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クリーンスカイクリーン
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トイレ・・行きたいなぁ・・
トイレに行きたいかも。
うん。行きたい、トイレに。
というか、お腹痛い。
通勤ラッシュの真っ只中。
私の思考はおかしな日本語でトイレ警報を発令していた。
とはいっても、この車両にはトイレが設置されていない。
必然、先の見えない恐怖との戦いが始まるのだった。
ま・・窓の外の風景でも見てようかな。
とりあえず、気を紛らわそうとする私。
もちろん、なんの解決にもならない。
それどころか、
再び腹痛の波が押し寄せてきた。
お、なかが痛い。
思い返せば、今日の朝食後飲んだ牛乳はいつもより冷えていた気がする。
台所にあるポットのお湯が切れていたのだ。
牛乳は、いつも、お湯割りにして温かくして飲んでいたのに・・・
うっ・・お腹が・・。
そうなのだ。過ぎ去ってしまった事を考えている場合ではないのだ。
今電車が通過した地点から次の駅へ到着するまでには、5分はかかる。
次の駅のトイレは・・・
確か、トイレまでは改札を出てからエレベーターで降りて3分程歩かねばならない。
8分間。
短いようで長い、試練の時間。
粗相となれば大惨事。
場合によっては、お嫁に行けなくなってしまう。
次の駅までの5分間。
地獄を味わうはめになった。
そして。
なんとか次の駅まで耐えきった私。
今はたった一人、下降中のエレベーターの中にいる。
この時、既に不安は確信に変わっていた。
このままの姿勢でも、あと3分は持つまい。
この感じだと、エレベーターを降りた後、歩き出すのもムリな気がしてきた。
替えの下着はどこで買おうか。
今朝はおそらく、遅刻だな。
クリーニングは・・・
湧き上がる諦観の念。
途方にくれる私は、
視界の片隅に
不思議なものを発見した。
カード状の紙切れのようなそれは、エレベーターの床の中央に、不自然に放置されていた。
「さっきまで、そこの床にはなにもなかったはずよねぇ?」
我が目を疑う心地で、それを拾い上げる。
カードの中央にはゴシック体で
「楽園パスポート」と記されていた。
そういえば、一昨日のランチの時、同期の由実がなにか話していたっけ。
最近流行ってる噂話だとかって。
確か、疲れた人の前に現れて・・・
しかし、それはあくまで噂話。
昔、都市伝説というのが流行っていたらしいが、その類だろうか。
それでも、心の何処かには
ささやかな期待
誰かが噂に便乗して仕掛けたいたずらに、思わず運命的なものを感じてしまう今の自分の状況が恨めしい。
藁にもすがりたいという気持ちだろうか
いや、ここまできたら、
後は野となれ山となれだろうか。
言ってしまった・・・
「ひらけゴマ 」
他に誰もいないんだから、
恥ずかしくないよね?
気がつけば、私は雲の上にいた。
全方位
見渡す限りの
雲の絨毯。
ここの雲はどこか様子が違う。
目の錯覚でなければ、
遥か彼方にある雲の頂からいま私が立っている場所の雲まで、
確かに繋がっているのだ。
雲って水蒸気で出来てたわよねぇ?
今立っている雲海の大地
試しに踏みしめてみれば、
なんとも形容しがたいやわらかさ。
例えていうなら、極上のマットレスというのだろうか。
それとも・・・
筋斗雲?
ちなみに、いま私が立っているのは積乱雲で、高度10000メートル以上とも言われる雲頂付近からは少し下がったあたり。
空は静かで、
太陽の日差しは、
意外なほどに穏やかだった。
と、ここまで
狐につままれたような顔で
茫然自失の状態だった私なのだが・・・
にょき
足元1メートル先の雲から何かがせり上がってきたのに気づいた。
突如、出現した雲海の大地。
そこで出会ったのは、
乳白色で、
つるつるとした、
膝に負担のかからない
温水洗浄便座!?
私が近くにいるのを感知したのだろうか。(もちろんセンサーで)
その蓋はひとりでに開いた。
座るしかあるまい。
自宅のトイレ
学校のトイレ
職場のトイレ
駅のトイレ
百貨店のトイレ
これまでの人生で出会ってきた
様々なトイレたち。
それぞれは
良くも悪くも、個性的で
しかし、いつも私達の生活に密着して
存在している。
その中のどれとも違う
雲の上のトイレ。
それは、これまでにない特別なひとときを・・・
・・・・
・・・
・・
先ほどまでの苦痛と緊張から解放された私は、最新鋭の温かい小川のせせらぎに清められた後しばらくの間、心地よい浮遊感に浸っていた。
にょき
再び、雲の中からせり上がるのはロール紙。
ホルダーにセットされたロール紙はシルクのような肌触りで、私の好きなベルガモットの香りがした。
ちなみに、取り出し口は三角に折りたたまれていた。
う~ん。気が利いてるなぁ。
もちろん、ありがたく使わせてもらいますとも。
スーツがシワになるのも気にせず、
大の字になった私。
仰向けで見つめる先にあるのは、何もない青空だけだった。
寝返りを打って横を向けば、
視界を二分する雲と青
うつ伏せになれば、気持ちいい
雲の感触
便座のフタに貼ってあった、
帰りの合言葉、
忘れちゃいそう。
≪ここの入道雲は柔らかさも、温かさも一級品です。
お手洗いがすみましたら、のんびり雲の上でお昼寝でもどうですか?
from大精霊
追伸:帰りの合言葉は・・・≫
トイレに行きたいかも。
うん。行きたい、トイレに。
というか、お腹痛い。
通勤ラッシュの真っ只中。
私の思考はおかしな日本語でトイレ警報を発令していた。
とはいっても、この車両にはトイレが設置されていない。
必然、先の見えない恐怖との戦いが始まるのだった。
ま・・窓の外の風景でも見てようかな。
とりあえず、気を紛らわそうとする私。
もちろん、なんの解決にもならない。
それどころか、
再び腹痛の波が押し寄せてきた。
お、なかが痛い。
思い返せば、今日の朝食後飲んだ牛乳はいつもより冷えていた気がする。
台所にあるポットのお湯が切れていたのだ。
牛乳は、いつも、お湯割りにして温かくして飲んでいたのに・・・
うっ・・お腹が・・。
そうなのだ。過ぎ去ってしまった事を考えている場合ではないのだ。
今電車が通過した地点から次の駅へ到着するまでには、5分はかかる。
次の駅のトイレは・・・
確か、トイレまでは改札を出てからエレベーターで降りて3分程歩かねばならない。
8分間。
短いようで長い、試練の時間。
粗相となれば大惨事。
場合によっては、お嫁に行けなくなってしまう。
次の駅までの5分間。
地獄を味わうはめになった。
そして。
なんとか次の駅まで耐えきった私。
今はたった一人、下降中のエレベーターの中にいる。
この時、既に不安は確信に変わっていた。
このままの姿勢でも、あと3分は持つまい。
この感じだと、エレベーターを降りた後、歩き出すのもムリな気がしてきた。
替えの下着はどこで買おうか。
今朝はおそらく、遅刻だな。
クリーニングは・・・
湧き上がる諦観の念。
途方にくれる私は、
視界の片隅に
不思議なものを発見した。
カード状の紙切れのようなそれは、エレベーターの床の中央に、不自然に放置されていた。
「さっきまで、そこの床にはなにもなかったはずよねぇ?」
我が目を疑う心地で、それを拾い上げる。
カードの中央にはゴシック体で
「楽園パスポート」と記されていた。
そういえば、一昨日のランチの時、同期の由実がなにか話していたっけ。
最近流行ってる噂話だとかって。
確か、疲れた人の前に現れて・・・
しかし、それはあくまで噂話。
昔、都市伝説というのが流行っていたらしいが、その類だろうか。
それでも、心の何処かには
ささやかな期待
誰かが噂に便乗して仕掛けたいたずらに、思わず運命的なものを感じてしまう今の自分の状況が恨めしい。
藁にもすがりたいという気持ちだろうか
いや、ここまできたら、
後は野となれ山となれだろうか。
言ってしまった・・・
「ひらけゴマ 」
他に誰もいないんだから、
恥ずかしくないよね?
気がつけば、私は雲の上にいた。
全方位
見渡す限りの
雲の絨毯。
ここの雲はどこか様子が違う。
目の錯覚でなければ、
遥か彼方にある雲の頂からいま私が立っている場所の雲まで、
確かに繋がっているのだ。
雲って水蒸気で出来てたわよねぇ?
今立っている雲海の大地
試しに踏みしめてみれば、
なんとも形容しがたいやわらかさ。
例えていうなら、極上のマットレスというのだろうか。
それとも・・・
筋斗雲?
ちなみに、いま私が立っているのは積乱雲で、高度10000メートル以上とも言われる雲頂付近からは少し下がったあたり。
空は静かで、
太陽の日差しは、
意外なほどに穏やかだった。
と、ここまで
狐につままれたような顔で
茫然自失の状態だった私なのだが・・・
にょき
足元1メートル先の雲から何かがせり上がってきたのに気づいた。
突如、出現した雲海の大地。
そこで出会ったのは、
乳白色で、
つるつるとした、
膝に負担のかからない
温水洗浄便座!?
私が近くにいるのを感知したのだろうか。(もちろんセンサーで)
その蓋はひとりでに開いた。
座るしかあるまい。
自宅のトイレ
学校のトイレ
職場のトイレ
駅のトイレ
百貨店のトイレ
これまでの人生で出会ってきた
様々なトイレたち。
それぞれは
良くも悪くも、個性的で
しかし、いつも私達の生活に密着して
存在している。
その中のどれとも違う
雲の上のトイレ。
それは、これまでにない特別なひとときを・・・
・・・・
・・・
・・
先ほどまでの苦痛と緊張から解放された私は、最新鋭の温かい小川のせせらぎに清められた後しばらくの間、心地よい浮遊感に浸っていた。
にょき
再び、雲の中からせり上がるのはロール紙。
ホルダーにセットされたロール紙はシルクのような肌触りで、私の好きなベルガモットの香りがした。
ちなみに、取り出し口は三角に折りたたまれていた。
う~ん。気が利いてるなぁ。
もちろん、ありがたく使わせてもらいますとも。
スーツがシワになるのも気にせず、
大の字になった私。
仰向けで見つめる先にあるのは、何もない青空だけだった。
寝返りを打って横を向けば、
視界を二分する雲と青
うつ伏せになれば、気持ちいい
雲の感触
便座のフタに貼ってあった、
帰りの合言葉、
忘れちゃいそう。
≪ここの入道雲は柔らかさも、温かさも一級品です。
お手洗いがすみましたら、のんびり雲の上でお昼寝でもどうですか?
from大精霊
追伸:帰りの合言葉は・・・≫
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