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第八章 王都公認 案内人適性試験 最終試験編
90.大型武器
しおりを挟む「貴様ぁ! 叩き切ってやる!」
ナターシャの挑発に乗ったザクレーが大剣を何度も振り回した。
「おらっ! おらおらおら!」
「あははは、相変わらずすごいとスピードとパワーだね」
ナターシャはあざ笑うこのようにザクレーの大剣を大鎌で受け流していく。
「くそ、くらえ!」
<ウィンドスラッシュ!>
風が纏わりついたザクレーの大剣がナターシャの腹部を狙った。
「!? おっと」
ナターシャは再度大鎌で受け流す。しかし、勢いを殺しきれず後ろに退いた。
「ふー危ないなぁ」
余裕の表情を見せるナターシャに対し、激しい攻撃を続けていたザクレーの息は上がっていた。
「はぁ。はぁ。はぁ。どういうことだ……」
今までのナターシャの戦い方なら俺のパワーを全て受け止めようとしていた。しかし今日はなんだ。力をうまく逃がされている……。それにあの余裕そうな表情も、やはりあの案内人か。
「タイムアウト!」
その言葉を発したのはサルミラだった。
スーザンはフィールドの中心へ転移し手を広げ二人を止める。
「そこまで! 案内人から宣言があったため今から三分間タイムアウトを取ります。両者はフィールドの外へ!」
二人のアカデミー生がそれぞれの案内人の元へ帰っていった。
「ナターシャ。水だ」
「ふぅ、ありがとうございます。ケビンさん」
「どうだ、俺の教えた通りできそうか?」
「はい、何とか隠しながらでしたが感触は確かめることはできました!」
「よし、オーケーだ。受け流しは完璧だったしな。お前の飲み込みの早さには驚いてばかりだ」
ケビンは呆れ顔ともとれる表情をナターシャに見せる。
「ふふ。これもケビンさんの指導のおかげです。あまり手の内も晒したくないので次で決めに行きます」
「あぁ、行ってこい」
「タイムアウト終了です! 両者フィールドに上がってきてください!」
先に上がったのはザクレーだった。
「確かにサルミラの言う通りかもな……」
「ザクレー様。お疲れ様です水です!」
「あぁ。サルミラ、外から見てて何かわかったことはあるか?」
「はい。多分見てる感じですがナターシャは踵の回し蹴り以外攻撃という攻撃は行ってませんでした。その後もザクレー様の猛攻を受け流し続け、スタミナを奪っているような風にも感じますね。もともと両方とも大型の武器ですので、大振りはせず弱らせてから一気に叩く作戦かもしれないですね……」
「……なるほどな」
ということはこちらから出向かない方がいいということか……。
「まだもう一度タイムアウトは取れます。落ち着いて敵の動きを観察していきましょう。ザクレー様ならすぐに対応できるはずです」
「あぁ」
もとはサルミラの言う通り大型の武器での戦闘だ。一撃の重さがある分どちらも手数の少ない中での攻撃になる。ならそうなるのは必然だったか。こんなのにも気づけない自分が情けない。
「手数の少ない中でどう当てていくか……ですね」
「ふ、分かっているじゃないかサルミラ」
なかなか有意義なタイムアウトだったぞ。
「案内人の席次八位と聞いて少々舐めていたが多少はいいアドバイスをくれるみたいだな」
さぁ、上がってこい。もうスタミナを無駄に消費させられるような戦い方はできんぞ、ナターシャ。
「ナターシャ選手も上がりました。それでは参ります。試合開始!」
「さぁ、こいナターシャ。今度は俺がお前を迎えてやろう」
大剣を構えるが前に出ようとしないザクレーを見てナターシャがポリポリと頭を掻いた。
「あーうん。あっそ。じゃあ遠慮なく」
「はっ?」
ザクレーの前からナターシャが消え瞬きをした瞬間、目と鼻の距離まで詰めてきていた。
「望み通り来てやったよザクレー!」
「くっ早い。だが!」
タイムアウト前の形とは逆の形となり、今度はナターシャが猛攻を仕掛けていた。
「だがこの程度ではまだ俺は倒せんぞ」
その言葉を聞いてにやりと笑うナターシャ。
「うんうん。大型武器の戦い方だとこうなるよね! だけどこっからは新しいあたしの戦い方だよ」
「何? な!」
ナターシャの大鎌の切先が流れるようにザクレーを襲い始めた。
「く、早すぎてガードしきれん。ぐあっ」
ザクレーの重装備に傷をつけた。
「まだまだ行くよ!」
ナターシャは退いたザクレーにそのまま突き進み激しい攻撃を続けた。
どういうことだ……。さっきはスピードが上がったと思ったが、そうじゃない……。右の攻撃をガードしたと思えばもう一度右から、斜めからと攻撃が襲ってくる。
「ザクレー様がここまで防戦一方に。どういうことなの……」
ザクレーの押されている姿を見て驚くサルミラ。
「まだ気づいてないみたいだな二人とも……」
ケビンは不敵な笑みを浮かべ、サルミラを見た。
「な、け、ケビン」
「お前らは勘違いをしている。大型武器は確かに威力は高いが、その分手数は双剣や槍のように多くはない。だからその少ない手数でどうするかを考える」
「だ、だからそういう戦い方を……」
「だがそれはあくまでセオリーな戦い方だ。優れた案内人ならちゃんと自分のパートナーの実力や状態を見て適切なアドバイスをするものだ」
「特にこういう身体能力の高い選抜組にはそういうアドバイスはナンセンス。彼らの可能性を狭めるだけだ」
「じゃああんたはなんて……」
「手数が少ないなら、その手数を『どう増やせるか』」
「な!? そんなことできるわけないでしょ!」
ケビンがナターシャを指さした。
そこには今にもフィールドの外に押し込まれそうなザクレーと、ザクレーの二倍ほどの手数で圧倒するナターシャの姿があった。
「ふ、ザクレー。就いた案内人の差だったわね! これで終わり!」
<ボルティクサイズ!>
ガードで精一杯だったザクレーの頭ががら空きとなり、ナターシャの雷を纏った大鎌が脳天を叩いた。
「が、が、あ、あぁぁぁ」
「ザクレー様!」
「あはは、これも調べるまでもなさそうね……」
スーザンがザクレーの様子を伺い。そのまま手を挙げた。
「ザクレー選手、スタン確認。試合終了!」
「勝者、ケビン、ナターシャペア!」
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