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第4章 生きることは、守られること
第16話 ハブ・ア・ナイス・トリップ
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幽霊坂の立て看板まで辿り着くと、おいねは真之助の肩からひょいと飛び降り、莉帆の隣に並んだ。
離れまいとする決意の表れなのか、二人の手はしっかりと握られている。
目に見えない境界線が引かれているかのように、オレと真之助はそんな彼女たちと少し距離を置いて向かい合った。
プラットホームで電車を見送るときの気分だ。
「気をつけて帰ってね。また会おうね」なんて次の約束をうっかり交わしてしまいそうな雰囲気すらある。
二人はいよいよあの世へ旅立つのだ。
「あ、ひとつ訊きたいんだけど」
莉帆が名残惜しそうな響きを含ませて、オレを上目遣いで見た。
「あたしはどうして死んだことになっているの? 記憶がごちゃ混ぜになっていて覚えていないのよ」
「交通事故らしいぜ」
「それは何となくわかるけど、どんな状況で死んだのよ?」
この質問はオレよりも遥かに詳しいおいねにするべきだと思いながら、何気なく電柱に固定してある立て看板に一瞥をくれると、答えはすぐに見つかった。
「莉帆の事故って、これじゃねえの?」
交通事故の目撃情報を募るための立て看板かと思ったが、それだけではない。
視線を走らせるにつれ、オレは眉間にしわが寄せ集まってゆくのを感じた。
日付は三年前の今日。
通り魔に襲われた女性が逃げる途中、誤って車道に飛び出し亡くなったと書いてある。
「さっき、三田村さんが話していた内容だ」
真之助が目を丸くして、オレを見る。
『ひとりは刺殺、もうひとりは通り魔事件に関連する事故で亡くなっている』
三田村さんの言葉が耳の奥で蘇った途端、全身が粟立った。
今、目の前に立つ莉帆は健康的な長い髪を垂らしているが、通り魔は長い髪の女性に固執しているのではなかったか。
「なんて書いてあるの?」
覗き込もうと身を乗り出した莉帆に真実を伝えるべきか否か逡巡したが、隠すわけにもいかず、テストの成績を母さんに伝えるときのように、どうってことない振りをして伝える。
「莉帆が通り魔事件に巻き込まれて死んだって書いてある」
「そう」
看板をじっと見つめながら、莉帆は落胆したような安心したような声を洩らした。
電柱が死角になり気づかなかったが、立て看板の足元には献花用の花束がしめやかに置かれてある。
「あたし、ここで死んだのね」
記憶が錯乱しているせいだろう。
莉帆が車道へ投げた視線は海外のニュースを見るようにどこか他人事で実感が伴っていなかった。
ここでまた疑問が浮かび上がる。
どうして、三年もの間、莉帆は事故現場とは異なる神社の駐車場で佇んでいたのだろうか――。
しかし、それも瞬く間のことで、脳はすでに別のことを追いかけ始めていた。
「莉帆を襲った通り魔がまだ逮捕されていないんだ。何か事件について思い出せることはないか?」
「思い出せること? そう言えば……五、六十代のおじさんを見たわ。白髪混じりの少し長めの髪で、目鼻立ちがはっきりとした、右眉の下にホクロがあるおじさん」
莉帆は記憶の中から犯人を逃すまいとしているのか、連続シャッターを切るようにパチパチと目を瞬かせながら断定した。
三田村さんの話とだいぶ食い違う。
「通り魔はフードをかぶった若い男じゃなくて、おじさんだった、ということか?」
「フードをかぶった若い男? あ、あぁ……そうだったかも。そうだったわ、そうだった。確かにフードをかぶった若い男だった。あたしったら勘違いしちゃった」
「記憶がグチャグチャなのは仕方ないよ。莉帆は死を受け入れたばかりなんだから」
病み上がりの患者に無理をさせるのはいけない、とドクターストップをかけるように、おいねが莉帆をかばったが、オレは納得いかなかった。
被害者の証言を警察に伝えられるのは自分しかいないのだ、とジリジリと胸を焼くような使命感と焦燥感が湧き上がっていたからだ。
「他に覚えていることは? 何でもいいから思い出してくれ」
気づかないうちに詰問口調になっていたらしい。
「警察の取り調べのつもり? そんな前の話、覚えてるわけないじゃん。もうこの話はしたくない!」
オレに責め立てられていると勘違いした莉帆はプイッと背を向けてしまった。
「オレのじいちゃんも通り魔に殺されたかもしれないんだ!」
追いすがってみたが、莉帆の強硬な態度は難攻不落の要塞を思わせるほど手強く、二度と口をきいてくれそうもなかった。
スマホのストラップだろうか。莉帆のスカートのポケットから間抜けな顔をしたクマのマスコットが、「アンタの口の利き方が悪いのよ」とオレをバカにするようにブラブラと揺れている。
クマと睨み合ってから、たった十秒や二十秒しか経過していないのに、永遠とも思える時間に胸がつまりそうだった。
「ねえ、頼まれてくんない?」
永遠が思ったよりも早く終了し、莉帆が振り返ったときにはすでに機嫌が直っていた。
「お母さんにあたしが謝っていたと伝えて欲しいの。親不孝な娘でごめんなさいって」
事件とは無関係の話で少し落胆したが、袖振り合うも他生の縁だ。オレにできることなら、莉帆の最期の望みを聞いてやりたい。
オレはスマホのメモアプリに莉帆の言葉と住所を文字にしながら、どうやって彼女の遺言を母親に伝えようか考えた。何せ莉帆の死から三年が経とうとしているのだ。今頃、「お嬢さんの遺言を伝えに来ました」と訪問すれば不審がられるに決まっている。
「それと大ちゃんに」
改行し、大ちゃんと入力する。名前と親しげな響きから莉帆の弟だろうと踏んだのだが、
「大ちゃんにはお嫁さんになってあげられなくてごめんねって伝えて。だから、その代わりにあたしも大ちゃんのこと全部許すって」
「お嫁さんって彼氏かよ」
「ハズレ!」
「じゃあ、幼馴染?」
オレが当てずっぽうに訊ねる、莉帆は楽しそうにまた「ハズレ」と答える。
「大ちゃんは大好きな人よ。で、あたしが二十歳になったら彼女にしてねって、一方的だけど頼んでいた人。生きていたら、今頃、大ちゃんと結婚できていたかもしれないのに惜しいことしたなー」
「付き合ってもないのに惜しいはねえだろう。それただの片思いの相手じゃねえか」
「はあ? 歴史にもしもは付きものなの。まあ、生きているあんたにはわからないか。ね、おいねちゃんにしんちゃん?」
おいねと真之助に同意を求めたあと、莉帆は「あんただけ生者ね、仲間外れなんですけど」と子供っぽい優越感に浸ってみせた。
死者の立場が生者よりどれだけ上なのかわからないが、売り言葉を買わずにはいられない質であるから、オレは少なからずムッとする。
「でも、実のところ、あたし、いろいろあったから、大ちゃんに相手にされてなかったんだよね」
「いろいろって?」
「いろいろよ。女の子にそんなデリケートな質問しないで。恥かかせたいの?」
しまいには「大ちゃんのことはお母さんに聞いて」と他人任せにする始末だから、真之助を筆頭に死者には身勝手なやつが多いとオレは呆れた。
「もう時間がないよ。この世に三年留まったら不成仏霊になっちゃうよ」
「ごめん、ごめん」
おいねに急かされ、莉帆は元の位置に戻ると、スタートラインに立つ選手のように緊張で顔を強張らせた。
おいねは莉帆をあの世に送ってから守護霊界に戻ると言う。
それを聞いた真之助が満足そうに頷いたから、きっと正式なルートなのだろう。長い旅になるのか、短い旅になるのか、オレには見当もつかない。
おいねは丁寧にペコリと頭を下げた。
「今日は恰好いいお兄ちゃんも、小さいお兄ちゃんも、おいねに付き合ってくれてどうもありがとう。無事に莉帆を成仏させることができそうです」
「どうした? 浮かない顔をして。この世を離れるのがつらいのか?」
「そうじゃないけど」
おいねは一度言い淀んだが、意を決したように伏せていた視線を上げた。真剣味を帯びた瞳がオレにではなく、真之助に向けられる。
「実はおいね、心配なことがあるの。恰好いいお兄ちゃんがおいねと喋ってしまったから、掟破りになっちゃうんじゃないかと思って」
「私を心配してくれるの?」
「だって。守護霊同士が言葉を交わすことは禁じられているんだから、お兄ちゃんに迷惑をかけてしまったでしょ?」
おいねは自分と莉帆のために真之助が掟を破ったのではないかと心を痛めているようだった。
確かに守護霊同士が言葉を交わすことは掟の禁止事項だと真之助から説明は受けた。
しかし、昨日、寿々子さんは晴れやかに微笑んでいたではないか。「バレなければ、結果オーライでございます」と。
そう、バレなければいいのだ。
真之助はオレが知る限り、器用な立ち振る舞いができる男だ。ハッタリをかますときだって、飄々とやってのける。
今だって滾々と湧き出る泉のように自信に満ち溢れた顔で胸を張っている。
「心配いらないよ。今回は真が活躍してくれたお陰で、私はノータッチだからね。もし、使者がやって来てもそう説明するよ」
「だったら、いいんだけど。昨日、掟を破った守護霊が逮捕されたと噂で聞いたから神経質になっちゃった。最近、取り締まりが厳しいらしいから、充分に気を付けてね」
光の粒が拡散するようにおいねと莉帆は笑みを浮かべたまま消えて行った。
いや、逝った、と言うべきか。
元気で――。
オレはそっと手を合わせ、二人の旅の安全を祈った。
離れまいとする決意の表れなのか、二人の手はしっかりと握られている。
目に見えない境界線が引かれているかのように、オレと真之助はそんな彼女たちと少し距離を置いて向かい合った。
プラットホームで電車を見送るときの気分だ。
「気をつけて帰ってね。また会おうね」なんて次の約束をうっかり交わしてしまいそうな雰囲気すらある。
二人はいよいよあの世へ旅立つのだ。
「あ、ひとつ訊きたいんだけど」
莉帆が名残惜しそうな響きを含ませて、オレを上目遣いで見た。
「あたしはどうして死んだことになっているの? 記憶がごちゃ混ぜになっていて覚えていないのよ」
「交通事故らしいぜ」
「それは何となくわかるけど、どんな状況で死んだのよ?」
この質問はオレよりも遥かに詳しいおいねにするべきだと思いながら、何気なく電柱に固定してある立て看板に一瞥をくれると、答えはすぐに見つかった。
「莉帆の事故って、これじゃねえの?」
交通事故の目撃情報を募るための立て看板かと思ったが、それだけではない。
視線を走らせるにつれ、オレは眉間にしわが寄せ集まってゆくのを感じた。
日付は三年前の今日。
通り魔に襲われた女性が逃げる途中、誤って車道に飛び出し亡くなったと書いてある。
「さっき、三田村さんが話していた内容だ」
真之助が目を丸くして、オレを見る。
『ひとりは刺殺、もうひとりは通り魔事件に関連する事故で亡くなっている』
三田村さんの言葉が耳の奥で蘇った途端、全身が粟立った。
今、目の前に立つ莉帆は健康的な長い髪を垂らしているが、通り魔は長い髪の女性に固執しているのではなかったか。
「なんて書いてあるの?」
