死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ

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第2章 冒険者編

145話 偽称作戦失敗

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「お嬢さん、貴女はまだご存じないかもしれませんが我々は実は特別なパーティーなのですよ」

 彼の素っ頓狂な発言に驚いて目を見開いて彼の様子を伺っていた。

「特別なパーティー、ですか?」

 またなに訳のわからない事を言い出してんだこのフランスパンは。事実上さっき出来てしまったばかりのパーティーにも拘わらず今度はどんなホラ話を…

「ええ、確かに我々はまだデータ上は駆け出しかもしれませんが~です。現に我々は数日前に王都から派遣され、進軍して来た魔王軍を退けたのです」

「!」

「ほ、本当ですか!?本当に貴方達一行が!?」

 それまで要注意人物を見る様な感じで警戒していたミルナだったがスコーンの口にした一言により目の色を変えて、これまでの会話から比較的常識を持っていそうな大河の方に詰め寄って真偽を確認しだした。

 まずい、非常に不味いぞこの流れ!このままだとさっきの無茶苦茶な依頼を何故かOKされてしまう感じがする!この人には悪いけれどここは嘘を吐いて誤魔化してでも…

「い、いや~それはですね。人違いというか、勘違いというか」

「そう言われればギルドに届いた目撃情報による外見的特徴も一致しているような気が…」

「そ、そんな事ありませんよ。ほら、俺らをよく見てしっかり確認して…」

「スコーンさんとモヒさんらしき人の姿は確認されておりませんが、活発な感じのツインテ―ルの黒髪幼女と凛とした立ち姿で育ちの良さを感じさせる金髪ストレートの美少女。そして少年と思われる茶髪の黒服を着た人物…こうして改めて確認してみるとエルノアさん、クラリスさんは目撃情報にあった方で間違いなさそうですね」

 ええぃ、何でよりにそこまではっきり記憶されてんだよ!そんなにしっかり報告なんてしなくても…ん?活発な感じのツインテ―ルの黒髪幼女と凛とした立ち姿で育ちの良さを感じさせる金髪ストレートの美少女?

 これらの証言に引っかかるものを感じた大河は後ろを振り向きエルノアとクラリスの姿を確認すると確かに先程言われていた外見的特徴と一致していたが、自分が知っていた彼女らの姿と異なっている事に疑問が浮かんだ。

「あれ?お前らいつの間に髪を変えたんだ?」

「「へっ?」」

「えっ?」

「「………」」

 タイガの質問にエルノアとクラリスの両名は呆気にとられて目を見開いてこちらを見ており、リリカとルルネに至っては呆れたと言わんばかりに軽蔑の気持ちが含まれていそうな痛々しい視線を送ってきた。そして僅かな沈黙の後にエルノアが恐る恐る口を開いた。

「えっと、た…同士よ。もしかしてとは思うのだが、よもや今まで私と姉上の変化に気付いていなかった…という事はない、よな?」

「ははははは、そんな事は…あるかもな」

「なんというか…普通にショック、なのだが」

 あれ、珍しいな?こいつの落ち込む表情。なんだろうこの感じ、なんだか罪悪感以上に少しスッキリ…

「タイガさんが結構アレ、なのは承知していましたがここまでとは…嘆かわしさを通り越して形容する言葉が浮かんできませんね」

 そこまでボロクソ言われる程の事なのだろうか?

「まったく、まさかここまでアレすぎるとは。いえ、タイガさんがそういう輩である可能性はチラホラと垣間見えていたわけですから、タイガさんがこちらの変化に気付けない残念体である事を予測して気付けなかったこちら落ち度ですね。申し訳ありません」

 おおぉ、なんだろう。本当に謝罪されているとは思えないイライラが際限なく湧き上がってくるのだが!?本当にさらっと人の気持ちを逆なでする天才だなこの腹黒王女!

「ええっと…よくわかりませんがさっきまでの話の流れですと少年と思われる茶髪の黒服を着た人物がタイガさん。ということでよろしいのですよね?」

 ここはなんとしても誤魔化さなくては。どうすれば…待てよ、どうしてエルノアやクラリスと比べてこんな確認するような感じなんだ?彼女らの時は外見的特徴の一致から確信じみた発言だったのに俺の方はまるでなんだか疑問の余地が残っているみたいな。視線からも何やらこちらを確認しようと伺っている風なのが見て取れるがこれは一体…はっ!そうか、そういう事か。

 ミルナの発言に違和感を覚えた大河が疑問視しているとふと自身の体が視界に入りある事に気が付いた。

 今の俺は頭のてっぺんからつま先まで何故かぐるぐるまきの状態にされているんだった。そのせいで仮に声質から男性である可能性はあっても容姿や服装に関しては同一の人物と断言できないわけか。これなら…

 よくわからない全身包帯状態を利用してなんとか嘘八兆を並べてごまかし、これから確定寸前の暗雲を振り払おうとしていた。しかし隣の身内がそんな彼の野望を一瞬にして打ち砕いた。

「ふっふっふ、実にその通りなのだ。この男がお主の言った魔王軍と戦い街を救った一人に間違いないぞ。その場に居合わせていた私が保証しよう」

「やっぱりそうなのですね!」

 戦場で目撃された人物とほぼ同一人物とされているエルノアが断言したことによりミルナが半信半疑から確信を持った視線でキラキラとした表情を向けられてしまい、大河は大きく動揺する。

 完全に信じ切っちまった目をしてるよこの人!エルノアめ、保証なんかしてくれなくていいんだよ!チクショウォ――!!偽称作戦失敗だ!

「それに戦いの先陣を切ったのもそうだが、最前線で魔王軍を半壊させて退けさせるに至ったのも実質この同士の活躍と言っても過言ではないぞ!」

 要らねぇ――!!いつもと違って今回は普通に良い事で称えてくれてはいるけれど、今回に限ってはそういうありがた精神サービスは要らねぇーよぉ――!!

「そうだったんですね!はっ!てことはもしかして貴方が姉さんの言っていたタイガさんですか!?」

「姉さん?」

「王都の東冒険者ギルドで受付嬢をしている、マイナ・カレットという名の女性職員に覚えはないでしょうか?」

「ああ、覚え…存じております。あちらでは大変お世話になりました」

 大河は一瞬知らない振りをするべきか悩んだが、ここまで来ては誤魔化そうとするだけ無駄だと判断して素直に返答と共に感謝の言葉を述べた。

「そうですか。、ですか」

何だろう、すごく含みのある発言に聞こえたのですが…。それに彼女の俺に向けられているこの視線。もしかしてマイナさんからヤバイ人認定、或いはめんどくさい冒険者として注意喚起されていたりするのだろうか?最初の方でな色々無い無い尽くしの状態で呆れられてたもんな。

「あの、俺の顔に何か?」

「いえ、何でもありません失礼しました!こちらこそ数日前は魔王軍の輩からこの街を救って頂きありがとうございました。事情を知らないとはいえこれまで失礼な発言をしてしまい申し訳ありませんでした!」

「うむ、苦しゅうないぞ」

 どこの殿様だよお前は。ああ駄目だ、もうどうやっても誤魔化す事は不可能だよな。特にこの受付さんの期待と尊敬が含まれている感じのこの目。やっぱりこれは…

「それではギルド職員として特別にタイガさん達の一行にこのクエストを受ける事を承認いたします!」

 うあぁ――!!やっぱりこうなったぁー!

 大河は心の中で号泣する勢いで血の涙を流しして嘆いていた。
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