村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編

112.今日は負け

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『準決勝第一試合、勝者! ケビン、ナターシャペア!』

「「うおぉぉぉぉ!」」

 会場から大きな拍手と歓声が巻き起こった。

「ふぅ……危なかった……」

 大きく息を吐くケビン。

「……ナターシャ」

 ナターシャは勝利宣言があってからもその場で立ち尽くしていた。
 痣として表れていた虎模様が徐々に体の奥へ引いていき、元のナターシャの姿へと戻っていく。

 スーザンもその姿をロイの様子を確認しながら観察していた。

「ナ、ナターシャちゃん?」

 ナターシャは右手に持っていた大鎌から手を離し、倒れていった。

「え、うそ!? こっちも中々やばい状態じゃないの……」
「救護班! タンカー二台よろしく!」

 ロイとナターシャはそのままタンカーに乗せられ救護室へと連れていかれた。

『皆様、次の試合は今から一時間後に行います! それまでの間場内でしばらくお待ちください!』



「ふぅー終わったわねぇ」

「ナヴィさん。私見てるだけでもう疲れました。はぁー」

「何言ってるのサテラちゃん。ため息ついてる場合じゃないでしょ、これから試合なんだから!」

「そ、そうですよね。それにしても二人ともすごかったですね。たった三日間であそこまで強くなるなんて」 

「ふふ、すごいでしょ、あたしの仲間たちは」

「なんでお姉ちゃんが誇らしげなのよ」

 すぐ隣にいたエンフィーが横やりを入れた。

「いいじゃない別に! あたしだってあの二人と肩を並べるほどの天才なんだから! あの二人がすごいなら、必然的にあたしもすごいってなるでしょ!」

「もーこんなんで大丈夫かなぁナヴィは」

 エンフィーの隣で大きなため息をつくハンナ。

「大丈夫よ、必ず勝って見せるわ! ね、サテラちゃん!」

「は、はい! 頑張ります!」

「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

「はい、それじゃあエンフィーさん、ハンナさん、また後で」


「うん、無事に帰ってくるんだよ!」

「私も健闘を祈ってるわ」


 ナヴィとサテラは見送る二人に手を振りながら席を後にした。

「あ、サテラちゃん。先に控室に言ってて!」

「はい。分かりました。トイレですか?」

「ううん、ちょっと救護室にいるルナと話したくてね」

「あ、そういうことなら私もロイに……」

「あー。多分まだロイ君には話に行かない方がいいかも」

 サテラから目を逸らし頭をかきながら話すナヴィ。

「……負けちゃいましたもんね。私が行ったら余計虚しくなったりするだけか……」

「かもね。そういうことだからちょっと待っててね」

「あ、はい!」


 こうして二人は控室へと向かう道中で別れ、サテラは控室へ。ナヴィは救護室へ向かった。


「えーっと、ロイ君のいる部屋は……あった! ここだね」

 救護室の扉の前に着いたナヴィが戸を叩こうとした瞬間。

「グスッ、グスッ」

 ん、泣いてる……? ロイ君かな?

 救護室の中にはベッドに横たわるロイとその横の椅子に腰かけていたルナがいた。

「ルナ。ごめん。おいら頑張ったけど……やられちゃった」

「うん。大丈夫だよ、それよりも今はゆっくりと寝てましょう」

「ルナのおかげでおいら、すごく強くなったのに。絶対優勝させようって戦ったのに……」

「分かってる」

 ロイの姿を見て堪えていたルナの涙がゆっくりと落ちていく。

「わたくしこそごめんね。ロイ君を優勝させようって、でもやっぱりまだまだ力不足でケビンさんには敵わなかった」

「そんなことない! おいらは優勝できなくてもルナがパートナーで良かったんだよ! 誰が何と言おうとおいらの中ではルナが一番の案内人だ。だから……そんなに泣かないで」

 歯を食いしばりながら大粒の涙を流すロイ。

「そんな顔で泣かないでって言われても説得力無いよ……ロイ君。でもわたくしもロイ君がパートナーで良かったわ。本当にお疲れ様。そして本当にありがとう」

 ルナはあふれ出る涙を何とか抑えロイに微笑んだ。

「うぐっ……う、うわぁぁぁぁ」

 泣き叫びながらルナに抱き着くロイ。

「ここからまた強くなればいいんだよ。たまたま今日は負けただけ。今日という日を糧にしてまた頑張るんだよ。一人でもナターシャちゃんに勝てるくらいね」

 ルナは抱き着くロイの頭をゆっくりと撫でた。

「うん。約束するよ。おいらもっと強くなる」

 ロイの髪の毛に何度も水滴が落ちていった。



「こりゃ、話しかけられないか……」

 ナヴィは救護室に入らず、その二人の会話を扉の前で座って聞いていた。

 ルナとロイ。めちゃくちゃいいペアじゃない。ちょっと泣きそうになったわ……。とはいえ、次はあたしか。絶対にあんな思いはサテラちゃんにさせたくない。

「控室に行こう……」

 ナヴィはそこからゆっくりと立ち上がり、控室へと足を運んでいった。



 その頃先に控室に向かっていたサテラが到着し、ドアを開けた。

「失礼しまーす。って流石にまだ誰もいないよねー」


「あれ、サテラちゃんじゃないか」

「あなたは……ブランさん」

 ドアを開けたサテラの目の前にいたのは、ブランとダリウスだった。
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