精霊様と魔法使い~強奪チートで妖精キングダム~

くろげブタ

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8.冒険者ギルド

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 魔族の襲撃を逃れ、森を抜け、街道へと辿り着く。

 東西に延びる道。
 道があるという事は、人の住む場所に続いているという事だ。

 テクテクと道を歩く。
 道中。夜を明かした翌日。
 日が沈もうとする頃、ようやく前方に集落が見えてきた。

 なかなかの大きさ。
 人口は1000人くらいはいるのだろうか?

 モンスター対策だろう。柵に囲われた村。
 入口には見張りであろう武装した兵士が立っている。

 今回、初めて人と出会うわけだが……
 俺が異世界に来て出会った相手は、妖精さん。
 そしてモンスターだけ。

 これまでは外見を気にする必要はなかったが、人と会うとなるとそうはいかない。
 今の俺の服装はといえば、異世界に来た当時のまま。
 ずばりパジャマ姿である。
 布団で寝ている時に死んだのだから仕方がない。

 しかも、そのパジャマも薄汚れ、焼け焦げ、泥だらけでボロボロの有様。
 まるで浮浪者そのものだ。

 いかに俺が天才で人間性に優れていようとも、薄汚い浮浪者の恰好では追い出されかねない。
 悲しいかな。人間。何よりもまず第一印象。見た目が大事なのだから。

 それでも異世界の。しかも辺境にある村。
 モンスターに襲われたとでも言えば、中に入れてくれそうにも思えるが……

 俺はシルフィア様の戦士。
 高貴な精霊様。いまは精霊さん? だが。
 シルフィア様に仕える俺が浮浪者扱いなどされては、主の名誉に関わる問題である。

 しかし、綺麗な服を買うためには、まずは村に入らなければならない。
 そして、そのための服がないという。

 困った……いや。何も困る必要などない。

 確かに俺の身なりは薄汚い。
 だが、俺の心は清廉潔白に澄み渡り、その身体は体力自動再生のおかげで傷1つ見当たらない。
 ならば……ここは正々堂々、戦士として入村するべきである。

 意を決した俺は、村の入り口。
 兵士が見張る柵へと歩み寄る。

「止まれ。何者だ?」

「私だ。旅の道中である。村への入場を希望したい」

「だから何者だと聞いている。暗くて良く見えんな。明かりの下まで出ろ」

 すでに辺りは薄暗い。
 兵士の促すまま、俺は明かりの元まで進み出る。

「なっ? どうしたのだその姿は?」

「どうしたもこうしたもない。宿を借り受けたく訪れた次第である」

「しかし……なぜ裸なのだ? 浮浪者か? それとも野盗にでも襲われたのか?」

 兵士の前に進み出る。
 俺の姿は裸であった。
 いや。正確にはパジャマを引き裂きふんどしにしているため、裸ではない。
 これは国技であるスモウレスラー。その姿かたちを真似た神聖なる正装だ。

「それは私への愚弄であるか? 浮浪者などと同列に扱わないでもらいたい。これは我が部族の正装である」

 ふんどし一丁のまま、俺はことさらに胸を張る。

 第一印象とは、何も服装だけで決まる物ではない。
 行動。態度。言葉遣い。
 堂々と振る舞うならば、それはすなわち戦士である。

「いや……失礼した。ひとかどの戦士とは知らず。申し訳ない」

 ペコリと頭を下げる兵士。
 素直でよろしい。

「なに。全く気にしていない。それより、宿と冒険者ギルドがあれば場所を教えてもらいたい」

 ならばと、俺はシルフィア様の知識にある冒険者ギルドについて、兵士に聞いてみる。

───シルフィア様情報───

冒険者ギルド
登録する事で身分の保証となる他、様々な仕事を斡旋してくれる便利な場所です。
魔石の換金も行っているため、街に着いたなら登録するのが良いでしょう。

──────────────

 全長10センチほどの妖精に戻ってしまい、今は俺の髪の毛に埋もれて眠るシルフィア様。

 ダンジョンマスターとしての。
 精霊としての力を失っても、契約時に共有したシルフィア様の知識は、俺の脳内に残っている。
 もっともシルフィア様本人は幼児化してしまい、その知識を忘れてしまっているようだが。

「はい。大通りを真っ直ぐ突き当りに冒険者ギルド。その隣が宿屋になっています」

「ありがとう。通らせてもらうが、よろしいか?」

「はい。お気をつけて」

 こうして、俺はこの村。
 兵士によるとトータス村というそうだが、無事に村内へと入場する。

 時刻はすでに夕闇。
 村の各処にはかがり火が焚かれ、通りは明るく行きかう人も多い。
 炎魔法を生活利用しているのか? 
 田舎のくせにシルフィア様の森より文明が進んでいるとは生意気である。

