16 / 26
7 B8F
7-1
しおりを挟む
キャンセルの技を発動して建物を消し、俺たちはレースを再開した。まだ他参加者は追いついていないのか、はたまたもう既に追いぬかれたのか、幸い塀の外側には敵の姿の人っ子一人いなかった。
距離をとり、三人の後方を歩く俺。腕にはがっしりと小向を抱きしめ、離さないオーラを垂れ流している。その様子をちらりちらりと振り向き確認するカッパーレッドとマラカイトグリーンは、俺の思い違いじゃなければきっと、ヘルメットの下で下卑た笑顔を浮かべているに違いない。
最悪だ、最低だ。絶対あいつら寝ている小向にいたずらしたな。どこまでしたのかわからないが、小向が変身しなおしてたのは夢ではないはずだ。戦隊ヒーローの癖に下衆なことしやがる。これは確実に犯罪だ。しかし小向が語らない限り確固たる証拠がないので責めることもできず、モヤモヤした不快感を消化できないことが悔しい。
前のトリップでも俺が寝ている間に小向は手籠めにされていた。その時は隣の部屋ということもあり、聞こえない可能性も確かにあった。だが今回は同じ空間。三メートルそこそこの四角い空間で行われた犯行に、俺はなぜ起きないんだ!そんなに静かにいたずらされているのか?腸が煮えくり返る。
この空気を一切感じ取ってないサロメピンクを先頭に、俺たちは井戸を通過して地獄の八丁目層に到着した。そこに広がるのは果てが見えないほど広大な、真っ赤な湖。真っ赤というよりどす黒く、言ってしまえばあの刀の林の実の果汁にそっくりな、正に血の色と言っても過言じゃない色だった。匂いも鉄臭く、鼻について嗅覚を麻痺させる。
「大丈夫かい? いつでも変わるから遠慮なく言ってくれ」
「うるさい話しかけんな。小向に触れたら殺す」
「おおーこわい! バトルシップグレイはご立腹のようだ」
湖の辺りに歩み寄り、中を覗き込んで見る。濃度が濃いのか透明度は皆無で中は一切見えず、深さを想定する事はできそうもなかった。だからといって手を入れて確認する勇気はない。はやくレースを完走してこの性的犯罪者どもから離れたいのに、ここにきて否応に手をこまねかなければならない事態に苦虫を噛み潰す。
あーだこーだと作戦会議をしている三人のから離れ、そこら辺にあった岩に腰を下ろした。今の心境じゃあの輪に入って話し合いできそうもない。膝に乗せてる小向のヘルメットを撫でながら遠くを眺めた。
このままの雰囲気でレースをともに進めるのだろうか。とてもじゃないがもう小向をあの二人に近づけたくない。俺も話したくない。
「寝てる間になにがあったんだよー小向……」
情けなくしょんぼりした声音で眠っているであろう小向に向けて独り言を呟く。返事は返ってこない前提だ。大丈夫、独り言は慣れている。
「シャワーあびた」
だが、返ってきた。なんと言うことだろう、小向は起きていたようだ。
「へ? シャワー……?」
「ん。おふろ」
なーんだ、だから変身解いてたのか。語られなかった真実を聞き、俺は安心から体の力が抜けて小向を落としそうになった。呆気ない答えにホッと安堵する。そうだよ、俺の夢はお風呂に入りたがってだだをこねる小向の夢だったじゃないか。
「もーエッチな事されたんじゃないかと思って気が気じゃなかったんだぞ」
「想像すんなきもい」
硬質だった声色から力を抜いた。口元も緩む。想像したかしてないかと聞かれたら、ごめんなさい、しました。きもいと言われても仕方ないレベルで、想像しましたハイ。ソースは前トリップでの一幕。男子高校生は見た!の回だ。
「俺、殺す、とか言っちゃったよ……」
「だめ」
「もし」
「だよなぁ、頭に血が登ってた、反省。でもさ小向だってぽいこというじゃん? おれ地味に凹んでたりしちゃったり」
「ぼくはいい。本気だから後悔しない」
「もし」
