6 / 26
4 B1F
4-1
しおりを挟む
「布団がふっとんだーー!」
「よしっみんな今度こそあの布団に乗れ!!」
「わああああダメだ、またタンジェリンオレンジが乗れていない!」
「大変! この布団は破棄よ!」
「総員、飛び降りろおおおーーーー!」
ばたばたわちゃわちゃふわふわふわ。俺たちが放棄した布団がふわりふわりと空中を漂い、風に乗って遠くの方に飛び去っていった。俺たちは今、グツグツと煮えたぎったマグマのようなものが目一杯溜められている、どでかい釜の上を突破しようと試みている。
他の参加者から遅れること体感一時間弱。無事変身をとげた俺と小向を含めた五人組は、数分前に遅ればせながらスタートを切った。
変身をとげ、俺と小向の呼び名は変わった。俺はは行レンジャーバトルシップグレイ、小向はた行レンジャータンジェリンオレンジ。そう、空飛ぶ布団を具現化したのは俺で、乗り遅れたのは小向。かれこれもうこれが五度目の布団具現化で、五度目の乗り遅れである。
体のラインにピッタリ張り付くカラータイツもとい、バトルスーツは思いの外着心地がよく、動きを妨げず実に快適な作りとなっていた。フルフェイスも不思議なことに視界良好、こんな素晴らしいものを開発してちゃ、そりゃ金欠になるのも頷ける。だが自身の基礎能力値を底上げしてくれるというチート機能は当然のごとく備えていないようで、超ド級の運動音痴属性を我が物にしてブイブイ言わせてる小向は、今回も絶好調にドン臭さ通常運転なう。
あれから先に出発した参加者たちを追って、去って行った方角を目指してきた。幸いな事に移動している間、他参加者に出会うことはなかった。この短い距離の間に出会うとすれば即ち、精神衛生上よろしくなさそうなものになっている可能性大。先に進んでいけばどうなるか分からないから心しておくべきだろうが、今のところ見なくて済んでホッとしている。
進むに連れて身を蒸すような熱がどんどん酷くなり、そして行き着いたのは、蒸気が蔓延する断崖絶壁の上。それも向こうの淵なのだろうか、中央に浮いているのだろうか……こちら側の淵からは判断しかねるが、蒸気の中に薄っすらと陸地のようなものが見えた。
「あの地が我々を呼んでいる……あそこに行かねばならない」
そう語るカッパーレッドの膝は笑っていた。
だが右を見ても左を見ても果てのない崖の淵が広がり、対岸に繋がる道はあったとしても遙か先になるだろう事が容易に想像できた。そんな繋がってるかも分からない道を目指して淵沿いに移動するとなると、どれだけの時間を有するのか皆目検討もつかない。それに本当に対岸に回ればあの陸地があるのだろうか。そもそも、対岸はあるのだろうか。漠然としすぎて途方に暮れた。
「呼んでいる……じゃないわよ、どうすんのここ。崖じゃない」
「まあまあサロメピンク、そういうからにはカッパーレッドに名案があるんだよ、きっと」
「あ、あたりまえだろう! だが、まぁまずはみなの意見を聞こうじゃないか。俺の案は危険を伴うからな」
「要は案ないんでしょ。はぁ」
カッパーレッドの浅はかな発言に呆れ、サロメピンクはこれみよがしにため息を吐き出した。はぁ、と擬音付きのそれは批難の色濃く、向けられた本人ではないが、背筋に冷たいものが流れる。
「だいじょうぶ? 小向」
そんな様子を戦々恐々に横目でとらえながら、俺はゼエゼエ呼吸をみだしてへたり込んでいる小向の背中を撫でていた。ここに来るまでの間、最早歩いているのでは?と疑問に思う程低速な走りの小向に皆スピードをあわせて走っていたのだが、それでも小向にとってはかなりの運動量になったらしい。カッパーレッドとは別の意味で膝が笑って、立っているのは無理だったようだ。全身を小刻みにふるわせて外敵に怯える小動物のようになってしまっている。
「はぁ、ぁ、んっ……み、ず……みずのみた、い」
地面に座り込んでぐったりしている小向は、息もあらあらに喘いだ。その息遣いがなんというか艶めかしく聞こえるのは俺だけではないはずだ。元にサロメピンクに呆れられてため息はかれてるカッパーレッドも、その近くで二人をなだめようと奮闘していたマラカイトグリーンも、ギュインとこちらを振り向き小向を凝視している。
