死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ

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第2章 冒険者編

144話 やはりこいつらは人の話を聞きません

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「ショ、ショウブ?」

 なんかまたわけのわからない事を言いだしおったぞ、あのフランスパン。ローブの人も突然の提案に困惑してるな。顔が見えなくても声からその戸惑いが伝わってくる。まあ、あれだけスルーしていたにも拘わらず引かないどころかこんなあたおかな事を唐突に告げてくるんだ。動揺するのもの無理ないよな。

「どちらの方がより多く必要な素材を採取してこれるか勝負しようではないか!」

(何者かはわからないがこの雰囲気からして只ものではないことは確かだ。ギルド受付嬢の態度からしてもかなりの実力者だと思われる。そしてそんな相手に依頼で勝ったとなれば俺らの名声は更に高まる。くっくっく!)

「ワルイガワタシハソウイウコトニキョウミガナイ。ホカヲアタッテクレ」

「くっ、只では受けてもらえないか。それなら我々が負けたらクエストの取り分を全てそちらに差し出そう。これでどうだ!」

「イヤ、ソウイウモンダイデハナク…」

「あの、申し訳ないんですけどスコーンさん達はまだ駆け出し冒険者ですのでナイトメアさんと同じ難易度のクエストを承認するわけにはいかないんです」

「くっ、よもやモンスターの前にギルド嬢が敵として立ちはだかるとは…これも貴行の力という事か」

「いえ、そういう事ではなくてですね」

「だったら我々が依頼関係なく個人的に赴こう!これなら問題無いであろう?」

「いえ、そういうお話でもないと申しますか、問題点だらけといいますか…」

 まったく、あいつらは…ミルナさんもつくづく不幸だな。

「報酬も無いのにそんな事してどうすんだよ」

 あまりに彼女が可哀そうになった大河は会話に割って入った。

「金の事しか頭に無いのかこの守銭奴!貴様はいつからそのように冷たい事を言う冷徹な人間になってしまったのだ。うぅ、我は上官として悲しいぞ」

「黙れ。俺はお前みたいな自己中が息をしているような迷惑な奴を上官なんかに持った覚えはない。それに冒険者活動で生計を立てていくには報酬は必須なんだよ。特に誰かさん達のせいで懐事情が本当に苦しいんだよ」

「む、そうなのか。可哀そうに」

「なるべく無駄な出費を控えて節約を心掛よ」

「おい、なに平気な顔して他人事みたいに言ってんだよ。お前ら事なんだよ!いい加減自覚しやがれ!」

 あまりの無自覚に呆れていると先程までクエストの件であんなに沈んでいたエルノアが何故か上機嫌な感じで話に介入してきた。

「よいではないか同士よ。誰かと競う事は悪い事ではない。寧ろお互いを意識して切磋琢磨していく方が共により良い経験に繋がる。それに薬剤も質の高い物を持ってこれればその分重症者の治療にも役立ち、他の者を救う事も出来て一石二鳥ではないか」

「………」

「未だ病院のベットの上で生活を送らねばならない巨悪の為に戦ってくれた冒険者の為にも我々はリスクを背負ってもそういったクエストを受けるべきだと思わないか?」

 コイツの言うことはセリフだけを聞けば納得できないでもないし、先の戦いも俺への扱いは兎も角、文字通り我が身を省みずに戦っていた点を考慮すると大きな説得力を感じないでもない。

 しかし…

 大河は横目でチラッと彼女の顔を確認するとそこにはまさに期待に胸を膨らませた感じのキラキラとした目をしており、それを見て自分の胃が重くなるのを実感した。

 そう、問題はこの目だ。これは子供が新しいおもちゃを買ってもらえそうで喜んでいて待ちきれないというか、自分の欲望に忠実な時の目だ。つまり先程の大層な演説みたいなものは建前でこちらの方が本命。負傷者への気持ち云々が偽物とまで言うつもりはないが少なくともその感情よりも欲望《こっち》の方が勝っているらしい。

 エルノアに冷ややかな視線を送りつつ、今度は彼女の手に視線を移した。

 こいつの持っている用紙。さっきマイナさんがローブの人に手渡してたのと同じ物だ。つまりこういう事を言いだしたのもそれに記載している何かが要因なわけだ。中身を見てないが、依頼自体は薬剤の採取だからモンスター討伐系ではない。にも拘わらずこのドM王女がこんなに目を輝かせながら無理矢理行かせようとして来るって事は恐らく…

「あ、あの!今回のクエストですと道中でこの近隣でも比較的レベルの高いモンスターが現れるためエルノアさん達には尚更お薦めできないと言いますか…」

 だよな。つまり依頼そのものでなく、依頼中の行き来する場所。そこにこいつの求める事があるんだよな。けどこんな危険+予測不能のアクシデントがおこりそうな内容を初クエストになどしてたまるか!それに受付嬢もまともな人だし今回は正論で押し切って…

 そう考えていた刹那、またしてもスコーンは思いもよらぬ事を口走り始めた。
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