え!?そっちの方がショックがでかいのですが。まあでもそれが小向のアイデンティティなら受け入れようじゃないか。そんな小向との言葉のキャッチボールを楽しんでる合間に、ちょいちょいなにか混ざりこんでいる気がしたが、小向が返事を返してくれる幸福にあえて違うものは無視をする。
「もし、そこのお二方」
しかし無視は拒絶だと認識していないのか、声掛けだけでは飽きたらず俺の背中をとんとん叩きだしたので、とうとう俺は折れて振り返った。
「わしは野干村の村長、ガンと申します」
そこには、犬なのか狐なのか定かではないが、それ系統の顔をした獣人間が、江戸ファッションのような古びた着物を纏って二足歩行していた。
ここまできたらもう驚くまい。牛の頭や馬の頭、実は兎の頭をしていた親切な獄卒に出会った経験のある俺は、今更犬狐の頭をした獣人間が出てきたところで動揺することはなかった。村という集団行動をするやつがいたって不思議ではない。わざわざ長を決めるほどがっつり村作りしてる獣人間たちがいたって不思議ではないのだ。
「あの、俺たちに何か用が?」
「そうですそうです! おりいってお願いがあり参りました」
名をガンと名乗った野干村とやらの村長は、俺と小向を交互に見て両手を揉み込んだ。下手に出ている風を装い話す様はあたかも本気のお願いのようにうつるが、目も口もニンマリとしていて小馬鹿にしている感じが否めない。元の顔が狐っぽいからだろうが、なんとも胡散臭い気がして信用していいものなのか俺一人では判断できなかった。
「お願いと言われましても……俺たちレース中なのでちょっと」
「えぇえぇ貴方様方がかの競技に参加中なのは重々承知しておりますとも。しかしながら我々は頼るものがおらず、邪魔してしまうのを理解しながらも尚、お声をかけざるおえない状況でして」
「はぁ」
「わしは村長なのです。村人を守る義務があり、憎まれ役になろうとも助けをこうていかねばならぬのです」
お耳汚しかと存じますが、話だけでも聞いてくださいませぬか。そう願われて無碍に出来る程腐った人間じゃない俺は、断ることも出来ず、俺たちの様子に近寄ってきたほか三人も合わせて話を聞くことになった。
「我が野干村は今、大王様の逆鱗に触れてしまったのか災いがふりかかり、次から次に村人が床に伏しております。かの者は咳が止まらず、かの者は高熱にうなされ……それはもう見ているのも辛いほどの苦しみようです。半数以上がそのような状況、残った者も看病に追われ日に日に皆やつれていくばかり。そのようなことを大王様のお怒りだと受け入れ見過ごすことなどできるはずもなく、こうしてお声をかけさせていただきました。幸いなことにわしはまだ災いがふりかかってはおりませぬが、いつそうなってもおかしくはありませぬ」
野干村の村長ガンの話を最後まで聞いて、皆なにも言葉が見つからなかった。茶化しちゃなんだけど、なんかこの話、歴史によくある最後生け贄とか出しちゃうやつに似てないか?それに、地獄に災いとか眉唾ものなんですけど。
「それって、私たちじゃどうしようもないんじゃ……」
神妙に聞いていたサロメピンクが代表して口火を切る。戸惑いながら言葉を選び選び話すさまは申し訳なさが際立ち、無力な自分を悔いているようだった。案ずるな、俺も同意見だ。大王様とは誰のことかわからないが、そんな災いをもたらす強力な力をもった方の逆鱗をどうにかできるほど俺たちは強くない。それも聞いた限り、病気じゃね?医者じゃないただの戦隊ヒーロープラス代理の俺たちには最早どうしようもない。
俺たちの答えを予想できていたのか、村長はゆるりと首をふり、よいのですと儚げに微笑んだ。
「聞いてくださったお礼に道案内をひとつ。ここは血の池地獄と申します。直径はふんころがしが100年同じふんを転がしても橋を作ることはできない距離と言われており、手漕ぎ舟は血に侵食され一由旬持たないとの伝えから、実質渡ることは不可能」
何もしてやれないと豪語した俺たちに追いすがるでもなく、親切にこの丁目層のことを教えてくれる村長。なんて優しい村長なんだ。こんな村長に大切に思われてる村人は幸せものだな。
