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4 B1F
4-2
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「この方は奪衣婆さん。普段は三途という川のほとりに勤務しているんだけど、このレース中はこちらに出張だそうよ」
「ヒヒヒ……向こうに行きたきゃ六文銭渡しな」
奪衣婆という名のその老婆は、大きな口を三日月に歪ませて笑った。その笑い声はしわがれながらも細く甲高く、耳にツーンと突き刺さる。やせ細った体にボロ布のような服をまとい、いっそ灰色とみまうほど顔色が悪く、だが目は深く黒に濁ってぎろりとしていた。
俺の記憶が間違っていなければ、三途の川ってあの世とこの世の境目の川じゃなかったか?この世界と認識が違わなければ、の話だが。その川にはなにか恐ろしいやつがいた気がする。
「小向、三途の川ってなんだっけ?」
「かわ」
「……まあそうですけどね。川だよね、そうだよね。けどそういう事ではないんですよぉ」
「死んだひとがわたるとこ。鬼ババが服はぐところ」
「……あっ!」
そうだ思い出した。奪衣婆は三途の川を訪れた人から金と服を巻き上げ、あの世に連れて行く追い剥ぎの鬼だ。鬼だ。ひいいい!
「六文銭? 困ったわね、六文銭なんて持ってないわ」
「なぁに、あそこで変えればいいだけさ。一人六文銭払ってくれれば向こうに舟をだしてやろう」
俺の怯えとは裏腹に、気づいていないのかはたまた知ってて尚気丈に振る舞えてるのか、サロメピンクは淡々と奪衣婆と交渉を進めている。
ちなみにカッパーレッドとマラカイトグリーンは絶賛水遊び中で、我かんせずのスタイルを貫いている。こういう役回りはすべてサロメピンクに押し付けているみたいだ。まぁ出てきたところで話をややこしくするだけだろうから、これが一番平和なあり方なのかもしれない。
奪衣婆があそこと指差した方向にはなにやらすごく見覚えのある長方体の機械があった。どう考えても両替機だ、両替機で六文銭をゲットしろということらしい。いつの間にあんなところに現れたんだろう、全然気づかなかった。
「はぁ……今月の生活費の一万円玉しか持ってないのよね。ちゃんと経費で落ちるかしら」
解せないと思いながらも渋々両替機に向かう事にしたサロメピンクは、ポケットから取り出したがま口を覗き込みため息を吐き出す。ダメだ気になって仕方ない、一万円玉とはなんだ。それがこの世界の金なのだろうか。え、もしかして十円とか札?五十円とか札な上に穴とかあいちゃってるの?
気になった俺は、両替に付いて行こうと小向の隣から立ち上がった。だが思わぬ静止が入り、歩みを止める。
「……ちょっと待っとくれ」
腹の底から響いてくるような苦渋の声がサロメピンクを呼び止めた。そちら側に目を向けると、俺と小向を交互に見てはくっきりと眉間にシワを寄せて不快感をあらわにする奪衣婆がいた。
「え?」
「そこにいる二人はわしの舟には乗せれん。そやつらは違う」
「どういうこと?」
「その二人は乗せれん。それだけじゃ」
その後何度問いただしても結果は同じだった。きっと俺たちがトリッパーなのが関係しているのだろう。あの奪衣婆はこの世界の人間専用なんだと推測した。
奇しくも船長奪衣婆な地獄のでっかい釜内巡る片道舟ツアーのチケットを買う権利すらないと門前払いされてしまった俺と小向はスタートした時と同じくらい途方に暮れた。しかし神は俺たちを見放さなかった。
「大丈夫、同じ空間内だったら仲間の所にテレポートできる技があるの」
「ダジャレグッジョブ!」
怪訝な顔で俺と小向を見続ける奪衣婆の視線から逃れるように、サロメピンクを即して両替機の方に向かう。ここで俺たちが異世界人だと暴露されれば、俺たちが守るべき民間人じゃないと判断されてしまうかもしれない。そんな事態は避けたいので、騙すことは心苦しいがバレないにこしたことはないと思った。嘘をつくわけじゃない、ただ言わないだけだ、悪いことはしていない!
