まだ部屋のないメイドです。

炭酸水『しっぽのきもち』

文字の大きさ
2 / 14

オークラルドへ

しおりを挟む
「それは……」

 ルナが口籠る。

「僕が嫌いとか」

「いえ、そんな事は! 」

 ルナが慌てて応えると、フィンリーは困った顔を装いながら悪戯っぽい笑みを見せた。自信家のフィンリーに、ルナには恨めしく思う。

 あぁ、もう……オークラルドに着いたら、急いで新しい職を探そう。エッガー家にはこれ以上の迷惑を掛けたくない。それ以上に、私には誰かと添い遂げるという夢を見るのは無理。フィンリー様だから、なおさら!

 ルナは頑なになっていた。

「それとも妖精のこと? 」

 それもある。

「僕はなかなか面白かったけど」

 フィンリーはクスッとするが、冗談では済まされない。

「フィンリー様!! 」

「ごめん、気にしてたね。気をつけるよ。それと、ルナも、フィンっていつになったら呼んでくれるの? 」

 フィンリーがルナの手を握り直す。

「それで、妖精たちはどうなの?」

「妖精たちは……」

 エッガー公爵家の家督を継ぐはずだったクラミーの悪事が、ルナを守護する妖精たちの働きで明るみになってしまった。確信を求めていた公爵がようやくクラミーに勘当を突きつけたのは、年が明ける前だった。

 妖精たちがした事はそれだけでは無かった。

 フィンリーと妖精たちが交わした契約が、ルナの意思確認もなく次々と履行された。

ーーーー「ルナに従う妖精たちに、我がエッガー家でルナを敵視し苛む者に嫌がらせの限りを尽くす事を許そう」ーーーー

 孤児としてエッガー家に引き取られメイドをしていたルナを、エッガー家の中には酷い仕打ちをする者もいた。

 古い血を持つというだけで身分違いの縁談が持ち込まれたルナに、嫉妬や憎悪が向けられた。婚姻は無効となったが、今度はフィンリーの客人として出戻って来た為、ルナへの嫌がらせがフィンリーの目を盗むように行われた。

 結果、妖精たちが彼らに制裁を行なったのだった。

「あんなに使用人を次々と辞めさせることになるとはね。今は人手不足だけど、エッガー家も暮らしやすくなったと思うよ。メイド達の部屋もキレイにリフォームされることになったし。ルナに感謝した者もいるんじゃないかな? 」

 と、フィンリーは言うが、死に目に合いかけた者もいたのでシャレにならない。

 妖精の加護を受けるルナの古い血を不吉に思う者が多いハズだと、ルナは感じていた。

「妖精たちは、今、とても静かにしています……人にむけて力を使っていません」

 ガタゴトと軋む馬車の音にかき消されそうな声でルナは答えた。

 ルナは自分の異能を使っていない……そうしてしばらくすれば妖精たちの声が聞こえなくなる。妖精たちもルナが呼びかけなければ、その力を人に向けられることが出来ない。

「……そうなんだ。

僕がルナにちょっかい出しても妖精たちに罰を喰らわないから、ルナは嫌がってなくて、てっきり妖精たちにも免除されてると思ってたのにな」

 フィンリーが、そう言いながらルナの額に顔を寄せる。

「……えっ!? 」

「……妖精たちの
って、なんだろうな……って、気になっているよ」

 フィンリーの顔がゆっくりと降りてルナの唇にキスをした。

 やめてとも言えず、ルナはフィンリーの顔を手で押し退けた。馬車の振動よりも胸の鼓動の方が激しくなる。

『心臓がもたない! 』

 早くオークラルド行きの汽車に乗り換えたいと切に思うルナだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏の顔ありな推しとの婚約って!?

花車莉咲
恋愛
鉱業が盛んなペレス王国、ここはその国で貴族令嬢令息が通う学園であるジュエルート学園。 その学園に通うシエンナ・カーネリアラ伯爵令嬢は前世の記憶を持っている。 この世界は乙女ゲーム【恋の宝石箱~キラキラブラブ学園生活~】の世界であり自分はその世界のモブになっていると気付くが特に何もする気はなかった。 自分はゲームで名前も出てこないモブだし推しはいるが積極的に関わりたいとは思わない。 私の前世の推し、ルイス・パライバトラ侯爵令息は王国騎士団団長を父に持つ騎士候補生かつ第二王子の側近である。 彼は、脳筋だった。 頭で考える前に体が動くタイプで正義感が強くどんな物事にも真っ直ぐな性格。 というのは表向きの話。 実は彼は‥‥。 「グレース・エメラディア!!貴女との婚約を今ここで破棄させてもらう!」 この国の第二王子、ローガン・ペレス・ダイヤモルト様がそう叫んだ。 乙女ゲームの最終局面、断罪の時間。 しかし‥‥。 「これ以上は見過ごせません、ローガン殿下」 何故かゲームと違う展開に。 そして。 「シエンナ嬢、俺と婚約しませんか?」 乙女ゲームのストーリーにほぼ関与してないはずなのにどんどんストーリーから離れていく現実、特に何も目立った事はしてないはずなのに推しに婚約を申し込まれる。 (そこは断罪されなかった悪役令嬢とくっつく所では?何故、私?) ※前作【悪役令息(冤罪)が婿に来た】にて名前が出てきたペレス王国で何が起きていたのかを書いたスピンオフ作品です。 ※不定期更新です。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

処理中です...