村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第六章 コイルとエンフィー『幸運の聖水』を求めて

53.一人ぼっち

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「うーんやっぱとれないなぁ」
 コイルは先ほど倒したモンスターの粘液で足が地面に張り付いたままの状態だった。

「多少強引だけど、これでいっか」

 足元に手のひらを向け魔力を高めた。

「うー嫌だけどしょうがないよね……」
<ウインドカッター!>

 威力を弱めた風の刃がへばりついていた地面を削り、ようやくコイルの足は地面から離れることができた。


「やっぱ魔法痛いな……切り傷が数か所……もう次は当たらないようにしなきゃ」

 さて、結構時間取られちゃったし早くエンフィーさんを探さないと。確かダンジョンの最深部の方向に逃げて行ったからそのまま進めばもしかしたら……。

「よし、探そう。エンフィーさーん!」

 コイルはダンジョンの最深部に向かいつつエンフィーの捜索を開始した。



 その頃、エンフィーはダンジョンの最深部近くの薄暗い部屋に閉じこもり、近くにあった枝を持ってポリポリと地面を掻きながら座っていた。

「うーすみませんコイル様ぁ。一心不乱に逃げてたらどこだかわからなくなってしまいました……」

 とりあえず助けに来てくれるの待ってよ……。何よりあのカエルが出てきたら私無理だし。

「そもそもここどこだろ……何も気にせず逃げちゃったから場所もわかんないよぉ。はぁ」

 やっぱり私はお姉ちゃんみたいにはできないのかな……。

 エンフィーは持っていた枝をそっと置き、膝を抱えた。


 そういえば忘れたマップカウンターの上だからお姉ちゃんに見られちゃってるかもなぁ。結構難易度高いしボスも強いからあとで怒られそう。


 んー上手くいかないもんだなぁ。……あれ? なんか聞こえる……?

「……フィーさーん! エンフィーさーん!」


 部屋の外からだ! コイル様が来て下さった!

 エンフィーがさっと立ち上がり意気揚々と部屋を出ようとした瞬間、部屋の出入り口に緑色の物体が通りかかった。

 コイルが助けに来た嬉しさからか、エンフィーは前にいたこの物体に気づかずその柔らかい体に突っ込んでいった。

「ぶっ! え、いまぽよん……って」


 その緑色の物体は体の方向を変えエンフィーと対峙する形になった。

「なななななんでここにもビッグフロッグがいるのよぉー」

 半べそになりながら杖を構える。

 ビッグフロッグは大きく喉を鳴らしながらエンフィーをじっと見つめる。


 うぅ……なんでこいつ私のこと観察してるの。もういい、さっさと攻撃しよ。


 エンフィーは杖に魔力を送り始めた。しかしモンスターの動向が気になり魔法攻撃の準備ができずにいた。

「あぁんもうやっぱり無理、逃げるぅ!」

 杖を降ろしたエンフィーは部屋を出ることを諦め部屋の奥に逃げ帰ろうとした。

 その瞬間モンスターは動き始め、後ろ姿のエンフィーを長い舌を素早く出し捉えようとしていた。


 その音が聞こえ、後ろを振り返ると、モンスターの舌がもうそこまで来ていた。

「ひぃ! ちょっと待って!」
<エアシールド!>

 反転し、防御魔法で一度は舌をはじき返すも、その後すぐに割られてしまった。

「きゃ!」

 盾が破壊された反動で杖を落とし、後ろに吹き飛ばされた。

 モンスターは舌をしまうと、高く跳躍しエンフィーの目の前で着地した。

「いいいいいいいやぁぁぁ……」

 そのカエルは長い舌で口のまわりをペロッと舐め、エンフィーにゆっくり近づいていく。

「本当に勘弁してください勘弁してください勘弁してください!」

 エンフィーは小さな体をさらに小さくするように体を丸め、両手で頭を隠した。

 もうだめだぁ……コイル様ぁ!


 エンフィーが諦め目を瞑った瞬間。ズドン、と大きく鈍い音が鳴った。


 何が起こったかわからないエンフィーは細目を開けモンスターの方を見る。

 エンフィーの前に立っていたカエルには体全体に縦の線が真っ直ぐと入り、数秒後その体が真っ二つに割れた。  

 その奥からは見覚えのある刀と装備をした一人の冒険者がいた。

「ふぅ、探しましたよ。エンフィーさん」

 冒険者は額の汗を左手で拭いエンフィーに笑顔を見せた。

「コ、コイルさまぁ……」

 エンフィーは泣きながらコイルに抱き着いた。

「ちょ、え、エンフィーさん」

 コイルの顔がほんのりと赤くなった。

「ず、ずみばぜん。私が勝手に逃げちゃったから」

「あ、あぁいいんですよ。誰にでも苦手なものはありますからね」

「ありがどうごじゃいまず!」


「とはいえ、あまり長居はできません……」

「え、どういうことですか……」

 コイルが頬を数回掻いてから話始めた。

「部屋の外から何か音が聞こえませんか?」

「確かに、どごんどごんって。大型のモンスターでしょうか?」

「いえ、実はこれ……」

 エンフィーは部屋の出入り口を目を細めてみると、緑色の物体が三体見えた。

「エンフィーさん……?」

「このダンジョン、カエルしかいないんですか……」
 さっきまでの安堵の表情とは打って変わって、エンフィーの顔色が一瞬で真っ青になった。

「あの、お恥かしい話、あのビッグフロッグはエンフィーさんを早く見つけようとして僕がスルーしていたら、追いかけてきたやつらなんです」

 エンフィーがぷるぷると小さく震え始めた。

「あれ? エンフィーさん」

「ちょっと! コイル様ー!!」

 エンフィーがコイルに飛ばした罵声はカエルの鳴き声や足音のそれよりも何倍も大きく部屋に響き渡った。
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