バトルスーツは体にピッタリとフィットしていて、レディース用のようなスカートで誤魔化されていない分、小向の細っこいボディラインがはっきりと浮き彫りになっていた。ただの男のボディラインなんぞ興味ないが、なにせ前のトリップ先で一国の最高権力者の息子を虜にしたボディだ、興味がないわけではない。……小向の親密さ不足が訳のわからない方向に進んでいる気がする。とりあえずけしからん輩にいたずらされないよう俺が守ってやらなくてはならない。
「水が飲みたいの? 水なぁ、どっかあるかなぁ?」
「んぅ、はぁ、ぁ……おみず、ちょ……だ、い」
水を欲しがってすがる小向。だが困った、ここは地獄だ、はいそうですかと直ぐに水を準備できるような場所ではない。それに水があったとしても果たしてそれは安全な水と言えるだろうか。
「大丈夫。俺に任せて」
小向を落ち着けようと背をなでながらどうしたもんかと逡巡している間に、呆れから派生して小言に変わったサロメピンクの説教にもはや仲裁を投げたマラカイトグリーンが直ぐそこまで近づいてきていた。
颯爽と現れたマラカイトグリーンは小向の前に跪き、俺とともに背を撫でようとしたが、それはやんわりと阻止しておいた。俺は放笑戦隊ダジャレンジャーの一員代理、は行レンジャーバトルシップグレイの前に、小向の前の席であるクラスメイトだ。ここで本当の味方は俺のみ、俺の目が黒いうちはお触りは禁止する。
ふっと爽やかに笑ってマラカイトグリーンは俺の肩を叩いた。喋り方がいちいち面倒くさいな、つい数分前にはうわーんとか声に出して泣いていたくせに……つられて俺も変な喋り方にならないよう気をつけないと。
よろしくお願いしますと一言告げ、マラカイトグリーンの動きを待つ。それに頷きで返したと思うとおもむろに立ち上がり、右手は真っ直ぐ、左手は湾曲させ両手の指先と手の付け根をくっつけて、いわゆるDのマークを手で表現した。きっとダジャレンジャーの頭文字ダのDだ、そうに違いない。
「水を見ずにはいられない!」
マラカイトグリーンがそう叫んだ瞬間、マラカイトグリーンの目の前にバレーボールくらいの大きさの白い煙が現れた。ぽわんぽわんと中に浮かぶ煙の塊はすっとまたたく間に空気に溶けていく。そして煙が消え去ったそこからなんと、まるで蛇口を捻った時のような量の水が流れ落ちはじめた。
「グラグラするグラス」
そこに、呟きながら近寄ってきたカッパーレッドがコップをよせると、一瞬にして溢れてしまうくらいコップいっぱいになみなみと水が注がれた。
「さぁ遠慮せず飲みたまえ」
ガタガタガタガタ。カッパーレッドが小向の目の前にコップをさしだす。すごいグラグラ揺れ動くグラスなようで、ついだそばから水がこぼれ落ちてしまっている。カッパーレッドは何でもない風を装っているようだが、今にも手から飛び出していきそうなコップを逃さぬよう必死なのが一目瞭然だ。
「でもヘルメットあるのにどうやって?」
「ああ左耳の後ろにあるボタンを押してごらん」
言われるがまま小向のヘルメットの左耳あたりを確認すると、言うとおりボタンが。押してみるとヘルメットが前後に割れ、着脱可能になった。そして無事、小向は切望していた水にありつけましたとさ。一回目はガタガタ揺れるコップを握っていられず取り落とすというハプニングでお釈迦になったが、二回目は俺が握ってやり事無きを得た。
そうやってダジャレの具現化を目の当たりにし、俺は思いついた。この断崖絶壁を飛び越える奇抜的打開策を。それが、布団がふっとんだである。
いざ岩壁のスレスレに立って下を覗き込んでみると、初見ではただの崖と思ったそこは、岩肌の縁になにやら人工物が見えた。そこは大きな大きな鍋をはめ込むでっかい地面の窪みだったらしい。さすが地獄だスケールがでっかい。
「ここは釜茹で地獄だそうよ。直径は母ノミが進んでは卵を産み、子が引き継いで進んでを100年繰り返しても辿りつけない長さみたい」
なんだその漠然とした数の表し方は。いつの間にかいた知らない老婆とコミュニケーションをはかっていたサロメピンクの情報に目が点になる。辿りつけないなら答え出てないじゃん!
