村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編

113.忠告

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「やぁ、サテラちゃん。準備が早いね!」

「は、はあ……」

 またこの薄気味悪い笑顔……。

「あ、サテラ……」

「ダリウス」

 ダリウスは細くなった腕を上げドア付近にいるサテラに向かい手を振った。

 疲れ切った顔……それに痩せこけてる。見ただけでどんな仕打ちをされたのかがわかる……。

「ダ、ダリウス……あなた大丈夫……?」

「え……?」

 サテラはいてもたってもいられず、ブランの目の前でダリウスに安否を尋ねた。

「あぁ、大丈夫だよ。見てごらん。さっきも君に向かって手を振っていたじゃないか!」

 サテラとダリウスの間にブランが入った。

「……ブランさん。あなたに聞いていません。私はダリウスにき……ひっ」

 その瞬間ブランはサテラの顔の横に右手をつけ顔を近づけた。

「パートナーの僕が大丈夫と言っているんだ。部外者は黙ってるんだね」

「……何がパートナーですか」


「は?」

「あなたとダリウスがパートナー? 笑わせないでください。あなた達の関係はパートナーではありません。暴力に物を言わせた王と、従わざるを得ない奴隷の主従関係です。」

「……そんな手を震わせながらいっちょ前のことを言っても説得力がないぞ。第一王女」

「……」

 手を震わせながらもサテラはブランを睨みつける。

「サテラちゃんはナヴィと同じ目をしてるな……僕の嫌いな目だ。自分が正義だとか、悪は許さないだとか。非常に不愉快だ……今にも殺したくなるよ……」

 そういうと左手でゆっくりと握り拳を作り始め、腕を振りかぶる。

「え?」

 その姿を見たサテラは驚きからか身動きが取れずにいた。

「ブ、ブランさん!」

 ブランがサテラに向かい殴りかかろうとした瞬間、そのブランの左腕にダリウスが飛びついた。

「なんだい、ダリウス。僕は今忙しいんだ」

 飛びついたダリウスには目を向けずぶらっはサテラの顔を見続ける。

「す、すみません、ぼ、僕とトイレに……」

「わざわざ報告するな。勝手に行ってこい」

「は、はい……すみません」

「「……」」

「ちっ。間が差した。サテラちゃん。次そんなことを言ったらただじゃ置かないからね? わかったかい?」

 ブランはそういうとサテラの顔の横に突いていた右手を、離し先ほどまで座っていた椅子に戻っていった。

「ふー……」
 助かったー。この人どんな二重人格よ……というかサイコパスかしら。

「ダリウス。いつまで間抜け面してそこに立ってるんだ。トイレに行くんだろ。早く行ってこい」

「は、はい」

 ダリウスはそそくさと控室を出て行った。

「わ、私もナヴィさんを迎えに行かなきゃ……」

 それを追うようにサテラも控室から退室した。


 サテラはダリウスを探しにトイレに向かった。

「やっぱり出てきたね。サテラ」

「ダリウス」

 トイレの前にあるベンチに座り、膝を抱えていたダリウスをサテラが発見した。

「ダリウス、ここ座ってもいい?」

「あ、うん。いいよ」

 サテラはダリウスの隣に座った。

「……」

「……」

 お互い準決勝で戦う相手ということもあり独特な緊張感の中、数十秒間の沈黙が続く。


「……ねぇ、ダリウス。さっきはありがとう」

「えっ?」

 先に口を開いたのはサテラだった。

「さっき、ブランのこと止めてくれたでしょ?」

「あ、あはは、誤魔化したつもりだったんだけどな……」

「ふふ、ばればれよ。それよりも傷だらけよ。大丈夫?」

 シャツもぼろぼろだし、服の切れ目から見える体も傷だらけ。最低限の回復魔法だけ掛けられて何とか立ってられるって感じ。正直見てるだけでもきつい……。

「……」

「ダリウス?」

 急に黙り込んだダリウスの横から顔を覗かせるサテラ。

「サテラ。お願いだ」

「お願い……?」

「僕との試合を棄権してくれ」

「え……何を言ってるのダリウス?」

「そのままの意味だ。棄権してくれサテラ」

「そ、そんな頭を上げてダリウス!」

 真剣な眼差し……。これは本気で言ってるのねダリウス。

「ねぇ、ダリウス。これもブランに言われたんでしょ!? じゃなきゃあなたがそんなこと考えるはずがない!」

「いいや、僕の意思だ」

「どうしてそんな……」

「……」

「ねえ、答えてよダリウス。ブランだよね? あいつに言わされてるんだよね?」

「……違う、違うんだサテラ……」

「じゃあどうして!? ちゃんと説明して!」

 両肩を掴み、見開いた眼でダリウスを見つめるサテラ。


「……サテラ、怒らないで聞いてね」

 ダリウスは閉じていた口をゆっくりと開いた。

「え、う、うん」

「君はきっとナヴィさんのおかげでかなり強くなったと思う。きっと僕にも想像ができないくらいに」

「うん。きっとそれは間違いないわ。それがどうしたの?」

「でも、僕には敵わない」

「……何、ということ?」

「君が……君が僕に勝てる可能性は一パーセントもないということだよ」
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