楽園パスポート

鋼鉄の椎茸

文字の大きさ
2 / 7

トロピカルサマー

しおりを挟む
はぁ  今月厳しいなぁ。

来週は会社の後輩美代子の結婚式。

ご祝儀の用意や、美容院の予約を済ませた私は、ただいま預金通帳とにらめっこ中。

そんな折、ふと昼間の出来事を思い出した。

「先輩にもいい出会いありますよ」
美代子、あんなこと言ってたけれど。

あれ絶対に上から目線・・・

辞めておこう。

ネガティブなことを考えたところで自分の生活が豊かになることなんてないのだ。

さて、一応はお祝いの言葉も考えたし、これが終われば寿退社の彼女との付き合いもなくなるし。

今日は早めに寝ますか。



とは言いつつも現在深夜1時。通勤時間が1時間半じゃあ、早く寝るにもね。

部屋の電気を消すと大きなため息をつく私。

そういえば、ため息をつくと老けるって本当なのかしら。
だとしたら、気をつけないと。

明日も一日メンタルが持ちますように。
不吉な祈りとともにベッドに潜り込む。

あぁ。まくらが固い気がする。

・・・
・・・・・

なんだか今日は寝苦しい。

仰向け寝ではなく、横向き寝を試そうかと寝返りを打つ。


ピト


ほっぺたにひんやり硬い、厚紙?のようなものが当たった。



???


厚紙を手にとる。

そして、ベッドサイドの明かりをつけ、目を凝らして見てみた。

厚紙はカード状になっていて、大きく中央に楽園パスポートと記されていた。

ちなみにゴシック体なのね。

「私こんなカード持っていないけど。って・・・」

そういえば、あの噂とおんなじね。

たしか先週食堂で。みんなで話してたのよね。
確か、合言葉があったのよね。ええっと、

「ひらけゴマ!・・・

なぁんてね。」

噂はあくまで噂よね。

誰かに聞かれたら、恥ずかしい独り言。
それを言い終わる間も無く・・・

目の前の景色が霞み飛ぶ。


気がつくと、あたりは真昼間だった。




いつぶりだろう。こんなに青い空を見たのは。空には、雲一つなくどこまでも抜けるように青かった。

太陽が照りつけるも暑過ぎず、海風から漂う潮の匂いが心地よい。



もぞもぞ

足の裏を伝う違和感。

足をどかしてしゃがみこんで観察すると、その正体が判明する。


スナガニね。

スナガニは東アジアの海岸などにに広く分布する甲幅3cm程度の小さなカニだ。

 右のはさみが大きいわね。

挟まれるのも痛そうなので、そのまま歩き出す。


ここは見たままの無人島で、今歩いているのは、一面真っ白な砂浜だった。

広さはおそらく直径50メートル程度。すべて砂浜で出来ていた。
ちなみに、島の周囲はすべてエメラルドグリーンの海だ。

「砂が白いわね」

「熱帯魚とかが泳いでそうな海ね」

そう独り言をいいながら、砂浜をざくざく進んでゆく。

あぁ、裸足で歩くのが気持ちいい。

太陽に暖められているものの、砂の粒径も非常に細かいためか、熱過ぎることはなかった。

最初にいたところから、20メートル程進んだところにヤシの木陰があったのでそこで座り込んだ。
ここから数メートルほど先は、エメラルドグリーンの海だ。

振り返ると、さっきまでは何もなかった場所(ヤシの木の根元)に四角い箱のようなものが置いてあった。

それは白いクーラーボックスだった。
蓋の上にメッセージカードが一枚テープで貼ってある。

≪水着とグラスとパラソルです。

from大精霊≫

箱の中には確かに、水着、グラス、パラソルが入っていた。

まず、水着は袖付き。UVケアに配慮してくれたのかしら?

次に、グラスはサングラスではなく、飲み物を注ぐためのタンブラーが、パラソルは折りたたみ式のものが入っていた。

最後に、
あら。クーラーボックスの箱の内側にもメッセージカードが貼ってあるけど。

≪箱の中のタンブラーなあなたが望む飲み物が泉のように湧き出てきます。
どうぞ、満足いくまでご堪能ください。
from大精霊


追伸。帰りの合言葉は・・・≫



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

私を婚約破棄した国王が処刑されたら、新しい国王の妃になれですって? 喜んで…と言うとでも?

あんど もあ
ファンタジー
幼い頃から王子の婚約者だったアイリスは、他の女性を好きになった王子によって冤罪をかけられて、田舎で平民として生きる事に。 面倒な貴族社会から解放されて、田舎暮らしを満喫しているアイリス。 一方、貴族たちの信頼を失った王子は、国王に即位すると隣国に戦争を仕掛けて敗北。処刑される。 隣国は、アイリスを新しい国王の妃にと言い出すが、それには思惑があって…。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

処理中です...