死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ

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第2章 冒険者編

146話 いけません!

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 くっ、やはりこうなってしまったか!これではもう地獄の危険度未知数ランクの依頼に同行するしか…いや、待てよ!

 場の空気に完全に諦めそうになっていたその時、受付嬢のミルナの顔が目に入ると同時にある事を閃いた。

 そうだ。彼女なら、彼女相手ならばもしかしたら…

 そう考えた直後、大河はすぐさま行動に移った。 

「ミルナさん!」

「はぁい――!!な、何でしょうか突然!」

 大河は飛びつく勢いで受付の彼女に急接近した。いきなり顔を近づけられたことでミルナは大きく動揺した。しかも先程まで気分が上がったり下がったりと少々落ち着きはなかったものの、彼女の目から見て他の異質な人物と比べて比較的まともそうだった大河がそのような行動を起こした事でより一層大きな緊張感が生まれた。

「先程の言葉を覚えていますでしょうか!?」

「ええっと…なんの事でしょうか?」

「先程貴女はこう仰った筈です。『申し訳ないんですけどスコーンさん達はまだ駆け出し冒険者ですのでナイトメアさんと同じ難易度のクエストを承認するわけにはいかないんです』と!」

「た、確かにそう言いましたね」

「でしたらこのような事を見過ごす事はギルドの職員として違反しているのではありませんか?」

「た、確かに通常ならそうかもしれませんが、そういう前提をを覆せる程の実績を持ち合わせておられるんでしたら特別に…」

「いけません!」

「ヒィ!」

「いいですか?事情がどうであれルールは守ってこそルールです。まだ成りたての冒険者に過ぎない自分達が早々に掟を破るようであれば他の方々にも示しが付きません!特にルールを順守させるように警告すべきギルドが特別扱いなど断じて許しべきではないと考えます!」

「ソウダ、カレノイウトオリダ!カレラガナニモノデアレ、マダカケダシニスギナイパーティーニコンナキケンナイライヲタクスナドマチガッテイル。スグニテッカイスベキダ!」

 大河が受理されてしまった依頼をなんとかして破棄させるべく必死に説得を試みていると、いつの間にローブの人物がタイガの左隣りに拳一個分程の近さまで来ており、彼の意見に便乗するように受付嬢のミルナに強く訴えていた。

 この黒ローブさんのこの鬼気迫る感じ、あちらも余程俺らと行動を共にしたくないと見える。それもそうか、あらゆる意味で頭が飛んでる変人×4人のハッピーセットとなど誰だって関りたくはないだろう。特にそのネジのハズレ具合による話の通じなさを目の当たりにしているのだから尚更だろう。なら…

「ほら、手練れの冒険者であるこの方もこう言ってますよ。こういう熟練の猛者たる方のアドバイスは素直に受け取っておくべきだと思いますよ」

「エッ?…ア~ソ、ソウダナ。コンカイハソウスルベキダトオモウ」

 大河の思いもよらぬ台詞にナイトメアも一瞬どうようしたが、すぐに彼の意図を理解して戸惑いつつも大河の意見に乗ってくれた。

「で、ですが今は急を要するような状況と言っても過言ではありませんし…」

「貴女は今日受付嬢になったばかりなのですよね!?なのにそのような特別な判断をしてもよいのですか!?」

「そ、それは…」

「独断で特例の措置を執行できるほど経験を積んでいるんですか?積んでいませんよね!?もっと上の人に確認を取るべきではないのですか!?」

「ソノトオリダ。シッカリトジョウソウブノカクニンヲエテカラテツヅキスベキダ。ダカラコンカイハワタシヒトリデイクベキダ。ゼッタイニ!」

 気持ちの現われか、最後の言葉は特に気持ちが籠っているな。やはり俺らとの関係をここで断ち切っておきたいと見える。正直俺もできるなら後ろにいる諸々のメンバーとサヨナラしたいがきっとそれは叶わんだろう。まあ、危険度120%のクエストを回避できるだけでも良しと…

 そう思って顔を上げた時ようやく彼は気付いた。ミルナには申し訳ないとは思ったが彼女の経験の浅さを利用し言葉を並べ立てる事で今回の提案を有無止むにするつもりだった。しかし彼らはこれから発生するリスクを回避せんと躍起になるあまりに視野が狭まってしまい、文字通り目の前の事が、彼女の様子が見えていなかった。
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