村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編

119.行ってきます

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「もうやめなさい。ブラン」

ダリウスに拳を向けていたブランの腕をナヴィが止める。

「また邪魔をするのかい? ナヴィ。今はタイムアウトで作戦会議中だよ。邪魔しないでもらえるかな」

「パートナーに拳を向ける作戦会議がどこにあるの? 今すぐこの腕を降ろしなさい」

 ナヴィがブランの腕を無理やり下げようとするもブランはそれ以上の力で抵抗する。

「断るって言ったら?」

「力ずくで止めるまでよ」

「ほう、じゃあここで殺り合うか?」

 二人は数秒間顔を近づけ睨み合った。


「……ブラン、棄権しなさい」

「は、支離滅裂だが。頭は大丈夫か?」

「今のダリウス君はサテラちゃんには勝てない。あなたもそれはわかっているでしょう?」

「ふ、ふふ、何を言っている。ダリウスはまだぴんぴんしてるしそれを覆すための作戦会議じゃないか!」

「いいえ、もう、ダリウス君に手はない。彼の戦い方と表情を見ればわかるわ」

「……どういうことだ」

「あなたは何よりも勝ちを優先する戦い方を教えてきた。だから序盤はサテラちゃんの動きを完璧に把握し、その特訓だけをしていたダリウス君の一方的な試合展開になった。けど、そこから先柔軟に戦い方を変えたサテラちゃんになす術もなくやられ、思考も停止してしまった」

「それがどうした……」

「ダリウス君にとって一番苦痛に感じるのはあなたよ。だからもし劣勢にでもなれば奥の手があるならすぐにでも使ってあなたの機嫌を取るはず。でもそうしなかった。いえ、奥の手なんて何もなかった。あなたはそれで勝てると思っていたからね」

「くっ……」

「はっきり言うわ。あなたは案内人としては二流以下。冒険者の意図を汲まず、可能性を信じず、自分のノウハウだけを恐怖で教え込ませる、そんなやり方しかできないなら案内人なんてやめてしまえ!」

「き……さ……ま、言いたい放題言わせておけば……」

 ブランはナヴィに殴りかかろうとするも近くにいたスーザンに止められた。

「そこまでよ。ブランさん」

 スーザンは杖をブランに構え、ブランの腕に魔法陣を展開させた。

「スーザン・アレク……くっ腕が動かない……魔法か」

「流石にあなたの言動はもう無視できるものではない。あなたは失格、これ以上のダリウス君への……」

「スーザンさん。ちょっと待ってください」

「ナヴィさん?」

 ナヴィがスーザンの警告を止めると、そのまま座っていたダリウスの前に立ち、片膝を着いた。


「ねぇ、ダリウス君」

「は、はい……」

「さっきも言ったけど、今のあなたじゃ絶対にサテラちゃんには勝てないわ、それでも続けるの?」

「……」

 ダリウスは口をもごつかせながら顔を下に向けた。

「あなたはどうしたいの?」

「僕は、僕は、負けたくない。強くなりたいんだ。兄さんみたいに……」


「ダリウス、またそんな寝ぼけたことを言って! 兄のことは忘れろといったろ!」

 スーザンに止められながらもダリウスに対して叫ぶブラン。

 ナヴィはブランの声に耳を傾けず、ダリウスに向かって微笑んだ。

「……そう、ならもう一度フィールドに上がってきなさい。あたしの自慢のサテラちゃんが相手をするわ」

「ナヴィさん……」

 その優しい言葉がけにダリウスの顔に生気が戻る。

「それに、武器はグローブでいいの?」

「え……」

「マントの下。腰に差している短剣は何かしら……?」

「なんでそれを……」

「まぁ、ね」

 ナヴィはにやりと笑いそのまま背を向けてサテラの元へと戻っていった。

「じゃあフィールドで待ってるわ。冒険者、ダリウスさん」

「ナヴィ、てめぇ俺のダリウスに何吹き込んでんだ!」

 ナヴィはブランのその言葉を聞いた瞬間体を反転させ、ブランの胸ぐらを掴んだ。

「『あなた』のダリウス君じゃない! 冒険者はあなたの奴隷でもなければ目的のための道具でもない。信頼関係から構築されるはずだったパートナーよ。そんなこともわからない自分の優勝だけにしか興味がない。あなたは『輝き方』を間違えた」
「その状態で見てなさい。あなたが見ようともしなかった冒険者、ダリウスの戦い方を!」

 ナヴィの姿を見たダリウスがグローブを脱ぎ捨て、腰に差していた短剣を抜いた。

「ダリウス、待て、勝手なことは許さんぞ!」

 フィールドに上がろうとしていたダリウスが振り返りブランに頭を下げる。

「ブランさん。弱い僕を熱心に鍛え上げてくれたこと、本当に感謝しています。ブランさんから学んだことは沢山ありました」

「やめろ、何を言っている。戻ってこい。まだ話は終わってないぞ!」

「『今日』まで、本当にありがとうございました!」

「待て、待ってくれ、俺の、俺の試験が……」

 ダリウスは弱った顔で精いっぱいの笑顔をブランに向けた。 

「行ってきます」

 ダリウスはブランに背中を向け、ゆっくりとフィールドへ上がっていった。
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