距離をとり、三人の後方を歩く俺。腕にはがっしりと小向を抱きしめ、離さないオーラを垂れ流している。その様子をちらりちらりと振り向き確認するカッパーレッドとマラカイトグリーンは、俺の思い違いじゃなければきっと、ヘルメットの下で下卑た笑顔を浮かべているに違いない。
最悪だ、最低だ。絶対あいつら寝ている小向にいたずらしたな。どこまでしたのかわからないが、小向が変身しなおしてたのは夢ではないはずだ。戦隊ヒーローの癖に下衆なことしやがる。これは確実に犯罪だ。しかし小向が語らない限り確固たる証拠がないので責めることもできず、モヤモヤした不快感を消化できないことが悔しい。
前のトリップでも俺が寝ている間に小向は手籠めにされていた。その時は隣の部屋ということもあり、聞こえない可能性も確かにあった。だが今回は同じ空間。三メートルそこそこの四角い空間で行われた犯行に、俺はなぜ起きないんだ!そんなに静かにいたずらされているのか?腸が煮えくり返る。
この空気を一切感じ取ってないサロメピンクを先頭に、俺たちは井戸を通過して地獄の八丁目層に到着した。そこに広がるのは果てが見えないほど広大な、真っ赤な湖。真っ赤というよりどす黒く、言ってしまえばあの刀の林の実の果汁にそっくりな、正に血の色と言っても過言じゃない色だった。匂いも鉄臭く、鼻について嗅覚を麻痺させる。
「大丈夫かい? いつでも変わるから遠慮なく言ってくれ」
「うるさい話しかけんな。小向に触れたら殺す」
「おおーこわい! バトルシップグレイはご立腹のようだ」
湖の辺りに歩み寄り、中を覗き込んで見る。濃度が濃いのか透明度は皆無で中は一切見えず、深さを想定する事はできそうもなかった。だからといって手を入れて確認する勇気はない。はやくレースを完走してこの性的犯罪者どもから離れたいのに、ここにきて否応に手をこまねかなければならない事態に苦虫を噛み潰す。
あーだこーだと作戦会議をしている三人のから離れ、そこら辺にあった岩に腰を下ろした。今の心境じゃあの輪に入って話し合いできそうもない。膝に乗せてる小向のヘルメットを撫でながら遠くを眺めた。
このままの雰囲気でレースをともに進めるのだろうか。とてもじゃないがもう小向をあの二人に近づけたくない。俺も話したくない。
「寝てる間になにがあったんだよー小向……」
情けなくしょんぼりした声音で眠っているであろう小向に向けて独り言を呟く。返事は返ってこない前提だ。大丈夫、独り言は慣れている。
「シャワーあびた」
だが、返ってきた。なんと言うことだろう、小向は起きていたようだ。
「へ? シャワー……?」
「ん。おふろ」
なーんだ、だから変身解いてたのか。語られなかった真実を聞き、俺は安心から体の力が抜けて小向を落としそうになった。呆気ない答えにホッと安堵する。そうだよ、俺の夢はお風呂に入りたがってだだをこねる小向の夢だったじゃないか。
「もーエッチな事されたんじゃないかと思って気が気じゃなかったんだぞ」
「想像すんなきもい」
硬質だった声色から力を抜いた。口元も緩む。想像したかしてないかと聞かれたら、ごめんなさい、しました。きもいと言われても仕方ないレベルで、想像しましたハイ。ソースは前トリップでの一幕。男子高校生は見た!の回だ。
「俺、殺す、とか言っちゃったよ……」
「だめ」
「もし」
「だよなぁ、頭に血が登ってた、反省。でもさ小向だってぽいこというじゃん? おれ地味に凹んでたりしちゃったり」
「ぼくはいい。本気だから後悔しない」
「もし」
え!?そっちの方がショックがでかいのですが。まあでもそれが小向のアイデンティティなら受け入れようじゃないか。そんな小向との言葉のキャッチボールを楽しんでる合間に、ちょいちょいなにか混ざりこんでいる気がしたが、小向が返事を返してくれる幸福にあえて違うものは無視をする。
