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24.5 ミーシャと熟練冒険者
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タートス村は人口600人。
王国の東に位置する、のどかな村である。
本来。王国の国境線は、タートス村よりはるか東。
村のさらに東に位置する大きな街までが、王国の領域であった。
突如。始まった魔族の侵攻。
魔族との国境に位置する街は陥落。
現在。王国の東は、タートス村が国境線となっていた。
村を出て、東へ向かう一団。
その数は6人。
うち5人はいずれも熟練の冒険者。
優れた武器防具に身を包み、油断なく周囲に気を配り行進する。
村の東。そこは、すなわち魔族の領域。
だというのに、一団のうち1人は、まだ年端もいかない少女。
身にまとう防具も心もとない。
「ミーシャ。ここから先は魔族の領域。俺たちが守るが注意してくれ」
「わ、分かったわ」
一団のリーダーだろう。
30代半ばと思われる壮年の男性が少女に声をかける。
「ミーシャちゃん。そんな緊張しなくても大丈夫よ」
「ここらはゴブリンマンやオークマンがうろちょろする程度や」
「街が落とされたのは、もう二か月も前。あれから魔族に動きはないしな」
「もうこれ以上の侵攻は、ないんじゃね?」
街を突如襲った魔族のモンスターたち。
すわ王国の一大事と王城は騒めき立つが、その後、王国内に侵攻するでもない。
下っ端であるゴブリンマンやオークマンが、王国内を徘徊する程度に止まっていた。
「魔族の考えは分からん。だが、この近辺の猛獣は手ごわいぞ」
「サーベルキャットマン……中級冒険者キラーだな」
「ゴブリンマン相手に調子こいた冒険者が殺されるっつー奴ね」
「ま、そのぶん、この辺りのモンスターは経験が多いからな」
モンスターと戦い勝利することで、冒険者は強くなる。
原理は不明だが、戦う相手が強ければ強いほど、その恩恵は大きくなる。
少女の年齢にして、すでにイノシシマンを仕留めたミーシャ。
モンスターと戦い鍛えれば、きっと将来は一流の冒険者になるであろう。
そう確信したギルドマスターの依頼で、ミーシャを鍛えるため。
熟練冒険者5名が護衛に集められたのだ。
「とりゃー!」
ドカン
冒険者が周囲を警戒する中。
ミーシャの回し蹴りがオークマンの胸板を蹴り飛ばす。
「ブヒー!」
胸骨を叩き折られ、オークマンは息絶える。
「ひゅー。ミーシャちゃんやるねえ」
「ああ。オークマンはある程度経験を積んだ冒険者でも手こずる相手」
「まさか。武器もなしにねえ」
「こりゃー体術の加護を得ているに違いねえ」
稀に生まれつき特殊な加護を持つものが存在する。
ある者は刀剣の扱いが得意だったり。
ある者は魔法の詠唱に優れていたり。
加護を持つ者は、他を圧倒する力を発揮する。
ただし、各人がどのような加護を持つのか。
それは、誰にも分からない。
喫茶店のウエイターが剣術の加護を得ていようとも。
生涯。日の目を見る事なく終わるのなら意味はない。
「はあっ……はあっ」
「まあ、初日なんだし、あんまり張り切りすぎんなよ」
「でも、アタシ。もっと強くなりたいの」
「そうか。でもまあ。適度な休憩は必要だぜ」
促され、ミーシャは草むらに腰を落とす。
「そういえば、道中に会った2人。ミーシャちゃんのお友達かい?」
「ええ。アリサちゃん。村で一番の友達。よく一緒に店番をしているわ」
「へー」
店番を手伝うのは、何も仲が良いからだけではない。
孤児であり少女であるミーシャがお金を稼ぐ手段。
それを知るから、アリサはミーシャに店番を任せているのだ。
ミーシャが休憩する最中も。
現れるオークマンを次々と切り倒していく冒険者たち。
(喧嘩では負けたことないのに。アタシ……まだまだ弱い)
早くも息切れする自分に比べて、ミーシャと喋りながらも、悠々とオークマンを始末する冒険者たち。
お互いの力量さに、自分の不甲斐なさにミーシャは歯噛みする。
「にしても……オークマンの数が多いな」
「そういえば」
「いつもは探さなければ見つからないのにな」
ガサゴソ
会話を交わすうちから、藪をかき分け新たなオークマンが複数。
その姿を現していた
「……嫌な予感がするぜ」
「こいつらを倒したら引き上げるか?」
「ああ。用心するに越したことはない」
各自が武器を抜き放ち、ミーシャを中心に構える冒険者たち。
ガサリ
その目の前で、藪が大きく揺れ動いていた。
ガサリ
オークマンの揺れではない。
なにか。もっと大きな存在。
じわり身体から汗が噴き出す。
これは熟練冒険者の感。
経験が危険を告げる証。
引き上げるべきだと告げるサイン。
「ブモオオオオオオオ!」
だが、もう遅い。
辺りに響く咆哮。
「ひっ」
藪を突き破り、圧倒的速度で飛び出す巨体。
反応する暇もなく、その手に持つ巨槍が、熟練冒険者の胸板を貫いていた。
オークマン。いや。ただのオークマンではない。
奴はオークマンの将軍……スーパーオークマン。
王国の東に位置する、のどかな村である。
本来。王国の国境線は、タートス村よりはるか東。
村のさらに東に位置する大きな街までが、王国の領域であった。
突如。始まった魔族の侵攻。
魔族との国境に位置する街は陥落。
現在。王国の東は、タートス村が国境線となっていた。
村を出て、東へ向かう一団。
その数は6人。
うち5人はいずれも熟練の冒険者。
優れた武器防具に身を包み、油断なく周囲に気を配り行進する。
村の東。そこは、すなわち魔族の領域。
だというのに、一団のうち1人は、まだ年端もいかない少女。
身にまとう防具も心もとない。
「ミーシャ。ここから先は魔族の領域。俺たちが守るが注意してくれ」
「わ、分かったわ」
一団のリーダーだろう。
30代半ばと思われる壮年の男性が少女に声をかける。
「ミーシャちゃん。そんな緊張しなくても大丈夫よ」
「ここらはゴブリンマンやオークマンがうろちょろする程度や」
「街が落とされたのは、もう二か月も前。あれから魔族に動きはないしな」
「もうこれ以上の侵攻は、ないんじゃね?」
街を突如襲った魔族のモンスターたち。
すわ王国の一大事と王城は騒めき立つが、その後、王国内に侵攻するでもない。
下っ端であるゴブリンマンやオークマンが、王国内を徘徊する程度に止まっていた。
「魔族の考えは分からん。だが、この近辺の猛獣は手ごわいぞ」
「サーベルキャットマン……中級冒険者キラーだな」
「ゴブリンマン相手に調子こいた冒険者が殺されるっつー奴ね」
「ま、そのぶん、この辺りのモンスターは経験が多いからな」
モンスターと戦い勝利することで、冒険者は強くなる。
原理は不明だが、戦う相手が強ければ強いほど、その恩恵は大きくなる。
少女の年齢にして、すでにイノシシマンを仕留めたミーシャ。
モンスターと戦い鍛えれば、きっと将来は一流の冒険者になるであろう。
そう確信したギルドマスターの依頼で、ミーシャを鍛えるため。
熟練冒険者5名が護衛に集められたのだ。
「とりゃー!」
ドカン
冒険者が周囲を警戒する中。
ミーシャの回し蹴りがオークマンの胸板を蹴り飛ばす。
「ブヒー!」
胸骨を叩き折られ、オークマンは息絶える。
「ひゅー。ミーシャちゃんやるねえ」
「ああ。オークマンはある程度経験を積んだ冒険者でも手こずる相手」
「まさか。武器もなしにねえ」
「こりゃー体術の加護を得ているに違いねえ」
稀に生まれつき特殊な加護を持つものが存在する。
ある者は刀剣の扱いが得意だったり。
ある者は魔法の詠唱に優れていたり。
加護を持つ者は、他を圧倒する力を発揮する。
ただし、各人がどのような加護を持つのか。
それは、誰にも分からない。
喫茶店のウエイターが剣術の加護を得ていようとも。
生涯。日の目を見る事なく終わるのなら意味はない。
「はあっ……はあっ」
「まあ、初日なんだし、あんまり張り切りすぎんなよ」
「でも、アタシ。もっと強くなりたいの」
「そうか。でもまあ。適度な休憩は必要だぜ」
促され、ミーシャは草むらに腰を落とす。
「そういえば、道中に会った2人。ミーシャちゃんのお友達かい?」
「ええ。アリサちゃん。村で一番の友達。よく一緒に店番をしているわ」
「へー」
店番を手伝うのは、何も仲が良いからだけではない。
孤児であり少女であるミーシャがお金を稼ぐ手段。
それを知るから、アリサはミーシャに店番を任せているのだ。
ミーシャが休憩する最中も。
現れるオークマンを次々と切り倒していく冒険者たち。
(喧嘩では負けたことないのに。アタシ……まだまだ弱い)
早くも息切れする自分に比べて、ミーシャと喋りながらも、悠々とオークマンを始末する冒険者たち。
お互いの力量さに、自分の不甲斐なさにミーシャは歯噛みする。
「にしても……オークマンの数が多いな」
「そういえば」
「いつもは探さなければ見つからないのにな」
ガサゴソ
会話を交わすうちから、藪をかき分け新たなオークマンが複数。
その姿を現していた
「……嫌な予感がするぜ」
「こいつらを倒したら引き上げるか?」
「ああ。用心するに越したことはない」
各自が武器を抜き放ち、ミーシャを中心に構える冒険者たち。
ガサリ
その目の前で、藪が大きく揺れ動いていた。
ガサリ
オークマンの揺れではない。
なにか。もっと大きな存在。
じわり身体から汗が噴き出す。
これは熟練冒険者の感。
経験が危険を告げる証。
引き上げるべきだと告げるサイン。
「ブモオオオオオオオ!」
だが、もう遅い。
辺りに響く咆哮。
「ひっ」
藪を突き破り、圧倒的速度で飛び出す巨体。
反応する暇もなく、その手に持つ巨槍が、熟練冒険者の胸板を貫いていた。
オークマン。いや。ただのオークマンではない。
奴はオークマンの将軍……スーパーオークマン。
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