村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第六章 コイルとエンフィー『幸運の聖水』を求めて

49.回復魔法

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「エンフィーさん! 一気に決めましょう!」
「はい!」

 二人は魔力を高める。

 二人が飛び出した草むらはアングリータイガーから三十メートルほど離れていたため、遠距離攻撃で仕掛けることにした。

<ウィンドカッター!>
<エアシュート!>

 風の刃と空気の弾丸がアングリータイガーに命中した。

「グルアァァァ!」

 二人の魔法で生まれた煙が晴れる。

「さて、ダメージはどんな感じ……なっ?」

「コイル様。あれがアングリータイガーの特性です」

 それまでは虎柄模様だった体が、真っ赤に変色し、二人の方を睨みつけた。

「アングリーって名前が付くだけのことはありますね……」

 眉間にしわを寄せたコイルは刀を構える。

「コイル様、気を付けてください。ああなったアングリータイガーの攻撃力は並ではありません」

「分かりました、エンフィーさん後方支援を」

「はい!」
 杖を構え、魔法の準備に取り掛かった。

「では行きます!」
 コイルがモンスターに向かって切りかかった。

 それに即座に反応したモンスターもコイルに襲い掛かる。

 ガキン、と大きな音が鳴った。

 コイルの刀とモンスターの鋭い牙が交わった状態で止まっていた。

「コイル様!」

「くっ、重い……」

 単純な力勝負では負ける……。

<アタックグロウ!>

 エンフィーの補助魔法により、コイルに赤いオーラが纏わりついた。

「エンフィーさんの筋力向上による攻撃力アップの魔法……これならいける!」

 先程まで拮抗していた力だったが、徐々にコイルが押し始めた。


 よし、コイル様押せてる! ん……これは強力な魔力……? まずい!

 その瞬間エンフィーが叫んだ。

「コイル様! そいつの口っ! 逃げて!」

「え?」

 コイルがモンスターの口内を見ると、小さく展開されている赤い魔法陣が見えた。

「しまった!」

 その魔法陣から大きな火の球が出現し、コイルに直撃する。

「ぐあっ!」

「コイル様!」
「あっちぃ。まさか、そんな使い方をするなんて……」 

 吹き飛ばされたコイルだったがすぐに立ち上がり、態勢を立て直す。

「エンフィーさん、もう一度補助魔法を! <アクセル>を!」

「はい!」
<アクセル!>

 力じゃだめだ、速さでいこう。

「はぁ!」

 スピードの上がったコイルが見えない速度でモンスターにダメージを与えていく。

「よし、このまま!」
<剣舞・華輪!>

 駒のように一回転をし威力を上げた斬撃がモンスターに大きなダメージを与えた。

「よし!」
「コイル様、まだです!」

「ガァァァァ!」

 真っ赤だったアングリータイガーの体の数か所から炎が噴出された。

 そのまま炎に身を任せコイルに突進を仕掛けた。

 コイルは刀で受け止めるも勢いを殺すことはできず、空中に飛ばされて地面に叩き落された。

「がはっ!」

「コイル様、大丈夫ですか!」


「はい! ぐっ、まだ強くなるのか……」

「いえ、あの炎の噴射は断末魔です! 一気に決めてください!」
<アタックグロウ!>

コイルは溜めていた魔力を刀に籠め、構えなおした。

「うおぉ!」
<剣舞・風陣独楽>

 刀に風が纏わりつき、目にも留まらぬ数回転の斬撃がモンスターを切り刻んだ。

「グガァァ!」

 アングリータイガーが悲鳴のような鳴き声を上げると、身にまとっていた炎が消え、体毛が元の虎柄模様になり、ぐったりと倒れた。

「お、終わったぁ」

 コイルはその場に座り込んだ。

「コイル様ー! お疲れ様です!」

 後方支援をしていたエンフィーがコイルの元へ向かってきた。

「いたたた。結構やられたなぁ」

「うわ、近くで見ると火傷もかなりありますね。待っててください」

 エンフィーは数秒魔力を溜め、回復魔法を使った。

<ヒール!>
<エンジェルキュア!>

 あれ、この状況どこかで……。

 コイルが何かを思い出す。

「コイル様? どうかなさいましたか?」

「はい、そういえば一番最初のダンジョンでもこうやってナヴィさんが回復してくれたなって」

「あぁ、たしかお姉ちゃんが『上級ガイド』になった日ですね」

「はい。僕もそのあと魔法使いと何回かパーティーを組んだことがあったんですが、この回復魔法の感じって魔法使いによって違うんですね」

「え、そうなんですか?」

「はい、エンフィーさんのこの優しくて、温かい感じ。ナヴィさんにそっくりです」

 エンフィーに向かって笑顔を見せた。

「えへへ。何か嬉しいです」

「魔法使いでも冷たい感じとか投げやりな感じとか、掛け方によって変わってくるみたいですね、お二方のは体だけじゃなくて心も回復されそうですよ」

「あはは、お上手ですね」

「本当なんですよ! 今度ナヴィさんの受けてみてください!」

「そうですね、そうしてみます」

 お姉ちゃんやっぱりこの仕事好きだったんじゃない。



「……ん? コイル様。アングリータイガーの死骸のところ」

「あ、ドロップアイテムですかね」

 二人が近づいてみると、灰色の魔術書が落ちていた。

「エンフィーさんこれは……」

「ガーディアンの魔術書ですね、ぜひ持ち帰って下さい」

「あ、そしたら僕いらないんで、これ上げます」

「え?」

「どうせ僕魔法はあまり使わないので」

「いえ、でも同行なんですよ! 私がもらうわけには」

 ここでコイルはムッとした表情でエンフィーに顔を近づけた。

「『二人で』って言ったのはエンフィーさんでしょ?」

 あっ……

「そしたら、これは僕よりも魔法のレベルが高いであろうエンフィーさんが持って帰るべきだと思う」

「……」

「ですよね?」

 コイルはにかっと笑った。

「……コイル様……あ、ありがとうございます! 大切に持って帰りますね!」

 う……その笑顔眩しい……そして可愛い。

 それはいつもの営業スマイルではなく、エンフィーが普段家族に見せていた本来の笑顔だった。

「コイル様?」

「さ、さぁ! ダンジョンまでもうすぐです、おかげさまで体も治してもらったし行きましょうか!」

 コイルは颯爽と歩き始めた。

「あ、お待ちください! コイル様ー!」
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