「もし、そこのお二方」
しかし無視は拒絶だと認識していないのか、声掛けだけでは飽きたらず俺の背中をとんとん叩きだしたので、とうとう俺は折れて振り返った。
「わしは野干村の村長、ガンと申します」
そこには、犬なのか狐なのか定かではないが、それ系統の顔をした獣人間が、江戸ファッションのような古びた着物を纏って二足歩行していた。
ここまできたらもう驚くまい。牛の頭や馬の頭、実は兎の頭をしていた親切な獄卒に出会った経験のある俺は、今更犬狐の頭をした獣人間が出てきたところで動揺することはなかった。村という集団行動をするやつがいたって不思議ではない。わざわざ長を決めるほどがっつり村作りしてる獣人間たちがいたって不思議ではないのだ。
「あの、俺たちに何か用が?」
「そうですそうです! おりいってお願いがあり参りました」
名をガンと名乗った野干村とやらの村長は、俺と小向を交互に見て両手を揉み込んだ。下手に出ている風を装い話す様はあたかも本気のお願いのようにうつるが、目も口もニンマリとしていて小馬鹿にしている感じが否めない。元の顔が狐っぽいからだろうが、なんとも胡散臭い気がして信用していいものなのか俺一人では判断できなかった。
「お願いと言われましても……俺たちレース中なのでちょっと」
「えぇえぇ貴方様方がかの競技に参加中なのは重々承知しておりますとも。しかしながら我々は頼るものがおらず、邪魔してしまうのを理解しながらも尚、お声をかけざるおえない状況でして」
「はぁ」
「わしは村長なのです。村人を守る義務があり、憎まれ役になろうとも助けをこうていかねばならぬのです」
お耳汚しかと存じますが、話だけでも聞いてくださいませぬか。そう願われて無碍に出来る程腐った人間じゃない俺は、断ることも出来ず、俺たちの様子に近寄ってきたほか三人も合わせて話を聞くことになった。
「我が野干村は今、大王様の逆鱗に触れてしまったのか災いがふりかかり、次から次に村人が床に伏しております。かの者は咳が止まらず、かの者は高熱にうなされ……それはもう見ているのも辛いほどの苦しみようです。半数以上がそのような状況、残った者も看病に追われ日に日に皆やつれていくばかり。そのようなことを大王様のお怒りだと受け入れ見過ごすことなどできるはずもなく、こうしてお声をかけさせていただきました。幸いなことにわしはまだ災いがふりかかってはおりませぬが、いつそうなってもおかしくはありませぬ」
野干村の村長ガンの話を最後まで聞いて、皆なにも言葉が見つからなかった。茶化しちゃなんだけど、なんかこの話、歴史によくある最後生け贄とか出しちゃうやつに似てないか?それに、地獄に災いとか眉唾ものなんですけど。
「それって、私たちじゃどうしようもないんじゃ……」
神妙に聞いていたサロメピンクが代表して口火を切る。戸惑いながら言葉を選び選び話すさまは申し訳なさが際立ち、無力な自分を悔いているようだった。案ずるな、俺も同意見だ。大王様とは誰のことかわからないが、そんな災いをもたらす強力な力をもった方の逆鱗をどうにかできるほど俺たちは強くない。それも聞いた限り、病気じゃね?医者じゃないただの戦隊ヒーロープラス代理の俺たちには最早どうしようもない。
俺たちの答えを予想できていたのか、村長はゆるりと首をふり、よいのですと儚げに微笑んだ。
「聞いてくださったお礼に道案内をひとつ。ここは血の池地獄と申します。直径はふんころがしが100年同じふんを転がしても橋を作ることはできない距離と言われており、手漕ぎ舟は血に侵食され一由旬持たないとの伝えから、実質渡ることは不可能」
何もしてやれないと豪語した俺たちに追いすがるでもなく、親切にこの丁目層のことを教えてくれる村長。なんて優しい村長なんだ。こんな村長に大切に思われてる村人は幸せものだな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる