村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第四章 『上級ガイド』のダンジョン探索編

32.三人目の『上級ガイド』

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 リュックの底に手を入れるナヴィ。

「あ、あの……」
 少女が心配そうに見守っている。 

「ちょっと待っててね! あった!」

 ナヴィはリュックからラップのようなもので包んでいたパンを取り出した。

「う、つぶれちゃってるけどそれでも良ければ食べていいわよ、こっちにはお水があるからね」

「あ、ありがとうございます!」

 空腹からか死んだ魚の目をしていた少女は受け取ったパンにかぶりついた。

「すっごいがっつくわね、そんなにお腹がすいていたのね」
 苦笑いをしながら少女を見つめるナヴィ。


 話しかけたナヴィに気づくと、その少女は胸をとんとんと叩き、水を飲み話し始めた。

「三日ほど占いに夢中になってたらつい……」

「占い? あなた占いができるの?」

「はい、こちらのカードを使って占いをしていました」

 その少女はポケットからカードを出しナヴィに見せた。

 これは、タロットカード……この世界にもあるのね。

「あ、申し遅れました! わたくし『上級ガイド』させていただいてますルナです! ルナ・マリオットと申します! この度は助けていただきありがとうございます!」

「全然いいのよ。気にしないで。あたしはナヴィ。ナヴィ・マクレガンよ」

 この子やっぱり上級ガイドなのね……それにしても小さい。

「え、あのナヴィさんですか! まさかこんなところで会えるなんて!」 

 アメジストのように輝く瞳でナヴィの手を取り見つめるルナ。

「あ、あたしのこと知ってるの?」

「えぇ、もちろんです! 最近『密林の神殿』で神官ラハマンを倒した『二人の上級ガイド』の一人! わたくしの村でも有名な話でしたので」

「あーあれは殆どケビンがやっつけたようなもんだけれど……」

「ご謙遜なさらずに、この目で拝むことができて非常に嬉しいです!」

 ガイドでも有名になれるのね……なんかいい気分かも。

 ニヤッと笑ったナヴィが質問を続けた。

「ルナちゃんあなたは何歳なの?」

「二十歳ですよ」

「お、同い年!?」

 こんなに小さいのに……。まぁでも『上級ガイド』だからそのくらいの年齢じゃないとおかしいわね。

「あら、そうするとナヴィさんも二十歳ですね、同業者としてこれからもよろしくお願いします!」

「えぇ、よろしく、そういえばルナさん?」

「あ、ルナでいいですよ」

「そう、そしたらルナ、あなた三日ほど占いに夢中になってた、って言ってたよね? ここで三日も何の占いをしてたの?」

「ダンジョンのマップ作りと攻略情報を占ってました」

「え? 入ってもないのに?」

「はい。わたくしはダンジョンの入口で占いをすればそのダンジョンの地形やトラップ、ボスの情報がほとんどわかります」

 何そのチートスキル……。

「ちょっと、ルナ! そのマップ見せてもらってもいいかしら」

「あ、わたくしもナヴィさんの作り立てのマップが見たいです!」

 二人は地面にそれぞれが作成したマップを置き比較を始めた。

 そのマップを見てナヴィが驚愕した。

「な、まだこんなにトラップがあったの!? あたしの確認できてないのがまだこんなに」

「えぇ、さすが『悪戯の~』と名前が付くだけありますね、時間がかなり掛かってしまいました」

「ほえー、これあたし入った意味あったのかしら……」

「ありますよ。わたくしのはあくまでも¨予想¨でしかありません」

「予想?」

「ここ見てください」
 そういうとルナはナヴィのマップのタコ型のモンスターに遭遇したところに指を差した。

「あ、確かにルナのマップにはなかったわね」

「はい、わたくしの占いではこれを見つけることはできませんでした。それに、最後のアイテムやモンスターの倒し方も占いではわかりませんでした。それがナヴィさんのこのマップにはかなり詳細に描かれています」

「なるほどね、ほとんどわかるって言ったのはそういうことだったのね」

「はい、わたくしの占いは八割方当たりますが、やはり残り二割は実際に行ってみないとわからないことだったり、外れたりもするので……」

 八割……普通で言ったら驚異的な数字。これはまた強力なライバル登場って感じね。

「ナヴィさん、ここで会ったのも何かの縁です。それに食料を頂いたご恩もあります。もしナヴィさんがよければ占いませんか?」

 再度ナヴィの手を取り目を見開いたルナにナヴィも便乗する。

「ほんとに!? じゃあお願いしていいかしら」

「もちろんです! 食の御恩は一生の御恩です」

 大げさな……。

「では何について占いましょうか?」

 ルナはタロットカードを手に取りナヴィに尋ねた。

「んー無難に未来のことかな、近い未来と遠い未来の二つを占うことは可能かしら?」

「かしこまりました。本当はわたくしのお店ならもっと複雑な占いができるのですが、今日のは外出用ということで簡易的なやり方になりますのでご了承ください」

「えぇ、大丈夫」

「そうしましたらこのタロットカードにナヴィさんの魔力を注入してください」

「え、こうかしら?」

 ルナが差し出したタロットカードの束の上に手を置き、ナヴィは魔力を送った。

 うっ、ナヴィさんすごい魔力……。紙が破れちゃうかも……。

 少しするとルナはタロットカードをナヴィの手から離した。

「もう大丈夫です! ありがとうございます!」

「あら、まだ全然入れてなかったのにいいのかしら」

「はい、もともと少しの魔力で大丈夫ですので……」

 こんなにすぐ魔力がたまるなんて。ナヴィさんの先天的なものでしょうか。コントロールしきれていないところがあるのも気になります。


「ルナ?」

「は、はい! で、では始めますね」

 ルナはカードすべてを上に投げ、詠唱を始めた。

 凄い。何言ってるか全然わからないけど……カードがルナの周りを回ってる!

 ルナは回っているカードから三枚のカードを掴み取った。

「はい、完了しました」

「え、もう終わったの?」

 残りの回っているカードがルナの左手に集まり束に戻った。

「では行きますよ、先に遠くの未来から見てみましょう」

「き、緊張するわね」

 一枚目のカードを裏返す。

「太陽のカードですね。輝く未来、です。夢などが叶いやすいとされているカードです!」

「え、本当!?」

「はい。遠くの未来ですがいい傾向にあるようです」

「やった。じゃああたしは将来テリウス様の……」



「あのーナヴィさん?」

 妄想が膨らんでいるかのような顔をしたナヴィの顔が瞬時に戻った。

「さ。さぁ近い未来はどうかしら」

「はい、では二枚目です」

 二枚目のカードを裏返す。

「これは……」

「ん? 時計? 方角?」

「こ、これは運命の輪です。意味はチャンスが来る、幸運が訪れる。です。良かったですねナヴィさん!」

「あら近い未来も? あたしの未来は順風満帆ってことね!」

「はい、しかしこれもあくまで予想です……当たるかもしれないですし外れるかもしれないです」

「分かってるわ、ほどほどに期待しとく」

「はい、そうしていただけると助かります」

 ナヴィは満足そうな顔をし時間を確認した。

「あ、もうこんな時間……」

「す、すみませんわたくしが足を引っ張ったばっかりに」

「いいのよ、占いもしてくれたしね」

「ナヴィさん、一つ質問してもよろしいでしょうか?」

 ルナは先ほどまでの顔とは違う、真剣で真っ直ぐにナヴィを見つめた。 

「ナヴィさん。あなたは別のところから来た方なんですか?」

「え……?」

 二人の時間が止まった。



 しかしすぐにその時間は解けた。

「な、なに言ってるのルナ! 占いでなんか悪いの出たの?」

「あはは、すみません、いつもとは違うカードを引いたのでつい」


「じゃああたし帰るから。ルナ。またどこかで会いましょ!」

「えぇ。必ず!」

 ルナは村へと帰っていくナヴィが見えなくなるまで手を振り続けた。


 ナヴィの姿が見えなくなったルナはもう一度三枚のタロットカードに視線を移す。



 すみませんナヴィさん。わたくしいくつか嘘をついてしまいました。

 一枚目は『太陽』これは正位置。遠い未来に必ずいいことがあるはず。

 二枚目は『運命の輪』しかしこれは逆位置。衰退する運気、挫折、反逆……。 

 そしてこの三枚目『愚者』。

 二枚目に関しては逆位置だった。

 ナヴィさん気を付けてください。わたくしの占いが当たらないことを切に願います……。
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