たどり着いた両替機はなんの変哲もないただの両替機だった。ゲームセンターなどに設置してある紙幣を小銭に変える用量で、一万円の下に六文銭✕10と書いてあるボタンがある。この世界の場合は小銭を紙幣変える、なのかもしれないが。
「やだっ六文銭って千円もするの!? 三人分だったら三千円もするじゃない!!」
高いわぼったくりよ!と、サロメピンクは一万円玉を握り締め、わなわなと戦慄いた。
「あ、さっき仲間のとこテレポートする技あるって言ってましたよね? いっそ一人分買って、他みんなはテレポートでってのは?」
「あらやだそれもそうね、そうしましょう! バトルシップグレイ、あなたなかなかやるわね」
「ハハハ」
もったいぶらないではやく見せてくれ。どきどきわくわく。サロメピンクが一万円玉を投入口に入れるのを心待ちにする。興奮しているのを表面に出すのはスマートではないので、涼しい顔を貫いた。
そんな決定的瞬間秒読みなこのタイミングで、脇腹をちょんちょんと突かれるくすぐったさを覚えた。はじめは今目をそらすと見逃すかもしれないと無視をしたが余りにしつこく、俺は辛抱たまらずやめさせるために後ろを振り返った。
「今はダメ。ちょっと待っててね」
そこにはタンジェリンオレンジ色にコーティングされたヘルメットを被った小向が立っていた。まさか、俺の脇腹をつんつんしたのは小向か?そんな、まさか。だが俺をまっすぐ見上げる視線に否定の言葉は直ぐにかき消えた。
なにもこんなタイミングに小向からの自発的コミュニケーションを被せなくても。誰かも確認せずちょっと待っててねと言ったが、一万円玉両替のお釣り問題と小向コミュニケーション、どちらを優先するかで心が揺れた。こんなチャンス二度とないかもしれない。くそう、恨むぜゴッド。
結果、俺は前のトリップで体験したデレ小向降臨かもしれない可能性を捨てきれず、両替の結末は放棄することにした。そもそも後で見せてもらえばいいだけだからな、金なんて。怪しまれないようさり気なく見せてもらえばいいだけなんだから。
「どうしたの? ああ、置いてかれたかと思った?」
膝に手をつき目線を合わせて、優しくを意識しながら話しかける。そんな俺をしっかりと見据えた小向は、俺の脇腹を突いてたであろう右手の人差し指をすっと持ち上げて、迷うことなく両替機を指さした。
「かえちゃだめ。冥銭もったらおわり」
「ん?」
「冥銭はあの世のおかね。死んだひとが使うやつ」
あの世に行っちゃうよ?という小向の言葉が聞こえたのか、一万円玉投入一歩手前のギリギリでピタリと止まったサロメピンクは、素早く一万円玉を握ったままの手を投入口から離した。
「なにそれどういう事?」
小向の発言は突拍子もない上に信憑性もない。なにを根拠にそんな事を言っているのか分からず、にわかには信じがたい内容だった。だが……あの奪衣婆の言う向こう側とは、どこをさしているのだろう。そんな漠然とした疑問がわきあがり、サロメピンクにはもう両替機に金を投入する勇気はなさそうだった。
サロメピンクが下ろした一万円玉を見つめる。五百円玉と同じような大きさのそれは、一生懸命横並びで0が連なっているが、スリムになってもなおギチギチでいたく狭苦しそうだ。
「黙れ小童!!」
そんな俺たちの様子を離れたところから見張っていた奪衣婆の怒声が轟く。そちらに目を向けると憎悪を滲ませた鋭い瞳で小向を睨みつけ、牙を剥き出しにして威嚇している恐ろしい形相の鬼がいた。
「そのガキの言ってることは嘘だ。はやくせんと船を出してしまうぞ」
そうは言うが、小向の言葉に牙をむいたその行動がすべてを物語っている。バレバレですよと言いたいが、いかんせん相手は鬼なので怖くて言えない。
「うそじゃない。じーじが言ってたからほんと」
「じーじ?」
こくりと頷きで返す小向。誰だよじーじって。だが今はそれを問いただしてる暇はなさそうだった。
サロメピンクとアイコンタクトを交わし、小向の手を引きながら両替機から離れる。いつの間にか近づいてきていたカッパーレッドとマラカイトグリーンも混ざり、五人で固まってじりじりと後退して奪衣婆と距離をあけていく。
「チッ! 部外者の癖に邪魔しやがって……喰ってやろうか!」
「あっちいけババア」
いつ握っていたのだろうか?小向が棒読みで罵声を浴びせながら奪衣婆に向かって砂を投げつけた。なんと恐ろしいことを!瞬間、奪衣婆の髪がぐわりと逆立ち、額の両側から角が伸びた。
「ヒヒヒ……向こうに行きたきゃ六文銭渡しな」
奪衣婆という名のその老婆は、大きな口を三日月に歪ませて笑った。その笑い声はしわがれながらも細く甲高く、耳にツーンと突き刺さる。やせ細った体にボロ布のような服をまとい、いっそ灰色とみまうほど顔色が悪く、だが目は深く黒に濁ってぎろりとしていた。
俺の記憶が間違っていなければ、三途の川ってあの世とこの世の境目の川じゃなかったか?この世界と認識が違わなければ、の話だが。その川にはなにか恐ろしいやつがいた気がする。
「小向、三途の川ってなんだっけ?」
「かわ」
「……まあそうですけどね。川だよね、そうだよね。けどそういう事ではないんですよぉ」
「死んだひとがわたるとこ。鬼ババが服はぐところ」
「……あっ!」
そうだ思い出した。奪衣婆は三途の川を訪れた人から金と服を巻き上げ、あの世に連れて行く追い剥ぎの鬼だ。鬼だ。ひいいい!
「六文銭? 困ったわね、六文銭なんて持ってないわ」
「なぁに、あそこで変えればいいだけさ。一人六文銭払ってくれれば向こうに舟をだしてやろう」
俺の怯えとは裏腹に、気づいていないのかはたまた知ってて尚気丈に振る舞えてるのか、サロメピンクは淡々と奪衣婆と交渉を進めている。
ちなみにカッパーレッドとマラカイトグリーンは絶賛水遊び中で、我かんせずのスタイルを貫いている。こういう役回りはすべてサロメピンクに押し付けているみたいだ。まぁ出てきたところで話をややこしくするだけだろうから、これが一番平和なあり方なのかもしれない。
奪衣婆があそこと指差した方向にはなにやらすごく見覚えのある長方体の機械があった。どう考えても両替機だ、両替機で六文銭をゲットしろということらしい。いつの間にあんなところに現れたんだろう、全然気づかなかった。
「はぁ……今月の生活費の一万円玉しか持ってないのよね。ちゃんと経費で落ちるかしら」
解せないと思いながらも渋々両替機に向かう事にしたサロメピンクは、ポケットから取り出したがま口を覗き込みため息を吐き出す。ダメだ気になって仕方ない、一万円玉とはなんだ。それがこの世界の金なのだろうか。え、もしかして十円とか札?五十円とか札な上に穴とかあいちゃってるの?
気になった俺は、両替に付いて行こうと小向の隣から立ち上がった。だが思わぬ静止が入り、歩みを止める。
「……ちょっと待っとくれ」
腹の底から響いてくるような苦渋の声がサロメピンクを呼び止めた。そちら側に目を向けると、俺と小向を交互に見てはくっきりと眉間にシワを寄せて不快感をあらわにする奪衣婆がいた。
「え?」
「そこにいる二人はわしの舟には乗せれん。そやつらは違う」
「どういうこと?」
「その二人は乗せれん。それだけじゃ」
その後何度問いただしても結果は同じだった。きっと俺たちがトリッパーなのが関係しているのだろう。あの奪衣婆はこの世界の人間専用なんだと推測した。
奇しくも船長奪衣婆な地獄のでっかい釜内巡る片道舟ツアーのチケットを買う権利すらないと門前払いされてしまった俺と小向はスタートした時と同じくらい途方に暮れた。しかし神は俺たちを見放さなかった。
「大丈夫、同じ空間内だったら仲間の所にテレポートできる技があるの」
「ダジャレグッジョブ!」
怪訝な顔で俺と小向を見続ける奪衣婆の視線から逃れるように、サロメピンクを即して両替機の方に向かう。ここで俺たちが異世界人だと暴露されれば、俺たちが守るべき民間人じゃないと判断されてしまうかもしれない。そんな事態は避けたいので、騙すことは心苦しいがバレないにこしたことはないと思った。嘘をつくわけじゃない、ただ言わないだけだ、悪いことはしていない!