「よしっみんな今度こそあの布団に乗れ!!」
「わああああダメだ、またタンジェリンオレンジが乗れていない!」
「大変! この布団は破棄よ!」
「総員、飛び降りろおおおーーーー!」
ばたばたわちゃわちゃふわふわふわ。俺たちが放棄した布団がふわりふわりと空中を漂い、風に乗って遠くの方に飛び去っていった。俺たちは今、グツグツと煮えたぎったマグマのようなものが目一杯溜められている、どでかい釜の上を突破しようと試みている。
他の参加者から遅れること体感一時間弱。無事変身をとげた俺と小向を含めた五人組は、数分前に遅ればせながらスタートを切った。
変身をとげ、俺と小向の呼び名は変わった。俺はは行レンジャーバトルシップグレイ、小向はた行レンジャータンジェリンオレンジ。そう、空飛ぶ布団を具現化したのは俺で、乗り遅れたのは小向。かれこれもうこれが五度目の布団具現化で、五度目の乗り遅れである。
体のラインにピッタリ張り付くカラータイツもとい、バトルスーツは思いの外着心地がよく、動きを妨げず実に快適な作りとなっていた。フルフェイスも不思議なことに視界良好、こんな素晴らしいものを開発してちゃ、そりゃ金欠になるのも頷ける。だが自身の基礎能力値を底上げしてくれるというチート機能は当然のごとく備えていないようで、超ド級の運動音痴属性を我が物にしてブイブイ言わせてる小向は、今回も絶好調にドン臭さ通常運転なう。
あれから先に出発した参加者たちを追って、去って行った方角を目指してきた。幸いな事に移動している間、他参加者に出会うことはなかった。この短い距離の間に出会うとすれば即ち、精神衛生上よろしくなさそうなものになっている可能性大。先に進んでいけばどうなるか分からないから心しておくべきだろうが、今のところ見なくて済んでホッとしている。
進むに連れて身を蒸すような熱がどんどん酷くなり、そして行き着いたのは、蒸気が蔓延する断崖絶壁の上。それも向こうの淵なのだろうか、中央に浮いているのだろうか……こちら側の淵からは判断しかねるが、蒸気の中に薄っすらと陸地のようなものが見えた。
「あの地が我々を呼んでいる……あそこに行かねばならない」
そう語るカッパーレッドの膝は笑っていた。
だが右を見ても左を見ても果てのない崖の淵が広がり、対岸に繋がる道はあったとしても遙か先になるだろう事が容易に想像できた。そんな繋がってるかも分からない道を目指して淵沿いに移動するとなると、どれだけの時間を有するのか皆目検討もつかない。それに本当に対岸に回ればあの陸地があるのだろうか。そもそも、対岸はあるのだろうか。漠然としすぎて途方に暮れた。
「呼んでいる……じゃないわよ、どうすんのここ。崖じゃない」
「まあまあサロメピンク、そういうからにはカッパーレッドに名案があるんだよ、きっと」
「あ、あたりまえだろう! だが、まぁまずはみなの意見を聞こうじゃないか。俺の案は危険を伴うからな」
「要は案ないんでしょ。はぁ」
カッパーレッドの浅はかな発言に呆れ、サロメピンクはこれみよがしにため息を吐き出した。はぁ、と擬音付きのそれは批難の色濃く、向けられた本人ではないが、背筋に冷たいものが流れる。
「だいじょうぶ? 小向」
そんな様子を戦々恐々に横目でとらえながら、俺はゼエゼエ呼吸をみだしてへたり込んでいる小向の背中を撫でていた。ここに来るまでの間、最早歩いているのでは?と疑問に思う程低速な走りの小向に皆スピードをあわせて走っていたのだが、それでも小向にとってはかなりの運動量になったらしい。カッパーレッドとは別の意味で膝が笑って、立っているのは無理だったようだ。全身を小刻みにふるわせて外敵に怯える小動物のようになってしまっている。
「はぁ、ぁ、んっ……み、ず……みずのみた、い」
地面に座り込んでぐったりしている小向は、息もあらあらに喘いだ。その息遣いがなんというか艶めかしく聞こえるのは俺だけではないはずだ。元にサロメピンクに呆れられてため息はかれてるカッパーレッドも、その近くで二人をなだめようと奮闘していたマラカイトグリーンも、ギュインとこちらを振り向き小向を凝視している。
