4 / 12
4 城一つ買えるそれ
しおりを挟む
早朝、寝不足を引きずる俺はアーネスに壊された戸の修復をしている。板材が足りず、壊れた戸を継ぎ接ぎにするしかない。情けなくて涙が出そう。
そんな俺の悲しみも知らず、無法者の王女アイネイアス姫こと、アーネスが背後ろに立った。
「おはよう。いい天気だ。早速だが私についてきてもらおう」
「何がおはようだ! 早速だ! 俺はお前について行く謂れはない。帰ってくれ」
アーネスはいつも端的にしか物を言わない。それでどれだけ理不尽なことに巻き込まれたか。
「お前を見込んでここまで来たんだぞ? 」
「相変わらず人の話を聞かずに偉そうだな。俺はここまで来るのに三年がかりだ。奨学金分の返済をしながら、やっとここまで……」
「お前にあげた物があっただろう。あれを売れば一生遊べる金になると思うが」
あれのことか! あれは売れない。あんな物を買い取れる質屋などない。金持ちのところに持っていけば、出所を調べられて騙し取られるだけだ。下手したら監獄行きだ。ちょっと調べただけでも城が立つ代物だ。
人の目玉ほどの大きさを持つクラック一つない最高品質の青い宝石。その周りを世界中から集められた宝石が彩り良く囲う。超一級の職人による繊細な彫りが施されたブローチだ。国宝レベルのそれを渡されても、平民の俺には心臓が何個あっても足りない。
俺は腰に下げた袋から飾り箱を取り出し、そのブローチをアーネスに突き出した。
「これは要らない。持って帰れ! 」
「私は一度人に施した物を受け取りはしないぞ」
——施しただと?
アーネスは朝日を背中に浴びながら、斜めに構えて俺を見下す。キレイな鼻筋と長い睫毛が輝き、この三年間でさらに美しく磨かれて——残念極まりない。
「さっさと他国の嫁にでも行け! 」
憎まれ口を言ったが、アーネスは全く意に返さない。
「私にはお兄さまにお仕えする使命があるのだ! よその国の妻など勤めていられるか! 」
「……俺にその使命は関係ないからな! 」
——こいつのブラコンに付き合うと、ロクな目に遭わないと分かっている。命がいくつあっても足りない。
そんな俺の悲しみも知らず、無法者の王女アイネイアス姫こと、アーネスが背後ろに立った。
「おはよう。いい天気だ。早速だが私についてきてもらおう」
「何がおはようだ! 早速だ! 俺はお前について行く謂れはない。帰ってくれ」
アーネスはいつも端的にしか物を言わない。それでどれだけ理不尽なことに巻き込まれたか。
「お前を見込んでここまで来たんだぞ? 」
「相変わらず人の話を聞かずに偉そうだな。俺はここまで来るのに三年がかりだ。奨学金分の返済をしながら、やっとここまで……」
「お前にあげた物があっただろう。あれを売れば一生遊べる金になると思うが」
あれのことか! あれは売れない。あんな物を買い取れる質屋などない。金持ちのところに持っていけば、出所を調べられて騙し取られるだけだ。下手したら監獄行きだ。ちょっと調べただけでも城が立つ代物だ。
人の目玉ほどの大きさを持つクラック一つない最高品質の青い宝石。その周りを世界中から集められた宝石が彩り良く囲う。超一級の職人による繊細な彫りが施されたブローチだ。国宝レベルのそれを渡されても、平民の俺には心臓が何個あっても足りない。
俺は腰に下げた袋から飾り箱を取り出し、そのブローチをアーネスに突き出した。
「これは要らない。持って帰れ! 」
「私は一度人に施した物を受け取りはしないぞ」
——施しただと?
アーネスは朝日を背中に浴びながら、斜めに構えて俺を見下す。キレイな鼻筋と長い睫毛が輝き、この三年間でさらに美しく磨かれて——残念極まりない。
「さっさと他国の嫁にでも行け! 」
憎まれ口を言ったが、アーネスは全く意に返さない。
「私にはお兄さまにお仕えする使命があるのだ! よその国の妻など勤めていられるか! 」
「……俺にその使命は関係ないからな! 」
——こいつのブラコンに付き合うと、ロクな目に遭わないと分かっている。命がいくつあっても足りない。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで
ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。
だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。
「私は観る側。恋はヒロインのもの」
そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。
筋肉とビンタと回復の日々。
それなのに――
「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」
野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。
彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。
幼馴染ヴィルの揺れる視線。
家族の温かな歓迎。
辺境伯領と学園という“日常の戦場”。
「……好き」
「これは恋だ。もう、モブではいたくない」
守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、
現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。
これは――
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。
※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。
※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。
※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~
小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。
そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。
幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。
そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――?
「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」
鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。
精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。
SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜
沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」
中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。
それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。
だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。
• 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。
• 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。
• 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。
• オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。
恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。
教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。
「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」
鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。
恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる