村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第八章 王都公認 案内人適性試験 最終試験編

91.一回戦終了!

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「勝者、ケビン、ナターシャペア!」

「「「…………」」」

 観客席は静まり返っていた。

 それも当然、誰もこの結果を予期していなかったからである。獣人族にヒューマンが、七位に首席が負けるはずはない。そう思っていたからだった。

 しかし観客のもはや願望までもあったその予想はナターシャの快勝で幕を閉じた。

「うっしゃー! あたしの勝ちぃ! やったー!」

 その場内の沈黙を破ったのもナターシャだった。

 体を目一杯使って喜びを表現するナターシャを見た観客席からはパラパラと手の叩く音が鳴り始めた。

「ケビン様ー! あたし勝ちましたよー!」

 ナターシャは振り返りケビンに大きく手を振った。

「ふっ。あぁ、やったな」

「きゃーケビンさんの笑顔が見れただけであたしは幸せです!」

 ナターシャはケビンに向かって飛びついた。

「だ、か、ら、抱き着くな。人がたくさんいるだろが!」

「え! 人がいないところだったらいいんですか!?」

 目をキラキラと輝かせるナターシャ。

「そういうことじゃねぇだろ!」

 ケビンの拳骨がナターシャの頭にヒットした。

「い、痛い!」

「まぁいい。もう次のことを考えとけよ」

「……はい! あ、そうだ!」




「ねぇ、サテラ、なんかナターシャ観客席の方きょろきょろしだしたぞ」

「ロイ、何言ってるの? きっと誰か探してるんでしょ? 私たちは関係ないはずよ」

 客席で試合を観戦していたサテラとロイがナターシャを不思議そうに見た。

「サテラ、ナターシャおいら達に指さしてないか?」

「そんなわけないでしょ、きっと後ろにそういう人が……」

 後ろを振り返った二人は、屈強な体をした強面の男と目が合った。

「あ? なんだてめーら」

「「ひ! ななでもないです!」」

 すぐに前を振り返るもその男はそのまま二人に話しかけた。

「ありゃあいつが指さしてんのはお前らだろ。俺じゃねーよ」

「え、やっぱりそうだよね!」

 二人は再度ナターシャを見た。


「ロイ! 次はあなたよ! そしてその次はサテラ。あなた達を倒してあたし達が優勝するわ!」

 指を下げ代わりに大鎌を突き付けた。

 その言葉を聞いた二人は目を見開き勢いよく席を立った。

「おいらとルナのペアが最強だ! ナターシャには負けない!」
「わ、私だって絶対にナヴィさんと優勝するんだから!」




「うう、いい三人組ね……」

「そうですねぇ。ってナヴィさん!?」

 サテラとロイの隣で観戦していたルナがナヴィのぐちゃぐちゃの泣き顔を見て驚いた。

「なんで泣いてるんですか! これハンカチです。使ってください!」

「あぁ、ルナありがとう。なんか友情だなぁって。サテラちゃん良かったねぇ」

「あはは。すでに親目線。なんだかわたくし達みたいですね……」

「確かに……まぁ今回に関してはライバルだけどね」

 ナヴィは止まらなかった鼻水をティッシュでかみ、ハンカチで涙を拭き、元の顔へと戻った。

「とはいえルナ。次にナターシャちゃんたちと戦うのはあなた達よね。何か策でも思いつきそう?」

「いいえ、何も……ナターシャちゃんの身体能力と戦闘技術の高さにどこまでロイ君が食らいついていけるかまだ想像ができません」

 まぁそうよね。あたしもブランの対策と同時に取り掛からないと間に合わないレベルだし……。てかロイ君にしろナターシャちゃんにしろこっちのブロックじゃなくてよかったぁ。

「ナヴィさん?」

「あ、ごめん。てかさ、ナターシャちゃんの動きたまにケビンっぽくなかった?」

「はい、でもたまになんですよね。全部が全部そうじゃないというか」

「たぶんだけど、ナターシャちゃん扱いやすいように型を作ったのよ」

「型?」

「うん。ケビンの大鎌捌きは本当に一流冒険者と言われるそれに近いと思う。だけどそれはあくまでもケビンの体だからできる話であって誰でもケビンの真似をしてもケビンの様には戦えないわ」

「なるほど。ということはナターシャちゃんも例外じゃないってことですよね?」

「おそらくは。大鎌は獣人族で身体能力が高いとはいえ女の子が持つには重量のあるリスキーな武器だわ。でもその大鎌のデメリットを慣性と円心力をうまく使って流れるように扱うことで手数を増やしたって感じかしらね」

 言葉で言うのは簡単だけど、たった一日でその戦い方を導いて体得させちゃうなんて……。流石ケビンだわ。

「ナヴィさんもすごいですね。今の試合の中でそこまで分析できるなんて」

「まぁ、ロイ君にしろナターシャちゃんにしろ恐ろしいから少しでも多く情報は掴んでおかないとね」

「そ、そうですね。わたくしもどこまでできるかわかりませんが精一杯あがいてみたいと思います」




「えー皆さん。この試合で本日の日程はすべて終了いたしました! 次回の準決勝は三日後。選手の皆さんはそれまでを準備期間とします! それでは皆さん。三日後会場でお会いしましょう!」

 スーザンのアナウンスで観客は席を立ち帰り始めた。


「三日かぁ意外と長いわね」

「はい、ケビンさんとナターシャちゃんの対策は時間がどれだけあっても足りないので少しほっとしました」


「お姉ちゃーん早くいくよー!」

「あ、エンフィーが呼んでる。それじゃねルナ。
「うん、今行くー! サテラちゃんも行くよ!」

「はい!」

 ナヴィ、サテラ、エンフィー、ハンナも会場を後にした。


「ルナ! おいらたちも行こう!」

「ロイ君……」

「? どうしたんのルナ。暗い顔して」

「わたくし達、ナターシャちゃん達に勝てるかしら……」

 膝の上に置いていたルナの手が小刻みに震えていた。

「……大丈夫だよ。ルナ」

 その手をロイが取る。

「おいらとルナは最強タッグだ! 確かに強いなと思ったけど、おいらは負けるとは思わなかったぞ!」

「あ……」

 たしかに。わたくしもそれは考えてなかったかも……。

「大丈夫だよ! これは二人で戦うんだから!」

 そうね。ロイ君がわたくしを信じるようにわたくしもロイ君を信じないと。

「ありがとうロイ君。次も勝とうね!」

「おう!」

 こうして二人もゆっくりと出口へ向かっていった。
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