覗き込もうと身を乗り出した莉帆に真実を伝えるべきか否か逡巡したが、隠すわけにもいかず、テストの成績を母さんに伝えるときのように、どうってことない振りをして伝える。
「莉帆が通り魔事件に巻き込まれて死んだって書いてある」
「そう」
看板をじっと見つめながら、莉帆は落胆したような安心したような声を洩らした。
電柱が死角になり気づかなかったが、立て看板の足元には献花用の花束がしめやかに置かれてある。
「あたし、ここで死んだのね」
記憶が錯乱しているせいだろう。
莉帆が車道へ投げた視線は海外のニュースを見るようにどこか他人事で実感が伴っていなかった。
ここでまた疑問が浮かび上がる。
どうして、三年もの間、莉帆は事故現場とは異なる神社の駐車場で佇んでいたのだろうか――。
しかし、それも瞬く間のことで、脳はすでに別のことを追いかけ始めていた。
「莉帆を襲った通り魔がまだ逮捕されていないんだ。何か事件について思い出せることはないか?」
「思い出せること? そう言えば……五、六十代のおじさんを見たわ。白髪混じりの少し長めの髪で、目鼻立ちがはっきりとした、右眉の下にホクロがあるおじさん」
莉帆は記憶の中から犯人を逃すまいとしているのか、連続シャッターを切るようにパチパチと目を瞬かせながら断定した。
三田村さんの話とだいぶ食い違う。
「通り魔はフードをかぶった若い男じゃなくて、おじさんだった、ということか?」
「フードをかぶった若い男? あ、あぁ……そうだったかも。そうだったわ、そうだった。確かにフードをかぶった若い男だった。あたしったら勘違いしちゃった」
「記憶がグチャグチャなのは仕方ないよ。莉帆は死を受け入れたばかりなんだから」
病み上がりの患者に無理をさせるのはいけない、とドクターストップをかけるように、おいねが莉帆をかばったが、オレは納得いかなかった。
被害者の証言を警察に伝えられるのは自分しかいないのだ、とジリジリと胸を焼くような使命感と焦燥感が湧き上がっていたからだ。
「他に覚えていることは? 何でもいいから思い出してくれ」
気づかないうちに詰問口調になっていたらしい。
「警察の取り調べのつもり? そんな前の話、覚えてるわけないじゃん。もうこの話はしたくない!」
オレに責め立てられていると勘違いした莉帆はプイッと背を向けてしまった。
「オレのじいちゃんも通り魔に殺されたかもしれないんだ!」
追いすがってみたが、莉帆の強硬な態度は難攻不落の要塞を思わせるほど手強く、二度と口をきいてくれそうもなかった。
スマホのストラップだろうか。莉帆のスカートのポケットから間抜けな顔をしたクマのマスコットが、「アンタの口の利き方が悪いのよ」とオレをバカにするようにブラブラと揺れている。
クマと睨み合ってから、たった十秒や二十秒しか経過していないのに、永遠とも思える時間に胸がつまりそうだった。
「ねえ、頼まれてくんない?」
永遠が思ったよりも早く終了し、莉帆が振り返ったときにはすでに機嫌が直っていた。
「お母さんにあたしが謝っていたと伝えて欲しいの。親不孝な娘でごめんなさいって」
事件とは無関係の話で少し落胆したが、袖振り合うも他生の縁だ。オレにできることなら、莉帆の最期の望みを聞いてやりたい。
オレはスマホのメモアプリに莉帆の言葉と住所を文字にしながら、どうやって彼女の遺言を母親に伝えようか考えた。何せ莉帆の死から三年が経とうとしているのだ。今頃、「お嬢さんの遺言を伝えに来ました」と訪問すれば不審がられるに決まっている。
「それと大ちゃんに」
改行し、大ちゃんと入力する。名前と親しげな響きから莉帆の弟だろうと踏んだのだが、
「大ちゃんにはお嫁さんになってあげられなくてごめんねって伝えて。だから、その代わりにあたしも大ちゃんのこと全部許すって」