「あれ……通して良かったのか? 頭イカレテルだろ?」
「……悪事を働いたわけではないからな。それに……頭がイカレタ奴に関わりたくはないだろ? ギルドに任せておけば良い」
「そうだな。くわばらくわばら」

 ……聞こえているぞ。
 だが、まあ、怒るような事でもない。
 何せ天下の往来でふんどし一丁なのだ。
 ここは常識の異なる異世界。誤解が生じるのも無理はない。

「なにあれー」
「やべー奴や」
「可愛そうに」
「恵んでやるべさ」

 場所が日本であれば、オウ! スモウレスラー! 素敵。抱いて。と人が殺到するというのに……
 通りの村人は、俺を遠回りに見守るだけであった。

 もっとも、最悪の場合。
 俺の姿が、そのように見られる可能性も織り込み済みではある。

 誰しも変人に関わりたくはないもの。
 もちろん俺は変人ではないのだが、物事を進めるには演技も必要とあらば演じ切るのみ。
 道中。投げ込まれる小銭を拾いつつ、俺は誰にも邪魔される事なく冒険者ギルドへ辿り着いた。

「ごめん。魔石を買い取っていただきたい」

「ひっ! き、寄付ならお断りですよ……」

 ドアを開け放ち、冒険者ギルドへ入室する。
 俺の第一声に対して、受付であろう女性は見当違いの答えを返していた。

 確かに俺の身なりは……まあ、あまり公共の場にふさわしいとは言い難い。
 スモウレスラーといえども、公共の場をふんどしで出歩かないものだ。
 それでも俺の鋼の肉体を、黄金の精神を見て、物乞いと見間違うとは……

 海千山千。荒くれ揃いの連中に仕事を斡旋する。
 その受付嬢が見当違いの鑑識眼をして、仕事が務まるのだろうか?
 いいや。務まらない。
 本来なら即座に責任者を呼べと苦情を申すべき場面。
 しかし、それが原因で彼女が職を失い浮浪者となるのも不憫である。
 よって、心優しい俺は受付の過ちを咎めない。

「寄付は結構だ。それよりも魔石を買い取っていただきたい」

「し、失礼しました。ええと、魔石ですね。机の上に出していただけますか」

 森でモンスターを退治した。
 その魔石を俺は精霊ボックス。異次元倉庫に収納している。

 即座に取り出す事も可能だが、おいそれと精霊ボックスの存在を公にするわけにはいかない。
 精霊ボックスはレア中のレアスキル。悪用するなら窃盗もやり放題。
 もちろん清く正しく美しい俺は、犯罪を侵さないが。

 とにかく、所有していると知られては、命を狙われかねない凶悪スキル。
 したがって、俺は精霊ボックスの存在を誤魔化すため、ここでも演技を打たねばならないわけだ。
 まったく……俺は魔法使いであって、役者ではないというのに。

「しばし待たれよ……今、取り出すゆえに」

 予定では何かダミーの袋を購入。
 袋の中から魔石を取り出す演技の予定であったが、今はその袋を買うお金がない。

 となると……やはり、あれしかないか。
 俺は自身のふんどしへと手を差し入れる。

「え? ちょ、ちょっと……」

「どすこい!」

 ふんどしに差し込んだ手を引き抜く。
 机の上で広げる手の平から、ポトポト大小さまざまな魔石がこぼれ落ちていた。

「ひっ……い、いや……」

「さあ。買い取っていただきたい」

「ま、マスタァ……」

 受付の女性は涙目で後方を振り返っていた。

 女性を前にこのような真似。はしたないにも程がある行為だが……
 ここはモンスターの買い取りも行う冒険者ギルド。
 モンスターの血を、内蔵を。
 死体を取り出されても眉一つ動かす事無く対応するのがプロである。

 それを、たかが股間から魔石を差し出しただけで助けを呼ぶなど……どういう事か?
 教育がなっていないにも程がある。

「おいおい。兄ちゃん。おいたが過ぎるぜ?」
「俺らのアイドル。リンちゃんに何してけつかるねん」

 室内に居たのであろう他の冒険者たち。
 いつの間にかリンちゃんと呼ばれた美人受付を庇うよう、俺の前に立ちはだかっていた。

 何も好き好んで、おいたをしているのではない。
 それでも、リンちゃんを涙目にさせたのは事実。

「すまない。何か不快な思いをさせたなら謝るが、私は魔石の換金に訪れただけだ」

 やむをえず、あらためて俺は事情を説明する。
 何せ俺は平和を愛する男。荒事は嫌いである。

「きたねー魔石をリンちゃんに出すんじゃねーよ」
「汚物担当はそっちだっつーの」

 冒険者が指さすのは壁際の受付。
 小太りの女性が1人座る薄汚れたカウンターであった。
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