村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第八章 王都公認 案内人適性試験 最終試験編

79.勝つための準備

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「あの子が次席? ってことはアカデミーで二番目に優秀ってこと?」

「はい、それもかなりの戦闘特化型の学生です」

「なるほどね、あの自信ありありな感じはそういうことだったのね」

「今年は例年に比べると私を除いた七人の実力は拮抗しています。ですので次席のあの子が首席でも全然おかしくないレベルなんです」

 困ったわね、実力が離れていることは何となくは分かった……。まぁタパの順位から考えれば当たり前の話。二次試験で一位を取ったあたし達のパーティーより、ブランのパーティーの子の方が順位が高い子が集まってる。

 確かに不利だけど……でも……。

「サテラちゃん」

「は、はい……?」

 震えた声と不安そうな顔をしてナヴィの方を見るサテラ。

「ナ、ナヴィさんどうして笑ってるんですか?」

「ふふ、サテラちゃん。あなたはさっきの二人を見てどう思ったかしら」

「へ? いきなりどうしたんですか?」

「いいから、率直な感想で!」

「えーっと、仲は良さそうじゃない感じはしました。主従関係的な……」

「うん。あたしは今の二人を見て『勝った』と思ったわ」

「え、どうして……?」

「理由は二つ。一つはエドウィン君はあなたを過小評価して完全に油断しきっていること。そしてもう一つは……」

「も、もう一つは?」

「あたし達は一緒に戦うのよ? 戦闘をするのはあなたかもしれないけど、あたしはあなたの横にずっといるわ!」

「ナ、ナヴィさん……それは理由になってないんじゃ……」

「ふふ。これはきっと明日わかるわ。とにかく、この戦いはあなた一人じゃないのよ。一次試験、二次試験首席のあたしがついてるのよ? 大船に乗ったつもりで頼っていいんだからね」

 腕を組み顎を上げるナヴィの姿を見て、サテラの強張った顔が徐々に緩んでいった。

「何かナヴィさんとは昨日会ったばっかりなのに、隣にいてくれるだけでとってもリラックスできます」

「あら、嬉しいこと言ってくれるのね」

「はい、私エドウィンに『負けないように』頑張ります!」

「ふふ、そこは『勝てるように』よ」

「あ、はい!」

 こうして二人はハンナのいる壁外へ再度歩き始めた。


 それぞれのペアがそれぞれの時間を過ごしている中、時刻は正午となった。

「エドウィンさん、本当にもういいんすかぁ?」

「何だ、タパ。まだいたの? 帰っていいって言ったはずだけど」

 こんな空き地で本当に槍を振り回すだけなんて……本当に大丈夫かこのガキ。

「あの、一応俺の試験なんすけど……絶対勝ってくれるんでしょうね」

「お前の試験かは知らんが俺は次席だしあいつは第八位の人間。万に一つも負けるはずがねぇよ」

「……ならいーっすけど」

 まぁ、槍の捌きを見てる感じ確かに大した実力だと思う。そこら辺の冒険者よりは確実に強いな。まったく恐ろしいよこのアカデミー生は。

「そういえば君らアカデミー生はタトゥーはないみたいだな」

「うん、もちろん年齢的なものもあるけどこのアカデミーを卒業した後に現状のランクまでタトゥーが現れる仕様になっているらしい」

「へぇ、変わった制度ですね……」

 見た感じはレベル三十クラスくらいかな。子どもって考えれば立派なもんだよな。そりゃこんな自信の付き方するわな。

「まぁ、確かに俺がやることはなさそうっすね、相手も女の子で選抜組じゃ最下位だし」

「あぁ、だからもう帰っていいよ」

「じゃあそうさせてもらおうかな。あ、間違っても女の子だからって手を抜いたりしないでくださいね」


「誰があんな奴に。ただ王族という名ばかりで選抜組になったあいつに手なんか抜くかっつうんだ。コロシアムには王も王妃も見物に来るらしいからな。合法でぼこぼこにできるんだぜ。願ったり叶ったりじゃねぇか」


「それは頼もしい。それでは失礼しまっす」

 そのままタパはエドウィンを置いて宿に帰っていった。

「いらねぇ心配すんあタパ。俺は誰にも負けない。誰の手も借りない」

 エドウィンの前には自分の何倍もの大きさのある岩が転がっていた。

「サテラ。明日は一瞬で終わらせてやる」
「はぁぁぁぁぁ!」

 エドウィンは魔力を込めた槍を大岩に突き刺すとその岩は一瞬で粉々に砕け散っていった。

「ふっ、木製じゃなくてもいいんだぜ。スーザンさん。ま、どうせ死ぬまでいたぶるつもりだがな」
「ははは。はっはっはっはっは!」

 エドウィンの不気味な笑い声が空き地全体に響き渡った。



 その頃壁外ではナヴィはハンナと協力しサテラの特訓に尽力していた。

「うーん甘いよ、サテラちゃん! 隙あり!」

「くっ」

 ハンナの剣がサテラの斬撃を跳ね返し、開いたわき腹に蹴りを食らわせた。

 蹴りをくらった反動でサテラはその場に膝を着いた。

「う、ハンナさん……強い」

「さぁ、どうしたんだい。もう終わりかい?」

「う、ま、まだまだ」

 立ち上がり双剣を構え直そうとした瞬間、二人は近くからパンと手を叩く音が聞こえた。

「はい、まずはそこまで。とりあえずお昼にしましょうか」

「ナヴィさん。私まだ……」

「いいのよ、格上のハンナに朝から休まず戦ってたんだから」

 そういうとナヴィは水を付けたナプキンでサテラの顔に付いた泥を拭いた。

「あ、ありがとうございます」

「ナヴィ。僕も疲れたよぉ。僕のも拭いてぇ」

「そこにナプキンあるから勝手に拭いてちょうだい」

「扱い雑ぅ!」

 驚いた。サテラちゃん最後の方まで押されてはいたけど思ったよりも早く目が慣れて対応できていたわね。それも反射的なものじゃなかった……。とすると。

「あの、ナヴィさん?」

「あ、ごめん考え事してて。」

「考え事……?」

「えぇ、さて、サテラちゃん? あなたの実力は大体わかったし何となく双剣の扱い方もハンナを見て分かってきたでしょ?」

「あ、それは何となく! 私もこうやって見たいって動きがいくつもありました!」

 サテラは目を輝かせながらハンナの方を凝視した。

「午後はそれの特訓と……」


「おーい、お姉ちゃーん! 行ってきたよぉ!」

 調査を終えたエンフィーが走りながら三人に向かってきた。

「あ、エンフィーさん!」

「お、よくぞ戻ってきたわが優秀な妹よ! しっかり調べられた?」

「えぇ、それはもちろん!」

 ピースサインって……さすがあたしの妹、可愛すぎんか。って見惚れてどうする。

 ナヴィは首を横にぶんぶんと振りサテラの方を向いた。

「さぁてサテラちゃん準備は整ったよ」

「じゅ、準備ですか?」

「そう、午後からは『勝つための』特訓よ!」 
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