすると、
「練習してもですか?」
と言うのだ。あまりにも知識に偏りがあるので、愚美の家族のことや日常生活などを聞いてみた。すると、愚美の父は横山ぎん色と言う名前の作家をしていて、母は新聞記者をしているという。
姉が一人いて、かなりのギャンブル好きらしい、そして、姉の彼氏がスパイはしていて、裏ルートの情報はかなり詳しい。そして、その彼氏には妹がいるらしく、その妹は七瀬ヒカルと言う有名なタレントで、テレビによく出ている。
そしてよく父が小説の題材に家族や知人に話を聞いたりしているので、自然と知識を吸収してしまうらしかった。それを聞いてマサシは、
「へぇ~!じゃあ、お姉ちゃんがその彼氏と結婚したら七瀬ヒカルと義理の兄弟になるんや~。実は僕の妹も漫才師目指してるねんけど、売れたら七瀬ヒカルとも顔合わせることになるかもしれへんな!」
「七ちゃんとは同じ年だし、仲良いんですよ!良かったら七ちゃんのコネで妹さんがテレビに出られるように頼んでみましょうか?」
「そりゃあ助かるけれど、実力で売れんとな!妹信じているし!」
そう言ってマサシは笑った。…そうして、二人は少しずつ仲良くなっていくのである。
そして、新人、部流本・明志が入る土曜日になった。実は、マサシが面倒だからと言って、面接も無しに部流本・明志を雇うことになっているのである。
明志がマサシのチョコレートを選んだのには理由があった。それは、失ってしまった明志の彼女の敵討ちの為だ。
明志は前に、マサシのチョコレートを食べたことがあって、それは、明志の彼女、森永ロッテと言うフランスと日本のハーフの可愛い女の子がバレンタインにくれたチョコレートだ。
二人はお互いに役者を目指していて、東京に住んでいた。(それなのにどうして神戸にある店かもしれないマサシのチョコレートが買えるのかだって?ふふふっ!それはね!ロッテちゃんの実家はマサシの住んでいる近所にあり、里帰りした時にお土産として部流本明志に贈ったものだからかもしれないからだ!)
…そして、明志はそのお返しに市販のホワイトチョコレートを贈ったのである…それがいけなかった。
ロッテは狂チョコ病にかかってしまい、サザンズオールスターズの『エロ手がセブン』を歌いながら、包丁で自分の体を滅多刺しにしてしまったのである。
その時、ロッテはこう言いながらこの世を去った。
「め、明志…これ包丁?…マ~ジに凶器で~ヘブン~♪」
そして、明志は役者の道を諦めて、安全なチョコをロッテの実家の神戸かもしれない場所で作る為に東京からわざわざ連絡をして、働くことになったのである。
しおりを挟む

処理中です...