村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第六章 コイルとエンフィー『幸運の聖水』を求めて

47.エンフィー初同行

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エンフィーがコイルの同行の依頼を引き受けてから数時間。二人はダンジョンまでの道のりやモンスターの情報を整理していた。

「滝までの道中はスライムやゴブリンなどの下級モンスターばかりですのでそんなに苦労しないと思います」

「えぇ、そのようですね。あ、エンフィーさんここ見てください」

 コイルはマップに黄色の字で書かれた『注意』のマークを発見する。

「エンフィーさん、ここ何か出るんですかね」

「あぁ、確かアングリータイガーという中級レベルのモンスターが稀に出てくるという話がありました」

「アングリータイガーですか、僕でも倒せますかね……」

「レベル三十クラスの冒険者様が普通に戦えば勝てると言っていたのでギリギリのラインですかね」

「うーんやっぱりまだ早かったかなぁ……」

 頭を抱えるコイル。

「いえ! コイル様のポテンシャルの高さの話はナヴィからよく聞いておりますので大丈夫です! それにいざとなれば私も魔法で援護できますし」

「え、エンフィーさんも魔法使えるんですか!?」

「そんなに大したものは使えませんが、補助魔法はあのハンナさんのお墨付きです!」

 エンフィーは胸の前で得意げな顔をして腕を組んだ。

「ハンナさんの! それは頼もしい。ナヴィさん譲りなんですかね」

「あはは。でもナヴィにはまだ内緒にしてあるので言わないでくださいね」

「分かりました! ではダンジョン内も道のりも詳しく知ることができたし、準備するものも大方見当つきましたので、これで明日の朝出発できそうですね」

 コイルはカウンターの椅子から降り玄関の前に向かった。

「ではコイル様。明日の早朝に玄関前でお願いします」

「分かりました! エンフィーさん。明日はよろしくお願いします」

「はい! それではお気をつけて!」

 エンフィーは店の外まで出て、帰っていくコイルに向かって大きく手を振った。



「さて。もう遅いし明日の準備しますか」

 袖をまくり上げそそくさと店内へと戻っていった。

「確かここに……」

 エンフィーがカウンター裏の控室にある押入れを漁る。

「あった! お姉ちゃんのスペアのローブと杖!」

 ナヴィの純白のローブのスペアと鉄製でできた杖を見つけた。

 エンフィーは慣れない手つきでローブを装備する。

「う、ぶかぶか……まぁお姉ちゃんようだもんね。杖もなんか私の身長に合ってない気がするし……」

 ナヴィの身長に比べ、十五センチほど低いエンフィーには、大人の服を悪戯で着た子供の様にしか見えなかった。


「まぁいいか、私も今回のが終わったら王都に連れてってもらって装備作ってもらお!」

 ローブを脱ぎ自分の目の前にそのローブと杖を置いた

 エンフィーはその場に正座し手を組んだ。


 じゃあお姉ちゃん。この二つ。お借りします。どうか、コイル様と私をお守りください。


「よし、お姉ちゃんのご飯作ってお風呂入って今日はもう寝よう!」




 翌日の早朝。

 玄関には『臨時休業』の張り紙が書いてある。

「カバンよし、杖よし、そしてローブよし。そして朝ごはんよし! いただきます」

 カウンターに置いたパンにバターを塗り朝食を食べ始めた。

 うぅ、なんだかんだで緊張するなぁ。ハンナさんのを除けばこれが正式な依頼の初同行。昨日もあんまり眠れなかったし……。

「そーだ。マップもう一回見とこう」

 コーヒーをすすりながら最終確認を行うエンフィー。

 少しすると玄関からノックする音が聞こえた。

「おはようございまーす!」

「コイル様、おはようございます! ずいぶんお早いですね」

「すみません、なんか昨日はあまり眠れなくて……気づいたら朝になっててそのまま来ちゃいました」

 コイルは頭をポリポリと掻きながら苦笑いした。

「ふふ。私も同じようなものです。すみませんもう少しで出発できるので中でコーヒーでも飲んでお待ちいただけますか?」

「はい、もちろん!」

 エンフィーさん朝の時間もマップ見てたのか、やっぱりガイドさんはすごいなぁ。

「少し二階に上がってきます」

「えぇ」


 エンフィーはナヴィの部屋の扉の前に立ち、いつものように二回ノックをした。

「おはようお姉ちゃん。私今日同行の依頼があったから行ってくるね。今日は帰ってこないで明日になると思うから、その分のご飯置いておくね」

「……」

 まだ起きてないのかな……。

「お姉ちゃん。知ってると思うけど、私今日がガイドになって初の同行なんだ。正直すごく不安でしっかりとサポートできるかもわからないけど、お姉ちゃんみたいに頑張るね。あと、下にあったスペアのローブと杖借りていくね。」


「……」


「それじゃ! 行ってきます!」


 エンフィーごめんね……そっか。初同行か……でもあたしみたいに頑張っちゃだめなの……。

 ……まぁいいか。無事に帰ってきてくれればそれで。

 布団の中でナヴィはゆっくりと蹲った。



「コイル様、大変お待たせしました。出発しましょう!」

「もう大丈夫ですか?」

「はい!」


 二人は『竜門の滝』を目指し村を出発する。


 村を出発して数時間が経った。

 下級モンスターを倒しながら順調にダンジョンまでの道のりを歩いていくエンフィーとコイル。

「エンフィーさん、これ次どっちでしたっけ」

「あ、この道は……確か西側に行くはずですが、私も少し不安なのでマップ見てもいいですか?」

「あぁ、もちろんです!」

「カバンの左側にっと……あれ……?」

 エンフィーはカバンの中に手を出しては入れ、出しては入れを数回繰り返した。

「エンフィーさんどうかしましたか?」

 額に汗をだらだらと垂らしながらコイルに言った。

「す、すみませんコイル様。マップを朝出していて、そのままお店に忘れてきてしまいました……」

「な、なんだってー!?」

「すみませーん!」

 エンフィーとコイルはここからマップなしで進むことになった。
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