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第二章 初めての王都編

7.ボクっ娘冒険者とガイド

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 あれから数日が経ちいつも通りの日々が続いてた。

「はい。多分こちらのダンジョンの方が今のナラ様のレベルには合うかと」

「そっか! わざわざありがとね! そーだナヴィちゃん。暇なら一緒にダンジョンにどう? 『ガイド』だから同行できるんでしょ?」

「冗談はやめてくださいよ…あたし足手まといになるだけですから。あはは…」

「そんなことないよー。可愛い女の子がいるだけで、おじさん元気出ちゃうけどね。キラッ」

 苦笑いを続けて横に振っていたナヴィの手を取る冒険者。

「お姉ちゃんにセクハラですかぁナラ様。うちの店主を同行させるのは高くつきますからねぇ」

 黒いオーラを放ちながら冒険者の背後に着くエンフィー。

「エンフィーちゃん!? じゃ、じゃあ僕行ってくるので……またお願いしまーす!」

「まったく、このくらいでビビるんだったら誘わないでよね」

 エンフィーは腕を組み、フンっと顔を膨らませた。

「ありがとうエンフィー。お客さんも少なくなったし少し休憩しましょうか」

「うん。コーヒー淹れるね!」


 コーヒーを入れるエンフィーとそれを椅子に座って待つナヴィ。
 顔はそれぞれの方向を向きつつも会話は続いた。

「お姉ちゃん、ナラ様は嫌だったけど、ダンジョンに同行するのは別にいいからね。ガイドになった特権なんだし。村人の時は村よりも先には出られなかったんだからさ。」

「んーでもエンフィー一人に任せるのも大変だと思うしなにかあったら…」

 そんなナヴィに食い気味でエンフィーが話す。

「お姉ちゃん。私もつい最近だけどもうガイドなったんだよ。そのくらい平気。それに、私は同行してと頼まれたら行くからね。お姉ちゃん一人にしてでも」

 顔を近づけるエンフィーに圧されてナヴィは言った。

「あはは、流石ねエンフィー。わかったわ。あたしもそうする」

 エンフィーはその言葉を聞いて安心したのかすぐにニコッと笑った。

「それにさ、トニーおじいちゃんの本や地図だけの情報じゃ、実物とのギャップがあってどうしてもガイドの幅は出ないもの。どっちかが同行したら必ず共有するようにしたら、私たち自身のレベルも上がると思うし次の『上級ガイド』のクラスアップの近道にもなるわ!」


 不安そうだったナヴィの顔の頬が上がる。

「確かにね。あたしも『上級ガイド』に早くなるためにもそうなったときには遠慮なくいかせてもらうわ!」

「うん。まぁ『ガイド』は着いていきたいと思われるようにならないとね。一人じゃ村から出られないし…」

「身を守るすべがないもの…。あはははは」

「はい。コーヒーできたよ」
「ありがと。いただきます」





 他愛もない話をしながらコーヒーを飲み切ったナヴィがそのおいしさと少々の疲れから、大きくため息をつく。
「はぁ」

「どうしたのお姉ちゃん。またなんか嫌なことでもあった?」

「ねぇエンフィー。最近この小屋のお客さんの層について何か気が付かない?」

 横に首を少し傾げたエンフィーは考えを巡らせながら話す。
「んーリピーターは増えた気がするわ。何度も来てくれる人もいて名前もたくさん覚えたし。でもこれっていいことじゃない?」

「そう。あたしも最初はそう思って気にしなかったんだけど。最近気づいたの。あたしたちの生活にかかわることよ。」

「な、なに?」
 額に少量の汗をかきながらナヴィに尋ねる。

「エンフィー最近さ、新規の冒険者様が少ないと思わない?」

 はっとした表情になるエンフィー。

「そ、そうか、だから常連の冒険者様が目立ってたのね」

「そうなの、確かに今リピーターの冒険者様達のおかげで生活もできてはいるけど、今後のことも考えると立派な懸念点だわ」

 顎に手を当てて不安そうな顔で話すナヴィ。 

 その考えにエンフィーが続く。
「この村には情報を与える店はここしかないと思うのだけれど…そしたら駆け出し冒険者様達はどこで情報を得てダンジョンに向かってるのかしら」


姉妹そろって同じポーズで熟考し始めたその時、玄関の扉が開く。


「ふははは。その答え。僕が教えてあげようか」


 扉の前には一人の冒険者。

「あ、あなたは!」

「そう、この僕。僕の名前は…」

「あ、ハンナね」
 ナヴィはため息と同時にあきれた声で彼女の名前を言った。

「ハンナさんだ。 いらっしゃーい!」

「気づくな。 てか、先に言うな! せっかく親切心で君たちに情報を持ってきたのに」

「だって、女のくせに僕っていうし、そんな露出の多い恰好で破廉恥な冒険者様なんてうちではあなただけだわ」
「スポブラみたいなトップスにホットパンツ、それにロングスカーフって。暑いのか寒いのかどっちかにしてほしいし」

「これは僕のぼ・う・ぐ! 相変わらず口だけは達者なようだね」


 わーきゃー言ってるこのボブくらいの青髪のボクっ娘が『ハンナ』
 一言でいうと良くも悪くも何考えてるかわからない子ね。だけどお店のリピーターの中では頭一つ抜けている実力を持つ双肩使いの冒険者だわ。

 年はあたしと同い年の二十歳で知り合ったのもちょうど二年前くらいかしら。

「おーい。ナヴィ、ナヴィ。どうしたのぼーっとして」
 ハンナは目の前で手を振った。

「あ、ごめん。あれ、それよりあなた胸のタトゥーの数が二個になったの? 胸はないのに…」

「ふふふ。よく気づいてくれたね。今日で僕のレベルは二十になりました! ん、なんか言ったかい?」

「わーハンナさんすごいです! これで新しいダンジョンの情報とかも教えられますね! 胸はないけど」

「そうそうこれからも頼んだよエンフィーちゃん。おい今最後になんて言った」

 この世界の冒険者のレベルは厳密にはわからない使用になってるわ。ただレベルが十あがるごとに青い胸のタトゥーが刻まれてくの。それを見てあたし達『ガイド』もレベル別に情報を提供する仕組みになってるの。

 まぁうちは初心者冒険者が多いから大体は無印か良くてもタトゥー一個ってところね。

「うちのリピーター初のレベル二十冒険者はハンナかー。なんか締まらないわね。ハンナ、ちょっとレベル戻してきて」

「できるか!!」

 相変わらずいじりがいのある子だわ。ハンナ。

「それよりいいのかい、僕の持ってきた情報。聞きたくないかい?」

「……一応聞いておこうかしら」

「ふふふ。その答えはねぇ……」

 姉妹はごくりと大きく唾を飲んだ。

「ないわ」
 してやった表情をしたハンナだった。

「は」
 三人のいる空間が数秒固まった。


「エンフィー、ハンナはのどが渇いたみたいだわ。さっき淹れてくれた熱々のコーヒーちょっと持ってきて」
 ナヴィがハンナの顔を見ながらワントーン高い声で話す。

「はーい」

「ちょ、ちょっと待って何する気?」
 ハンナが慌てふためく。

「コーヒーをカップに入れるついでに手を滑らせてハンナに思いっきりぶっかけようかと」
 真顔で答えるナヴィ。

 その瞬間ハンナの背後から禍々しくも可愛らしい声が聞こえてくる。
「お待たせしましたー」

「ひっ」
「わ、分かった、分かった、普通に教えるから」

「最初からそうすればいいのに…。で何なのかしら。新規冒険者様達があたし達の所に来ない理由」

「さっきは僕の言い方が悪かった。¨ここには¨ないよ」

「といいますと」
 すぐにエンフィーが返す。

「王都だ」

「王都?王都ってこの村から北に向かうとある巨大都市の?」

「あぁそのとおりだよ」
 自信満々に応えるハンナ。

「王都に何があるのかしら」
 ナヴィの目が先程とは打って変わって真剣な表情になる。

「いい目になったね。さて、ここからは交渉さ」
 ハンナの顔もそれに呼応するかのように顔つきが変わる。

「交渉?」

「あぁ、実は僕はこれから王都に行く用があってね。」
「だから……」

「だから? それに用って」

「僕が¨情報¨を与える代わりにナヴィには¨僕のガイド¨を頼みたい」


「え、あたしが王都に……。ハンナのガイドに……」

「ナヴィ。一緒に行こう。王都に!」
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