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「総員、たいきゃくううう!」
「言われなくても分かってるわよ!」
「ギャーーッ! ギャーーッ!」
脱兎のごとくその場から走り出す俺たち。もちろん俺は忘れずに小向を小脇に抱えた。置いていったら間違いなく、あの牙をむいた大きな口にぱくりと食われることだろう。幸いな事に追いかけるほど俺たちに執着はしていなかったようで、しばらく走って振り返った時にはもう姿かたち見えなかった。
「はぁはぁ……もー刺激したらダメだよ小向」
「ぶぅぶぅ」
安全を確認して一同地面にへたり込む。明らかに予想外の体力を消耗してしまったのか、息切れが激しく、しばしの間皆それぞれの冷却時間を過ごした。
息が整い次第隣に下ろした小向をたしなめてみたが、頬を膨らませて口をとがらせ不満をあらわにする。え?置いてった方がよかったんですか?君はそんなやんちゃ坊主だったの?尖らせるお口が可愛かったので片手で両頬をサンドイッチしたら、ぴゅーと音を鳴らして空気が抜けた。
淵沿いに走ってきたが、まだまだ半周も移動していないのか風景はさほど代わり映えしなかった。さすが母ノミがうんぬん言うだけの事はある。さっぱり果てが見えない。
「私としたことが迂闊だったわ……これはデス・ゲーム、それも地獄、簡単に信用しちゃダメなのに」
先程の行為を悔やんだサロメピンクがガックリと項垂れていた。無理もない、あの時小向が珍しく自己主張していなければ恐怖のリタイアになっていたのだから。人生のリタイアと言ってもいいレベルの。
皆口に出しては言わないが、俺たちよりも先に出発した出場者の中には、奪衣婆の口車にのって両替した者も少なくないだろう。あの舟に乗ってどこに連れて行かれたのかなど分からないが、きっとよくないところだ。このレースは常に危険と隣り合わせ、それを本当の意味で実感することとなった。
「タンジェリンオレンジよくやった。ご褒美に抱っこしてやろう」
「ズルいんじゃないかな、カッパーレッド。俺の方が先に褒めようと思ってたんだ」
「すいません、このこおさわりNGなんです。触りたければ俺をどうぞ」
「お前のボディなんぞお呼びでないわ!」
「そうだそうだこの細マッチョ!」
けなしたのか褒めたのか、俺を細マッチョと称してくれたマラカイトグリーンのボディはお世辞でもなんとも言えなかった。カッパーレッドはそうでもないが、マラカイトグリーンは若干、胴回りがぽよよんしている。
「おい、今俺のことデブって思っただろう……俺は断じて違う! デブっていうのはナンキンイエローみたいなやつを言うんだ!」
俺の視線が腹に向かったからなのか憤慨しだしたマラカイトグリーンは、口早にここにいない仲間の事を例に上げる。知らぬところで悪口言われているナンキンイエローに同情した。
見たことないから肯定するわけにもいかず曖昧に笑ってみたが、もしかしたらイエローキャラは食いしんぼうというベタな設定が成り立っているのかもしれない。もしかして、もしかすると……カレーが大好物とか?
「ちなみに、ナンキンイエローさんの大好物ってなんですか?」
「ん? たしか、パエーリャだったような……」
サ・フ・ラ・ン・ラ・イ・ス、だと……!?ここまで来て個性出してくんなよ!いやしかし、それはそれですごい会ってみたい気がする。
「まぁいい筋肉してるのね。学生の癖になまいきっ」
俺がナンキンイエローに興味があると思ったのか疑惑の目を向けてくるマラカイトグリーン。小向に危ないからこっちへ来なさいとか言っている。いやいや興味はあるにはあるが、あなたが考えてるような下賤な興味ではないから。
そしてこらこらサロメピンク、ドサクサに紛れて俺の二の腕を揉みなさんな。さっきまで落ち込んでたくせに切り替えのはやさに目を見張る。女心と秋の空、言い得て妙である。
「俺、ちょっと思いついた案あるんですけど」
小向に触れようと躍起になるカッパーレッドとマラカイトグリーンの魔の手から逃すように背後に匿い、話題を変える意味半分、状況の打破半分で俺は話を切り出した。
よくよく考えたら未だスタート地点からほとんど進んでいないこの現状って、ちょっとヤバくないか?
「空を飛んで行くってのは、どうですか?」
「人間は空を飛べない、よって却下」
「いやいやワザがあるでしょうダジャレのワザが!」
「飛べるやつあったっけ? 俺はない」
「は行にはいけそうなのが一つ。たぶんこれ、いけます」
「よし採用」
そう、俺はこの過程を踏んであの空飛ぶ布団の技を駆使することになったのである。
安全性を考えて崖の淵より三メートルくらい余裕をとって技を発動する。両手でDの形を作って叫ぶんだ、あの恥ずかしいダジャレを。
「布団がふっとんだ!」
叫んだと同時に白い煙がもわりと発生し、それがはれた後には想像通り、ぷかりぷかりと中に浮かんでいる布団が現れた。まるで生きているかのように浮かぶ布団は、あたかも空飛ぶじゅうたんのごとく空を我が物顔で優雅に舞っている。
「なにあのセンベイ。うすっ!」
「ううん贅沢は言わないわ。けど……羽毛じゃないのね」
現れた空飛ぶ布団は、まさにじゅうたんと見間違えそうな程、薄っぺらいせんべい布団だった。飛ぶんだからな、飛ぶ代表の鳥の羽根を使った布団だろうと俺もこっそり思っていた。しかしまごうことなきあれはせんべい布団だ。強度は大丈夫だろうか。
そう心配しながら眺めている間にも、空飛ぶ布団はぷかりぷかりと空を泳いで行く。あまりにもなせんべい具合に悠長に呆けている場合ではなかった。
「とりあえず乗る!」
「総員、飛び乗れーー!」
「せんべい布団さんいかないでぇ~」
「待てーーせんべい布団待てーー!」
俺の声を皮切りに我に返っておのおの動き出す。徐々に徐々に高度を上げてきていたがまだまだ低空飛行の域だったのが幸いし、楽に上に乗ることができた。乗った瞬間少し沈み込む感じがしたが、思ったより丈夫に受け止めてくれて浮遊感も変わらずで安全面も大丈夫そうだ。せんべい布団なのは乗った後の足場を安定させるためだったんだ。うん、きっとそうだ。
そもそもこの空飛ぶ布団、飛ぶスピードが異様に遅かった。それが悠長に構えてられた一番の要因だ。これならあの小向でも容易に乗れるだろう。
いの一番に乗った俺に続き、次々に皆も飛び乗ってくる。まず最初にカッパーレッドが勢いよく飛び乗った。は、いいもののその勢いを殺せずあわやの転落事故になりかけるというハプニング発生。続いてのサロメピンクは欠点など見つからないくらい華麗に飛び乗った。さすが戦隊ヒーローをやっている事はあるのか、あの胴回りぽよよんなマラカイトグリーンでさえ俊敏に立ち回り、空飛ぶ布団に飛び乗ることに成功した。
四人乗っても空飛ぶ布団は変わらず浮かんでいる。よし、この方法で大釜を超えれるぞ!
そう安心したのもつかの間、四人……四人?大変だ、一人足りない。布団の上には大切な、同クラの俺の後方の位置に席を座しているクラスメートが纏っているタンジェリンオレンジ色が欠けていた。
はっと思い立って後ろを振り返ると、数メートル後方の地面にうつ伏せで倒れているタンジェリンオレンジ色のバトルスーツが見えた。ノーー!
「こ、小向いいいいいい!」
「大変だ! 総員、飛び降りろ!」
慌てて飛び降りた俺に続き、皆も地面に足をつける。何気にそこは淵ギリギリのポイントだった。後数秒気づくのが遅れたらこんな恐ろしい地獄の釜の淵に置いてけぼりにしてしまうところだったとゾッとする。
俺たちという乗客を失った無人の空飛ぶ布団は、ひとりでに釜横断目指して飛んでいった。
「小向どうしたの!?」
「こけた」
「突き飛ばされた!? 誰だコラ小向突き飛ばしたの」
「これ」
小向が指差したのは地面に落ちてるバナナの皮。誰だこんなところにポイ捨てしたのは。そもそも地獄でバナナ食うなよ。
だが俺はホッとした。小向が乗れなかった原因はバナナの皮だと判明したことに。あんな低空飛行で牛歩な空飛ぶ布団に乗り遅れるなんて、小向が超ド級の運動音痴だとしても、まさかそこまではないだろう。
そのまさかのまさかで、この一連の流れが五回続くなど、この時の俺は想像すらしていなかった。
「言われなくても分かってるわよ!」
「ギャーーッ! ギャーーッ!」
脱兎のごとくその場から走り出す俺たち。もちろん俺は忘れずに小向を小脇に抱えた。置いていったら間違いなく、あの牙をむいた大きな口にぱくりと食われることだろう。幸いな事に追いかけるほど俺たちに執着はしていなかったようで、しばらく走って振り返った時にはもう姿かたち見えなかった。
「はぁはぁ……もー刺激したらダメだよ小向」
「ぶぅぶぅ」
安全を確認して一同地面にへたり込む。明らかに予想外の体力を消耗してしまったのか、息切れが激しく、しばしの間皆それぞれの冷却時間を過ごした。
息が整い次第隣に下ろした小向をたしなめてみたが、頬を膨らませて口をとがらせ不満をあらわにする。え?置いてった方がよかったんですか?君はそんなやんちゃ坊主だったの?尖らせるお口が可愛かったので片手で両頬をサンドイッチしたら、ぴゅーと音を鳴らして空気が抜けた。
淵沿いに走ってきたが、まだまだ半周も移動していないのか風景はさほど代わり映えしなかった。さすが母ノミがうんぬん言うだけの事はある。さっぱり果てが見えない。
「私としたことが迂闊だったわ……これはデス・ゲーム、それも地獄、簡単に信用しちゃダメなのに」
先程の行為を悔やんだサロメピンクがガックリと項垂れていた。無理もない、あの時小向が珍しく自己主張していなければ恐怖のリタイアになっていたのだから。人生のリタイアと言ってもいいレベルの。
皆口に出しては言わないが、俺たちよりも先に出発した出場者の中には、奪衣婆の口車にのって両替した者も少なくないだろう。あの舟に乗ってどこに連れて行かれたのかなど分からないが、きっとよくないところだ。このレースは常に危険と隣り合わせ、それを本当の意味で実感することとなった。
「タンジェリンオレンジよくやった。ご褒美に抱っこしてやろう」
「ズルいんじゃないかな、カッパーレッド。俺の方が先に褒めようと思ってたんだ」
「すいません、このこおさわりNGなんです。触りたければ俺をどうぞ」
「お前のボディなんぞお呼びでないわ!」
「そうだそうだこの細マッチョ!」
けなしたのか褒めたのか、俺を細マッチョと称してくれたマラカイトグリーンのボディはお世辞でもなんとも言えなかった。カッパーレッドはそうでもないが、マラカイトグリーンは若干、胴回りがぽよよんしている。
「おい、今俺のことデブって思っただろう……俺は断じて違う! デブっていうのはナンキンイエローみたいなやつを言うんだ!」
俺の視線が腹に向かったからなのか憤慨しだしたマラカイトグリーンは、口早にここにいない仲間の事を例に上げる。知らぬところで悪口言われているナンキンイエローに同情した。
見たことないから肯定するわけにもいかず曖昧に笑ってみたが、もしかしたらイエローキャラは食いしんぼうというベタな設定が成り立っているのかもしれない。もしかして、もしかすると……カレーが大好物とか?
「ちなみに、ナンキンイエローさんの大好物ってなんですか?」
「ん? たしか、パエーリャだったような……」
サ・フ・ラ・ン・ラ・イ・ス、だと……!?ここまで来て個性出してくんなよ!いやしかし、それはそれですごい会ってみたい気がする。
「まぁいい筋肉してるのね。学生の癖になまいきっ」
俺がナンキンイエローに興味があると思ったのか疑惑の目を向けてくるマラカイトグリーン。小向に危ないからこっちへ来なさいとか言っている。いやいや興味はあるにはあるが、あなたが考えてるような下賤な興味ではないから。
そしてこらこらサロメピンク、ドサクサに紛れて俺の二の腕を揉みなさんな。さっきまで落ち込んでたくせに切り替えのはやさに目を見張る。女心と秋の空、言い得て妙である。
「俺、ちょっと思いついた案あるんですけど」
小向に触れようと躍起になるカッパーレッドとマラカイトグリーンの魔の手から逃すように背後に匿い、話題を変える意味半分、状況の打破半分で俺は話を切り出した。
よくよく考えたら未だスタート地点からほとんど進んでいないこの現状って、ちょっとヤバくないか?
「空を飛んで行くってのは、どうですか?」
「人間は空を飛べない、よって却下」
「いやいやワザがあるでしょうダジャレのワザが!」
「飛べるやつあったっけ? 俺はない」
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「よし採用」
そう、俺はこの過程を踏んであの空飛ぶ布団の技を駆使することになったのである。
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「布団がふっとんだ!」
叫んだと同時に白い煙がもわりと発生し、それがはれた後には想像通り、ぷかりぷかりと中に浮かんでいる布団が現れた。まるで生きているかのように浮かぶ布団は、あたかも空飛ぶじゅうたんのごとく空を我が物顔で優雅に舞っている。
「なにあのセンベイ。うすっ!」
「ううん贅沢は言わないわ。けど……羽毛じゃないのね」
現れた空飛ぶ布団は、まさにじゅうたんと見間違えそうな程、薄っぺらいせんべい布団だった。飛ぶんだからな、飛ぶ代表の鳥の羽根を使った布団だろうと俺もこっそり思っていた。しかしまごうことなきあれはせんべい布団だ。強度は大丈夫だろうか。
そう心配しながら眺めている間にも、空飛ぶ布団はぷかりぷかりと空を泳いで行く。あまりにもなせんべい具合に悠長に呆けている場合ではなかった。
「とりあえず乗る!」
「総員、飛び乗れーー!」
「せんべい布団さんいかないでぇ~」
「待てーーせんべい布団待てーー!」
俺の声を皮切りに我に返っておのおの動き出す。徐々に徐々に高度を上げてきていたがまだまだ低空飛行の域だったのが幸いし、楽に上に乗ることができた。乗った瞬間少し沈み込む感じがしたが、思ったより丈夫に受け止めてくれて浮遊感も変わらずで安全面も大丈夫そうだ。せんべい布団なのは乗った後の足場を安定させるためだったんだ。うん、きっとそうだ。
そもそもこの空飛ぶ布団、飛ぶスピードが異様に遅かった。それが悠長に構えてられた一番の要因だ。これならあの小向でも容易に乗れるだろう。
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四人乗っても空飛ぶ布団は変わらず浮かんでいる。よし、この方法で大釜を超えれるぞ!
そう安心したのもつかの間、四人……四人?大変だ、一人足りない。布団の上には大切な、同クラの俺の後方の位置に席を座しているクラスメートが纏っているタンジェリンオレンジ色が欠けていた。
はっと思い立って後ろを振り返ると、数メートル後方の地面にうつ伏せで倒れているタンジェリンオレンジ色のバトルスーツが見えた。ノーー!
「こ、小向いいいいいい!」
「大変だ! 総員、飛び降りろ!」
慌てて飛び降りた俺に続き、皆も地面に足をつける。何気にそこは淵ギリギリのポイントだった。後数秒気づくのが遅れたらこんな恐ろしい地獄の釜の淵に置いてけぼりにしてしまうところだったとゾッとする。
俺たちという乗客を失った無人の空飛ぶ布団は、ひとりでに釜横断目指して飛んでいった。
「小向どうしたの!?」
「こけた」
「突き飛ばされた!? 誰だコラ小向突き飛ばしたの」
「これ」
小向が指差したのは地面に落ちてるバナナの皮。誰だこんなところにポイ捨てしたのは。そもそも地獄でバナナ食うなよ。
だが俺はホッとした。小向が乗れなかった原因はバナナの皮だと判明したことに。あんな低空飛行で牛歩な空飛ぶ布団に乗り遅れるなんて、小向が超ド級の運動音痴だとしても、まさかそこまではないだろう。
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