バトルスーツは体にピッタリとフィットしていて、レディース用のようなスカートで誤魔化されていない分、小向の細っこいボディラインがはっきりと浮き彫りになっていた。ただの男のボディラインなんぞ興味ないが、なにせ前のトリップ先で一国の最高権力者の息子を虜にしたボディだ、興味がないわけではない。……小向の親密さ不足が訳のわからない方向に進んでいる気がする。とりあえずけしからん輩にいたずらされないよう俺が守ってやらなくてはならない。
「水が飲みたいの? 水なぁ、どっかあるかなぁ?」
「んぅ、はぁ、ぁ……おみず、ちょ……だ、い」
水を欲しがってすがる小向。だが困った、ここは地獄だ、はいそうですかと直ぐに水を準備できるような場所ではない。それに水があったとしても果たしてそれは安全な水と言えるだろうか。
「大丈夫。俺に任せて」
小向を落ち着けようと背をなでながらどうしたもんかと逡巡している間に、呆れから派生して小言に変わったサロメピンクの説教にもはや仲裁を投げたマラカイトグリーンが直ぐそこまで近づいてきていた。
颯爽と現れたマラカイトグリーンは小向の前に跪き、俺とともに背を撫でようとしたが、それはやんわりと阻止しておいた。俺は放笑戦隊ダジャレンジャーの一員代理、は行レンジャーバトルシップグレイの前に、小向の前の席であるクラスメイトだ。ここで本当の味方は俺のみ、俺の目が黒いうちはお触りは禁止する。
ふっと爽やかに笑ってマラカイトグリーンは俺の肩を叩いた。喋り方がいちいち面倒くさいな、つい数分前にはうわーんとか声に出して泣いていたくせに……つられて俺も変な喋り方にならないよう気をつけないと。
よろしくお願いしますと一言告げ、マラカイトグリーンの動きを待つ。それに頷きで返したと思うとおもむろに立ち上がり、右手は真っ直ぐ、左手は湾曲させ両手の指先と手の付け根をくっつけて、いわゆるDのマークを手で表現した。きっとダジャレンジャーの頭文字ダのDだ、そうに違いない。
「水を見ずにはいられない!」
マラカイトグリーンがそう叫んだ瞬間、マラカイトグリーンの目の前にバレーボールくらいの大きさの白い煙が現れた。ぽわんぽわんと中に浮かぶ煙の塊はすっとまたたく間に空気に溶けていく。そして煙が消え去ったそこからなんと、まるで蛇口を捻った時のような量の水が流れ落ちはじめた。
「グラグラするグラス」
そこに、呟きながら近寄ってきたカッパーレッドがコップをよせると、一瞬にして溢れてしまうくらいコップいっぱいになみなみと水が注がれた。
「さぁ遠慮せず飲みたまえ」
ガタガタガタガタ。カッパーレッドが小向の目の前にコップをさしだす。すごいグラグラ揺れ動くグラスなようで、ついだそばから水がこぼれ落ちてしまっている。カッパーレッドは何でもない風を装っているようだが、今にも手から飛び出していきそうなコップを逃さぬよう必死なのが一目瞭然だ。
「でもヘルメットあるのにどうやって?」
「ああ左耳の後ろにあるボタンを押してごらん」
言われるがまま小向のヘルメットの左耳あたりを確認すると、言うとおりボタンが。押してみるとヘルメットが前後に割れ、着脱可能になった。そして無事、小向は切望していた水にありつけましたとさ。一回目はガタガタ揺れるコップを握っていられず取り落とすというハプニングでお釈迦になったが、二回目は俺が握ってやり事無きを得た。
そうやってダジャレの具現化を目の当たりにし、俺は思いついた。この断崖絶壁を飛び越える奇抜的打開策を。それが、布団がふっとんだである。
いざ岩壁のスレスレに立って下を覗き込んでみると、初見ではただの崖と思ったそこは、岩肌の縁になにやら人工物が見えた。そこは大きな大きな鍋をはめ込むでっかい地面の窪みだったらしい。さすが地獄だスケールがでっかい。
「ここは釜茹で地獄だそうよ。直径は母ノミが進んでは卵を産み、子が引き継いで進んでを100年繰り返しても辿りつけない長さみたい」
なんだその漠然とした数の表し方は。いつの間にかいた知らない老婆とコミュニケーションをはかっていたサロメピンクの情報に目が点になる。辿りつけないなら答え出てないじゃん!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる