村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第四章 『上級ガイド』のダンジョン探索編

36.正位置と逆位置

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「このカード『悪魔』の意味は『破壊、暴力、力の誤用』です」

「あたしの周りでそのカードのようなことが起こるってこと……?」

 喉を大きく動かしたルナは無言で頷いた。

「そんな……」

「はい、ですから今日ナヴィさんにお会いしたのは先ほども言いましたが偶然ではありません。守りに来たんです」

「ルナ……」

「それにわたくし前に嘘をついていました」

「嘘? 初めて会った時のこと?」

「ナヴィさん、その時に見せたカードを覚えてますでしょうか?」

 あの時見たのは二枚のカード。確か。

「『太陽』と『運命の輪』だったかしら」

「はい、太陽のカードは遠い未来でこちらは特に前に言ったことと変わりなく、輝く未来、夢が叶う、を意味していました」

 ということはもう一枚のカード……。

「そしてわたくしがナヴィさんに二枚目の運命の輪のカードを見せたとき、このような向きでしたか?」

 ルナはタロットカードをナヴィに見やすくなるように見せた。

「ん? いいえ、確か逆向きだったわ……これならすぐわかるけど、その時は時計や方角かと思ったのよね」

「つまりこうですね」

 運命の輪のカードを逆さ向きにした。

「そう、そんな感じだった」

「実はタロットカードには正位置と逆位置という見方があります」

「タロットカードの向きが関係しているということね」

「はい、例外を除けば、基本的には正位置の場合は良いことを、逆位置の場合は悪いことを表します。ナヴィさんに見せた太陽のカードは正位置ですのでこちらは本当です、しかし……」

「運命の輪の方が逆位置だったということ?」

「すみません。不安にさせたらいけないと思って隠していたのですが、今日の占いでそれが確信に変わってしまって……」

 ルナは見せる顔がないというように顔を地面に向けた。

「ルナ、しょうがないわ……遅かれ早かれこういうことはどこかで起きるものだし。あなたのせいでもないわ」

 ナヴィがルナの肩を持つ。

「ナヴィさん」

「それで、その運命の輪の逆位置の意味は?」

「いくつかあります。不運、混乱、外的要因。そして歓迎されない変化です」

「なるほど、そういうことね。悪魔に運命の輪の逆位置」


「ナヴィさん。余計なお世話かもしれないのですが、妹さんは今どちらに?」

「え? 多分お店で働いていると思うけど……」

 ルナはカードを再度確認し思考を巡らせていた。

「ルナ?」

「さっきのダンジョン探索等で幾つかトラップに引っかかったりはありましたが、ナヴィさん自身にカードの効果を助長するようなことはありませんでした」

「まぁそうねボスもそんなに大したことにはならなかったし」

「ここからはわたくしの主観、経験則なのですが……」
「非常に言いにくいのですが、こういう時は決まってその人の家族や大切な人に対象が移るものとされています」

「え、まさか……」

「ナヴィさんの妹様に何もなければよいのですが」


 それを聞いた瞬間ナヴィは大きく目を見開き、衝動的に走り出した。


「ナ、ナヴィさん!」

 追いかけるルナだったが、ナヴィの走力には追いつくことはできなかった。


 エンフィー、店にいるよね? いなくなったりしないよね? エンフィー。無事でいて!




 ダンジョン探索が終わってから、気づけば夕暮れ時。ナヴィは乱れた呼吸とともに村に帰ってきた。

「はぁ、はぁ、はぁ、エンフィー」

 何この胸騒ぎ……妙に静かだし、気味が悪い。早く店に帰らなきゃ。

 店の入り口まで戻ってくると、そこにはクローズの看板がかかっていた。

 ナヴィはほっと胸を撫でおろす。

「クローズっていうことはもう仕事が終わって今片付けてるってところね。なら必ず家にいるはず」

「ナ、ナ、ナヴィさん。はぁ、はぁ、はぁ」

「ルナ、どうしてここまで」

「今日は一日は同行するって言いましたよね?」

 膝に手を着きながら笑顔で答えるルナ。

 その笑顔につられるようにナヴィも笑った。

「そうね。じゃあ入るわよ」

「ただいまー!」

 カランカランと鳴るベルと軋んだ音がするドアの音だけが店に鳴り響いた。

「エンフィー? いないの? デニスさん?」

「静かですね」

「どこかに出かけたのかしら」

「エンフィー?」

 エンフィーの部屋や奥の控室を探すもやはりどこにも見当たらなかった。

 徐々に顔が青ざめていくナヴィにルナが声を掛ける。

「きっとすぐ戻ってきますよ、もう少し待ってみませんか?」

 強がりなのかナヴィもすぐに賛同した。

「そ、そうねエンフィーのことだし大丈夫よね……今コーヒー淹れるからルナそこで待ってて」

「はい」

 その瞬間、ガチャ、と外側からドアに鍵が掛けられたような音が聞こえた。

 ナヴィはコーヒーを入れようとしていたカップを落とした。

 二人は急いでドアに向かう。

「何これ全然開かないじゃない」

「中のカギを開けてもドアが開きません、ということは」

「外側からの魔法、人為的なもの……それって」

「これは、相当まずいです、閉じ込められたってことですよね……?」

 ナヴィはガンガンとドアを蹴り始めた。

「くそ、開け。 開け! 開け!」

 やばい……エンフィーがやばい!
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