村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

文字の大きさ
41 / 262
第五章 逆襲の『ガイド殺し』 エンフィー奪還編

41.アメルダ

しおりを挟む
「アメルダ! 大丈夫ですか?」
 ルナがアメルダに声を掛ける。

「ルナ、ここにいては攻撃に巻き込まれてしまうわ。早く離れて」

「でもアメルダが……」

「私は大丈夫。それよりルナ、魔力は?」

 アメルダは体をゆっくりと起こしながら、態勢を立て直す。

「あれをぎりぎりやれるくらいはあります。ですが、少しだけ魔力を練る必要があるのでもう少しだけ時間を稼いでください」

「分かった。私ももう少しで消えてしまうわ。時間との勝負ね」

 この会話の間にもゴブリンには<ヒール>が掛けられ続けていた。

「二人とも! また攻撃が来る!」
 ナヴィも再度杖を構え、迎撃の態勢になった。

 アメルダは残りの力を振り絞るかのように、ゴブリンとの戦闘を再開させた。

「ナヴィさん。できる限りアメルダに補助魔法を……防御系のでお願いできますか? 私はアメルダに一つ仕掛けを施します。ですので、それまでアメルダが消えないようにしたいです」



「……分かった。でもこれで魔力的にも最後の魔法よ」
<ディフェンドグロウ!>

 深緑色のオーラに包まれたアメルダの防御力が向上した。

「よし、これでとりあえずは!」
 アメルダの攻撃も回避中心の反撃から、捨て身の攻撃に切り替わった。

 ゴブリンもこん棒で数回アメルダに攻撃を与えているが、手数ではアメルダが圧倒していた。


「来た! アメルダ、いけます!」
「ルナ! 頼んだわよ!」

 魔力を溜めていたルナのグローブから白い光がアメルダに放たれた。

<ガーディアンプロキシモ・ヘルケルベロス!>

「グルァァァァァ!」



 雄叫びとともに、アメルダの高貴なグレーの毛皮がどす黒く変色し、両側の肩甲骨からは頭が生えだした。それと同時に体もビッグゴブリンと同じ全長十メートルほどの巨体になっていった。



「三つの頭に漆黒の毛皮……あれがケルベロス! アメルダ、凄い……」

 見惚れていたナヴィにルナが肩を叩く。

「ナヴィさん離れてください! あの状態のアメルダは理性がないのです。近くにいたら敵味方問わず攻撃してきます」

「なるほど。諸刃の剣ってことね」

「はい、でもあの状態になったアメルダはそこらへんもボスモンスターの強さの比ではありません」

 ルナの言う通り、変貌を遂げたアメルダは強化されたビッグゴブリンを圧倒していく。

 三つの頭で肩や腕を食いちぎり、吐き出す業火でダメージを与え続けた。

 岩陰に隠れたナヴィはその戦いぶりに驚愕していた。

「これは化け物ね……こんなのあたしもどうやって倒したらいいかわからないわ」

「あはは、わたくしもです。飼い主で良かったと心の底から思っています。本人はこの姿になるのをひどく嫌っていますが」

「そりゃそうでしょ。あんな綺麗な犬が化け物になるんだから」

「ナヴィさん見てください。もうすぐ終わりそうです」

 ビッグゴブリンは様々な部位が噛み千切られており、見るも無残な姿になっていた。しかし補助魔法と<ヒール>により、何とか生かされているという状態だった。

 アメルダは口を大きく開けその中で魔法陣を展開した。

「あれがアメルダのプロキシモ状態の必殺スキル<ヘル・インフェルノ>です」

 最大火力の炎が三方向から吐き出された。


 <ヒール>で回復されていたゴブリンの皮膚は爛れ、体力を一撃で削り切り、ビッグゴブリンは倒れていった。

 それを確認してからというようにゴブリンに続いてアメルダもその場で倒れた。


「アメルダ!?」

「ナヴィさん、大丈夫です。これはわたくしの魔力が完全に底をついたことを意味しています。アメルダ自身もこのようなダメージで消えるようなことはありませんから」

「そっか。はぁ、助かったぁ」

 ナヴィは大きく息をつく。

「はい。では、アメルダは戻しますね」

 アメルダは光の球体に変わり、ルナのグローブへと還っていった。

「これであたし達の魔力はほぼゼロね」

「えぇ、ここまできたのはいいですが……」

 ナヴィはポシェットの中を漁り始めた?

「あ、ナヴィさんそういえばその中には何が……?」

「ポーションっていうほどではないんだけど……とりあえずこれどうぞ!」

 ナヴィはポシェットから二つのアイテムを取り出した。

「バンドエイドにMPドロップですか」

「とりあえずで持ってきといてよかった。この飴と絆創膏で微量かもだけど回復に努めましょう」

「ありがとうございます」



「さぁじゃあ行こう!」

 二人がアイテムを使い立ち上がろうとしたその瞬間、部屋の奥から岩壁が崩れるような大きな衝撃音が鳴った。

「な、なに!?」

「分かりません。しかし、煙の奥から人影が!」

 そのまま岩陰に隠れ続け、様子を覗う二人。



 ぱちぱちと拍手をしながら一人の男が煙の中から現れた。
「いやぁ実に見事。ナヴィさん。そしてそのお友達のルナさん、よくこの強化された、ビッグゴブリンを倒されましたな! さぁ隠れてないで出てきなさい、あなたの大切な妹さんはここにいますよ」

 この薄気味悪い声。

「ちょ……ナ、ナヴィさん!」

 岩陰に隠れて身を隠していたナヴィが杖を持ち直し、デニスの前へ向かっていった。

「デニス! 貴様よくもエンフィーを。早く返して!」

「おっとそんな怖い顔してもだめですよ。それにそんなに怒っても主導権はこちらにありますからね」

 後ろからデニスパーティーの大盾使いと弓使いが現れた。そして二人の間にはボロボロになり一人で立つこともできなくなったエンフィーが刃物を首に当てられていた。

「エンフィー!」

 そのナヴィの呼び声でエンフィーは気を取り戻す。

「……ねぇちゃん、お、ねぇ、ちゃん……」

 か細く、途切れた声でナヴィを呼んだ。

 エンフィー、そんな、あいつらどこまでも……。

「デニス! お前だけは……お前だけは……お前だけは絶対に許さない!」

 ルナは岩陰からナヴィの表情が見えた。

 ナヴィさんのあんな憎悪に満ちた顔……あれはだめだ。助けなきゃ。


「お姉ちゃん……逃げて」 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...