たどり着いた両替機はなんの変哲もないただの両替機だった。ゲームセンターなどに設置してある紙幣を小銭に変える用量で、一万円の下に六文銭✕10と書いてあるボタンがある。この世界の場合は小銭を紙幣変える、なのかもしれないが。
「やだっ六文銭って千円もするの!? 三人分だったら三千円もするじゃない!!」
高いわぼったくりよ!と、サロメピンクは一万円玉を握り締め、わなわなと戦慄いた。
「あ、さっき仲間のとこテレポートする技あるって言ってましたよね? いっそ一人分買って、他みんなはテレポートでってのは?」
「あらやだそれもそうね、そうしましょう! バトルシップグレイ、あなたなかなかやるわね」
「ハハハ」
もったいぶらないではやく見せてくれ。どきどきわくわく。サロメピンクが一万円玉を投入口に入れるのを心待ちにする。興奮しているのを表面に出すのはスマートではないので、涼しい顔を貫いた。
そんな決定的瞬間秒読みなこのタイミングで、脇腹をちょんちょんと突かれるくすぐったさを覚えた。はじめは今目をそらすと見逃すかもしれないと無視をしたが余りにしつこく、俺は辛抱たまらずやめさせるために後ろを振り返った。
「今はダメ。ちょっと待っててね」
そこにはタンジェリンオレンジ色にコーティングされたヘルメットを被った小向が立っていた。まさか、俺の脇腹をつんつんしたのは小向か?そんな、まさか。だが俺をまっすぐ見上げる視線に否定の言葉は直ぐにかき消えた。
なにもこんなタイミングに小向からの自発的コミュニケーションを被せなくても。誰かも確認せずちょっと待っててねと言ったが、一万円玉両替のお釣り問題と小向コミュニケーション、どちらを優先するかで心が揺れた。こんなチャンス二度とないかもしれない。くそう、恨むぜゴッド。
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「どうしたの? ああ、置いてかれたかと思った?」
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「かえちゃだめ。冥銭もったらおわり」
「ん?」
「冥銭はあの世のおかね。死んだひとが使うやつ」
あの世に行っちゃうよ?という小向の言葉が聞こえたのか、一万円玉投入一歩手前のギリギリでピタリと止まったサロメピンクは、素早く一万円玉を握ったままの手を投入口から離した。
「なにそれどういう事?」
小向の発言は突拍子もない上に信憑性もない。なにを根拠にそんな事を言っているのか分からず、にわかには信じがたい内容だった。だが……あの奪衣婆の言う向こう側とは、どこをさしているのだろう。そんな漠然とした疑問がわきあがり、サロメピンクにはもう両替機に金を投入する勇気はなさそうだった。
サロメピンクが下ろした一万円玉を見つめる。五百円玉と同じような大きさのそれは、一生懸命横並びで0が連なっているが、スリムになってもなおギチギチでいたく狭苦しそうだ。
「黙れ小童!!」
そんな俺たちの様子を離れたところから見張っていた奪衣婆の怒声が轟く。そちらに目を向けると憎悪を滲ませた鋭い瞳で小向を睨みつけ、牙を剥き出しにして威嚇している恐ろしい形相の鬼がいた。
「そのガキの言ってることは嘘だ。はやくせんと船を出してしまうぞ」
そうは言うが、小向の言葉に牙をむいたその行動がすべてを物語っている。バレバレですよと言いたいが、いかんせん相手は鬼なので怖くて言えない。
「うそじゃない。じーじが言ってたからほんと」
「じーじ?」
こくりと頷きで返す小向。誰だよじーじって。だが今はそれを問いただしてる暇はなさそうだった。
サロメピンクとアイコンタクトを交わし、小向の手を引きながら両替機から離れる。いつの間にか近づいてきていたカッパーレッドとマラカイトグリーンも混ざり、五人で固まってじりじりと後退して奪衣婆と距離をあけていく。
「チッ! 部外者の癖に邪魔しやがって……喰ってやろうか!」
「あっちいけババア」
いつ握っていたのだろうか?小向が棒読みで罵声を浴びせながら奪衣婆に向かって砂を投げつけた。なんと恐ろしいことを!瞬間、奪衣婆の髪がぐわりと逆立ち、額の両側から角が伸びた。
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