「お嫁さんって彼氏かよ」
「ハズレ!」
「じゃあ、幼馴染?」
オレが当てずっぽうに訊ねる、莉帆は楽しそうにまた「ハズレ」と答える。
「大ちゃんは大好きな人よ。で、あたしが二十歳になったら彼女にしてねって、一方的だけど頼んでいた人。生きていたら、今頃、大ちゃんと結婚できていたかもしれないのに惜しいことしたなー」
「付き合ってもないのに惜しいはねえだろう。それただの片思いの相手じゃねえか」
「はあ? 歴史にもしもは付きものなの。まあ、生きているあんたにはわからないか。ね、おいねちゃんにしんちゃん?」
おいねと真之助に同意を求めたあと、莉帆は「あんただけ生者ね、仲間外れなんですけど」と子供っぽい優越感に浸ってみせた。
死者の立場が生者よりどれだけ上なのかわからないが、売り言葉を買わずにはいられない質であるから、オレは少なからずムッとする。
「でも、実のところ、あたし、いろいろあったから、大ちゃんに相手にされてなかったんだよね」
「いろいろって?」
「いろいろよ。女の子にそんなデリケートな質問しないで。恥かかせたいの?」
しまいには「大ちゃんのことはお母さんに聞いて」と他人任せにする始末だから、真之助を筆頭に死者には身勝手なやつが多いとオレは呆れた。
「もう時間がないよ。この世に三年留まったら不成仏霊になっちゃうよ」
「ごめん、ごめん」
おいねに急かされ、莉帆は元の位置に戻ると、スタートラインに立つ選手のように緊張で顔を強張らせた。
おいねは莉帆をあの世に送ってから守護霊界に戻ると言う。
それを聞いた真之助が満足そうに頷いたから、きっと正式なルートなのだろう。長い旅になるのか、短い旅になるのか、オレには見当もつかない。
おいねは丁寧にペコリと頭を下げた。
「今日は恰好いいお兄ちゃんも、小さいお兄ちゃんも、おいねに付き合ってくれてどうもありがとう。無事に莉帆を成仏させることができそうです」
「どうした? 浮かない顔をして。この世を離れるのがつらいのか?」
「そうじゃないけど」
おいねは一度言い淀んだが、意を決したように伏せていた視線を上げた。真剣味を帯びた瞳がオレにではなく、真之助に向けられる。
「実はおいね、心配なことがあるの。恰好いいお兄ちゃんがおいねと喋ってしまったから、掟破りになっちゃうんじゃないかと思って」
「私を心配してくれるの?」
「だって。守護霊同士が言葉を交わすことは禁じられているんだから、お兄ちゃんに迷惑をかけてしまったでしょ?」
おいねは自分と莉帆のために真之助が掟を破ったのではないかと心を痛めているようだった。
確かに守護霊同士が言葉を交わすことは掟の禁止事項だと真之助から説明は受けた。
しかし、昨日、寿々子さんは晴れやかに微笑んでいたではないか。「バレなければ、結果オーライでございます」と。
そう、バレなければいいのだ。
真之助はオレが知る限り、器用な立ち振る舞いができる男だ。ハッタリをかますときだって、飄々とやってのける。
今だって滾々と湧き出る泉のように自信に満ち溢れた顔で胸を張っている。
「心配いらないよ。今回は真が活躍してくれたお陰で、私はノータッチだからね。もし、使者がやって来てもそう説明するよ」
「だったら、いいんだけど。昨日、掟を破った守護霊が逮捕されたと噂で聞いたから神経質になっちゃった。最近、取り締まりが厳しいらしいから、充分に気を付けてね」
光の粒が拡散するようにおいねと莉帆は笑みを浮かべたまま消えて行った。
いや、逝った、と言うべきか。
元気で――。
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